2022年9月24日放送『ウルトラマンデッカー』第11話「機神出撃」(監督:越 知靖 脚本:足木 淳一郎)
これまで匂わせまくっていた「DG計画」の全貌が姿を現す。
それを待ち構えていたかのように姿を現す怪獣たち。
果たしてそこに関連性はあるのか?
人類の新たな力が登場する第11話をレビューする。ネタバレも含むが、未視聴の方がこれを見たからといって興醒めを覚えるほどのものではないので、安心して読み進めていただきたい。最後までおつきあいいただければ幸いだ。
キャスト
ここでは第11話のキャストをご紹介する。
なお本記事で使用している画像は全て『ウルトラマンデッカー』より引用している。
アスミ カナタ
松本 大輝
キリノ イチカ
村山 優香
リュウモン ソウマ
大地 伸永
カイザキ サワ
宮澤 佐江
アサカゲ ユウイチロウ
小柳 友
ムラホシ タイジ
黄川田 雅哉
ハネジローの声
土田 大
技術者:鈴木 優也
ウルトラマンデッカー:岩田 栄慶
テラフェイザー:桑原 義樹
ライバッサー:石川 慎之介
ガゾート:永地 悠斗
DG計画の産物
第5話と第6話の間に挿入された特別総集編で明かされた「DG計画001」。その後は第9話、第10話でも思わせぶりにこの計画について触れられたりと、とにかく気になる情報であることは確かだった。
そうして今回登場したのは、「テラフェイザー」という名の巨大ロボットだった。
自立型A.Iによって動くこのロボットは10年も前から闇の巨人対策として計画されていたものの、ウルトラマントリガーと当時のGUTS-SELECTによって闇の巨人の脅威が退けられたことで一旦凍結していたらしい。
その計画を再起動させたのがアサカゲ博士で、これについて並々ならぬ想いを持っていることは誰が見ても明らかだ。薄暗がりの中、この計画について薄笑みを浮かべるアサカゲ博士の様子からは、ちょっとマッドな匂いも感じる。
確かにこの手のウルトラマンに伍するほどの力を持つ巨大ロボットというものは、自立型A.Iが暴走するとか、その圧倒的な力に飲み込まれた博士が暴走するとか、ありきたりとはいえ、ヤバそうな展開はいろいろと考えられるだろう。これだけ思わせぶりなことをしてきたのだから、ここからの物語の根幹となる可能性は決して低くはないはずだ。
右腕に中近距離戦用のクロー、左腕に遠距離戦用のビーム砲を装備する。そして最大の武器はTRメガバスターだ。残念ながら今回は出番なしだったが、第9話でスフィアレッドキングを殲滅したGUTSグリフォンのハイパーソーンレーザーのデータを用いているというのだから、その威力は推して知るべし、である。
狙われたテラフェイザー
さて、そのテラフェイザーがいよいよ起動実験の時を迎えるのだが、ちょうどそのタイミングで一体の怪獣が姿を現す。
変形怪獣ガゾート
身長:59m
体重:50,000t
※データは『ウルトラマンティガ』登場時のもの
初出は『ウルトラマンティガ』となる、このガゾート。『ティガ』では人間を食べる恐ろしい怪獣として登場し、その後も様々な作品に登場した人気怪獣だが、今回は初起動したテラフェイザーによりあっさり撤退。思わせぶりに登場した割には、あまりにも呆気なかったが、倒されたわけでもないので、今後再び登場する可能性は大である。
だが、もちろん話はこれで終わらない。
ガゾートが飛び去った直後、小型の台風が突如発生するのだが、これがあからさまにおかしい。台風といえば、海水温の高い日本の南側で発生することが多いものだが、日本の東側、八丈島あたりに発生している。温暖化が進んでいると言っても、流石に妙である。
しかもこの台風は、まるで意志を持っているかのように、テラフェイザーの起動実験場方向に進路を取る。
気持ちよく晴れ渡っていた青空が一転、見る見るうちに黒雲に覆い尽くされる起動実験場。禍々しいと表現しても良いほどの雷雲の中から姿を表したのは、もう一体の怪獣だった。
稲妻怪鳥ライバッサー
身長:55m
体重:20,000t
このライバッサーが、なかなか強力だ。中でも、自在に操る電撃が圧倒的にヤバい。
