2022年8月21日放送『暴太郎戦隊ドンブラザーズ』ドン25話「ヒーローしごとにん」(監督:加藤弘之 脚本:井上敏樹)
バイトに明け暮れるヒーローたちの姿を描くドン25話。
しかしその働く理由は、金のためではなく誰かのため。さらに、単なる悪ふざけ回に見えるが、誰にでもある「ラクして儲けたい」という想いに対するアンチテーゼとして、額に汗して働くことの大切さをも描いているはずだ。
ネタバレも含むが、これから視聴する楽しみを奪わない程度のもの。最後までおつきあいいただければ幸いだ。
キャスト
ここではドン25話のキャストをご紹介する。
本作初出演でウィキペディアに記載のある方についてはリンクを貼っておくので、他の参加作品などもチェックしていただきたい。これは特撮作品に出演した俳優さんたちを応援しようという趣旨である。
なお、以下で使用している画像は全て『暴太郎戦隊ドンブラザーズ』より引用している。
桃井タロウ/ドンモモタロウ
樋口幸平
猿原真一/サルブラザー
別府由来
鬼頭はるか/オニシスター
志田こはく
犬塚 翼/イヌブラザー
柊太朗
雉野つよし/キジブラザー
鈴木浩文
桃谷ジロウ/ドンドラゴクウ
石川雷蔵
五色田介人
駒木根葵汰
ソノイ
富永勇也
ソノニ
宮崎あみさ
ソノザ
タカハシシンノスケ
雉野みほ
新田桃子
山田部長
滝 晃太朗
校長
桃井 陣
和田聰宏
ドンドラゴクウアルター(人形操演):友松正人・山田はるか・高橋奈巳・山下潤子・加藤埜明
キジ、クビになる
雉野がコンサルしたBambus(デンマーク語で「竹」の意)という名のレストランが大赤字となり、雉野はクビを宣告されてしまう。
顧客のコンサルが失敗したからと言って、すぐに一社員のクビを切るようなのはブラック企業としか思えないのだが、売上データによると、地下アイドルのオフ会等を展開したが、ファン層とレストランのターゲットがマッチせず、結果的に新規開拓どころか常連客の反感を買ってしまったらしい。確かに、なかなかのミスである。そしてこの細かい設定に笑える。
クビになった雉野は、妻のみほにそのことを伝えることもできず、会社に行くふりをして公園のベンチで時間を潰す。典型的だが、その姿には悲壮感が漂う。
これからどうしようかと迷った末に雉野が出した答えは、喫茶どんぶらのマスター・五色田介人や桃井 陣に、ドンブラザーズとして働いた給料を要求するということだった。なかなかのクズっぷり。もちろんそんな要求は即座に断られてしまい、バイトなどに自ら汗を流すことにはなるのだが、その様子がおかしいことに気づき、相談に乗った桃井タロウの勘違いから、はるかや猿原まで巻き込んだバイト三昧の日々が始まる。
最終的には犬塚も含む5人が久々に勢揃いしBambusの経営を立て直すことになるのだが、他のメンバーがドンブラザーズに変身してお客さんたちを盛り上げているというのに、それに気づかず厨房で黙々と料理を作り続ける犬塚がシュール。しかも、辛口なタロウに「美味い!」と言わせるのだから、犬塚の料理の腕は確かだ。
また、屋台でラーメンを売っていた雉野も、大概の食事に25点ほどしか点数をつけないタロウが32点をつけている。こちらも意外と料理の才能はあるのかもしれない。
優秀な部下を求めて
部長の山田は、自分にも迫るクビの宣告に怯えていた。
そんな状況を打開するため、「優秀な部下が欲しい」(めちゃくちゃ他力本願だ)と願う山田の欲望はやがてヒトツ鬼を生み出してしまう。
1982年2月〜1983年1月まで放送されたスーパー戦隊シリーズ第6作『大戦隊ゴーグルファイブ』をモチーフとした大鬼。
大鬼
身長:199cm
体重:239kg
スキン:新体操遺跡
デザインは古代文明をモチーフとしていた『ゴーグルファイブ』にちなんで遺跡のようなスキンとなっているのだが、新体操にちなんだ技を見ないと、いったいどの戦隊をモチーフにしているのかよくわからない。
ゴツい見た目に関わらず、クラブやリボンを自在に操る姿はなかなかシュールだ。
桃井タロウと桃谷ジロウのコンビプレイで倒したものの、いつも通りの巨大化。
