2022年4月24日放送『暴太郎戦隊ドンブラザーズ』ドン8話「ろんげのとりこ」(監督:加藤弘之 脚本:井上敏樹)
タイトルの「ろんげ」とは「ロン毛」のことだろうが、その「とりこ(虜)」とは、誰かがロン毛の異性に恋してしまう、という意味だろうか? と思って見始めたら、違うそうじゃない。言葉通りに「とりこ(虜)」であった、というお話。
スーパー戦隊というよりは、仮面ライダーにありがちな闇堕ちフラグが立ったドン8話を見どころを中心にレビューする。
最後までおつきあいいただければ幸いだ。
キャスト
ここでは今回のキャストをご紹介。本作初登場で、ウィキペディアに記載のある方についてはリンクを貼っておくので、他の参加作品も是非チェックしていただきたい。
なお、ここで使用している画像は全て『暴太郎戦隊ドンブラザーズ』より引用している。
桃井タロウ/ドンモモタロウ
樋口幸平
猿原真一/サルブラザー
別府由来
鬼頭はるか/オニシスター
志田こはく
犬塚 翼/イヌブラザー
柊太朗
雉野つよし/キジブラザー
鈴木浩文
五色田介人
駒木根葵汰
ソノイ
富永勇也
ソノニ
宮崎あみさ
雉野みほ
新田桃子
榊
島田惇平
若者
魔進鬼
今回登場したヒトツ鬼が魔進鬼。
魔進鬼
身長:195cm
体重:234kg
スキン:キラキラのメイジ
その名の通り、『魔進戦隊キラメイジャー』をモチーフとした鬼で、全身にクリスタルが散りばめられている。
巨大化した時のことを考えたら、「閃鬼(ヒラメキ)」という名前にしておけば「閃鬼ング(ヒラメキング)」という充瑠ネタも使えそうだな、とは思ったけれど、これまでの『ドンブラザーズ』を見ている限り、鬼の名前には、過去の『◯◯戦隊』の◯◯を入れるのがルールのようだし、後述するように今回は巨大化することもなかった。
画家・榊の「理想のモデルを描きたい」という欲望がエスカレートして誕生。画家や写真家なら、美しいものを描きたい(撮りたい)という欲望は常に持つものだろうけれど、そのモデルを拉致してまで絵に収めようとした榊は流石に行き過ぎ。鬼となっても仕方ない、という気がする。
この画家という設定は、キラメイジャーの熱田充瑠が絵を描いていたことに由来するものだろう。
その後の戦いの中では、クリスタルをきらめかせて戦う以外、キラメイジャーっぽいところは見られなかったし、同時進行で行われていたドンモモタロウとソノイの一騎討ちの影に隠れてしまった感もある。
このあたりは、ドラマパートに重きを置く『ドンブラ』の弊害と言えるかもしれない。
従来のスーパー戦隊らしからぬところ(取り立てて否定的な意味ではない)だ。
タロウとソノイ
今回はさまざまな出会いが描かれているのが特徴だ。
中でも、桃井タロウとソノイの出会いは特別だろう。
お互いに相手の名前も正体もわからないまま、2度も同じ場に居合わせてしまう、という偶然。これは偶然ではなく、必然というヤツだろう。ライバル同士がこうして顔見知りになる、というのは珍しい展開ではないが、いったい、いつ正体がバレるんだろう? といった今後が気になる鉄板の展開である。
1度目は、タロウが配達の仕事でクルマから離れた隙を狙ってやってきた3人の車上荒らしとトラブルになったところで。
2度目は、火事で逃げ遅れた人たちを救い出す場面で。
これらのシーンを見るに、ソノイたち脳人は、この世界を侵略しようといった、あからさまな敵対心は無さそうだ。
むしろ、求めているのは争いではなく、世界の安寧であるように見える。
度を越した人々の欲望こそが世界を滅ぼすと考えるがゆえに、それを憎む。
つまり、脳人にあるのは自らが信じる「正義」。
どちらかが正しくて、どちらかが間違っているというのではなく、どちらもお互いにとっては絶対的に正しいと信じているもの。
「正義」というよりは、「エゴ」に近いかもしれない。
「正義」も「エゴ」も、自分の行動基準としてだけなら、なんら問題は無さそうだが、他人に押し付けたら、どちらも大差なく迷惑となる。
この、お互いが信じる「正義」のために戦う、といった図式は、『仮面ライダー龍騎』を彷彿とさせる。
