2022年8月14日放送『暴太郎戦隊ドンブラザーズ』ドン24話「むすこ、ににんばおり」(監督:加藤弘之 脚本:井上敏樹)
この放送の前日、プロデューサーの白倉伸一郎さんがTwitterで「ジャンル感として、ヒーローものというよりシチュエーションコメディに近づきつつある」と評されていたが、その言葉通り、ドンブラTVシリーズ史上最大の悪ふざけ(2022年8月14日時点での暫定)が幕を開ける。
ネタバレ含む、とはいえ、これから視聴する楽しみを奪うほどのものではないし、1度視聴した方はもう1度見返したくなるはず。最後までおつきあいいただければ幸いだ。
キャスト
まずはドン24話のキャストをご紹介する。
本作初登場でウィキペディアに記載のある方についてはリンクを貼っておくので、他の参加作品なども是非チェックしていただきたい。特撮に出演した人たちを応援したい、という趣旨である。
桃井タロウ/ドンモモタロウ
樋口幸平
猿原真一/サルブラザー
別府由来
鬼頭はるか/オニシスター
志田こはく
犬塚 翼/イヌブラザー
柊太朗
雉野つよし/キジブラザー
鈴木浩文
桃谷ジロウ/ドンドラゴクウ
石川雷蔵
五色田介人
駒木根葵汰
東 智子
片岡京子
耕一郎
織部典成
友人
内海大樹・圷 智弘
同僚
植田敬仁・竹内 啓・遊佐亮介
(良い意味で)狂っているとしか思えない
たまたま配達に訪れた先で出会った女性・東 智子に、家出息子に間違えられる桃井タロウ。
よほど似ているのか、取り付く島もなく息子扱いされてしまったタロウは困り果てて、ドンブラザーズの面々に相談を持ちかけるのだが、相談する相手が悪かった。問題は解決どころかドツボに向かって突き進むことになる。
タロウの両耳に小型のカメラとマイクを仕込み、それを喫茶どんぶらでモニタリングしながら、猿原がタロウの代わりに受け答えをするというのだが、全て猿原のアドリブとなるため、それに合わせて口を動かすことは不可能。タロウは腹話術の人形のように、ただパクパクと口を動かし続ける。
この母親も天然なのか、口の動きと発語がまるで合っていないことに気づかない上、「しばらく見ない間に背が伸びたんじゃない?」と問いかけた際に「成長期」とか、「時々、声が変わらない?」と問いかけた際に「声変わり」とか、はちゃめちゃな猿原の答えにも一々納得する始末。
また、家出息子・耕一郎の学生時代の友人を横にスタンバイさせておき、当時の話題が出た際に備えたことも幸いし、作戦はギクシャクしながらも、それなりに順調に進んでいく。
しかし、これで終わらないのがドンブラである。というか、そもそもこの“なりすまし”の着地点をどこに設定していたのかも定かではないが、気分が乗ってきた猿原が、つい俳句を詠んでしまうところから事態は急変する。
「趣味が悪い」とか「年寄りみたい」とディスられて激昂した猿原は、私情を剥き出しにして降りてしまう。
雉野が慌ててその場を引き継ぐが、「結婚した」と言い出し、さらに事態は悪化する。
息子から唐突に結婚した、などと聞かされ、「親にも紹介できないような女なんて」と不快感をあらわにする智子に、雉野は「みほちゃんは最高だ!」などと必死で弁明するのだが、当然、理解されるわけがない。愛するみほのことを悪く言われた雉野もここで離脱。
最後に残されたはるかも、タロウの妻のフリをして智子に挨拶しようとするが、「私たち、ラブラブだもんね」と問いかけたことで嘘のつけないタロウは絶命してしまう。怒涛のように押し寄せるカオスな展開。控えめに言っても最高である。これがヒーローものか? と聞かれたら即答は難しいけれど。
息子の行方
家出息子の耕一郎は、人知れずヒトツ鬼になっていた。
1994年2月〜1995年2月まで放送されたスーパー戦隊シリーズ第18作『忍者戦隊カクレンジャー』をモチーフとした忍者鬼である。
忍者鬼
身長:187cm
体重:219kg
スキン:隠れる忍者
デザインはいかにも忍者。カクレンジャーの決め台詞「人に隠れて悪を斬る」に倣ってか、母に隠れて生き甲斐を求めるその姿は、なんだか切ない。
この忍者鬼が倒されると、巨大化して忍者鬼ングとなる。
忍者鬼ング
身長:51.0m
体重:2091.0t
スキン:青二才ニンジャ
今回もジロウの虎竜攻神(トラドラゴンジン)がお相手。
傍若無人に暴れようとする虎を檻に閉じ込めるという異色の合体は何度見ても悪い冗談のようだが、個人的には大好きだ。最後に閉じ込めた虎に向かってかける「ハウス!」の一言もたまらない。
エンディングはショパンに乗せて
これだけ奔放なドタバタ劇を見せておきながら、最後は“いい話風”にまとめるのもドンブラらしい。
「久しぶりにショパンのノクターンが聞きたい」という智子のリクエストに応えるため、ピアノを弾いたことがないというタロウの前でノクターンを披露する五色田介人。喫茶どんぶらのどこかにグランドピアノが置かれた防音室があるだけでも驚きだが、わざわざタキシードに着替えてピアノを披露する介人もまた驚きだ。
しっとりとノクターンを披露する介人だが、画面に映っているのは売り切れた写真集。
『ゼンカイジャー』の頃とは異なり、執拗にイケメンぶりを推してくるが、それすらもフリになっているのが流石だ。
その演奏を一度見ただけで覚えてしまうタロウ。しかし、その演奏を智子に聞かせることはなかった。
物語のラストは、タロウが智子の肩を揉んでいるところを回想しながら、ノクターンを一人きりで演奏するシーンで幕を下ろす。
結局、智子がタロウを息子だと言っていたのは勘違いだったのか、それとも家出した息子と同じ年頃のタロウを錯覚してしまうほどに疲弊していたのか、そのあたりのことは謎のままである。
しかし、実の息子だと思っていたタロウの前にヒトツ鬼が現れた際、手にしたバッグを振り回して追い払おうとするなどした母の強さがタロウを驚かせたことは事実だ。
確かにシチュエーションコメディではあったが、こんなドタバタ劇を通して、徐々に人間らしさを手に入れていくタロウもまた本作の見どころである。
それでは、ここまでお読みいただきありがとうございました。
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