平成が終わり、令和が始まる。
そんな新時代の幕開けというタイミングでスタートしたのが『仮面ライダーゼロワン』だ。
ライダー人気を不動のものとした「平成ライダー」に引き続き、令和も変わらぬ人気を築けるのか? その試金石とも言える作品の第1話「オレが社長で仮面ライダー」をレビュー。
本記事では、第1話の感想と共に、物語を構成する基本設定も解説する。ネタバレはするが、詳細な筋書きまでは明かさない。
これから視聴しようかな? という方の楽しみも奪わない程度に留めておくので、最後までおつきあいいただければ幸いだ。
スタッフ・キャスト
ここでは主要スタッフとキャストをご紹介。ウィキペディアに記載のある方はリンクを貼っておくので、他の参加作品も是非チェックしていただきたい。
【スタッフ】
監督:杉原輝昭
脚本:高橋悠也
アクション監督:渡辺 淳
特撮監督:佛田 洋
音楽:坂部 剛
【キャスト】
飛電或人/仮面ライダーゼロワン:高橋文哉
不破 諌:岡田龍太郎
イズ:鶴嶋乃愛
刃 唯阿:井桁弘恵
迅:中川大輔
滅:砂川脩弥
シェスタ:成田愛純
山下三造:佐伯 新
ザット(声):日高のり子
ナレーション:山寺宏一
飛電其雄:山本耕史
根津光国:金田明夫
腹筋崩壊太郎:なかやまきんに君
マギアナ:島本真衣(テレビ朝日)
係員ヒューマギア:大谷優衣
幼いアルト:中野遥斗
子供:梅垣然太
お笑い芸人:寺内ゆうき ・ 小林良行 (ランパンプス)
福添 准:児嶋一哉(アンジャッシュ)
飛電是之助:西岡徳馬
【主題歌】
「REAL×EYEZ」J×Takanori Nishikawa 作詞:藤林聖子 作曲:J 編曲:J×Takanori Nishikawa and DJ’TEKINA//SOMETHING
ヒューマギア
本作を語る上で絶対に外せないのが「ヒューマギア」と呼ばれる人工知能搭載人型ロボである。
『ゼロワン』の世界では、このヒューマギアが様々な現場で活躍している。
これは今さら言うまでもなく、未来では現実化している可能性の高い話である。災害などの危険を伴う現場で、人間の代わりができるロボットの有用性は高い。わざわざ人間がその身を危険に晒す必要がなくなることで、今までだったら飛び込むことを躊躇していたような場面でも飛び込んでいけるだろう。
しかし、問題は多い。まずはなんと言ってもコスト。人間と同様の作業ができるロボットの開発なんて、どれほどのコストがかかるというのだろう? さらに完成したからと言って、今度はその1体◯億円はしそうなロボットを、一人の人命のために捧げられる日など本当に来るのか? さらに、現場で故障することだってあり得るのだ。実際に量産化して有効活用されるのなんて、遠い未来の話としか思えない。
しかし、それらが既に人間社会に溶け込んでいるのが『ゼロワン』の世界である。パッと見、普通の人間と変わらない姿で。頭に装着したヒューマギアモジュールがヒューマギアの証だ。
この、一見人間にしか見えないというのが、SFではお決まりの設定だ。人間に近ければ近いほど視聴者は共感できる。スターウォーズならR2-D2よりもC-3POの方が共感しやすいだろう。人間らしい外観になればなるほど、この共感度は増す。
このヒューマギアをハッキングし、暴走させて人間を滅亡させようという組織が本作の敵・滅亡迅雷.netである。詳しくは後述するが、このハッキングされた状態を「マギア」と呼ぶ。
飛電インテリジェンス
このヒューマギアを作っているのが飛電インテリジェンスという会社である。
要するに、ヒューマギアというのは飛電インテリジェンスの商品名だ。
作中、他社製品というのは登場しないので、完全な独占企業だろう。
そんな飛電インテリジェンスの創立者である飛電是之助が亡くなったところから物語はスタートする。
是之助は遺言で、近い将来、ヒューマギアが何者かの手によって悪用されることを予言。その対抗手段として「ゼロワンドライバー」を用意し、新社長にのみ、その使用権限を与えるという。
その新社長に任命されたのが、孫である飛電或人だ。
飛電或人(ヒデン アルト)
本作の主人公。
自称「爆笑ピン芸人」のアルトとして活動する22歳だが、お笑いのセンスはゼロ。父・其雄(「ソレオ」と読む。ヒューマギアだった。人間でない理由は現時点では謎)の笑顔が見たいという夢が芸人を目指すきっかけだったが、全く売れる気配がない。
営業先の遊園地でも、まるで笑いをとることができないが、同じステージに立つお笑い芸人型ヒューマギア・腹筋崩壊太郎は観客に大ウケ。ついには支配人から解雇を宣告されてしまう。そこに現れたのが社長秘書を名乗るヒューマギアのイズだった。
イズ
社長秘書型ヒューマギア。
本作のヒロインである。
飛電インテリジェンスの社長のみが使えるという「ゼロワンドライバー」を、是之助の遺言に従い、或人に渡そうとする。
ヒューマギアのため、感情に乏しく、今は或人の意思を上手く理解することができないが、これから共に行動していく中で、成長していくことが見込まれる。
そして、なんといってもかわいい。ここ数作のライダーの中では間違いなくナンバー1である。たぶんに好みの問題だとは思うが、私はこれだけで1年は戦えそうだ。
腹筋崩壊太郎
お笑い芸人型ヒューマギア。
演じる、なかやまきんに君らしい筋肉ネタ。さっぱり面白さがわからないが、劇中ではバカウケ。
後に、滅亡迅雷.netの迅によって、「べローサマギア」へと変えられてしまう。
パッと見、カマキリっぽいが、「ベローサ」とは、「クジベローサ・テルユキイ」という昆虫の絶滅種がモチーフとなっているらしい。
和名は「クジコハクトガマムシ」。
岩手県久慈市で掘り出された琥珀の中に閉じ込められていたために「クジ」「コハク」。
「トガマムシ」というのは、現在はアフリカ南部のみに生息する虫らしい。
当初は日本初のカマキリの化石だと思われていたのだが、実は違ったとのこと。デザインがカマキリっぽいのは、そのためなのかも?
