2022年8月14日放送『仮面ライダーリバイス』第48話「覚悟の証明!これが・・・日本一のお節介!」(監督:上堀内佳寿也 脚本:木下半太)
ジョージ・狩崎が変身した仮面ライダージュウガの脅威の前に、大二もさくらもあっけなく敗れてしまう。それを見た一輝は、自らの記憶を失うことも省みず変身しようとするのだが・・・。
大切な人たちを忘れゆく怖さと、忘れられてしまう人たちの切なさを描く第48話をレビュー。ネタバレは含むが、これから視聴する楽しみを奪うほどではない。最後までおつきあいいただければ幸いだ。
キャスト
ここでは第48話のキャストをご紹介する。
以下の画像は全て『仮面ライダーリバイス』より引用している。
なお、「ラブコフ(声):伊藤美来」というクレジットがあるのだが、出演箇所が見つけられず割愛している。単なる見落としであればご容赦いただきたい。
五十嵐一輝/仮面ライダーリバイ
前田拳太郎
バイス/仮面ライダーバイス(声)
木村 昴
五十嵐大二/仮面ライダーエビリティライブ/カゲロウ/仮面ライダーエビル
日向 亘
五十嵐さくら/仮面ライダージャンヌ
井本彩花
ジョージ・狩崎/仮面ライダージュウガ
濱尾ノリタカ
夏木 花
浅倉 唯
玉置 豪
八条院蔵人
牛島 光
奥 智哉
門田ヒロミ
小松準弥
狩崎真澄(声)
藤 真秀
狩崎真澄(過去)
高橋健介
ジョージ・狩崎(幼少期)
平賀 仁
五十嵐幸実
映美くらら
五十嵐元太
戸次重幸
秘密の部屋
狩崎真澄の墓前に、生前真澄が被っていたマスクや悪魔の力を用いるドライバーが投げ捨てられているのを発見した門田ヒロミは、ジョージの暴走の原因が亡き父への復讐であることに気づく。
死んだはずの父親が実は生きていた、というだけなら嬉しい誤算かもしれないが、幼い自分を捨てるように消えてしまったこととか、自らの中に潜む悪魔を移植していたとか、父親の身勝手さがそこかしこに透けて見える。そういったさまざまなわだかまりを解消する前に亡くなってしまったことで、きちんと喧嘩をすることさえできなくなってしまったのだ。怒りのやり場を失ったジョージの気持ちはわからなくもない。
仮面ライダージュウガを倒すヒントは真澄の遺品の中にある、と信じたヒロミは一輝たちと共に、一度はしまいかけた遺品を掘り返す。その中にあった1枚の写真。
そこに写っていたのは父と子が共に実験でもしているかのような微笑ましいシーンだったが、違和感に気づいたのは光。前回、玉置が見つけたウィークエンドのアジトにあった床のシミが、その写真にも写っていたのだ。
どうやらウィークエンドのアジトとは、狩崎親子が昔暮らしていた家だったらしい。
そうしてヒロミたちは、その部屋の奥に、隠された部屋を発見する。
そこは、忘れられた部屋。
いや、真澄は覚えていただろう。しかし、ジョージはすっかり忘れているはずである。
そこには、真澄とジョージの思い出がこれでもかと詰まっていた。ギフを倒すため、ジョージを捨て、ウィークエンドに身をやつした真澄だったが、ジョージへの想いを捨て去ることはできなかったのだ。昔一緒に暮らした家をわざわざアジトにしたところからも、そういった想いが窺える。
この部屋のことを、この部屋に遺されたものを、ジョージに伝えることができたなら、暴走を止めることができるかもしれない。ヒロミたちは色めき立つ。
親子で作った最高傑作
身勝手な父親・狩崎真澄が重宝されていたのは、悪魔の力を用いるライダーシステムを開発し、それが一定以上の成果を挙げたからに他ならない。
もしも、悪魔の力に依存しない全く新しいライダーシステムでそれ以上の成果を挙げられれば、過去の遺産たる真澄のライダーシステムは不要となるだろう。単純にライダーシステムを兵器として考えれば、それは確かにそうだと思う。
