2022年9月18日放送『仮面ライダーギーツ』第3話「邂逅Ⅱ:ゾンビ狩り」(監督:杉原輝昭 脚本:高橋悠也)
本格的に始動したデザイアグランプリ。
目の前で誰かが命を落とす・・・そんなゲームに参加してしまった6人が、今度はまた新たなゲームに挑戦することとなる。
徐々に参加者たちの抱えるものが紐解かれていく第3話をレビュー。ネタバレはあるけれど、これを読んだからつまらなくなるほどのものではないので、これから視聴するという方も安心して読み進めていただきたい。最後までおつきあいいただければ幸いだ。
キャスト
ここでは第3話のキャストをご紹介する。
本作初登場でウィキペディアに記載のある方についてはリンクを貼っておくので、他の参加作品なども是非ご参照いただきたい。
なお、以下で使用している画像は全て『仮面ライダーギーツ』より引用している。
浮世英寿/仮面ライダーギーツ
簡 秀吉
桜井景和/仮面ライダータイクーン
佐藤瑠雅
鞍馬袮音/仮面ライダーナーゴ
星乃夢奈
吾妻道長/仮面ライダーバッファ
杢代和人
ツムリ
青島 心
墨田泰斗/仮面ライダーダパーン
宮本龍之介
小金屋森魚/仮面ライダーメリー
あべこうじ
桜井沙羅
志田音々
鞍馬伊瑠美
ベン※画面左
マイケル・K
ジョン※画面右
トム・コンスタンタイン
社員
武島龍児
女子高生A
女子高生B
火野さあや
執事
本間識章
ギロリ
忍成修吾
運営ナレーション:塩野潤二
今回はゾンビゲー
第1話では“和装”、第2話では“盗賊”と、ゲーム毎に異なるコスプレを披露してくれるジャマトだが、今回は“ゾンビ”である。
ボロボロの服を身にまとい、プレイヤーに襲いかかる。動き自体は鈍いが、大勢で攻めてくるのが厄介だ。弱点は頭で、それ以外の部位への攻撃はあまり意味がないようだ。頭を砕いた時に飛び散る破片の演出が見ていてかなり気持ち良い。グロいのが好きとかいう意味ではなく、木っ端微塵となる様子に爽快感を覚えるのだ。
ゲームは第1ウェーブから第3ウェーブまで行われ、その中でポイントを稼いだ者が勝利する、という図式。「ヘッドショット」なんて言葉が普通に並ぶのは、いかにもシューターっぽい。
ゾンビといえば仮面ライダーバッファだが、今回はギーツがゾンビフォームを披露する。キツネがモチーフとなっていることもあって、爪を強調するデザインも違和感がない。
さらに上半身にアーマーを装着するパターンに加え、脚部にパーツを全寄せするパターンも披露されたが、こちらもカッコいい。スタイリッシュさが売りのギーツには、キック主体のアクションもよく似合う。キック主体といえば、過去一シビれたのは永徳さんが演じたキックホッパーで、それ以上かと言われたらそうではないけれど、ギーツのアクションは全体的にそつなく決まっている。
それにしてもギーツのデザインは個人的にはかなりヒットだ。スーツアクター・中田さんのアクションが好きなこともあるとは思うが、一々カッコいい。銃弾を避けながら通路を走ってくる。ただそれだけのシーンがめちゃくちゃ刺さる。
キラキラの闇
かわいいだけでなく、「庶民になりたいスーパーセレブ」というギャップもウケたのか、大人気インフルエンサーとして活躍している鞍馬袮音。本作のヒロインだ。
自身のオープニングでは楽曲に合わせてネコの仕草を取り入れたダンスを披露。この劇中歌は「日曜日のノラネコ」というタイトルらしい。普段(平日)はお屋敷で大切に育てられている飼いネコが、日曜日だけは誰にも何にも縛られないノラネコを気取る、みたいな雰囲気が感じられる素敵なタイトルだ。歌詞を聞くと、そんな「アウトローにシビれる憧れるゥ」みたいな匂いは全然なく、ただひたすらかわいらしいだけだが。
この「スーパーセレブ袮音TV」の登録者は1,000万人超えらしい。HIKAKINや、はじめしゃちょーなどと肩を並べる日本のトップランカーであることがわかる。
