2022年6月12日放送『暴太郎戦隊ドンブラザーズ』ドン15話「おかえりタロウ」(監督:渡辺勝也 脚本:井上敏樹)
「え? もう復活?」
ドン13話で消滅した桃井タロウの復活劇。
ただでさえ展開が早い『ドンブラザーズ』だが、戦隊レッド(リーダー)が敵に倒されてしまうという衝撃の展開から、たった2話で復活というのはいかがなものか、と最初は違和感もあったが、蓋を開けてみれば、胸に迫る展開が待っていた。
そして今回は、追加戦士の初変身回でもある。
ドン15話のネタバレレビュー。最後までおつきあいいただければ幸いだ。
キャスト
まずはドン15話のキャストをご紹介。
なお、以下の画像は全て『暴太郎戦隊ドンブラザーズ』より引用している。
桃井タロウ/ドンモモタロウ
樋口幸平
猿原真一/サルブラザー
別府由来
鬼頭はるか/オニシスター
志田こはく
犬塚 翼/イヌブラザー
柊太朗
雉野つよし/キジブラザー
鈴木浩文
五色田介人
駒木根葵汰
ソノイ
富永勇也
ソノニ
宮崎あみさ
ソノザ
タカハシシンノスケ
桃谷ジロウ/ドンドラゴクウ
石川雷蔵
雉野みほ/夏美
新田桃子
高校生
溝下 翼・西尾聖玄・明村智也
大きすぎた代償
前回、消滅した桃井タロウを助けるため、これまでに貯まったキビポイントを全てぶち込んだ猿原真一と鬼頭はるかは、キビポイントが0になるどころか、一気にマイナスとなってしまう。死者を蘇らせるという行為は、大きなカルマを背負うということなのだろうか。
それを見た五色田介人は、「必ずよくないことが起こる」と、猿原とはるかに注意を促すが、はるかは唐突に足が動かなくなり、猿原はお得意の俳句が読めなくなってしまう。
車椅子生活を強いられることになったはるかと比べれば、単に俳句が読めなくなっただけの猿原など全然甘いと思ったが、「風流を失った」として、本人は死ぬより辛いようである。猿原にとっては、ただの趣味ではなくライフワークとも呼べるものだったのだろう。戦闘中もぼんやりとして精彩を欠く。はるかは変身しても車椅子のままで、こちらは戦うことさえできない。
タロウを失ったことの代償はあまりにも大きく、ドンブラザーズは最大のピンチを迎える。
雉野から生まれたヒトツ鬼
バイクを避けようとして転倒し、傷を負った最愛の妻・みほを傷つけられたことが許せない、と怒りに燃える雉野から生まれたヒトツ鬼。それが「激走鬼」である。
激走鬼
身長:190kg
体重:223kg
スキン:フルアクセルサラリーマン
1996年3月1日から放映されたスーパー戦隊シリーズ第20作『激走戦隊カーレンジャー』をモチーフとしており、交通安全の鬼となる。
交通安全と言っても、安全運転を推進するわけではなく、道路上からクルマを消し去ることで交通事故をゼロにしようとする。
ただし自分だけは特別なのか、邪魔者には猛スピードの激走斬りで襲いかかる。高速スピンのような危険な技もお手のもので、安全運転にはほど遠い。
「フルアクセルサラリーマン」というスキンのためか、頭にはネクタイを結んでいる。一般的なサラリーマンというよりは、酒に酔った昭和のサラリーマンといった風情である。
雉野がヒトツ鬼と化しているため、ドンブラザーズとしての戦力は既にマイナス。それに加えて、タロウは不在。犬塚は忙しいからと戦線離脱。はるかは脚が動かない、というこの状況で、まともに動けるのは猿原のみ。普通に考えれば勝てる相手ではないのだが、ドン13話において卑劣な方法でタロウを始末したことへの後悔か、協力を買って出たソノイによって、瞬殺されてしまう。
ラストでは自分を取り戻す雉野だったが、みほが傷を負ったきっかけが犬塚であることには気づいておらず、みほが犬塚の恋人・夏美と瓜二つであることもわかっていない。
今回は夏美探しに協力するため、犬塚のスマホに収められた夏美の写真を見せてもらうという流れとなり、いよいよ新展開・・・!と固唾を飲んで見守っていたら、まさかのオチ。
恋人との写真がこんな加工写真のみ、とか、最近は本当にありそうで怖い。
今後もまだまだこの手のネタで引っ張るのか? 全てが明らかになった時、雉野と犬塚はどうなってしまうのだろう。
初変身!ドンドラゴクウ
激走鬼に苦戦する猿原たちの前に、懲りもせず「ファイヤードラゴン」を名乗り、登場するジロウ。
今回は前回よりも格段に大きな岩を持参。これももちろん投げつけるためのものだ。
「変身もできないくせに!」とはるかに罵られていたジロウが、ついに初変身を遂げる。はるか達が変身するきっかけともなった、空中に浮かぶ3連スロットが登場し、ドンブラザーズでもおなじみのサングラスと変身アイテムが姿を現す。
矛の形をしたそれは、龍虎之戟(リュウコノゲキ)と呼ばれる。名称の中に、龍だけでなく虎も含まれているのは、別アバターとして、虎モチーフの「ドントラボルト」が用意されているためだ。70年代の大ヒット曲「サタデー・ナイト・フィーバー」を歌ったジョン・トラボルタが元ネタだろう。最後が「ボルタ」ではなく「ボルト」というところに、雷の力を操る感じが見え隠れする。
