2022年9月4日放送『仮面ライダーギーツ』第1話「黎明F:ライダーへの招待状」(監督:中澤祥次郎 脚本:高橋悠也)
「伸るか反るか(のるかそるか)」とは、「成功するか失敗するか、成否を天に任せて思い切ってやること」を意味する言葉で、令和ライダー第4弾となる『仮面ライダーギーツ』第1話視聴直後に浮かんだのが、この言葉だった。
「大化けするか、大コケするか」と言い換えても良いかもしれない。現時点では、期待と不安がちょうど半々というのが率直なところだ。
放送終了後のツイッターでは、「ギーツ」と入力すると「ギーツ 不安」とか「ギーツ 見ない」と言った検索ワードが登場したから、不安を感じた人たちは想像以上に多かったのかもしれない。
だが待って欲しい。
人間関係においては第1印象が大事、とよく言われるが、最初は合わないと思っていた人が、話していくうちに無二の親友になったとか、その人と結婚したなんて話もあるくらい、第1印象ほどアテにならないものもない。
そもそも『ギーツ』には期待できる部分も大いにあるのだ。
本記事では、もう一度冷静に第1話を見返してみて、良かった点と不安な点をそれぞれ洗い出してみたい。多少のネタバレは含むが、これから視聴する楽しみを奪うほどのものではないので、未視聴の方も安心して読み進めていただきたい。最後までおつきあいいただければ幸いだ。
キャスト
ここでは第1話のキャストをご紹介する。
ウィキペディアに記載のある方についてはリンクを貼っておくので、他の参加作品などもご参照いただきたい。
なお、以下の画像は全て『仮面ライダーギーツ』より引用している。
浮世英寿/仮面ライダーギーツ
桜井景和
鞍馬袮音
吾妻道長/仮面ライダーバッファ
ツムリ
豪徳寺 武/仮面ライダーシロー
桜井沙羅
福岡福男
ベン
マイケル・K
ジョン
女子高生A※右
女子高生B※左
福島 愛
主婦
根岸晴子
会社員
女子高生
林本奈々
平 孝人
ギロリ
ナレーション:塩野潤二
曖昧な世界観
デザイアグランプリと呼ばれるライダー同士の戦いが開始してから半年ほどで、残った参加者は3名。この3名が優勝をかけて対決するというところから物語はスタートするのだが、その勝敗は「ジャマト」と呼ばれる謎の敵を倒すとか、人々を救うとかして稼いだポイント数で決するらしい。ということは、少なくとも、ここ半年はジャマトとライダーの戦いが街で繰り広げられているはずだ。
ところが、街に溢れる大量の戦闘員や、空飛ぶクジラの化け物を見た人たちの反応は、どう見たって初見にしか見えない。おまけにライダーの存在すら知らない様子だ。
これはどういうことなのか?
まあ、たまたま今回登場したエリアには初めて姿を現した、ということなのかもしれないが、それにしたって、あんなおかしな集団が街を襲うような事件があれば、それが世界のどこだとしても大々的に報道くらいされるだろう。やっぱり、誰も何も知らない、というのは不自然だ。
登場人物たち
第1話から多くのキャラクターが登場している。
就活生の桜井景和は、面接で自分のしたいことを聞かれ、「世界平和」と答えるちょっと抜けたキャラに思えるが、自分の欲得よりも恵まれない動物のために募金をしたり、災害支援に携わるなど、わりと本気で平和を求めている節がある。しかし、そんな自分の置かれた状況に対する閉塞感を抱えているところも垣間見えるため、闇堕ち要員筆頭な気がする。
姉の桜井沙羅は、そんな弟を見守る優しい存在だが、インフルエンサーに夢中になるようなミーハーな一面も持っている。ちなみに沙羅を演じる志田音々さんは、同じニチアサ枠で『ドンブラザーズ』の鬼頭はるか/オニシスターを演じる志田こはくさんのガチシスターでもある。
そんな桜井沙羅など多くのファンを持つインフルエンサー・鞍馬袮音は、本作のヒロイン。セレブの家柄なのにそこから脱して一般人になりたいらしい。屈強そうに見える外国人のボディガードが2人もいるのは、いかにも過ぎる。
ギーツのライバルと目される男が吾妻道長。細かな性格などはまだわからないが、バトルシーンだけをみれば、粗暴な雰囲気もある。普段は工事現場で働いているようだ。どことなく乾 巧(『仮面ライダー555』)に似ているような気もする。
いきなり初回で離脱してしまった仮面ライダーシローこと豪徳寺 武は消防士らしい。演じる金城大和さんは『獣電戦隊キョウリュウジャー』のキョウリュウブルーだった方。今回はシロクマにクラスチェンジしたらしい。
そして、謎の女性・ツムリと謎の男・ギロリ。名前に似たような雰囲気があるので、何か共通項があるのかもしれないが、今のところは全くの未知数である。ツムリはデザイアグランプリの運営に関わり、ギロリは英寿の執事だろうか? ちなみに青島さんは『絶狼-ZERO- -DRAGON BLOOD-」のヒロインだった方である。
また、景和の面接官に何故か平 孝人と名前がついているのは、この人も次回以降ライダーになるから、らしい。
景和の行きつけの蕎麦屋の大将・福岡福男もレギュラー化するのだろうか? 多人数ライダーバトルものという作風からしても、今後、登場人物はさらに増えていくだろう。
スタイリッシュな赤いきつね
『フォートナイト』などのオンラインゲームを参考にしたという設定の通り、大空(異世界?)に浮かぶ“サロン”と呼ばれる場所から、現場へ向けて降下するという演出が用意されていた。英寿はBOOSTRIKER(ブーストライカー)という名のバイクでご出勤である。赤いボディがカッコいい。