ちなみに学名の一部「テルユキイ」とは、昆虫大好き俳優の香川照之さんに敬意を表してのものだという。
今後も登場するマギアは、全て「絶滅種」をモチーフとしているようだ。
滅亡迅雷.net
本作の悪の組織が「滅亡迅雷.net(メツボウジンライネット)」。
迅(ジン)と滅(ホロビ)という二人だけの組織で、ヒューマギアによる人類滅亡を企むテロ組織である。
このマーク↑を見ると、少なくとも他に2人(「亡」と「雷」)は所属していそうな雰囲気だが、どうなのだろうか?
今回、滅は秘密基地のような場所で迅に指示を出すだけだったが、迅は笑顔で銃を撃つようなシーンも映し出された。
残酷さと無邪気さが同居する様子は、まるで子供のようである。
ちなみに、銃を撃った際に薬莢が飛び出すが、これは杉原監督のこだわりのようだ。自身もサバゲーをするらしく、銃器へのこだわりがハンパではないらしい。小道具としては、撮影後に全て回収しなければならないので大変らしいが、こういう細部へのこだわりは、非現実の世界をリアルに見せるためには重要な要素だと思う。
夢
本作で大きなテーマとなっているのが「夢」である。
ヒューマギアを人類の夢だと語った祖父・是之助。
幼い或人に「夢に向かって飛べ」と言い残した父・其雄。
みんなの笑顔が見たいとお笑い芸人を夢見る主人公・或人。
そんな或人の前で、夢を蹂躙される遊園地の支配人。「私の夢が・・・」と嘆く支配人を嘲笑うマギアに、或人は「他人の夢を笑うんじゃねえ」と食い下がり、マギアを倒すため、イズから受け取った「ゼロワンドライバー」を装着。一度は断った飛電インテリジェンスの社長を引き受けることになる。
この初変身がめちゃくちゃ熱い。
ボロクソにやられても尚、他人のために立ち上がる姿。
起動したゼロワンドライバーからの信号を受け取った衛星ゼアから放出される一筋の光と共にかき鳴らされるギターサウンドは、今回変身音を担当するバンド”MONKEY MAJIK”によるものだ。これが鳥肌モノ。
マギアが投げたカマ状のビームを弾き、或人の周囲をズシンズシンと飛び跳ねる巨大でメカニカルなバッタ。ぶっちゃけ、マギアよりもこのバッタの方があちこち破壊している印象だが、そんな野暮を言うものではない。
ゼロワンドライバーにプログライズキーが挿入され、変身が完了。
クスッと笑えるような場面を所々に差し込みながら、スピード感あふれるバトルが展開する。中でも、主題歌「REAL×EYEZ」がバックに流れる中、爆風で宙を舞うバスの中をくぐり抜けて戦うシーンからフィニッシュまでの流れは圧巻だ。
アニメではわりとありそうだが、特撮では見たことがなかった感じ。この疾走感は病みつきになる。
今回ご紹介した以外にも、A.I.M.S(エイムズ)と呼ばれる政府特務機関も登場し、2号ライダー、3号ライダーとなる不破諌と刃唯阿も登場しているが、そちらは次回第2話のレビューで解説したい。
とにかく語りたいことが多すぎる『ゼロワン』第1話。よくある第1話としては、次回以降に期待を引っ張る、もったいぶった展開が多いが、本作においては第1話から作品の持つ魅力を出し惜しみすることなく見せてくれた気がする。そういった意味で、歴代ライダーの中でも第1話だけで言えばベストに近かったと思う。
むしろ、最初からこんなに飛ばして大丈夫? と心配になるほどだが、先述した2号ライダーたちの登場も、BGMとしては流れたものの、オープニングも現時点では未公開と、まだまだ楽しませてくれそうだ。
それでは、ここまでお読みいただきありがとうございました。
\ 僕と握手! /