【神回】さよならソノイ|『暴太郎戦隊ドンブラザーズ』ドン27話感想

雷堂

2022年9月4日放送『暴太郎戦隊ドンブラザーズ』ドン27話「けっとうマジマジ」(監督:田崎竜太 脚本:井上敏樹)

なんとも唐突に、まるで前回のクソどうでもいい総集編(褒め言葉だ)の鬱憤を晴らすように、桃井タロウとソノイが決着をつけることとなる。ふざけまくっていたら、いつの間にか折り返し地点を迎えてしまっていたので、焦って物語を畳み始めたということだろうか?

純粋に二人きりでの決闘かと思いきや、ジロウは来るわ、ヒトツ鬼は来るわ、おまけに獣人まで登場して大混乱となる。

果たしてタロウとソノイは決着をつけることができるのか? はちゃめちゃでありながら、とてつもなく美しいドン27話をレビュー。私は神回と言って良いと思っている。

ネタバレはあるが、これから視聴する楽しみを奪うほどではないので安心して読み進めていただきたい。最後までおつきあいいただければ幸いだ。

目次

キャスト

ここではドン27話のキャストをご紹介する。

以下で使用している画像は全て『暴太郎戦隊ドンブラザーズ』より引用している。

桃井タロウ/ドンモモタロウ

樋口幸平

猿原真一/サルブラザー

別府由来

鬼頭はるか/オニシスター

志田こはく

犬塚 翼/イヌブラザー

柊太朗

雉野つよし/キジブラザー

鈴木浩文

桃谷ジロウ/ドンドラゴクウ

石川雷蔵

五色田介人

駒木根葵汰

ソノイ

富永勇也

ソノニ

宮崎あみさ

ソノザ

タカハシシンノスケ

ドンムラサメ(声)

村瀬 歩

大野

榊原卓士

房子

原 扶貴子

狭山健児

杉本凌士

バスガイド

三輪晴香

獣人

坪内 守

マザー(声):能登麻美子

タロウとソノイ

夏の終わりをプールで満喫するドンブラザーズの面々。ウォータースライダーに興じるはるかの笑顔は眩しく、潜水をしながらも首のネジネジは外さない猿原の狂気は今に始まったことではない。雉野はプカリと浮き輪を楽しみ、タロウはプールサイドでのんびりと休暇を楽しんでいる。

しかし、こんな平和な時間が長く続くことはない。『ジョーズ』だろうと『13日の金曜日』だろうと、血の惨劇の前は、みんなの笑顔を映し出すものだ。タロウがプールに飛び込んだその瞬間、目の前にソノイが現れる。待ち構えていたと言っても良い。ピタピタの青い服を着たままプールに潜り、タロウがやってくると、そのまま水中で会話を始める。この二人も完全にどうかしている。

「決着をつけよう」それだけ言い残すとソノイは何事もなかったようにプールサイドを涼しい顔で去っていく。しかし当然ながら全身ずぶ濡れである。カッコいいのかカッコ悪いのかよくわからない。

決闘までの両者は対照的だ。

仲間たちの心配をよそに、いつもと変わらぬタロウに対し、打倒タロウを目指して特訓を続けるソノイ。

タロウは運を天に任せているように見えるが、ソノイは相討ち狙いで、なんとしてもタロウを仕留めようと必死である。

そうしてやってきた決戦の日。

画像引用元:暴太郎戦隊ドンブラザーズ

岩船山で、約束の時間を過ぎても姿を現さないタロウを待ち続けるソノイ。後ろには西部劇よろしく大量のタンブルウィードが転がる。ここはアメリカではなく、岩船山なのに。

待ちくたびれたソノイは、いつも通り仕事をこなすタロウを発見する。どうやら職場の同僚が病欠した穴埋めをしているらしい。「今日は約束の日」だと詰め寄るソノイに、「それは個人的な約束で、今も荷物を待っている人たちがいる」と、タロウはまるで動じない。

自分事よりも他人事を優先する。タロウのそういったところは、ソノイが心惹かれる要素だったはずだ。

一時休戦。

二人で荷物配りを終え、改めて決戦の場に立つ。こうして見ると、ソノイのタロウに対するさまざまな想いが改めて浮かび上がる。宿敵とはいえ、憎さだけではない。お互いの正体を知らなかった頃は、その美しい生き方を、不器用な生き様を愛おしくも思っていたのだ。欲にまみれた人間の醜さに失望する日々の中で、タロウは一条の光だったに違いない。

マザーテレサも言っていた。「愛の反意語は無関心」だと。愛も憎しみも表裏一体なのだ。ベクトルの方向が違うだけで、相手に強い関心が向いていることは間違いない。好きだからこそ、自らの手でその命を終わらせたい。もっといえば、これはソノイから仕掛けた無理心中である、とも言える。タロウの命を奪うだけでなく、同時に自らの命をも終わらせることを願っていたのかもしれない。

ドン王家と脳人などという立場ではなく、純粋に人間同士として出会えるよう生まれ変わりたかった、などと考えるのはセンチメンタルに過ぎるだろうか?

