2022年6月5日放送『暴太郎戦隊ドンブラザーズ』ドン14話「みがわりジロウ」(監督:渡辺勝也 脚本:井上敏樹)
これ、子供向けの特撮ヒーロー番組なんですよね? と思わず聞いてみたくなるほどの展開。
前回、主人公・桃井タロウが卑劣な方法で倒され、まさかの消滅。
そのタロウの後釜として登場した桃谷ジロウが、完全に頭おかしい。
これが本当にタロウに代わるニューヒーローなのか?
後悔する者、悲しむ者、そして闇を深める者・・・変わりゆく状況、そして変わりゆく心境。前回に引き続きターニングポイントを迎えた『ドンブラ』のドン14話をレビューする。最後までおつきあいいただければ幸いだ。
キャスト
ここではドン14話のキャストをご紹介する。
本作初登場でウィキペディアに記載のある方についてはリンクを貼っておくので、他の参加作品なども是非チェックしていただきたい。
なお、以下で使用している画像は全て『暴太郎戦隊ドンブラザーズ』から引用している。
桃井タロウ/ドンモモタロウ
樋口幸平
猿原真一/サルブラザー
別府由来
鬼頭はるか/オニシスター
志田こはく
犬塚 翼/イヌブラザー
柊太朗
雉野つよし/キジブラザー
鈴木浩文
五色田介人
駒木根葵汰
ソノイ
富永勇也
ソノニ
宮崎あみさ
ソノザ
タカハシシンノスケ
桃谷ジロウ
雉野みほ
新田桃子
バスガイド
三輪晴香
狭山健児
杉山凌士
棋士
記録係
西野友唯
所長※画像中央
三上 剛
バイト
川﨑脩誠
ルミちゃん
朝乃あかり
駐在
ジロウの友人
森田 光・釈 聖司・長谷場俊紀
ジロウ(小学生)
後藤りゅうと
ジロウ(中学生)
水澤優海
桃井 陣
和田聰宏
タロウの代わり?
21年前、山間の村に、どんぶらこっこと流れ着いた赤子、それが桃谷ジロウである。
村の駐在に拾われ育てられたジロウは、内なる声に後押しされ、ヒーローになって世界を救うために一人黙々と身体を鍛え続けてきたらしい。次元の狭間から桃の形をしたカプセルに入れられて、この世界にやってきたところは桃井タロウと同じなので、彼もまた普通の人間ではないのだろうが、タロウのような俺様キャラではなく、生真面目ないいひと。それが幸いしたのか、傍から見たら“厨二病をこじらせた痛い人”みたいなジロウを、村の人たちは、かわいそうな子を見るように、生温かい目で見守っている。
そんなある日、ジロウは村を出て上京する。どうやら事件は田舎ではなく、都会で起こるらしい。
桃井 陣によれば、「タロウが消えた時、代わりとなる者が現れる」というのだが、タロウがソノイに倒されてしまったことを、ジロウは感じ取ったというのだろうか。だとしたら、本物であるが、脳人たちと戦うドンブラザーズに偶然出会ったジロウは、ドンブラスターで変身・・・ではなく、木陰で着替えて登場する。
その姿は、まるで中国雑技団。しかも自らを「スーパーヒーロー・ファイヤードラゴン」と名乗ってしまう痛々しさ。足元にそっと置かれたバケツには、大量の石が入っている。投げてぶつけるためである。
もちろん、こんな攻撃が通じるわけもなく、あっけなくやられてしまうのだが、それにもめげず、ドンブラザーズのメンバーを「お供」呼ばわりし、「一緒に戦いましょう」と手を取ろうとする。しかし、はるかには「何よそのヘンテコな格好!」と突き飛ばされ、普段はおとなしい雉野にも「ヒーローマニアですか?」とツッコまれる始末。これで、タロウの代わりがつとまるのか? と不安になるが、一度どん底まで落としてから一気に輝かせるのは常套手段である。
次回、追加戦士・ドンドラゴクウへと変身を果たし、タロウも復活するというクソ熱い展開。
ドラゴンをモチーフとするのは鉄板だが、元々ジロウが着ていたオレンジのジャージがブルース・リーを意識したものであることがわかれば話は早い。この出立ちからして既にドラゴンモチーフの戦士になるよ、という伏線が張られていたということである。
それにしても、「お供」と声をかけたジロウに対し、「私たちをお供と呼んでいいのはタロウだけなんだから!」と言い放ったはるかの一言にはグッときた。憎まれ口を叩き、叩かれながらも、しっかりとタロウとの間に絆が育っていたのだろう。それは、猿原も同じ。犬猿の仲とも言えるタロウを、なんとかして救いたいと願う。
お供たちが、お友達になる日は、そう遠くはないようだ。
棋士
今回、ヒトツ鬼の宿主となったのは、とある高校生棋士。名前はない。
対局の最中、迫る時間制限の中で「将棋でもっと強くなりたい」という欲望から生まれたのが「高速鬼」。
1989年2月から放送されたスーパー戦隊シリーズ第13作目『高速戦隊ターボレンジャー』をモチーフとしたヒトツ鬼である。
