2022年3月27日放送『仮面ライダーリバイス』第28話「怖れを超えて疾風迅雷!己を信じ一心同体!」(監督:石田秀範 脚本:木下半太)
父・元太が忘れていた過去や、3兄妹の生い立ちなど、折り返し地点を過ぎ、重大な秘密が次々と明かされている『リバイス』だが、中でも今回は、今後の展開を示唆する超重要な分岐点となった。
ライダーオタクの初変身、一輝とバイスの超進化、デッドマンズ3人の行方、そして五十嵐家のこれからなど。これだけの情報量を高々20分ちょっとの中で無理なく収めた手腕は恐るべきものだ。しかも、収めただけではなく、それぞれにそれなりの見応えがある、というのが素晴らしい。
以下、その見どころをおさらいしていきたい。最後までおつきあいいただければ幸いだ。
キャスト
今回のキャストをご紹介。画像は全て、仮面ライダーリバイスより引用。
五十嵐一輝/仮面ライダージャックリバイス
前田拳太郎
バイス/仮面ライダージャックリバイス(声)
木村 昴
五十嵐大二/仮面ライダーライブ
日向 亘
五十嵐さくら/仮面ライダージャンヌ
井本彩花
ジョージ・狩崎/仮面ライダーデモンズ
濱尾ノリタカ
アギレラ
浅倉 唯
オルテカ
関 隼汰
玉置 豪
八条院蔵人
ベイル(声)
津田健次郎
狩崎真澄(声)
藤 真秀
伊良部正造
西郷 豊
赤石英雄
橋本じゅん
五十嵐幸実
映美くらら
五十嵐元太
戸次重幸
ついに変身!ジョージ・狩崎
ライダーオタクで天才科学者というかなりマッドな設定のジョージ・狩崎。
そのジョージ・狩崎を演じる濱尾ノリタカさんもまた凄い。『仮面ライダークウガ』と同じ年に生まれた濱尾さんは、ライダーオタクのお父さんから「クウガ坊や」と呼ばれて育ってきたらしい。まさに生粋。生まれながらに仮面ライダーに愛された男である。
そんなガチの人が、他人に変身アイテムを開発するだけの役で満足できるの? と誰もが思っていたはずだが、ここに来てようやく魅せてくれた。
その前の説明台詞はちょい棒読みぽかったけれど、変身シーンは激アツ。濱尾さんが愛して止まない『クウガ』の変身ポーズをオマージュ。
「ダディ、アンタを超えてみせる!」という台詞には、父・狩崎真澄を超えてやるというジョージの想いと、もう一つ、失礼な言い方を承知で言えば、ライダーオタクでしかなかったお父さんに対し、仮面ライダーに出演し、ついには変身までする濱尾さんの、「これから本物のライダーになるからな!俺はついに、あなたを超えるんだ!」というダブルミーニングにも受け取れた。
これで、3人目のデモンズが誕生したワケだが、待て待て。ベイルが消えた今、そのドライバーに悪魔はいないのに変身できるのかい? などという考えが浮かぶが、そんな小せえことはどうでもいいのだ。
今は、同じライダーを愛する仲間として(勝手に仲間意識を持ってしまってゴメンだけど)、濱尾さんの初変身を心から祝福したい。
そして、スーツアクター・寺本さんがまた凄い。これで3人目となるのだが、ヒロミでもオルテカでもなく、きちんとジョージらしい仕草を見せてくれる。