こういった点を見ても、今までのスーパー戦隊らしからぬシナリオだと感じるが、これも否定的な意見ではなく、むしろ個人的には歓迎している。
ソノニと翼
あいかわらず、「愛とは何か?」を知りたいソノニは、街で逆ナンを仕掛けるが、その答えは見つからない。
その声をかけた相手にしつこく付きまとわれているところを、犬塚 翼に助けられる。
いや、実際には、しつこくつきまとう男に制裁を加えようとしたところで、翼が割って入ってきただけなのだが、それがきっかけでソノニと翼はオープンカフェでしばし語り合うことになる。
のっけから「愛が知りたい」と迫るソノニに、「愛を知りたいなら、誰かを愛することだ」と切り返す翼。
美女を前にしてもなお、「俺には大切な人がいる。他の女に興味はない」と言い切る翼が男前だ。
その「大切な人」のために指名手配までされて、1年間の逃亡生活を受けて立っているのだから、それも当然といえば当然だが、なかなか言える台詞ではない。
これによって、今後、ソノニが翼に対して興味を持つのか、他の『ドンブラ』男性メンバーにも同様の問いかけをしていくのかは不明だが、これからも楽しみなやりとりではある。
みほと夏美
オープンカフェで犬塚 翼を見かけたのは雉野つよし。
立て篭もりの時以来の再会である。
お互いに、自らの愛する人(みほと夏美)のことを自慢し合うふたり。
話だけ聞いていても、同じような雰囲気を持った女性であるようだ。
それもそのはず。前回はチラ見せ程度だったが、やはり、このふたりが愛するふたりの女性、雉野みほと夏美は、新田桃子さんの一人二役。
これだけでもトラブルの火種となりそうなのに、そうとは知らない雉野は、自宅に翼を招待する。
みほの手料理を食べさせたい、という軽い気持ちで誘ったは良いものの、肝心のみほは、いつもならとっくに帰宅する時間になっても戻らない。
実はこの時、みほは妄執に囚われた画家・榊に拉致されていた。
こんなに早いタイミングで、翼とみほが出会ったら、どうなっちゃうの?? とハラハラして見ていたのも束の間、ふと冷静になった翼は「大して親しくもない人の家に上がり込んでしまうとは俺らしくもない」と帰ってしまう。
その帰路、榊の隙を見て逃げ出してきたみほとすれ違うが、お互いにそのことを認識はしていない。
みほと夏美は同一人物なのか? 翼とつよしの関係はどうなっていくのか?
いかにもドラマティックな演出によって、これからの展開に期待が膨らむ。なんだかニチアサというよりは、まるで昼ドラを見ているような雰囲気である。謎は深まっていく。
つよし闇堕ち?
みほを拉致した榊に怒りを燃やすつよし。
これまでは、常に自信がなく、何をしてもヘラヘラと静かに笑っているようなところがあったが、今回ばかりは様子が違う。
その目に宿るのは「殺意」と言っても過言ではない。
その証拠に、ドンモモタロウが新たな必殺技「狂瀾怒桃(キョウランドトウ)ブラストパーティー」で魔進鬼を仕留めようとした際、その邪魔をしてしまう。
これによって、魔進鬼はソノイに倒され、榊は消滅。
つまり、つよしは自分たちがヒトツ鬼を倒せば、宿主が救われ、脳人がヒトツ鬼を倒せば、宿主が消滅してしまう、という法則を悪用したワケだ。
みほに危害を加えた男を野放しにはできない、という自らの「正義」に基づいた行動だったワケだが、これを「正義」と呼んでしまって良いのだろうか?
しかし、単に「エゴ」と呼んでしまうのは、あまりにも他人事のような気もする。
こういったことは現実世界でも目にすることだ。
家族や親しい人が事件に巻き込まれた際、その犯人を法の裁きだけに委ねられる人がどれほどいるだろう?
少なくとも、法治国家で私刑が許される、とは思っていないが、大切な人を傷つけた犯人をなんとかしてやりたい、という気持ちもわからないではない。
「つよしが闇堕ち」と書くのはカンタンだが、この展開の中には、想像以上に重いテーマが隠されている。
一歩間違えば、つよしからヒトツ鬼が誕生してしまうかもしれない。
やはり『ドンブラ』は面白い。
それでは、ここまでお読みいただきありがとうございました。
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