しかし、自分のことをスーパーセレブと言っちゃうのは流石にどうなのだろう。自分で自分のことを「凄い」とか「頭が良い」とか「有能」だとか口に出しちゃう人というのは、それを言われた側に嫉妬などによる否定系のバイアスがかかるため、「言うほど大したことないじゃん」なんて思ってしまうことがほとんどだからだ。
ところが、今回映し出された袮音の自宅は、確かにセレブらしくはあった。
無駄にデカいダイニングテーブルは、新型コロナ対策などを考えたわけでなくナチュラルにソーシャルディスタンスが保たれている。
二人の食事を執事とメイドとSPが見守る。
自分の考える幸せこそが娘の幸せである、と信じて疑わない様子の高圧的な母親を見れば、袮音がここから逃げ出したいと願う気持ちは伝わってくる。
「諦めなければ、君の願いはいつか叶う」と慰めたつもりの景和に、「気持ちだけでなんとかなるって本気で思ってるの?」と暗い目で語りかけるシーンには、人前ではキラキラしたインフルエンサーとして活躍する袮音の抱える闇が垣間見える。
しかし、何かを抱えているのは袮音だけではない。大真面目に「平和な世界」を望む景和も第1話で思い通りになどならない世界に対する不満を口にしていた。
誰もが何かを抱えている。
今後登場する多くのデザイアグランプリ参加者たちも同じだろう。
そういったものを一つ一つ掘り起こしていくことができれば、深い人間ドラマが展開されるはずだ。
滅亡を望む者
多くの10代の若者にとって、有名人は憧れの対象だろう。
だが、今回仮面ライダーダパーンとしてデザイアグランプリに参加している墨田は例外のようだ。
同年代のインフルエンサー・鞍馬袮音を見ても顔色一つ変えず、「協力しよう」と誘いかけられてもなびく素振りも見せない。ツンデレかと思ったが、どうやらそういうものでもないようだ。
ゾンビジャマトを倒す第1ウェーブ終了後、自らの最下位を覆すべく、課金でなんとか乗り切れないかとギロリに泣きつく袮音を見て、明らかに怒りを滲ませる。嫉妬なのか何なのか。この段階でははっきりしないが、嫌いなことは間違いない。
前回、「少年!」と気安く声をかけてきた小金屋を、ほぼノールックであしらった時にも感じたことだが、周りのことなどどうでもいいという気持ちが溢れている。大抵の場合、初対面の人に会う時には、第一印象が良くなるよう多少の無理をしたりするものだが、そういった様子は一切見えない。
同年代で、しかもかわいい女の子にもなびかず、自分よりも遥かに年上のおっさんにも遠慮がない。
いったい、彼は何を考えているのだろう? と思っていたら、交通事故に巻き込まれたことが原因で、それまで打ち込んできたバスケができなくなったらしい。全てを捧げてきた、という思いがあったのかもしれない。絶望はやがて不特定多数に対する憎しみとなり、世界の滅亡を願う人になってしまったのだった。
私も大人になった今だからわかるが、10代の頃に認識していた世界なんてのは、言葉通り“ミクロの世界”だった。しかし、学校という狭い空間に閉じ込められていた当時の私には、それが世界の全てに等しくもあった。
もちろん、そこ以外に世界が存在していることは理解していた。しかし、その広さを実感することはできていなかった。だから、いじめられたとか、失恋したとか、そういったことが一つ起こるたびに世界が終わったような感覚に陥っていた。
ちっぽけな私と、ここに登場する墨田とを同列に並べるつもりはないけれど、些細なことがきっかけで、10代の少年がいきなり世界の滅亡を願うほどの絶望感を抱くことは不思議なことではないということだけは理解できる。
そんな墨田は、ゾンビジャマトに噛まれてしまったことで、さらに絶望感に取り憑かれてしまったようだ。自分だけがゾンビ化することは我慢がならなかったようで、あれだけ邪険に扱ってきた袮音を騙してゾンビ化させようと企む。
しかもこの企みが成功し、袮音もまたゾンビに噛まれてしまう。
次回、最後の第3ウェーブで墨田と袮音はゾンビ化を免れることができるのだろうか?
それでは、ここまでお読みいただきありがとうございました。
\ 僕と握手! /