2022年10月9日放送『仮面ライダーギーツ』第6話「邂逅Ⅴ:逆転のブースト」(監督:柴﨑貴行 脚本:高橋悠也)をレビュー
英寿と袮音のデュオが独走を続けるデザイアグランプリの第3ゲーム「神経衰弱」。
運営からの助っ人・パンクジャックとデュオを組むことになったものの、勝ち筋が見えず焦る小金屋森魚に、ギロリは「1度だけデュオを組み直すことができる権利」があることを示す。小金屋はそれに興味津々。このゲームに勝ちたいと躍起になっている吾妻道長に「俺と組まないか?」と誘いかけるのだが・・・?
第3ゲームもいよいよ大詰め。最下位チームは即失格という過酷な状況の中で、新たな失格者となるのは誰か? 多少のネタバレも含むが、最後までおつきあいいただければ幸いだ。
キャスト
ここでは第6話のキャストをご紹介する。
以下で使用している画像は全て『仮面ライダーギーツ』から引用している。
浮世英寿/仮面ライダーギーツ
簡 秀吉
桜井景和/仮面ライダータイクーン
佐藤瑠雅
鞍馬袮音/仮面ライダーナーゴ
星乃夢奈
吾妻道長/仮面ライダーバッファ
杢代和人
ツムリ
青島 心
小金屋森魚/仮面ライダーメリー
あべこうじ
今井 透
前川 佑
ギロリ
忍成修吾
運営ナレーション:塩野潤二
小金屋の正体
人数不足を補うために急遽助っ人として登場したパンクジャックは別として、その他に生き残っている参加者は5人。その中でも一際怪しげな雰囲気を漂わせているのが小金屋森魚だ。
浮世英寿は世界的スター、桜井景和は就活生、鞍馬袮音は登録者数1,000万人超えの人気インフルエンサー、吾妻道長は建設現場で働く職人、と登場人物たちにはデザイアグランプリの参加者だけではない普段の顔がある。それはこれまでに失格になってきた人たちも同様で、女子高生やら会社員やら主婦やらと様々。あっけなく消えていった人たちでさえ、そういった設定を見せてきたのに、何故か小金屋だけは何をしているのかが全然わからなかった。ノリの良いおっさんだが、生活感がまるでない。
そんな小金屋の素性が、ついに明かされることとなる。
違法カジノのディーラー。
それが小金屋の正体だった。本人は「過去のことだ」と言い張るけれど、指先の感覚だけでトランプの柄を当てることができる、などとうそぶく。だが、はったりでなかったことはすぐに証明される。まるで『ジョジョの奇妙な冒険』第3部に登場したダービーである。
デュオ変更の権利を使うと、抽選ボックスの中から好きなカードを1枚引くことができる。そのカードには、他のライダーたちの顔が描かれており、カードを引いた者は、その引いたカードに描かれたライダーと新たなデュオを組むことができる。すると当然デュオの片割れを失った人たちが生まれるわけで、彼(彼女)らもまた新たなデュオを組むというシステムだ。
その結果、小金屋は狙い通りにバッファのカードを引き抜いて道長と新たなデュオを組むこととなり、道長を奪われた景和は、小金屋の相棒だったパンクジャックと新たにデュオを組むこととなってしまうのだった。
焦る景和と対照的に、パンクジャックには僅かな動揺も見られない。それどころか、言葉一つ喋らないので、景和の言葉が通じているのかさえ不明だ。シミュレーターでコンビネーションの練習に挑んでも、意思疎通しようという努力は全く見受けられない。
さらに小金屋によって起死回生のブーストバックルを盗まれてしまった景和。失格へのカウントダウンがスタートする。もちろん、本作でストーリーテリングを務める2号ライダーが、こんなところで退場する可能性などゼロに等しいことは十二分に理解しているのだが。
バッファがブーストを使ったら
小金屋が景和からくすねたブーストバックルは道長の手に渡る。
自分より戦闘力の高い道長が使った方が勝利の確率は高い、と踏んでのことだろう。このあたりは抜け目がない。
脱落の気配が濃厚になってきた景和とパンクジャックのデュオを尻目に、小金屋は道長という強力な相棒を手に入れてやる気満々だ。ところが、せっかく手に入れたブーストバックルを手にしたまま、道長は動こうともしない。小金屋に何度声をかけられても全てスルー。ただでさえ強力な道長がブーストを使えば、英寿と肩を並べることだってできるだろう。なのに何故?
