破壊されたゴーカイジャーの旗艦・ゴーカイガレオンをバックに始まる、『海賊戦隊ゴーカイジャー』10周年を飾る完全新作『テン・ゴーカイジャー』。
2021年12月3日から2022年2月28日までの期間中、TTFC(東映特撮ファンクラブ)にて、7日間1,600円(税込)で視聴可能となっている。
10周年が、ちょうどスーパー戦隊45作品目の年と重なるというダブルアニバーサリーイヤーということもあって、かなり話題になった作品であるわけだが、果たしてその完成度は? 視聴して感じたことを率直にレビューします。どうぞ最後までお付き合いください。
スタッフ・キャスト
ここでは主要スタッフとキャストをご紹介します。ウィキペディアに記載のある方はリンクを貼っておきますので、他の参加作品も是非チェックしてみてください。
【スタッフ】
監督:中澤祥次郎
脚本:荒川稔久
アクション監督:おぐらとしひろ
音楽:山下康介
【キャスト】
キャプテン・マーベラス/ゴーカイレッド:小澤亮太
ジョー・ギブケン/ゴーカイブルー:山田裕貴
ルカ・ミルフィ/ゴーカイイエロー:市道真央
ドン・ドッゴイヤー(ハカセ)/ゴーカイグリーン:清水一希
アイム・ド・ファミーユ:小池 唯
伊狩 鎧/ゴーカイシルバー:池田純矢
ナビィ(声):田村ゆかり
益子田昭郎:細貝 圭
松本寛也:松本寛也
クリスタリア宝路:庄司浩平
リングアナ:関 智一
子ども:大場心温 ・ 高橋 仁
おじいさん:古川がん
おばあさん:香川のの
カレー屋店主:加藤パーチク
丹羽野将年:川野快晴
服部/バッドリー(声):松原剛志
綾小路/レム(声):坂田梨香子
堀内/アグダロス:吉田メタル
国防大臣:山崎 潤
【エンディングテーマ】
「スーパー戦隊ヒーローゲッター〜テン・ゴーカイジャーver.〜」歌:Project.R
スーパー戦隊ダービーコロッセオ
10年前、ゴーカイジャーたちによって、ザンギャックの手から守られた地球では、「スーパー戦隊ダービーコロッセオ」というギャンブルが大ブームを巻き起こしていた。
これはゴーカイジャーではお馴染みのアイテム「レンジャーキー」を元に、スーパー戦隊の戦士たちを実体化し、互いに戦わせ、その勝敗をギャンブルの対象とするもの。例えば、同じ忍者モチーフの戦隊であるハリケンジャーとニンニンジャーを戦わせたら、どっちが強い? といった夢の対決がカンタンに実現するということだ。
しかも、レンジャーキーを元にしているだけなので、勝とうが負けようが、戦士たちが実際に負傷したり命を落とすことはないという画期的なもの。何度でも対戦させられるという意味では、ほぼゲーム感覚だ。
年齢も国籍も関係なく参加できる。しかもどうやら賭けるための最低金額も存在しないというこのギャンブルに世界中が熱狂。1つのバトルで何十億円もの巨大なお金が動いていた。
このシステムを開発したのが、国防省の丹羽野将年。
彼に協力したのはゴーカイシルバーこと伊狩 鎧である。10年前のイメージそのまま。どこか、香取慎吾さんを彷彿とさせる屈託のない笑顔。
鎧は、システムの構築というよりは、スーパー戦隊の先輩後輩から、その力を宿したレンジャーキーを集めるという役割だったようだ。伝統ある学校の卒業生の繋がりみたいなもので、こういうのは、なかなか断れない。
しかし、ギャンブルに利用するためにスーパー戦隊の力を宿したレンジャーキーをカンタンに貸すものだろうか? と疑問に思っていたら、ギャンブルとは言え、その収益の80%は世界平和のため(具体な事例は示されない)に使われ、スーツなどのメンテナンス費用もその収益の中で賄うというのだから、戦隊ヒーローたちにしても、大切なレンジャーキーを貸すだけのメリットはあったのだろう。
この戦いの解説をするのが、『ゴーカイジャー』でキャプテンマーベラスの宿敵、バスコ・タ・ジョロキアを演じていた細貝 圭さんの新キャラ・益子田昭郎(マスコタ・ショウロウ?)と、スーパー戦隊親善大使の松本寛也さん(本人)。完全にネタ枠だ。
さらに、『ゴーカイジャー』の各種ボイスを担当していた関 智一さんがリングアナを務めるというのも、なんとも豪華。元ネタを知っている人ほどクスッと笑えるのは、記念作品らしくて素敵。
マーベラス100人抜き
「魂すらないヤツに負けるわけねえだろ」