それは同じ研究者としての意地だったのかもしれないし、自らの人生を翻弄してきた悪魔という存在そのものを憎んでいたのかもしれない。いずれにしても、自らが開発した新しいシステムで旧いシステムを駆逐することで、憎たらしい存在をこの世から消し去りたいと願ったジョージは、現在最強を誇るアルティメットリバイスに襲いかかる。
今回の一輝のおせっかいは、「真澄とジョージが二人で完成させたアルティメットリバイスこそが最強」だということを証明し、「真澄がジョージのことを愛していた」ことをジョージに伝えたいということだった。自らの家族の記憶が消えることも厭わず、ジョージに家族の素晴らしさを伝えたいと変身する一輝。
捨てるものがないという覚悟が勝り、熾烈な戦いの末に勝利を収める一輝。
それでも暴走をやめないジョージにヒロミが差し出したのは、先ほど秘密の部屋で見つけた数枚の絵。それらは幼い日のジョージが描いたもので、人間から恐竜や昆虫が飛び出しているように見える。つまり、ライダーシステムの原案というべきもの。そもそも真澄は、自分だけのアイデアでライダーシステムを考案したわけではなかったのだ。愛息・ジョージのアイデアを具現化したわけで、つまりライダーシステム自体が狩崎親子の共作だったということになる。
大切に保管されていた家族の思い出の在処を知らされたジョージは人目も憚らず慟哭する。自らの描いた絵を抱き、亡き父への想いを口にしながら地面をのたうつその様子に、これまでの冷徹な研究者の面影はない。
それこそ、父親がいなくなった幼い頃から、ずっと我慢してきたのだろう。堰を切ったように泣き喚くその姿は、まるで駄々っ子である。ヒロミの目に涙が浮かぶ。見ているこちらの胸にも押し寄せるものがある。
忘却の彼方
元太と幸実のことを忘れてしまった一輝。笑顔で語りかける両親に対して「お客さん」と真顔で呼びかけたシーンは衝撃だった。
圧倒的な力を誇るジュウガも、一輝が参戦すれば倒せる可能性は格段に上がる。しかし、これ以上変身すれば、今はまだかろうじて覚えている大二とさくらのことも忘れしまうだろう。
忘れる、ということは、忘れた本人よりも忘れられた人の方がショックは大きいものだ。大二とさくらも「忘れられたくない」という想いにしがみつくのだが、ふと、誰よりもおせっかいな兄こそが、自分たちの大好きな兄なのだと気づく。
狩崎親子のため、わずかに残された家族の記憶を失うことも厭わず変身しようとする一輝を、笑顔で送り出す大二とさくら。そこには悲痛な覚悟があったはずだ。
ジュウガを倒し、そして予想通り二人のことさえ忘れてしまった一輝に、泣き笑いで応える大二とさくらに胸が熱くなる。
結局ジュウガも大袈裟に登場したくせに、ほんの数話でやられてしまう中ボスの一人でしかなかったという仮面ライダーの大量消費にはうんざりするが、大切な人たちのことを忘れてしまったことさえ思い出せない一輝の無邪気さと、忘れられてしまった大二とさくらの哀しさの対比は見事だ。展開そのもののベタさを退屈に見せない演技力には脱帽である。
戸次さんや映美さんのようなベテランが見せた苦悩の表情についてはあえて言うまでもないが、前田さん、日向さん、井本さんたち3人の進歩はめざましいものがある。1年前とは比べものにならない。
随分昔、祖父が私たち家族のことをすっかり忘れて、職場の部下に対するように話しかけてきた(手帳を開きながら指示された)ことにショックを受けた記憶がある。それとこれとを同列に並べるつもりはないけれど、例え病気であっても、一緒に暮らしている家族に自分の存在を忘れられるということは哀しいものである。元太と幸実が肩を並べて俯くシーンからは、言葉にならない哀しみが滲む。
『リバイス』も残り2話。既にオチが透けて見えるようなところもあるけれど、仮面ライダー生誕50周年というアニバーサリーイヤーを爽快に締め括って欲しいものだ。
それでは、ここまでお読みいただきありがとうございました。
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