考えてみれば、この手のオンロードバイクは令和になって初めてである(『ゼロワン』『セイバー』はオフロードバイク、『リバイス』はホバーバイク)。
デザイアドライバーにIDコアをセットすればエントリーレイズフォームへと変身。さらにレイズバックルを装着することで武器やアーマーを装着できる。ちなみにレイズバックルは左右に1つずつ装着(デュアルオン)することが可能で、さらにそれをぐるりと回転させることで、アーマーの上下を入れ替えることもできる。まるで『超力ロボ ガラット』みたいだ。
ちょっとキザなポーズで指パッチン。これが英寿の変身ポーズ。
仮面ライダーギーツ登場。
『リバイス』のティラノサウルスに引き続き捕食者側となるキツネがモチーフ。仮面ライダーっぽいか? と言われるとよくわからないが、立体感のある造形がめちゃくちゃハンサムで個人的には相当好み。
銃を多用するアクションもかなりスタイリッシュ。今回1号ライダーを演じるスーツアクター中田裕士さん。『リバイス』で演じたエビルのアクションもかなりカッコ良かったし、ギーツも銃を扱うということで納得のキャスティングである。
今回の敵は「ポーンジャマト」。チェスのポーンがモチーフだろう。無尽蔵に湧き出てくるそれらを次々に粉砕していく。全ての攻撃をかわし、一撃で仕留める。まさにスタイリッシュ。
スタイリッシュといえば、『仮面ライダーカブト』や『仮面ライダーウィザード』が思い浮かぶ。ああいった無敵感溢れるスタイリッシュなアクションも大好きだが、『電王』のソードフォームによるゴリ押し感はもっと好きだ。ピンチをピンチと感じさせない強さの表現よりも、ピンチを力でねじ伏せる展開の方がカタルシスを得られる場合は多いと思う。
だからスタイリッシュさは、やりすぎると仇になる可能性もあるものだが、『ギーツ』は各種ギミックの派手な演出などで、その辺りを上手くカバーしているように見える。腕のマフラー(?)から炎を上げてバイクを加速させるシーンも、超巨大な空飛ぶ城をキックで貫くシーンもとにかく熱い。
ギーツのカッコ良さを全面に出したいという意図ははっきり伝わったし、大成功だったと思うのだが、ひょっとしたら主人公が初めての戦いで戸惑いながら危機に陥りながら、それでも敵を叩き潰す、みたいなよくある展開の方が「燃える」と感じた人は多かったかもしれない。
そして世界は繰り返される?
デザイアグランプリの勝者「デザ神」となった英寿が描く理想の世界。
そこでは再び多くの人たちにドライバーとIDコアが配布され、またしてもデザイアグランプリが始まってしまう。
これが理想の世界なのか? 同じ世界を繰り返しているだけではないのか? 謎は深まる一方だ。
ところで、今年2022年は『仮面ライダー龍騎』が20周年を迎えた年である。
それまで誰も見たことのなかった多人数ライダーによるライダー同士のバトルは、その特異なデザインも含めて、当初こそ「こんなの仮面ライダーじゃない」という仮面ライダー原理主義者による批判を受けながらも、いつしかそんな原理主義者たちをも黙らせてしまう名作となった。
登場人物個々人の考える正義や欲望を叶えるために戦うといった設定も斬新で、仮面ライダーの正義とは、人類の自由と平和を守ること、という初代から存在したテンプレを鮮やかにぶっ壊したことは、歴史的転換点だったと言っても良い。この『龍騎』によって、その後のライダーは、設定でもデザインでも自由の翼を与えられたと言って良いだろう。
そんな歴史的名作『龍騎』から20年経ったその年にスタートした『ギーツ』に、再び多人数ライダーによるライダー同士のバトルという設定が盛り込まれたのは単なる偶然なのだろうか。
いや、そんなことはないだろう。これはきっと『龍騎』に対するオマージュだ。
それぞれの掲げる理想の世界がどういったものかはわからないし、英寿の創造した世界がどういうものかもわからない。それどころか、英寿がドライバーとIDコアを海辺で受け取るシーンがあったが、あれがいつなのかもわからないのだ。単純にデザイアグランプリ初参加の時だったかもしれないし、何回目かの参加だったのかもしれない。「今日からあなたは仮面ライダーです」と言われて「ああ、知ってるよ」と答えたところから察すれば何回目かではないか、とも思うが、ひょっとしたらあのシーンがそのままラストシーンだったりすることもあるかもしれないのだ。
この第1話を見て「不安になった」という感想を持った方が多いのは、おそらく具体的なことが何一つ見えないまま終わってしまったからだろう。
しかし本作は謎が謎を呼ぶ展開こそがミソのはずだ。つまり、今は謎だらけだが、この謎が一つ一つ丁寧に解きほぐされていけば、大化けする可能性があると思っている。第1印象から「最高ですか最高です」みたいな感想を持った方は別として、微妙な感想しか持てなかった方ほど、今後印象がひっくり返る可能性は高い。
あとは英寿のライバルとして設定されている吾妻道長が、高橋悠也さんの脚本で言うところの、檀 黎斗や不破 諌のような記憶にぶっ刺さる愛すべきキャラになれるかも重要だろう。イロモノは他に用意されている節もあるが、魅力的な悪役やライバルの存在は面白い作品には絶対に必要である。
期待と不安の入り混じったスタートとはなったが、これから1年間を楽しみに観ていこう。
それでは、ここまでお読みいただきありがとうございました。
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