2022年4月17日よりTTFCで限定配信が開始された『仮面ライダーエグゼイド』と『仮面ライダーゼロワン』のスピンオフ作品「仮面ライダーゲンムズ スマートブレインと1000%のクライシス」(監督:柴﨑貴行 脚本:高橋悠也)
昨年に続き、今年もTTFC(東映特撮ファンクラブ)にて配信が開始された、『仮面ライダーゼロワン』に登場する社長・天津 垓(アマツ ガイ)と、『仮面ライダーエグゼイド』に登場する社長・檀 黎斗(ダン クロト)の社長コラボ第2弾。
しかも今回は、タイトルを見て、「ん?」と2度見をしてしまうファンは少なくなかったはずだ。
「スマートブレイン」
それは、平成1期の名作『仮面ライダー555』に登場したあの組織。
2人の社長とスマートブレインがどう絡むのか?
最後までおつきあいいただければ幸いである。
キャスト
ここではキャストをご紹介する。ウィキペディアに記載のある方についてはリンクを貼っておくので、他の参加作品も是非チェックしていただきたい。
なお、以下で使用している画像は全て『仮面ライダーゲンムズ スマートブレインと1000%のクライシス』から引用している。
檀 黎斗/仮面ライダーゲンム
天津 垓/仮面ライダーサウザンドアーク
厘
アークの声
スマートクイーン
天ヶ崎 恋
檀 黎斗、ヒューマギアとして復活
天津 垓が新たに用意したプログライズキー。それが「幻夢コーポレーション社長」のプログライズキー。
とてつもなくピンポイントだが、こんなものを作ったのには、きちんとした理由があった。
それは、檀 黎斗を蘇らせること。
人工知能アークが予測した新たな脅威に備え、なんとか黎斗の力を借りたいということらしい。
ちょうど1年前、『仮面ライダーゲンムズ -ザ・プレジデンツ-』で、世界一ねっとりした親子げんかに巻き込まれながらも、社長として自らの会社に対する愛を隠さなかった黎斗に感銘を受けたということなのだろうか。
これをヒューマギアにラーニングさせることで、きっと黎斗は蘇る。
途中、幻夢コーポレーションの社長は社長でも、まさかの天ヶ崎 恋が出てきてしまう、といったトラブルはあったものの、それでも最後には目論み通り、黎斗が復活する。
しかし復活した黎斗は、垓の言葉に耳を貸すこともなく、睡眠も食事も不要となったヒューマギアの特性を活かし、全ての時間を自らの仕事に注ぎ込もうとする。
ところがここでアクシデントが起きる。充電が切れてしまうのである。
出かけた先の公園で、充電が尽きて機能停止。動作を停止する直前に懐から取り出したのは、愛する父・檀 正宗の写真(遺影)。いったい、いつ入れたのか。しかも尋常なデカさではない。
公園で動けなくなっているところを、厘に救われるのだが、充電はまさかの電気自動車用給電設備。
ヒューマギアの汎用性の高さを思い知る。
天ヶ崎 恋のムダ遣い
今回、特別ゲストとして『仮面ライダーエグゼイド』に登場した天ヶ崎 恋(アマガサキ レン)が降臨。
2022年4月1日、TTFC(東映特撮ファンクラブ)にて、あたかも、天ヶ崎を主人公にしたスピンオフが誕生するかのように発表されたが、これは毎年恒例となった、TTFCのエイプリルフールネタ。
実際には、垓が黎斗を蘇らせようと、ヒューマギアに幻夢コーポレーション社長のプログライズキーを使った際に、「幻夢の社長はボクだ」と登場。
確かに天ヶ崎は、『エグゼイド』本編で黎斗が消滅した後、CEOとして幻夢コーポレーションを受け継いだ男。幻夢の社長を名乗ることは間違ってはいない。
しかし、垓からすれば、社長は社長でも社長違いという、まるでバグのような存在。その正体が「ラヴリカ・バグスター」だった天ヶ崎の落としどころとしては、これ以上のものはない。脚本家・高橋悠也さんの力を再認識する。
なかなか目覚めない黎斗の様子を確認しようと電脳空間に潜った厘の前に現れた天ヶ崎は、バラの花束と共に、お決まりの座右の銘「世界中に I LOVE YOU」を決めてみせる。
しかし、すぐに黎斗が現れ、天ヶ崎は退場。天ヶ崎のムダ遣いという感じもないわけではないが、「ボクの方が顔面偏差値が高い」と、黎斗の1.5倍はありそうな大顔の天ヶ崎が吠えながら消えていくシーンは、いかにも天ヶ崎らしい、とも言える。
登場時間は極小ながらも、小手さんの怪演もあいまって、その爪痕は深く残る。思えば、小手さんはこの作品の後、大人気の海外ドラマ『SUITS』の日本版でも見事な怪演を見せていた。
『SUITS』は私も一時期ハマっていたので日本版も見たのだが、キャラとして違和感を感じなかったのは小手さん演じる蟹江 貢(カニエ ミツグ)だけだったように思う。
蟹江の元となったルイス・リットというキャラが持つ、豚骨ラーメンのスープを煮詰めたようなとびっきりの濃さをしっかり料理していた。というか、キャラが恋の延長線上と言えなくもないのだが、こういった嫌らしい自信家をユーモアたっぷりに演じさせたら、小手さんは上手い。
新たな敵はZEIN
本作でもっともドキッとしたのがこの設定である。
新たなる謎の敵「ゼイン」。それは人類のあらゆる善意をラーニングした超知能で、どんなに些細な悪意も見逃さないらしい。
これを聞いて「善意が何故、人類の脅威になる?」と問いかける黎斗だが、この些細な悪意というのは、そこかしこに転がっているし、おそらくは誰もが日常的に抱いているはずだ。
例えば、周りを笑わせようとして、誰かをイジることなども、これに当てはまるだろう。周りを笑わせたい、という想いは決して悪いものではない。しかし、その手段として、自らを貶めるのではなく、誰か他人を笑いの種火にしようという行為には、少なからず悪意が見え隠れする。少なくとも、100%善意ではないはずだ。