大鬼よりもリボンに特化した大鬼ングとなって襲いかかる。
大鬼ング
身長:51.7m
体重:2119.7t
スキン:リボン競技
今回もジロウの虎竜攻神(トラドラゴンジン)でトドメ。途中、「染之助染太郎」のような曲芸自慢が始まったが、ちょっと何をやっているのかわからなかった。まあ、ドンブラはだいたいこんな感じであるから、気にする必要はない。
このの勝利によって、山田は復活。最後はBambusが経営再建できたことでクビを撤回され、抱き合って喜ぶ山田と雉野。というか、今さら気づいたのだが、この山田という名前は今回が初登場のはず。これまでは部長という役名でしかなかったはずだ。
それにしても、自社のコンサルのせいで赤字になったとはいえ、そこから求められた損害賠償を担当社員に支払わせようとするブラック企業なんて、さっさと辞めた方が良さそうだが・・・
人形操演のリアル
ちょっと本筋とは関係ない話として、作中に登場するドンドラゴクウアルターはCGではなく、リアルな人形を操っており、オープニングでも「人形操演」としてクレジットされている。いわゆる人形劇である。
と言っても、これは今に始まったことではなく、昨年の『機界戦隊ゼンカイジャー』でも使われていた。『ゼンカイジャー』に登場したリッキーを操演していたことでも知られている山田はるかさんは人形操演の第一人者として、NHKの「プロフェッショナルの流儀」に出演したり、「ほぼ日刊イトイ新聞」にインタビュー記事が掲載されているのでご存じの方も多いと思う。
人形操演として名前がクレジットされているのは山田はるかさんを含めて5名。たった1体の人形を操るために5名もクレジットされている理由は私にはわからないのだが、山田はるかさん以外の4名は「人形劇団ひとみ座」という劇団に所属されているらしい。
この人形劇団ひとみ座というのは、1948年に鎌倉で立ち上げられた人形劇団の老舗で、現在は川崎市を拠点として活動されている。NHK Eテレの「おかあさんといっしょ」や「コレナンデ商会」、「ねほりんぱほりん」といった作品にも参加しているので、ひとみ座という名前を知らない方でも、一度くらいはその操演を目にしているはずである。
この人形操演というのが、なかなかいい味を出している。もちろん人形の手足をガシガシ動かすのであればCGしかないとは思うのだが、映画と比べればTVの特撮番組の予算なんてのはたかが知れていて、低予算で描かれるCGというのは、なかなかショボい。それでも昔よりは、かなりマシになったとはいえ、まだまだ不自然さが残る。特に質感は、いかんともしがたい。
そこにリアルを求めてのことなのか、人形操演独特の、あのチョコチョコとした動きの可愛らしさを求めてのことなのか、ひょっとしたらさらに低予算化するための苦肉の策なのかはわからないが、ドンドラゴクウアルターには人形操演が使われていて、これがなんともいい雰囲気なのである。
『ドンブラザーズ』に限らず、例えば『ウルトラマン』などを観ていても、昭和のウルトラシリーズではあたりまえだったミニチュアを使った空中戦と現代のCGをフル活用した空中戦を比べると、質感という部分では圧倒的にCGの嘘臭さが際立つのが面白い。もちろんミニチュアだって偽物だ。上から吊り下げるピアノ線が映り込んだりもしているのだからリアルも何もあったものではないということは理解しているが、実際にその空間に存在しているかどうかということは、やはり大きい。
ただ販売する玩具を増やすためだけに作られたようなアルターの是非はあるだろうが、それを使った操演には、なんでもかんでもCGにすればいい、という現代の流れに疑問を抱かせるくらいの魅力は感じられる。
次回は『仮面ライダーリバイス』の最終回に合わせて最終回?? という名の総集編のようだ。悪ふざけが止まらないが、ここまで徹底されると清々しくさえある。
ただし、そろそろ本編となる物語も進めて欲しくもなってきたのは私だけではないはずだ。
それでは、ここまでお読みいただきありがとうございました。
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