アクションは、これまでの2人よりもスパイダーマンぽいというか、糸を使ってのトリッキーな動きが多かった。
初変身にして、それなりの動きを見せる狩崎に「カリさんすごい!」と驚きの声を上げるさくらに、「鍛えてるからね」と答えるところは、『響鬼』を意識した台詞だろうか。
それに対し、オルテカは、アノマロカリスバイスタンプとギフの棺との融合によってアノマロカリス・デッドマンへと姿を変える。初のフェーズ4となる強力なデッドマン。戦闘能力の高さは折り紙付きだが、ギフの修復機能を備えたことで、どんな傷もあっという間に塞がってしまう。ほぼ無敵だ。
デモンズも奮闘するが、どう頑張っても、オルテカに致命傷を与えることはできない。すると、身体に異変が起こり、変身解除。夢のようなひとときは、ほんの数分で終わってしまった。「慣れないことは、やるもんじゃないね」とつぶやくジョージ・狩崎だったが、そんなこと言わずにまたやって欲しい。その時は、ヒロミのデモンズと並び立つ新たなライダーとして是非。
一輝とバイス
暴走したバイスを止めるため、そして一向に姿を現さない一輝をサルベージするため、ジョージ・狩崎が持ってきたのはサンダーゲイルバイスタンプだった。
デモンズとジャンヌの二人がかりでジャックリバイスの動きを一瞬止めた隙にホーリーライブがサンダーゲイルバイスタンプを押印。その途端、ジャックリバイスはフリーズ。精神世界の中で、一輝の葛藤が始まる。
一輝の目の前に現れたのは「しあわせ湯」。しかし入口をくぐると、そこはラーメン屋の暖簾がかかっていたり、神社の鳥居が立っていたりと、異世界感満載。どこか、『千と千尋の神隠し』を思い出させる世界観だと思ったら、そういえばあの作品も、湯屋が舞台だった。意識したのかどうかは知らんけど。
そこには一輝の家族たちがいるが、母・幸実は一心不乱に床掃除。大二は飛行機の模型を使って子どものように遊び続けており、さくらは大量のおにぎりを貪り食っている。誰も一輝の存在に気がついていない。しかも、銭湯ではギフテリアンたちが汗を流しているというカオス。
ただ一人、一輝に呼びかけるのは、父・元太の身体を乗っ取ったベイル。
「バイスも家族も見捨てて、この世界で楽しく生きようぜ」と囁くベイルに、「楽しくなくとも、辛くとも、バイスと共に家族を守る」と宣言する一輝。すると、「ならば家族もろとも、地獄の業火に焼かれるがいい」と悪魔の微笑み。途端に周囲が暗転し、目の前には、自分と同じ顔をしたバイスが現れる。余談だが、このバイスのスーツを着た前田さんも人気出そうだ。
バイスにボコられながら、これまでのことを思い出す一輝。走馬灯のようなものだろうか。ひょっとしたら“死”すら覚悟したのかもしれない。その中で、バイスがこれまでどれほど自分を陰ながら支え続けてきてくれたのかに気づく一輝。
「これからは俺が、キミを守るよ」
涙ながらにバイスに剣を振るう一輝。その一太刀を微笑みながら受けるバイス。
二人の想いが一つとなったとき、ジャックリバイスは再び立ち上がる。
仮面ライダーリバイス爆誕!
