2007年2月18日放送『仮面ライダー電王』第4話「鬼は外!僕はマジ」(監督:長石多可男 脚本:小林靖子)
前回、悪徳業者から大金を強奪しようとする男・山越の用心棒を買って出たモモタロス。そのことを知った良太郎は、モモタロスに不信感と怒りを募らせる。
一度は結ばれたかに思われた二人の絆がいきなり揺らぐ。番組開始直後にして、いきなりの神回をレビュー。最後までおつきあいいただければ幸いだ。
キャスト
ここでは第4話のキャストをご紹介する。
【キャスト】
野上良太郎:佐藤 健
ハナ:白鳥百合子
ナオミ:秋山莉奈
野上愛理:松本若菜
小川:外川貴博
大井:阿部亮平
迷子の女の子:石井みずき
山越 佑:波岡一喜
モモタロスの声:関 俊彦
カメレオンイマジンの声:金丸淳一
オーナー:石丸謙二郎
良太郎の覚悟
モモタロスが自分の知らないところで泥棒の用心棒をしていたことに腹を立てた良太郎は、もう一緒に戦いたくないとモモタロスに告げる。
そうは言っても、どうせ戦いになったら呼ばれるだろうと高を括っていたモモタロスだったが、良太郎は意地を見せる。
イマジンを身体に宿らせる前の姿であるプラットフォーム(電車モチーフならではの、このネーミングセンスには脱帽するしかない)でカメレオンイマジンと戦い続ける良太郎。戦うと言っても、元々、人と争うことの嫌いな良太郎に、戦いのセンスはゼロ。ひたすら一方的にボコられるだけである。
腰の引けたファイティングポーズには、歴戦のヒーローたちを演じ続けてきたミスター平成ライダー・高岩成二さんの面影はゼロ。これを一人で演じ分けているのだから、ただただ驚愕だ。
完璧な展開
「バカヤロウ!死んじまうぞ!俺を呼べ!」
意地だけで勝ち目のない戦いを続け、蹂躙される良太郎にモモタロスは叫ぶが、良太郎は答えない。
「わかった!もう2度と泥棒の味方したり、金の要求とかしねえ!だから俺を呼べ!良太郎!!」
モモタロスの悲痛な叫びが響く。
「”ごめんなさい”は?」
「・・・え?」
良太郎の思いもかけない一言にキョトンとするモモタロス。
「”ごめんなさい”は?」
繰り返す良太郎に、「ごめんなさーい!!」と叫び、戦いの場へと向かうモモタロス。
緊張が最高潮になったところでストンと弛緩させ、そこからクライマックスへ一気に駆け上らせる手腕はまさに完璧。
地べたを這いつくばる良太郎が静かに立ち上がり、モモタロスを呼び出すのと同時に流れてくる挿入歌「Double-Action」が、さらに心をざわつかせる。
「今さら出てきたところで遅い」とほくそ笑むカメレオンイマジンに「今さらもクソもねえ。言ったはずだぜ。俺は最初から最後までクライマックスだってなあ!!」と斬りかかる電王に鳥肌が立つ。
名場面の多い『電王』の中でも屈指のシーン。モモタロスの声を担当している関 俊彦さんの名演技はもちろんだが、昂った感情を所作の隅々にまで落とし込んだ高岩成二さんとの完璧なコンビネーションあってこそである。
何度聞いても、「最初から(最後まで)クライマックスだぜ!」というセリフはヒーローらしさ溢れる名言。ライダー史上に残る名セリフだ。このセリフを聞くたびに、『電王』をベストライダーに推したくなる。まあ、個人的ベストは、やっぱり『W』なんだけど。
バンドマンの夢
モモタロスが憑依した良太郎を用心棒に雇い、悪徳業者を相手に強盗を画策するほど金に執着していた山越は、売れないバンドマンだった。
1年前、バンドメンバーと一緒に、プロを目指す最後のチャンスとして受けるオーディションに向かう途中で、迷子の女の子を放っておけず、オーディションに遅刻。
そのままバンドは解散したが、プロになる夢を諦められなかった山越は、金の力でプロになろうとしていたのだった。
一度はカメレオンイマジンの誘いに乗り、大金と引き換えに時間を奪われてしまった山越だったが、良太郎たちに救われ、無事にオーディションは受けられたものの、結果は落選。それでも山越は、金ではなく、自分の力で夢を叶えようと走り始める。
人生は思いどおりになど運ばない。辛く苦しいことに目の前を阻まれることも多い。しかし、その時に金や権力といった力技で現状を打破しようとするのか、それとも自らの信念で現状を打破しようとするのか、その考え方一つで、人生はこうも輝くということを教えてくれるエピソードである。
キレイごとなのはわかっている。現実的には、力技のほうが現状を打破しやすいのもわかっている。
しかし、人はキレイごとにこそ心を揺り動かされる。
人ではないモモタロスも、良太郎がキレイごとを貫いたから、その覚悟に負けたのだ。なんとも美しいエピソードだと思う。
それでは、ここまでお読みいただきありがとうございました。
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