2022年10月23日放送『仮面ライダーギーツ』第8話「邂逅Ⅶ:切り札ニンジャ」(監督:上堀内佳寿也 脚本:高橋悠也)をレビュー
まさかの展開。
終わらないラスボス戦。
負傷した景和に、更なる困難が待ち受ける。
今回は、ゆるふわな景和と沙羅の二人の過去に関する重要なエピソードに触れられる。
ネタバレも含むが、最後までおつきあいいただければ幸いだ。
キャスト
ここでは第8話のキャストをご紹介する。
本作初登場でウィキペディアに記載のある方はリンクを貼っておくので、他の参加作品なども是非チェックしていただきたい。
なお、以下で使用している画像は全て『仮面ライダーギーツ』より引用している。
浮世英寿/仮面ライダーギーツ
簡 秀吉
桜井景和/仮面ライダータイクーン
佐藤瑠雅
鞍馬袮音/仮面ライダーナーゴ
星乃夢奈
吾妻道長/仮面ライダーバッファ
杢代和人
ツムリ
青島 心
桜井沙羅
志田音々
桜井 茂
松山 傑
桜井由紀乃
宗本汐理
ギロリ
忍成修吾
運営ナレーション:塩野潤二
沙羅の記憶
街に現れたジャマトに襲われる景和の姉・沙羅。
その沙羅を救うため、傷だらけの身体を引きずって戦いに赴く景和は、沙羅の前であることも厭わず、タイクーンへと変身。
沙羅が、そのタイクーンのデザイアドライバーに偶然触れた瞬間、忘れていた記憶が蘇った。
それは悲しい記憶。
まだ沙羅が学生だった頃(高校生か?)、目の前で両親が、ジャマトによって命を奪われる瞬間の記憶。
傷だらけの父と母。
泣き叫ぶ沙羅。
手を伸ばしても届かないジャマー・エリアの中の出来事。
前回、両親を同時に失ったと語っていたのは、事故などではなかったのだ。
何故かその時の記憶が抜け落ちてしまったのは、脳の防衛本能によって忘却の彼方へと追いやられてしまったためか。それとも、ゲーム内で起こったことは一般人の記憶からは消えてしまうというデザイアグランプリのルールによってか。
偶然その場にいなかった景和だけは、何も知らなかったらしい。このエピソードが今後に影響してくるのだろうか?
傲慢なのは誰?
ジャマトによって攫われた沙羅を何とか助け出したい景和は、他の3人に共同戦線を呼びかける。この後に及んで、誰が勝ったの負けたの、なんて話をしている場合ではなく、ナイト・ジャマトを倒し、攫われた人々を助け出すことが優先だろう、というのがその理由だ。
しかし、誰一人その呼びかけに応える者はいない。
道長と英寿は予想通りだったが、袮音までもが躊躇なく断る。
こんな状況下でも勝利にこだわり、自らの欲望を叶えようとする3人に怒りを爆発させる景和だが、姉を救いたい、という私欲のために周りの人たちを従わせようとする景和こそが傲慢だと英寿にツッコまれ、景和は何も言えなくなってしまう。
このやり取りを見ていると、こういったことは、何も景和に限ったことではなく、この世のあまねく場所で繰り広げられていることなのだと感じる。地球温暖化をこれ以上進行させないためにガソリン車ではなく電気自動車を購入しようと語りかける者も、絶滅危惧種を守るために寄付を呼びかける者も、大義のためにその身を捧げる姿勢は立派だ。だが、見方を変えれば、全ては自らの理想の世界を実現するために動いているだけ、とも言える。もっと言えば、誰もがその大小に関わらず、自らの欲望や理想を叶えるために生きている。まるでデザイアグランプリだ。デザイアグランプリとは、単なる妄想ではなく、世界の現実の一部を切り抜いて誇張したものなのだ、ということがよくわかる。
“愛”や“力”を求める袮音や道長と比べて、“世界平和”を求める景和は、とても優しそうで他者ファーストに見える。しかし、“愛”や“力”は、それを手に入れた者だけが満足できるものなのに対し、“世界平和”は世界中の人たちの協力なくしては実現し得ないものである。自らの理想のため、世界中の人たちの行動を制限しようとするそのことは、確かに傲慢でしかないだろう。
ゲームの勝者が自らの理想の世界を実現できるというデザイアグランプリのことを初めて知った時には、何だか『ドラゴンボール』みたいだな、と思ったものだが、こうして眺めて見ると、世界の真理を抉っているようにも感じられて非常に興味深い。
覚悟が呼び寄せたもの
この缶蹴りゲームの切り札だと言われている「ニンジャバックル」。
前回、景和を囮にして英寿が手に入れた代物である。
これを持っている限り、英寿が圧倒的に有利なわけだが、ここで思いもかけないことが起こる。
先ほど、全員での協力プレイを提案していた景和が、自ら囮を勝って出たのである。
ナイト・ジャマトの目を引きつけ、他の3人に缶を蹴り出させようというのだ。
その思惑通りに景和を狙うナイト・ジャマトは、やがてその圧倒的な力によって、逃げ回る景和を追い詰めてしまう。
ピンチの景和を救うため、英寿がニンジャバックルを手にする。
間に合わない。
ナイト・ジャマトのとどめの一撃が景和を襲う。
だが、爆炎の中から姿を現したのは景和でなく、1本の丸太。
“変わり身の術”。
ご存知、忍術である。
ニンジャバックルが、自らの意志で景和に助力したのだ。
全てのバックルに意志があるのかは不明だが、少なくともこういった動きを見せたのは初である(ブーストバックルにも意志があるように見えるが、このように所有者を自分で選んだことはない)。
ニンジャブーストフォームとなった景和は、圧倒的な力でナイト・ジャマトを撹乱する。
その隙を狙って、英寿と道長、袮音は、3人がかりで缶をエリア外まで蹴り出すことに成功する。
しかし、ゲームは終わらない。
果たしてこれ以上、何をすれば良いというのだろう?
脱落者は誰?
ツムリから景和に「失格」の宣告がなされる。
ストーリーテラーにして2号ライダー。
そんな人物がゲームから脱落してしまったのだ。
デザイアグランプリにおいては、ゲームの中で命を落としてしまうことは容認されるが、病気や怪我でゲームに参加することが難しいと判断された場合には即退場となるらしい。
それでも、二人きりの家族である姉・沙羅を守り、自分も無事だったことで、再び元の生活に戻れる景和の顔に後悔はない。
これまで失格となったどの参加者とも違う、笑顔での退場。
いつまでも大人になりきれていないような、ゆるふわな雰囲気を漂わせていた景和に、男の顔が垣間見える。
沙羅の「なれてるじゃん。すごい大人に」の一言で、景和が子どもの頃の夢をいつの間にか叶えていたことを強調する。
ジャマー・エリアからログアウトされる景和を見つめる沙羅に、「こんな世界は終わらせる」と、英寿の目に覚悟が光る。
こういうシーンを見るにつけ、普段は何を考えているのかわからない英寿も、しっかりと熱さがあって、きちんとヒーローなんだよな、と思う。
次回はいよいよ「邂逅」編ファイナル。どんな結末と、今後の展開が待っているのか。
それでは、ここまでお読みいただきありがとうございました。
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