初戦、『鳥人戦隊ジェットマン』のブラックコンドルを倒したキャプテンマーベラスが呟く。左目には眼帯。『ワンピース』のゾロを例に挙げるまでもなく、片目が潰れるのは強さの象徴だ。どうやら地球の平和を守り続けてきたレジェンドヒーローたちが、例え抜け殻のようなものだとはいっても、金儲けの道具に使われていることに納得いかない様子。
これは、ルカの手によって捕らえられた1億円の賞金首・キャプテンマーベラスに、大臣の腹心・服部が持ちかけた賭けだった。
マーベラスがスーパー戦隊100人を相手に勝ち抜けたなら、国防省が管理するレンジャーキーを全て渡す。つまり、ギャンブルは終了。しかし、マーベラスが負けたら、ゴーカイレッドのレンジャーキーを国防省に差し出さなければならないという約束である。バトルロイヤルではなく、勝ち抜け方式とはいえ、歴戦の勇者たちと1対100とは、まさに絶体絶命だが、冒頭の言葉の通り、その後もマーベラスは意地を見せる。
しかも素面。
変身して人間以上の能力を発揮しているはずの歴代戦隊ヒーローたちを相手に、素面でザクザク斬り刻み、銃で撃ち倒す。これでいいのか? 戦隊ヒーロー。しかも、マーベラスが勝ち進むたびにブーイングを送る観衆。まさに四面楚歌。誰もがこのギャンブルの継続を望んでいるようだ。
99人目となる『ジャッカー電撃隊』のビッグワンもぶっ倒すと、100人目に登場したのは、まさかの鎧。流石にここではお互い変身して戦うのだが、開始直後は素面でのアクションを繰り広げる。2人ともなかなか華麗である。
しかし、実力の差は歴然。最後はマーベラスが勝利と思いきや、国防大臣の側近の一人・綾小路が不思議な力で妨害し、その隙を突いて鎧が勝利する。
マーベラスの敗北を喜ぶ観衆の声が鳴り響く中、レンジャーキーを渡せと迫る綾小路。そのマーベラスを救ったのは、アイムだった。ルカ同様、あの頃の可愛らしさはそのままに、この10年でグッと大人の女性の雰囲気を身につけた様子。
逃げ出す2人を捕らえようと、綾小路はスーパー戦隊実体化システムを起動し、戦隊ヒーローたちを刺客にするが、それを見た鎧と丹羽野は、そんなことのためにスーパー戦隊の力を使うなと大臣に詰め寄る。大臣が「世界を守るためだ」と一蹴する様子は、まるでどこかの国の自衛隊の話みたいである。
「そんなの拡大解釈だ!」と、これまたどこかで聞いたような反論をぶつける鎧と丹羽野は、共に監禁されてしまうのだった。
あのときの少年
鎧と丹羽野は、囚われた拘置所でドン・ドッゴイヤーと再会する。ドンも多少貫禄は出たものの、ほとんど印象が変わらない。ドンが仕掛けた盗聴器で、国防大臣の目的が、スーパー戦隊の力を使って銀河を征服することだと知った2人は愕然とする。側近の3人もグルの様子。
ドンが囮になった隙に逃げ出した鎧と丹羽野は、綾小路によって放たれたスーパー戦隊レジェンドたちの追手をかわす中、ジョーによって窮地を救われる。ジョーもまたあの頃と印象が変わらない。1番イメージ通りなのはこの人かも。
マーベラスとアイムに合流することができた2人だったが、スーパー戦隊実体化システムを作り上げた丹羽野は、世界平和のために作り上げたものが、個人の野心を叶えるために使われていたという事実にショックを受けていた。こんなに薄汚い人間たちのいる地球を守る価値なんてあるのか? と問いかける丹羽野に、マーベラスは「あるさ」と即答。
「どこにあるんですか?」と再び問いかける丹羽野に「どこにだってあるさ。そんなものは、自分で見つけろ」と返すマーベラス。
実はこのやり取り、10年前に放送された『海賊戦隊ゴーカイジャー』第2話「この星の価値」で、とある少年(演:泉 大智)が、マーベラスに「この星(地球)に守る価値があるか?」と聞かれた時のやり取りそのまま。「どこにある?」と聞くマーベラスに「どこにだってある!海賊なら、自分で見つけろ!」と噛み付いたあのときの少年が、10年経った今、こうして自分なりのやり方でこの星を守ろうとしていたのだった。
本当は、あのときの少年を演じていた泉さんがそのまま演じてくれたなら、さらに感慨は増したのだろうけど、そうしなかった(できなかった)理由がきっとあるのだろう。いずれにせよ、10周年記念作品として、当時のファンも新規の視聴者も唸らせる展開である。
この後、側近たちが実は宇宙人(バクート海賊団)であったと暴かれ、窮地に陥った国防大臣が「これさえあれば・・・」とスーパー戦隊実体化システムに縋り付こうとするところを、「スーパー戦隊の魂です。あんたの野望の道具じゃない!」とぶん殴る。こうして山崎さんが殴られるのを見ると、『仮面ライダーアギト』を思い出す。
