2022年10月8日放送『ウルトラマンデッカー』第13話「ジャンブル・ロック」(監督:内田直之 脚本:鶴田幸伸)をレビュー
数多の戦いをくぐり抜けてきたとは言え、まだまだ未熟なGUTS-SELECTの隊員たちの前に試練の壁が立ち塞がる。
デキる大人たちの力を借りることはできず、ウルトラマンに変身することもできない。
たった3人の力だけで、この難局を乗り越えることはできるのだろうか?
多少のネタバレも含むが、最後までおつきあいいただければ幸いだ。
キャスト
ここでは第13話のキャストを紹介する。
以下で使用している画像は全て『ウルトラマンデッカー』より引用している。
アスミ カナタ
松本大輝
キリノ イチカ
村山優香
リュウモン ソウマ
大地伸永
カイザキ サワ※画面右
宮澤佐江
ムラホシ タイジ※画面左
黄川田雅哉
ハネジローの声
土田 大
メトロン星人マルゥルの声
M.A.O
ユウコ:中村守里
グレース:中村浩二
ミカ:榎本遥菜
マナカ ケンゴ:寺坂頼我
メトロン星人マルゥル:武田彩里
若者たち
『ウルトラマントリガー』のレギュラーメンバーだったメトロン星人のマルゥルが特別総集編に続いて再び登場。
このままレギュラー化するのか? と思いきや、どうやらそういうワケでもなさそうだ。それどころか、なんと今回もまた総集編に近い内容で困惑する。最近のウルトラシリーズは、こんなに頻繁に総集編を差し込まなければならないのだろうか? それほど複雑な内容だった記憶はないのだが…。そんなことを考えていたら、デッカーやライドマシンに関する情報がほぼほぼだった前回の総集編に対し、GUTS-SELECTの3人の若き隊員たち、アスミ カナタ、キリノ イチカ、リュウモン ソウマの人物像に焦点を当てた総集編となっていた。
人間の本性というのは、いざという時に現れやすい。そこで今回は、基地内のシステムトラブルに巻き込まれた3人の奮闘を描くことで、これまでよりもグッとわかりやすく3人の魅力に迫る、というものだ。登場人物の深掘りというヤツだが、こういったものはドラマの中で垣間見せていけば良いことで、わざわざまとめる必要があるのか? と思ったのが正直なところ。
しかし、一通り見終えてみると、なんだか清々しい気持ちになっている自分に気がついた。それは、若さゆえのひたむきさに心を打たれてしまったから、かもしれない。多くの候補生の中から選抜されたとは言え、彼らはまだまだ経験の浅い若者でしかない。だが、そんな自分から目を背けるのではなく、自らの未熟さに向き合い、そして乗り越えようとする。そんなひたむきさが、ただ眩しかった。
中でも、意識を失ったカナタに向けて必死で呼びかけるリュウモンとイチカの叫びは良かった。ありがち・オブ・ありがちではある。だが、真に迫っていた。思わずグッときた。裏を返せば、あのシーンがなかったら、ただの退屈な回という印象に終始したかもしれない。それを覆すだけの想いは伝わってきた。
ジャンブル・ロック
物語は、GUTS-SELECTの母艦・ナースデッセイ号が停電するところから始まる。通常なら主電源が落ちるとすぐに予備電源に切り替わるものが、何故か切り替わらない。どうやら、大した準備もなく実戦投入したツケが今頃回ってきたらしい。
そこで登場するのがマルゥル。実は今も裏方としてGUTS-SELECTの屋台骨を支えている、という設定であり、GUTS-SELECTの現メンバーのことも知っているという。偉大なる先輩に自分たちのことを知ってもらえているというだけでテンションの上がるカナタたちだが、当然の如く、それだけでは終わらない。
「優秀だが、融通の利かない生真面目サイボーグ」「明るく一途だが、周りを巻き込む天然爆弾」「勇猛果敢だが、周囲の助けがなければ何度も命を落としているノープラン・ゾンビ」などと3人の長所も短所もよく見ている。まるで常に一緒に戦っているかのように。
それどころか、カナタがデッカーであることまで知っている。ケンゴの時と行動が似ているから、というのが理由のようだが、やはりよく見ている。裏方なのに。
ナースデッセイ号のシステム復興に向けて、マルゥルとカナタ&ハネジロー、そしてリュウモンとイチカで手分けをして修理に取りかかるのだが、トラブルはさらに加速する。カナタたちが誤作動した隔壁によって閉じ込められてしまうのだ。閉じ込められただけならまだしも、火災用の消火ガスが噴出しはじめ、カナタたちは意識を失ってしまう。しかも、こういう時に限ってハネジローはシステムダウン、カナタはデッカーに変身することができなくなってしまい、絶体絶命のピンチに陥ってしまう。
そこで活躍するのが、リュウモンとイチカである。広辞苑の2倍はあると思われるような厚さをもつマニュアルを手繰りながら慣れないコードを入力し、緊急用の電源を繋ぐ。マルゥルやハネジローという有能なエキスパートの助けがなくとも、自分の意味を信じ、運の力も借りて難局を乗り越える。
タイトルのジャンブル・ロック=Jumble rockとは、直訳すると寄せ集めの岩である。本来は石ころみたいな意味合いだと思うので、rockよりもstoneの方がふさわしいと思うのだが、単純な見え方とか聞こえ方からするとジャンブル・ストーンよりもジャンブル・ロックの方が格好は良い。いずれにせよ、今のGUTS-SELETにはお似合いの表現だ。選りすぐりのエリート集団が磨き抜かれた宝石ならば、こちらは荒削りな原石である。
未熟が故に完成形が見えない楽しみと、勝手に感じる可能性にワクワクする。
そんなジャンブル・ロックたちの活躍をこれからも応援していきたい。
それでは、ここまでお読みいただきありがとうございました。
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