それに、善意のつもりでやっていることが、実は悪意によるものということもある。
例えば、SNSで日常的に行われている誹謗中傷。
それらのほとんどは悪意に満ちたものだが、中には善意であることを盾にして行われるものもある。
正義感や倫理観といった「正しさ」を掲げ、反論の余地を奪って投げつける言葉は、身動きを取れなくしてから完膚なきまでに叩きのめすのに似ている。
これは結局のところ、善意を盾にした悪意だ。本当にその人のやっていることを悪いことだと糾弾したいだけなら、人前ではなく、DMなどで直接苦言を言えば良いのである。
劇中で具体的には語られていないので、どこからが悪意なのか? という明確な境界線はわからない。しかし、微塵も悪意のない行為というのが、果たしてどれほどあるのか? と考えると、それほど多くはないような気がしてしまう。
だから、どんなに些細な悪意も見逃さないゼインが、「やがて人類そのものを抹消しようとするだろう」という予測は荒唐無稽とは言えない気がするのだ。
そんなゼインに対抗できるのは、目的のためなら、悪の力をも行使できる仮面ライダーのみ、という展開は、お約束ではあるけれど、仮面ライダーの出自がダークヒーローであることを思い出させてくれて、熱くなる。
サウザンドアーク
本作にはふたりの新ライダーが登場する。そのひとりが、このサウザンドアークである。
白と黒を基調とした中に、赤いラインが走っているというカラーリングは、『仮面ライダーゼロワン』に登場した「アークワン」のサウザー版。
「サウザンドライバー」ではなく、「アークドライバーワン」を使い、そこに「サウザンドアークプログライズキー」をぶっ刺して変身するため、2つのキーを使って変身していたサウザーとは見た目は似ていても変身シークエンスはまるで別物となっている。
シンギュライズ! When the five horns cross, the THOUSAND ARK is born.
“Presented by ARK.”
「検索したところで、私の強さはラーニングできないぞ」とヒューマギアとなって蘇った黎斗に語った通り、その強さは本物。仮面ライダーゲンムに反撃の隙も与えず、まさに瞬殺してしまう。
しかし、悪意をラーニングし尽くした超知能・アークと融合しているだけに、垓の心身にはかなりの負担がかかっている様子。それを抑え込んでいるのは、アークを生み出してしまったことに対する贖罪の念、ということらしい。
ゲンム無双ゲーマー
サウザンドアークに瞬殺されてしまうゲンムだったが、勝利を確信した垓の一瞬の隙をついて、ガシャコンバグヴァイザーでアークをラーニングしたことで生まれた仮面ライダーゲンムの強化フォーム。
『仮面ライダーエグゼイド』のファイナルフォームである「ムテキゲーマー」のゲンム版といったデザイン。
そのモチーフは『ファイナルファンタジー7』のラスボス・セフィロスとも言われている。
「幻夢無双ガシャット」をゲーマドライバーに差し込むことで変身する。
幻夢無双!
「グレード無双…変身!」
無双ガシャット!
ガッチャーン!無双レベルアップ!掴み取れ栄光のエンディング!漆黒の天才プレジデント!グレード無双ーゲンムゥー!
「このエンディングが、君に予測出来たかな?」
この変身ポーズから、ネット上では「キュアゲンム」などと揶揄されている様子だが、その強さは本物。笑い事ではない。
つい先ほど、手も足も出なかったサウザンドアークをものともせず、必殺技の「ゲンムクリティカルフィナーレ」で粉砕してしまう。
しかも、その必殺技とは別に、父・正宗が変身する「仮面ライダークロノス」のように、時間を停止する能力も持っている。「父と私の愛の結晶」という表現は、何かいけないことを想起させるが、最強フォームとしてはふさわしい。
それにしても、『エグゼイド』の頃から感じていたが、このライダー史上に残る珍デザインは、エグゼイドのカラーリングで見るとピンと来ないのに、ゲンムのカラーリングになった途端にカッコよく見えてしまうのは本当に不思議。
ムテキゲーマーなど、悪い冗談だとばかり思っていたが、この幻夢無双ゲーマーでは、これはこれでアリのような気もしてしまう。
スマートブレインの影?
タイトルに「スマートブレイン」という単語が登場しているが、これはもちろん、『仮面ライダー555』に登場した、いわゆる悪の秘密結社的企業のこと。
『555』自体は、名作『仮面ライダー4号』で完結しているはずだが、ここでまたスマートブレインという名を目にするとは思っていなかった。
しかし、本作の中でスマートブレインという名が語られることはない。
ラストシーンで、おなじみのスマートレディが意味ありげに登場するだけ。
しかも、キャスト欄をご覧いただければ、おわかりの通り、スマートレディはまさかのあの人。
何故、彼女が? そして、電話の相手は誰なのか?
様々な謎を残しつつ、物語は幕を下ろす。
え? これで終わり? そんなワケないよね??
おそらくはゼイン誕生の裏にスマートブレインの存在があるということなのだろうが、こんな中途半端な状態で終わらせてもらっては困る。
是非とも続編を近日中に公開していただきたいと切望し、筆を置くことにする。
本作はTTFC(東映特撮ファンクラブ)会員限定で無料配信中となっている。ご興味があればそちらをご確認いただきたい。
それでは、ここまでお読みいただきありがとうございました。
\ 僕と握手! /