この後に及んで「仮面ライダーリバイス爆誕!」と言われても、「は? そもそもこの番組のタイトルが『仮面ライダーリバイス』でしょ?」と混乱してしまうが、そもそも本作『仮面ライダーリバイス』の主人公ライダーは、「仮面ライダーリバイ」と「仮面ライダーバイス」の二人なのであって、タイトルにある「リバイス」が登場したのは、この第28話が初めてなのである。このスピード感は、1986年に放映された合体ロボットアニメ『超獣機神ダンクーガ』を彷彿とさせる(タイトルになっているダンクーガが姿を見せたのは、なんと第16話)。
満を持して登場したリバイとバイスの融合ゲノム「リバイス」。「ジャックリバイス」も融合してたじゃん、とも思うが、あちらはバイスがリバイを乗っ取ったものであって、完全に一心同体となった「リバイス」とは異なる。その証拠に、歴代ライダーの中でもトップクラスの力を持つジャックリバイスをさらに大きく上回る力を持つに至った。
仮面ライダーリバイス
パンチ力:69.8t
キック力:136.3t
ジャンプ力:88.4m
走力:1.2秒(100m)
必殺技:爆爆リバイストライク・必殺爆風爆雷スタンピングフィニッシュ
この能力は、ジャックリバイスの能力(パンチ力:58.4t、キック力:117.3t、ジャンプ力:85.1m、走力:1.4秒)を全て上回っているだけでなく、『仮面ライダージオウ』のグランドジオウや『仮面ライダーゼロワン』のゼロツーをも超えている(ジャンプ力や走力については劣る)というのだから驚くしかない。
ちなみに歴代最強は、オーマジオウ(2019常磐ソウゴ)である。これはパンチ力:108.3t、キック力:324.9t、ジャンプ力:240.6m、走力:0.1秒(100m)と、まさにぶっちぎり。えげつないほどのスペックである。
歴代最強とはいかなかったが、初変身のシーンは歴代最高クラスに熱すぎた。
まずはバイスタンプ。「サンダーゲイル」という名は、Thunder(雷)とGale(暴風)を合わせたものだろう。パソコンの排熱ファンのようなものを咥えたティラノザウルスらしいが、一輝がバイスと一心同体となった瞬間、そのファンが雷を纏った「ドラドタイフーン」というパーツにパワーアップ。
このデザインだけで、その強烈なポテンシャルは十二分に感じ取れるが、ポイントはそのネーミングである。「タイフーン」とは台風のことであるが、仮面ライダー1号の変身ベルトと同じ名前である。以前のレビューでも予想していた通り、これは仮面ライダー1号へのオマージュだ。実際、その後に続く変身ポーズは、1号ライダーのそれをモチーフとしている。
この展開だけで胸がいっぱいなのに、その直後、自らジャックリバイスの表皮を剥ぎ取り、仮面をむしり取る。一輝が自らの殻を破る瞬間。漆黒の悪魔の姿の中から光り輝くリバイスの姿が登場する様は、暗闇を切り裂く稲妻のよう。絶望的な状況を打開する希望の光に見える。
「一心同体!居心地どうだい?超ヤバいっす!豪雷と嵐でニュースタイル!仮面ライダー!リバイス!」
満を持して登場したリバイス。その姿だけは、何故か1ヶ月ほど前からニチアサ最後の「スーパーヒーロータイム」のシーンで映し出されていたので、特段驚きはなかったが、この変身シーンだけ繰り返し見ていたいくらいには好き。待機音として鳴り響く「Come on!サンダーゲイルGO!」もかなりカッコいい。リバイスは、各ライダーの初変身シーンが軒並みツボである。
その様子を見ても動じず、「悪魔と一体化か・・・貴様も俺と同じじゃないか」と嘲笑うオルテカに、「違うな・・・俺たちは悪魔じゃない!リバイスだ!」と挑みかかる。「お前は一線を超えた。もう許すことはできない」という台詞には、どこか聞き覚えがあるけれど、その元ネタを思い出す前に、次々と繰り出される攻撃と画面に走る稲妻のエフェクトに魅了されてしまう。
ラストは正しくライダーキック(スタンピングフィニッシュ)でキメ。
え? ギフと融合したオルテカがやられたら、ギフも終わりじゃん? ここで新たなラスボス登場? え? え?
