2022年6月19日放送『仮面ライダーリバイス』第40話「家族か世界か・・・魂の兄弟喧嘩!」(監督:上堀内佳寿也 脚本:毛利亘宏)
『仮面ライダーリバイス』は「家族」の物語だ。
家族ゆえの幸せ、家族ゆえの不幸せ、家族ゆえの葛藤・・・そういった家族が抱えるさまざまを描いている。
最終盤に差しかかる、このタイミングで投入されたのは『仮面ライダーリバイス』が家族の物語だということを改めて再確認するようなエピソード。
血の繋がりは家族と呼ぶのに必要な条件なのか?
そんなことを考えさせられる第40話をレビューする。最後までおつきあいいただければ幸いだ。
キャスト
ここでは第40話のキャストをご紹介する。
なお、以下で使用している画像は全て『仮面ライダーリバイス』から引用している。
五十嵐一輝/仮面ライダーリバイ
前田拳太郎
バイス/仮面ライダーバイス(声)
木村 昴
五十嵐大二/仮面ライダーホーリーライブ
日向 亘
五十嵐さくら/仮面ライダージャンヌ
井本彩花
ジョージ・狩崎※画像右
濱尾ノリタカ
夏木 花/仮面ライダーアギレラ
浅倉 唯
牛島 光/仮面ライダーオーバーデモンズ
奥 智哉
ベイル(声)
津田健次郎
狩崎真澄(声)※画像右
藤 真秀
ラブコフ(声)
伊藤美来
牛島太助
矢柴俊博
五十嵐幸実
映美くらら
赤石英雄
橋本じゅん
五十嵐元太
戸次重幸
孤独を知る者、知った者
ギフには敵わない。故に服従する他ない。
これが大二の結論であった。
フェニックスの隊員たちを一瞬で消滅(蒸発?)させ、巨大なスカイベースを一撃で落とす・・・。
まさに異次元とも呼べる圧倒的な力を見せつけられたのだから、怯えてしまうのも当然である。
赤石の「服従さえしていれば命は助かる」という言葉の信憑性は不明だが、それこそが一人でも多くの人たちを救うためには最善の手段であると、大二は考えたのだ。
しかし、大二の想いは届かない。
大衆はおろか、一番の理解者であるはずの家族にさえ否定される始末だ。
何故、わかってくれない?
そんな大二の哀しみに理解を示したのが、赤石英雄。
数千年もの長い間、誰にも理解されず、たったひとりでギフの代弁者として生きてきた自分と、今の大二の姿が重なって見えたのかもしれない。だからなのか、これまでのように、あからさまに懐柔しようという態度ではなく、我が子を労わる父のような表情を見せて抱き締める。
「不思議だよ。こんな感情がまだ残っていたとはね」と独りごちる赤石。人ならざるものとなってなお、消えないセンチメンタルに動揺しているようでもある。
そして今回、ついに赤石が異形へと姿を変える。
ギフデモス(赤石英雄)
身長:218cm
体重:160.9kg
特色/力:格闘/衝撃波/超修復能力
御子柴朱美同様のギフデモスだが、その姿も能力も御子柴とはまるで異なる。
以前、赤石の姿のまま見せた「風林火山」の元ネタ(完全版?)「風林火陰山雷(フウリンカインザンライ)」を披露する。と言っても、今回は「林」と「山」はなし。その代わり、「知り難きこと陰の如く」と「動くこと雷霆の如し」のふたつを披露する。
それはジャンヌ、アギレラ、オーバーデモンズ3人がかりでもまるで相手にならないほどの圧倒的な力である。
偽物を超えて・・・
そんな赤石に勝ち目なしと踏んだ牛島太助は撤退命令を出すのだが、さくらと花を送り出した光は一人残って赤石に立ち向かう。
意地になっているのか、執拗に撤退を繰り返す太助の命令を無視し続ける。
しかし、光はなす術もなく赤石に蹂躙される。オーバーデモンズというライダーのスペックは高くとも、さくらや花と比べれば明らかに実戦不足なはずで、前回も太助にその力不足を指摘される場面が描かれていた。
変身も解け、命を奪われようとした刹那、そこに割って入ったのは太助だった。
自分たち牛島一家を「任務のための偽装家族」と言って憚らなかった太助。前回、妻を演じていた公子がヘルギフテリアンに殺されそうになっていた時も、人々の避難を優先させていた。
任務遂行のためなら、多少の犠牲を払うことも厭わない鉄の意志と冷静な判断力を持つ太助は、そのせいで冷血漢にも見える。
偽装家族とはいえ、母を演じていた公子の死を目の当たりにしながらも、涙ひとつ見せなかった太助を、光は嫌悪していたかに見えた。
今回、自分の指示を無視した光が絶体絶命のピンチに陥った時も、太助は一人撤退するようなそぶりを見せていた。
それなのに。