アサカゲ博士は、ここぞとばかりにテラフェイザーによる撃退を試みるが、実戦経験がほとんどないA.Iを積んでいるせいで、ほとんどなす術もなく瞬殺されてしまう。電撃でA.Iは焼き切られ、ただの鉄クズと化すテラフェイザー。
その途端、ライバッサーは上空へと姿を消してしまう。どうやら、暴れてやろうと現れたわけではなく、テラフェイザーをピンポイントで狙ってきた様子だ。先ほどのガゾートといい、ライバッサーといい、テラフェイザーは怪獣から敵視される存在なのかもしれない。ムラホシ隊長は、これまで地球に生息する様々な怪獣たちがスフィアに反応して姿を現してきたことを振り返り、ひょっとしたら怪獣は地球に現れた“異物”を排除するために現れるという側面もあるのかもしれないと予測する。だとしたら、テラフェイザーもまた地球に害をなす存在である可能性は高い。地球を人体とするなら、怪獣は白血球で、スフィアやテラフェイザーはウイルスということだろうか。
このあたりのやり取りは、今後の重要な伏線となるだろう。やがてこのテラフェイザーがスフィアに乗っ取られて機械の魔神と化すという未来予想図が実現する可能性は高いはずだ。
ヒナバッサーとの10ヤードファイト
このピンチを打開するため、どうにかしてテラフェイザーを再起動しようと知恵を絞るGUTS-SELECTの面々は、これまで数々の実戦を経験してきたA.I・ハネジローをテラフェイザーに取り付けて反撃することを思いつく。そのためには、遠くに横たわるテラフェイザーの内部に侵入し、既存のA.Iとハネジローを入れ替える必要がある。
そこでハネジローを携えてテラフェイザーに向かうのだが、先ほど上空へと消えたライバッサーの代わりに、ライバッサーの小型版、ヒナバッサーが大量に飛来する。テラフェイザーの復活を阻止しようというのだろうか。いよいよテラフェイザーのヤバさが際立つ。
ヒナバッサーの身長は2mほど。カナタたちは、ハネジローをパスしながらヒナバッサーの攻撃を掻い潜って行く。まるでアメリカン・フットボールのようであり、昔のゲーム「10ヤードファイト」を思い出す。1980年代にアイレムが発売したアメフトのゲームである。アメフトのルールを知らなくとも、それなりに楽しめるということで割と評判は良かった。ファミコンにも移植されたので、ご存じの方も多いはずだ。カセットに発光ダイオードをつけるというアイレムの謎仕様にシビれて憧れる。
途中、ヒナバッサーに上空に拉致られたカナタが、ヒナバッサーに合わせて人間サイズのデッカーに変身する。
ウルトラマンが人間サイズに変身するシーンは、古くは『ウルトラセブン』などでも描かれていたが、やはり何度見ても違和感がある。ウルトラマンは巨大でナンボ、仮面ライダーは人間サイズでナンボ、という気がする。だからこそ、今回のようなコント路線に持っていったのはうまいと思う。
ただし、人間サイズになったデッカーにいつもの強さが感じられなかったことには驚いた。ヒナバッサーにマウントを取られ、クチバシでガンガン突かれているところをリュウモンたちによって救われるシーンは、人間とウルトラマンの共闘という意味では良かったが、人間サイズになったとはいえ、ウルトラマンの攻撃力よりもハンドガンの方が威力がありそうに見えてしまうのには違和感が残った。
結局、デッカーのミラクルタイプの力を使ってテラフェイザーの中枢に瞬間移動させられたアサカゲ博士によってハネジローをセットされたテラフェイザーは、再び舞い降りたライバッサーと対峙する。先ほどの不甲斐ない様子は微塵もなく、“TR粒子”という、『ガンダム』でいうところのミノフスキー粒子のようなご都合粒子を散布して電撃を散らしたりと、互角以上の戦いを見せるが、最終的にはオーバーヒート。
最後のとどめはデッカーにきっちり持って行かれてしまう。
「おいしいとこ持っていきますねえ」と苦笑いのアサカゲ博士が「私の希望」とまで言い切ったテラフェイザー。その真の実力を見せてくれるのはいつの日か。そしてその時、テラフェイザーの立ち位置は、敵か、味方か。
それでは、ここまでお読みいただきありがとうございました。
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