この龍虎之戟を矛モードのままギアをセット。筋斗雲のようなものに運ばれて、脳人レイヤーと繋がるドア(?)が運ばれてくる。
「ドラ♪ドラ♪ドラゴーン♪ドラ♪ドラ♪ドラゴーン♪超一龍!アチョー!」という変身音は、朴璐美さんが当てている。武器だけでなく、見た目も効果音も完全に中華系だ。ブラックとゴールドという配色に、赤いラインが際立つ。
カッコいいかと言われれば微妙だが、そもそもドンブラザーズの面々が、チョンマゲ(ドンマゲというネーミングらしい)があったり、背が異様に高かったり、低かったりと、微妙なデザインを纏っているので、それらに比べれば、めちゃくちゃ普通な印象だ。矛を使ったカンフーっぽい技で敵を翻弄するのも、ドンブラザーズの中では目新しくて良い。
タロウ完全復活
ソノイに斬られ、消滅したタロウは、異次元で眠りについていた。
そのタロウを救うため、ソノイは激走鬼へと姿を変えた雉野を斬り、消滅させる。卑劣な手を使い、ドンモモタロウを倒したソノイの中にあった後悔が、こういった協力プレイへと繋がったのだろう。
その雉野の消滅に巻き込まれるようにして、異次元へと向かったのはジロウ。
目の前には、これまで敵にやられてしまった被害者達が立方体のカプセルの中で眠っていた。
ジロウは、雉野と共にタロウを救い出すことに成功するが、現世に戻った雉野が再び激走鬼へと姿を変えてしまう。
ここから、ドンモモタロウとドンドラゴクウによる、二人がかりのバディアクションが炸裂する。前衛のドンモモタロウと後衛のドンドラゴクウの息のあった連携が見事だ。
最後は、ドンモモタロウの奥義「アバター乱舞」とドンドラゴクウの「ライトニングドラゴンフラッシュ」でとどめ。
赤いラインが発光する様は、まるで『仮面ライダー555』のよう。
『555』も『ドンブラ』も、脚本は井上敏樹さん。この演出は、そういったことを意識し・・・たわけではないだろう。わかります。
それにしても、今回、ジロウの思い出の中に登場した高校時代のタロウがめちゃくちゃカッコいい。髪色が違うだけで、こうも雰囲気が変わるものかと驚く。
『仮面ライダーリバイス』では、主人公・五十嵐一輝の顔をしたバイスが人気を博したが、こちらのタロウもかなりイケてる。『仮面ライダーフォーゼ』で、福士蒼汰さん演じる如月弦太朗のリーゼントが崩れた時に感じたカッコよさを思い出した。
純真な男と嘘のつけない男
ドン8話から張られてきた「雉野闇堕ち」の伏線は、いともカンタンに回収されてしまい、なんだか拍子抜けしてしまったが、次回のタイトルは「やみおちスイッチ」。なんと、参戦したばかりのジロウが闇堕ちの様子。
思い返せば、前回は戦いを終えたタロウが消滅する様子を見て、「これからは僕の時代だ」とほくそ笑んだり、今回は自分をタロウの代わりとして認めてくれない猿原とはるかを処刑するなどと言い出す始末。
真顔で淡々と処刑について語るジロウからは、サイコパスの匂いがぷんぷんする。
それは純真さゆえの恐ろしさだ。「子どもは天使」といったことを、あちこちで耳にするが、実際にはそうではない。善悪という意識がなく、純粋に想いのままに動いているだけである。そういった底無しの純真さというものが、ジロウには感じられる。
タロウが嘘をつけない、というのと同じような何かがジロウにはあるのだろう。
そして今回のラストは、足が動かなくなったはるかが再び立ち上がったところで幕を閉じる。
『アルプスの少女ハイジ』における「クララが立った!」みたいなノリだが、これまでまともに向き合ってさえくれなかったようなタロウが、気づけば、はるかを名前で呼ぶようになったのには驚いた。
なかなか立ち上がれないはるかを鼓舞するように、タロウが叫ぶ。「お前ならできる!ただ信じろ!」と。この叫びは、お世辞でも松岡◯造さんでもない。嘘のつけない男の心の叫びだ。
その声に突き動かされるように、立ち上がるはるか。駆け寄る途中でつまづいて、タロウもろとも転んでしまう。
しかし、二人は立ち上がろうともしない。寝転がったまま、「おかえり」と微笑み、タロウに身を寄せるはるかに、「ただいま」と微笑むタロウ。
「さよならタロウ」から「おかえりタロウ」まで、たった3話。
しかし、そのたった3話の中で、完璧がゆえに孤立していたかに見えたタロウが、実はそうではなかったことが描かれた。
ソノイという宿敵がいて、タロウのためなら命さえ賭けてくれるお供たちがいた。ラストシーンでタロウが見せた笑顔は、そのことに気づき、自然と湧き上がったものだったのではないか。嘘のつけない男が見せる笑顔は、愛想笑いなどではない。心からの笑顔であるはずだ。
こうして嘘のつけない男と、純真な男が並び立った。これからの戦いはどのように展開していくのだろう。
それでは、ここまでお読みいただきありがとうございました。
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