夏のおでん

まさかの人物が再登場を果たした。しかも二人。

一人は房子。

画像引用元:暴太郎戦隊ドンブラザーズ

ひとりぼっちの寂しさを埋めるため、クレーマーと化した女性である。ドン13話に登場している。

今回、タロウが荷物を届けた先が房子だったのだが、指定した時間に届けたにも関わらず、食事の邪魔をしたと因縁をつけてきたのだ。ヒトツ鬼を倒されたというのに全く懲りていない。

あまりの剣幕と非論理的な暴論には、流石のタロウもなす術がない。

それを収めたのがソノイだ。

ドン13話で、五色田介人が房子にしたように、ひざまずき、手の甲に口づけをして黙らせる。

画像引用元:暴太郎戦隊ドンブラザーズ

ドンブラザーズの世界では、イケメンは女性の手の甲に口づけをする習慣があるらしい。まるで海外の社交界である。

そんな房子が食べていたのが「おでん」である。

かつて、お互いの正体を知らなかった頃のタロウとソノイが交わした食事の約束。

画像引用元:暴太郎戦隊ドンブラザーズ

「あれが・・・おでん」

房子のおでんを目にして微笑むソノイ。この上もなく優しく、そしてどこか寂しげな目。実現することのなかったタロウとの食事の光景を思い浮かべでもしたのだろうか。思わず胸が詰まる。

復讐

そしてもう一人は、以前忍者の修行をしていた男・大野だ。一応、大野 稔という名前があるらしいが、キャスト名としては「大野」となっているので大野と呼称する。

手裏剣鬼としてタロウに敗れて以来、なんとか復讐しようと考えていたらしい。

そうして手に入れたのが、新たな力「魔法鬼」である。

画像引用元:暴太郎戦隊ドンブラザーズ

魔法鬼

身長:198cm

体重:226kg

スキン:紫の魔法使い

2005年2月から2006年2月まで放送されたスーパー戦隊シリーズ第29作『魔法戦隊マジレンジャー』をモチーフとしたヒトツ鬼である。

房子は単にクレーマーとして生き続けているだけだったが、大野は以前とは違う力を手に入れて新たなヒトツ鬼を宿している。とんでもなくタチが悪い。この分だと、あと1回くらい登場してもおかしくないかもしれない。

最近は桃谷ジロウ売り出しキャンペーン中のようで、今回もジロウによって倒されて巨大化する。

画像引用元:暴太郎戦隊ドンブラザーズ

魔法鬼ング

身長:52.7m

体重:2160.7t

スキン:魔神の王

巨大化して魔法鬼ングとなるが、タロウとソノイの戦いに決着をつけるには時間がないとのことで、大した見せ場もなくやられてしまう。ただし、トラドラゴンジンとドンオニタイジンの共闘は珍しい。次回、この2大ロボットの合体があるようなので、それに対するちょっとした布石みたいなものかもしれない。

決着〜明かされた謎、残された謎

無粋な連中が次々に現れる中、二人の決闘に水を差すまいと、仲間たちが露払いに奮闘する。

そうして改めて相対する二人。

勝負は一瞬。

ソノイの自らの命を差し出そうとする覚悟を、タロウのまだ死ぬわけには行かないという生への渇望が上回ったと言って良いだろう。

二人のデュエット曲「月ノミゾシル」が流れる中、声ひとつ立てずに剣を振り下ろし、音もなくソノイが倒れ、労いの言葉も振り返ることもなくタロウが立ち去る。ここまでの騒乱ぶりがウソのような静謐な時間が流れる。

倒れたソノイを抱えて何処かへ歩み去るのはソノニでもなく、ソノザでもなく、ドンムラサメだ。

画像引用元:暴太郎戦隊ドンブラザーズ

脳人が生きていくために必要な人間の波動を集めるため、ドン王家によって生み出された人工生命体・獣人。

その獣人の封印が解かれ、次々に適合者を求めている状況を考えると、人間を獣人化することに意味があるのかもしれない。

そして、脳人の世界を守るために現れるのに、ソノイたちが危険視する人工生命体・ドンムラサメもまた獣人なのか? ドンの名を冠するということは、失敗作とされた他の獣人とは異なる完成形としての獣人なのだろうか?

そのドンムラサメによって連れ去られたソノイ(生死は不明)もまさか、獣人化してしまうのだろうか?

そちらを一瞥もしないタロウは、そのことに気づいているのか気づいていないのか。ひょっとしたら泣いているのかもしれない。動と静を見事に描いたドン27話。私はこれを神回と呼びたい。

雷堂

それでは、ここまでお読みいただきありがとうございました。

\ 僕と握手! /

PVアクセスランキング にほんブログ村

Recommend

この記事が気に入ったら
フォローしてね!

僕と握手!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

特撮ヒーローのレビュー(旧作から最新作まで)が中心ですが、ガジェットやゲームなど、好きなものを思いつくままに書いています。僕と握手!
※当サイトではアフィリエイトに参加しています。

WordPressテーマ「SWELL」

目次