それにしても、この山崎さんに限らず、側近たちの正体を暴くアイテムを奪った相手がキラメイシルバーだったり、側近の綾小路を演じているのは『仮面ライダーフォーゼ』の風城美羽だった坂田さんだったりと、東映特撮ファンなら「おっ!?」と思うネタがあちらこちらに転がっているのは流石だ。
変わらないのに特別感を増した変身
そして、ゴーカイジャーといえば、この登場シーンである。
あの懐かしい、山下康介さんの手による、なんとも勇ましい楽曲をバックに、6人が並んで歩いてくる。まるで『Gメン』。
ゴーカイジャーの変身アイテム・モバイレーツにレンジャーキーを挿して、「ゴーカイチェンジ!」のかけ声で変身。いつもなら、ボディスーツ、マスクの順に装着されたところで各メンバーの名乗りが入るのだが、今回は特別仕様。ボディスーツだけ装着した全員が吹き替えなしで名乗りを上げ終わると同時にマスクオン。
「海賊戦隊ゴーカイジャー!」
今回の敵であるバクート海賊団は、過去にゴーカイガレオンを沈めたという、ゴーカイジャーにとっては、まさに因縁の敵。
ルカとアイム、ドンと鎧、マーベラスとジョーという3組のペアとなって、お馴染みのバディアクションを駆使して戦う。武器である銃と剣の一方をお互いに交換して、二刀流と二丁拳銃で戦うところが個人的にはとても好き。「ド派手に行くぜ!」のかけ声の通り、胸の空くようなアクションが繰り広げられる。
なお、このシーンではないが、『ゴーカイジャー』らしく、他の戦士たちへの変身ももちろん見られる。2017年以降に放送された『キュウレンジャー』から『キラメイジャー』まで(最新作の『ゼンカイジャー』はお預け)登場するのもファンには嬉しい。
ところで、このラストバトルでは、アグダロスを演じる吉田メタルさんが、メイクはしているが吹き替えなしの素面(?)アクションを見せてくれている。脳筋キャラなので、華麗な空中戦などは無いのだが、その代わり、見るからに重そうな金棒をぶん回す殺陣は大変そう。今や東映特撮には欠かせない役者さんである。
ゴーカイガレオンの大いなる力
戦いの最中、ジョーが持っていたゴーカイガレオンのクリスタルの欠片が輝き出し、ガレオンのミニチュアキーとなる。
これを使うことで、ゴーカイジャーにガレオンの力が宿り、パワーアップ。
ルカには左脚に、アイムには右脚にロケットランチャーのような武装が追加される。それぞれ、海賊の剣と砲弾を撃ち出すことができるこの武装で、レムを倒す。
ドンは左腕にキャノン砲が追加される。鎧には何もなしだが、2人のコンビネーションでアグダロスを倒す。
ジョーは右腕に巨大なクロー、マーベラスは身体にガレオンの船体を象ったアーマーが装着され、バッドリーを追い詰める。
最後は、それら全てのガレオン装備をてんこ盛りにしたマーベラスによる必殺技・ファイナルガレオンストライクでトドメ。
巨大ロボ戦はなかったが、その代わりにゴーカイガレオンまで含めたゴーカイジャーオールスターズ(この時点でナビィはいないが、最後は再会を果たす)で戦いの幕を下ろすところが粋である。そうして最後は、変に感傷的になるわけでもなく、本当にあの頃の『ゴーカイジャー』のノリのままエンディングを迎える。だが、それがいい。ディ・モールト(非常に)良い。
スーパー戦隊ヒーローゲッター(2021)
エンディングテーマも、10年前、『ゴーカイジャー』で使われていた「スーパー戦隊ヒーローゲッター」の最新バージョンとなっている。当時は『ゴーカイジャー』以前の『ゴレンジャー』から『ゴセイジャー』までの34戦隊を盛り込んだ歌詞になっていたが、その後、『ジュウオウジャー』まで収録された2016年バージョンが登場。そして今回、『ゼンカイジャー』までの45戦隊を収録したバージョンとなったのだ。ストリングスをこれでもかと使って、ことさらにセンチメンタリズムに訴えかけるような、ありふれたバラードなどではないのが良い。
全体を通して、既存のファンだけでなく初見でも楽しめる内容となっていると感じた。本作をきっかけに『ゴーカイジャー』の視聴(再視聴も含む)を開始する人も多いのではないかと思う。その際には「TTFC(東映特撮ファンクラブ)」がオススメだ。
それでは、ここまでお読みいただきありがとうございました。
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