赤石の右手が光の身体を貫く寸前、光を突き飛ばしたのは太助だった。
光の代わりに身体を刺し貫かれ、吐血する太助。
胸元からひらりと舞い落ちたのは、1枚の写真である。
それは太助の本当の家族。
過去、デッドマンズによって命を奪われてしまった妻と娘。
ウィークエンドとして活動を始めたのは、その仇討ちの気持ちからだったろうか。
目的達成のためには、同じウィークエンドの仲間たちでさえ切り捨てる非情さを持っていた太助が、たかが偽装家族の一人でしかない光のために命を投げ出した。
私怨よりも、人類のため(ギフを倒す)には光の力が必要だと判断した、とも言えるが、考えるより先に身体が動いたように見える。
命の灯火が消える寸前、光のことを「息子」と呼ぶ太助。以前、ニンテンドーダイレクトで故・岩田 聡社長がやっていた「直接」ポーズを思い出すが、おそらく無関係だろう。
偽装家族に対し、いつの間にか生まれていた想い。
自らの身を挺した太助に「父さん」とつぶやいた光の中にも、同様の想いがあったのだろう。
ウィークエンドの上官と部下では既になかった。それは前回、命を落とした公子に対しても、だ。
もちろん、公子にしてもそうだったろう。絶体絶命の自分を前に撤退を躊躇う光に「行きなさい!」と叫んだのは、単なる指示ではなかったはずだ。あの「行きなさい」という台詞には「生きなさい」という意味が込められていたようにも思える。
お互いを思いやり、ぶつかり合えもする。そこには単なる仲間を超えた絆がある。
大人になればなるほど、純粋な絆というのは結びづらい。生まれるのは常にギブ・アンド・テイクな関係ばかりで、どちらを欠いてもすぐに破綻する、そんな関係ばかりとなってしまう。
自分のことだけを考えて本気で怒ってくれる人に出会えることさえ稀である。ましてや、その身を挺して自分を救ってくれる人などもってのほかだ。
偽装していた家族は、いつの間にか本当の家族となっていた。
息子のために散った太助は、どこか満足気だ。自らの手で、死んだ妻と子の仇を討つことは叶わなかったが、いつか必ず息子たちがその悲願を叶えてくれるという確信からか、それとも、天国で妻と子に会えるという喜びからか。おそらくは、そのどちらもだろう。
そんな太助の亡骸にそっと寄り添う赤石。
そこには、人間を思いやる心が垣間見える。
一輝たちは「赤石が大二を騙している」と思っているが、赤石は赤石なりに人類のことを想っている、ということの証に見える。一輝たちの考えとは異なるが、これはこれで赤石の考える正義なのだろう。
お互いに歩み寄ることはできないのだろうか?
兄と弟
想いが空回りし、孤立を深める大二と理解しあうため、一輝は単身、アララトへと乗り込む。
子ども時代から、喧嘩しては笑い合ってきた。
そんな家族だからこその解決策に賭けたのだ。
壮大な兄弟喧嘩が始まる。
自らの想いをぶつけるように殴り合う。しかし、お互いに自らの想いをぶつけるだけで、相手の想いを汲み取ることまではできていない。キャッチボールではなく、ドッジボールになってしまっている。
最初は拮抗していたかに見えた戦いだが、ギフの力を手に入れた一輝の力は圧倒的で、最後は一撃で決着がついてしまう。
しかし、決着がついたのは殴り合いだけ。最大のポイントだったお互いを理解しあうことについては、平行線のままである。
自由なき平和でもなく、平和なき自由でもなく、人々の笑顔を守るために戦う、と言った一輝の言葉が、理解できなかったわけではなかろう。だが、今の大二はそれを飲み込むことができなかった。一か八かの可能性に賭けて犠牲が生まれてしまうことより、確実に多くの人が救われる道を選びたいと信ずるが故である。
そして、倒れた大二に駆け寄ろうとした一輝を制止したのは赤石。太助の血で汚された白いスーツが、大二を連れ去ろうと現れた時にはすっかりキレイになっていたのは、ギフから授けられた超修復能力なのだろうか?
「私の大事な家族に手を出すな」
そう言って、大二もろとも姿を消してしまう。
人外の存在となり、数千年という時を経てもなお、消えぬセンチメンタル。前回、一輝とバイスが模索していた「ギフを倒す以外の道」が本当にあるのなら、そのヒントはここにあるのかもしれない。
血の繋がりと、想いの繋がり。
家族を描く物語の結末はいかに。
それでは、ここまでお読みいただきありがとうございました。
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