その少し離れた場所では、景和が意思疎通のできないパンクジャックと共に必死で戦っている。道長はその様子を見つめている。
おもむろにブーストバックルをドライバーにセットする道長。ここからが道長のハイライトだ。
小金屋の獲物を奪い取り、景和がジャマトにトドメを刺すタイミングに合わせて倒す。小金屋はもちろん、景和たち他の参加者たちも何が起こっているのかわからない様子である。
ではいったい何が起こったというのだろう?
答えはシンプル。このミッションが始まる直前に、道長もまたデュオ変更の権利を利用していたのだ。
そこで引いたカードが景和だった。
この時の道長の表情には、狙い通り引いたった、といったドヤ感が漂う。少なくとも偶然ではなかったのだろう。小金屋が指先の感覚だけでカードがわかるようになったのは訓練の賜物だったはずだが、道長に味方したのは強烈な運だろう。不退転の覚悟でこのデザイアグランプリに参加しているその覚悟こそが全てを引き寄せているのだと思う。
ただし、その後で道長自身が語っていた通り、デュオの相手なんて誰でも良かったに違いない。卑劣な手を平気で使い続ける小金屋でさえなければ。
とはいえ、道長が景和のことを憎からず想っていることも確かだろう。私利私欲のために戦う他の参加者と比べると、景和の言動は明らかに異質だが、自分が手に入れたブーストバックルを他人のために惜しげなく差し出すその行為は信ずるに足るからだ。
一方で小金屋は「裏切ったのか!?」と詰め寄るが、道長はどこ吹く風だ。お調子者の小金屋に振り回されるリスクをさっさと消してしまいたい、という気持ちはよくわかる。
そんな道長が叶えたい理想の世界も明らかになった。
「全てのライダーをぶっ潰す力」とは、なんとも物騒な願いだが、その原因は、過去にデザイアグランプリの参加者たちに親友・今井 透を見殺しにされたからだ。ぶっきらぼうで人間嫌いに見える道長の優しさが垣間見える。
そうして、一人猛り狂う小金屋と、何を考えているのかわからないパンクジャックを置き去りに、第3ゲームが終了を迎える。
失格者は?
ゲーム終了と共にツムリから発表されるポイント。最下位のデュオは失格となってしまう。
その結果は、ダントツ1位の英寿・袮音ペア、2位に景和・道長ペア、そして最下位は唯一ポイントゼロの小金屋・パンクジャックペアであった。
恨み言を呟きながら消えていく小金屋。パンクジャックは元々運営側の用意した人物なので、特にお咎めはないらしい。
そして今回、「ライダー失格」の意味が明かされたのだが、普通すぎて何の感慨も湧かなかった。ゲームの中で死亡していなければ、デザイアグランプリに関する記憶を抹消された上で、元の世界に戻されるだけのようだ。
第4話でゾンビ化した墨田奏斗が失格となった際、ツムリがやけに思い詰めた顔をしていたので、元の世界に戻った途端に命を落としてしまうんじゃないか? などと考えたのだが、どうも違ったらしい。平和的で良かったような気もする一方、肩透かしを食らった感もある。
それにしても、景和と道長が同時にジャマトを倒した際に映し出された映像は今回最大の見せ場かもしれない。静止した時間の中でキャラクターたちを360°回転しながら見せつける様子は、まるでゲームさながらである。
最後に、“ブーストライカー”についても触れておきたい。これはライダーではお約束の専用バイクのことだが、どうやらライダーごとに用意されているのではなく、ブーストバックルに紐づけられているらしい。その証拠に、今回ブーストバックルを使用した道長に合わせ、バッファローを模したデザインになっていた。
ということは、そのうちタヌキやネコを模したブーストライカーも登場するのだろうか。本編とはあまり関係ないことだが、こういった細かい演出もまた特撮を楽しむ一つのポイントである。
それでは、ここまでお読みいただきありがとうございました。
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