2009年2月15日放送『侍戦隊シンケンジャー』第一幕「伊達姿五侍」(監督:中澤祥次郎 脚本:小林靖子)
スーパー戦隊初の「侍」モチーフ(意外・・・)。
歴代スーパー戦隊の中で第1位とする人も多い人気作。人気俳優・松坂桃李さんの初主演作としても知名度は高い。
数々の名作を手がけてきた小林靖子さんをメインライターに据えて描かれるスーパー戦隊シリーズ第33作『侍戦隊シンケンジャー』の第一幕をレビュー。最後までおつきあいいただければ幸いだ。
キャスト
ここでは第一幕のキャストをご紹介する。
ウィキペディアに記載のある方についてはリンクを貼っておくので、他の参加作品なども是非チェックしていただきたい。
なお、以下で使用している画像は全て『侍戦隊シンケンジャー』から引用している。
シンケンレッド/志葉丈瑠
シンケンブルー/池波流ノ介
シンケンピンク/白石茉子
シンケングリーン/谷 千明
シンケンイエロー/花織ことは
丈瑠の父
流ノ介の父
野球少年
血祭ドウコクの声
骨のシタリの声
薄皮太夫の声
カゲカムロの声
日下部彦馬
ナレーション:宮田浩徳
“隙間”から這い出る者たち
「外道衆」
それが、本作における敵の名前である。
この世とあの世の狭間にある三途の川の住人で、六門船と呼ばれる船を根城にしているバケモノ。
あらゆる“隙間”(扉の隙間などの物理的なもの。喪黒福造の言う「ココロのスキマ」みたいなものではない)を出入口とし、この世とあの世を行き来する。
その目的は、この世を支配することだが、三途の川から離れると「水切れ」を起こし、身体が干上がってしまうため、この世では長時間活動することができないという弱点を抱えている。
三途の川は人間の苦しみによって水かさを増すため、人々を苦しめ、その水をこの世にまであふれさせることで、水切れの不安なく、この世を支配しようと企む。
その御大将(ラスボス)が、血祭ドウコク。全身は返り血を浴びたような赤。荒武者のような出立ちは、毘沙門天と伊勢海老がモチーフらしい。酒飲みで短気な性格は、見た目どおり。先代シンケンレッドに封印されたが、復活を果たし、今はその末裔に復讐心を燃やしている。正直に言えば、最初はラスボスではなく、脳筋の幹部かと思ったのだが、そうではなかった。スーツアクター・日下秀昭さんと、声優・西凜太朗さんによる“圧”がハンパなく、回を追うごとにラスボス感が増していった。
その脇を固めるのが、三味線引きの薄皮太夫と、参謀的な役割を果たす骨のシタリ。
薄皮太夫を演じるのは、スーツアクター・蜂須賀祐一さんと、声優・朴璐美さん。デザインモチーフは弁才天とウミウシなどの軟体動物らしい。三味線を持つ花魁ということもあるが、所作も声色も、妖艶の極みである。
骨のシタリを演じるのは、スーツアクター・大林 勝さんと、声優・チョーさん。デザインモチーフは福禄寿とイカ。着ぐるみに膝立ちで入ることで、背の低さを表現していたらしい。そのおかげで、大きな頭の軟体生物感も出ていたように思う。当時の子どもたちは、このシタリと『いないいないばあっ!」のワンワンが、まさか同一人物だなんて思いもしなかっただろう。
アヤカシ
スーパー戦隊における、いわゆる怪人が「アヤカシ」である。
記念すべき1体目は「カゲカムロ」。
赤い上半身は鎧武者、青い下半身は歯を剥いて笑う巨大な顔というデザインで、腰のラインで赤と青がグラデーションのように溶け合っている。武器は両手に持つ刀。声優は、飛田展男さん。『機動戦士Zガンダム』の主人公・カミーユ役で有名なあの人である。
アヤカシは二つの命を持っており、人間並の大きさである「一の目」で倒されても、「二の目」で復活し、巨大化するという流れ。スーパー戦隊おなじみの巨大ロボ戦用の設定である。
そして、おなじみといえば、戦闘員ももちろん登場する。
この禍々しくデザインされた戦闘員は「ナナシ連中」。劇中では度々「ナナシ」と呼ばれる。「名無し」という呼び名には、個体としての名前を持たないその他大勢、という意味合いを感じられる。とても良いネーミングだと思う。
5人の侍たち
シンケンジャーは、殿様と、4人の家臣で構成される戦隊である。
殿様は、志葉家十八代目当主・志葉丈瑠。