高速鬼
身長:189cm
体重:229kg
スキン:将棋駒GT
名前の通り、とんでもないスピードでドンブラザーズを撹乱するが、やっていることは、部活に勤しんだり、キャッキャしている高校生たちを将棋駒に変えていくことで、これが将棋で強くなることとどう繋がるのかわからなかったが、公式サイトを見て納得。
むかしむかし、青年の青春は学業と将棋の両立だったそうな…。
引用元:暴太郎戦隊ドンブラザーズ公式サイト
要するに、嫉妬。
ヒトツ鬼が生まれたきっかけは「将棋でもっと強くなりたい」という欲望だったのだろうが、その奥底には「友だちと遊びたい、彼女が欲しい」といった、いわゆる普通の青春への憧れだったのだろう。
キラキラと輝く若者たちを次々に将棋駒に変えていく。
そこには、若きプロ棋士の光と影が描かれている。史上最年少とか、若き成功者は常に賞賛されるけれど、それが本当に自分で選んだ道なのかは疑問である。成功したことは間違いなく、そこには天賦の才、みたいなものもあったのだろうとは思うが、その眩いばかりの栄光の影には、人知れぬ苦悩もあったはずである。それが、自分に無いものを持つ者たちを自分の手駒に変えるという形で憂さ晴らしをしているように見えてしまう。
さて、そんな高速鬼は、倒されると脳人レイヤーにて巨大化し、高速鬼ングへと姿を変える。
高速鬼ング
身長:50.9m
体重:2086.9t
スキン:ターボ改造車
頭部にターボエンジンを載せ、顔の両サイドには信号機。両足にはホイールがついており、高速移動が可能となっているが、ドンオニタイジンのダッシュと空中からの連撃で追い詰められ、最後はドンブラパラダイスで一刀両断されてしまう。
ソノイの後悔、ソノザの嘲笑
前回、タロウのバカ正直な性格を利用し、自らの弱点を暴露させた上で、そこを突いたソノイは、激しく後悔していた。宿敵ドンモモタロウを倒せたことには違いないが、卑劣な真似をした自分を認めることができなかったのだ。
その苛立ちをどうにかして忘れようと、不可殺の者(獣人)を執拗に追い、罪滅ぼしの意識の発現なのか、不意をついたソノニの攻撃からはるかをかばってみたりする。
ここで登場したのが、狭山刑事が乗っていた観光バスのバスガイド。彼女もまた、ネコの折り紙を持つ獣人と化していた。この感じだと、あのバスの乗客は全員、獣人になっているのかもしれない。しかし、獣人は不可殺。どうやって折り合いをつけるのだろうか?
もうひとつ、脳人の中で変化が見られたのがソノザである。
自らをファイヤードラゴンと名乗るジロウが、「ドラゴンボンバー!」という雄叫びと共に放り投げた石がソノザに当たった瞬間の出来事。
これまで、「人間たちが何故笑うのかがわからない」と言っていたソノザ。
人々が談笑しているのを見ては、それを真似て、おかしなタイミングで空笑いを繰り返してきたソノザが、このタイミングで嘲るように笑う。『エヴァンゲリオン』で、綾波レイが初めて微笑んだくらいの衝撃・・・というのは流石に言い過ぎだが、それでも衝撃的な瞬間であったことは間違いない。
タロウ復活??
脳人たちに襲われ、絶体絶命のピンチに陥った猿原とはるかの前に、あの神輿が現れる。
喫茶どんぶらの介人が、はるか達のキビポイントを使ったのだろうか?
お供たちの喜びようがハンパない。その嬉しさがこちらにまで伝わってくる勢いである。
しかし、前回、消滅したばかりなのに、もう復活?? と、さすがに妙だと思ったら、バトルが終わった途端、再び消滅してしまった。
一度盛り上げて、再び突き落とされたお供たちの失望ぶりもまたハンパない。ぬか喜びとはこのことである。
ただ一人、「僕の時代が来る・・・!」とほくそ笑むジロウを除いては。
もうひとつ、ドン8話で闇堕ちの様相を見せた雉野がついにその闇をこじらせる。きっかけは、妻・みほがバイクに轢かれそうになり、入院してしまったことにあった。
大したケガではない、というみほだが、雉野の、みほを想う気持ちが暴走する。
そのバイクに乗っていたのが、狭山刑事に追われていた犬塚であることは、まだ知らない。次回の火種となるのか?
さらに、恋人・夏美に瓜二つのみほに出会ってしまった犬塚。
もちろん犬塚は、それが雉野の妻であることはまだ知らないし、みほは「どちら様ですか?」と、犬塚をまるで知らない様子。こちらもまた、今後の展開が楽しみだ。
それでは、ここまでお読みいただきありがとうございました。
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