捨てられし者たち
と、思っていたら、さらっとオルテカから分離して元に戻るギフ。ちゃっかりしている。
しかも、「世界は俺のもの」だとか、「ギフ様をも超える」などとイキっていたオルテカを捕らえ、そのままお召し上がりになってしまう。調子に乗った者の末路としてはふさわしい。
しかし、誰もが嫌悪感を持っていたであろう名悪役・オルテカを失ったことは少し残念だ。やはりヒーローには、視聴者が共感できる“戦う理由”が必要なのだ。でなければ、ライダーキックもライダーパンチもただの暴力になってしまう。だから、悪役の存在は重要である。観ているだけで、「こいつ許せねえ」「憎たらしい」といった感情を抱ける悪役というのは、まさに必要悪だ。
むかーしむかし、『仮面ライダー』に登場したゾル大佐を演じた宮口二郎さんは、サイン会に登場した際、子どもに蹴られたらしいが、こういった悪役がいるかいないかは、作品の出来を大きく左右する。そういった意味で、オルテカの存在は本当に大きかった。関さん、本当にお疲れ様でした。
また、ギフの花嫁になると言われていたアギレラは、一向に振り向いてくれないギフに「どうするんですか?!」と直談判するが、まさかのビンタ一発。
この時、ギフのビンタの向きとアギレラが頬を打たれて首をひねる向きが逆に見えるのはご愛嬌だ。
ギフに捨てられたアギレラは肩を落とす。そこに現れたのは玉置。久々に登場した途端、「アギレラ様を一人にはしません」と手を握り、肩を抱く。うらやま・・・しいと思ったファンは多いことだろう。
オルテカを捕食したギフは何処かへと飛び去ってしまう。アギレラを一瞥さえしない。
玉置の声も、さくらの声も聞かず、トボトボとどこかへ歩み去っていくアギレラに、「一人にしないで・・・」と涙する玉置。結局、一人になりたくなかったのは自分だった、ということだろう。
ギフに捨てられたアギレラ。ギフに喰われたオルテカ。アギレラに捨てられた玉置。
華やかな悪役として人気を獲得したデッドマンズの3人は、いつの間にか皆捨てられてしまった。オルテカだけは捕食されただけ、必要とされたと言っても良いのかもしれないが、それは栄養源としてであり、その存在自体はギフにとっては不要だったということなのだろう。
力に溺れ、悪魔を崇拝した者たちを待っていたのは、悲しすぎる末路だった。なんだか寓話のようである。
道を分つ者たち
バラバラになったのはデッドマンズだけではない。五十嵐一家も、それぞれに信じる道を歩み始めたようだ。
ギフを倒すため、ウィークエンドのために力を振るうことを誓ったさくら。拭い去れないフェニックスへの疑惑が原因だろうか。父・元太にギフの細胞を移植した狩崎真澄に対する怒りはあるはずだが、それでも、その父が一命を取り留めたからこそ、今の自分がある、という感謝みたいなものもあるのかもしれない。
フェニックスに残ることを決めたのは大二。赤石長官を前にして、組織の腐った部分を徹底的に排除する、と宣言する。内部から組織を改革しようとは、『踊る大捜査線』の室井さんみたいであるが、彼はまだ10代。つい先日まで、少し頼りなさの残るガラスの10代だとばかり思っていたが、急に、夜の校舎のガラスを割って回る尾崎 豊みたいな10代に変貌した。カゲロウを倒した影響だろうか。
父・元太は「白波純平」としての記憶を取り戻し、伊良部と共に家族の前からも姿を消す。彼の過去については、TTFCで第1話の配信が開始された『リバイスレガシー 仮面ライダーベイル』(全5話)で知ることができる。早速、第1話を視聴したが、めちゃくちゃ面白い。既に傑作の雰囲気を纏っている、というのは言い過ぎかもしれないが、毎週1話の配信なので、続きが気になって仕方がないのは事実だ。
そして、母・幸実と共にしあわせ湯を切り盛りする一輝。
こうして、いつも一緒だった五十嵐一家がそれぞれの道を歩み始めた。
出会いと別れ。3月も終わり、というこの時期にはぴったりな内容だった。
次回は、記憶を失い、それでも生きていたヒロミの記憶を取り戻すため、思い出ムービーを制作するらしい。シリアスな展開が続いてきたので、ここらで箸休めは必要だろう。いずれにせよ、ヒロミの生存が割と早い段階で確認されたのは朗報である。
それでは、ここまでお読みいただきありがとうございました。
\ 僕と握手! /