シンケンジャーのリーダーにして、火の力を操るシンケンレッドに変身する。5人共通の刀・シンケンマル以外に、烈火大斬刀と呼ばれる大剣を振り回す。これがリアル『モンスターハンター』みたいで、大迫力というか、常に「振り回すの大変そう」と思ってしまう代物。スーツアクターは、今やスーパー戦隊のアクション監督を務める福沢博文さん。
水の力を操るシンケンブルーは、池波流ノ介。
歌舞伎役者で、クソ真面目な暑苦しい男。その真面目さゆえに度々お笑い要員としても使われてしまう愛すべきキャラだ。固有武器として、ウォーターアローという弓を操るが、実は剣の腕に優れる。スーツアクターは押川善文さん。
天(風)の力を操るシンケンピンクは、白石茉子。
幼稚園で保育士をしていた。面倒見の良い姉御肌。固有武器はヘブンファンと呼ばれる扇。スーツアクターは人見早苗さん。
木の力を操るシンケングリーンは、谷 千明。
普通の高校生で、格ゲー好き。短気な性格だが裏表はない。固有武器はウッドスピアと呼ばれる槍。スーツアクターは竹内康博さん。
土の力を操るシンケンイエローは、花織ことは。
京都弁を話す最年少の妹キャラ。純粋で優しい反面、気が弱く、一歩引いてしまうところがある。身体の弱い姉の代わりにシンケンジャーになった。固有武器は、ランドスライサーと呼ばれる大型手裏剣。スーツアクターは橋口未和さん。
どこからともなく轟く太鼓と共に陣幕を持って現れる志葉家の黒子たち。その陣幕の中から着物姿に着替えた5人が登場。「そこまでだ、外道衆!」という丈瑠の口上から変身となる。
「一筆奏上!」のかけ声で空中に文字を書く。それぞれのマスクに書かれた文字、すなわち操る力である(丈瑠なら「火」という具合)。
その際に使うのが「ショドウフォン」と呼ばれる折りたたみ式携帯電話。
パッと見は、いわゆるガラケーに近いが、縦に折りたたむと筆モードとなり、本作のキーポイントとなる「モヂカラ」を使うためのガジェットとなる。
「モヂカラ」とは、書いた文字に生命エネルギーを注ぎ込み具現化する力。言霊のようなものと考えるとわかりやすい。
第一幕では、丈瑠が書いた「馬」という文字によって、目の前に『暴れん坊将軍』に登場するような白馬が現れるシーンがあった。
二の目によって巨大化したカゲカムロが出現した際には、5人それぞれが持つ「折神(オリガミ)」と呼ばれる手のひらサイズの動物型の式神に「大」の文字を書くことで巨大化し、カゲカムロを撃破する。
このモヂカラを使う侍が、シンケンジャーである。
変身後の口上では、「シンケンレッド。志葉丈瑠」と、変身後と変身前の名を順に名乗り、5人の名乗りが終わると、「天下御免の侍戦隊、シンケンジャー参る!」と決める。
これがめちゃくちゃカッコいい。変身した途端、名前を捨てたように変身後の名前だけ名乗るヒーローが多い中、仮面は被っても自身を偽ることはない、という堂々とした態度は、決闘前に名乗りを上げる侍のよう。おそらく、『NARUTO』などの影響で日本の漫画やアニメなどに興味を持ち、「サムライ」という言葉に惹かれる外国人の方にも、グサリと刺さる演出ではないだろうか。
その後のアクションも、侍らしく剣戟をベースにしており、なかなか新鮮。チャンバラ好きも楽しめる。
第一幕は、とりあえず倒すべき敵の姿と、5人が集まっての初変身、初勝利というところで終了する。
殿様と家臣という設定は、これまでのスーパー戦隊とは異なる、完全な上下関係。しかも、殿様である志葉丈瑠は、家臣たちに命令するどころか、戦いに巻き込むことに消極的だ。彼が抱えるものは何なのか? それはこれからの戦いの中で明らかになって行くだろう。
伊吹吾郎さん(『水戸黄門』の格さん)をはじめとするベテラン勢が脇を固める布陣も最高。名手・小林靖子さんの描く物語にも期待大である。
余談だが、最初にサイキックラバーが歌う主題歌を聴いた時、「レッツ武士道 勝負しよう」の一節が「目潰ししろ 勝負しよう」と聴こえて、どれだけ卑怯な侍道だよ、と疑問に思っていたのは内緒だ。
それでは、ここまでお読みいただきありがとうございました。
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