2022年11月13日放送『暴太郎戦隊ドンブラザーズ』ドン36話「イヌイヌがっせん」(監督:田崎竜太 脚本:井上敏樹)をレビュー
眠りの森に迷い込んだ犬塚 翼は、そこで囚われた人々を発見する。その中には恋人・夏美もいたが、犬塚もまた囚われ、人間界では犬塚の姿をコピーした獣人が自由気ままに徘徊し始める。
「イヌイヌがっせん」というタイトルからは、本物の犬塚と偽物の犬塚が壮大なバトルを繰り広げるような錯覚を覚えるが、これは間違いなく錯覚である。ただし、最終盤に向けて、かなり重要な情報も差し込まれているので、ボーッと眺めていてはいけない。
ネタバレも含むが、最後までおつきあいいただければ幸いだ。
キャスト
ここではドン36話のキャストをご紹介。
以下で使用している画像は全て『暴太郎戦隊ドンブラザーズ』より引用している。
桃井タロウ/ドンモモタロウ
樋口幸平
猿原真一/サルブラザー
別府由来
鬼頭はるか/オニシスター
志田こはく
犬塚 翼/イヌブラザー
柊太朗
雉野つよし/キジブラザー
鈴木浩文
桃谷ジロウ/ドンドラゴクウ
石川雷蔵
五色田介人
駒木根葵汰
ソノイ
富永勇也
ソノニ
宮崎あみさ
ソノザ
タカハシシンノスケ
雉野みほ/夏美
新田桃子
山田部長
滝 晃太朗
ルミ
朝乃あかり
久我
河西晃司
トレーナー
福沢博文
紳士
河合誠三郎
紳士
沓澤周一郎
警官
高田将司
スタッフ
堀内充治
彷徨う犬塚(獣人)
前回、“眠りの森”に囚われた犬塚。
その犬塚をコピーした獣人が人間界を彷徨い歩く。
食堂に立ち寄ると、他の客たちが食べている肉料理にかぶりつく。ここまでは、これまで登場した獣人と一緒。だが、犬塚の獣人は「不味い」と一言、調理室にまで入り込んで、自ら鍋を振るい始める。これは料理が得意な犬塚らしい行動だ。刑事の狭山が獣人になっても犬塚を追いかけ回していたように、獣人は見た目だけをコピーするのではなく、その人の持つ個性までコピーしてしまうようだ。
店内の客たちに完成した料理を振る舞うと、「いつもより美味しい」と好評。だが、そこに居合わせた桃井タロウは、「あんた、腕が落ちたな」と酷評。タロウは犬塚の料理の腕を認めている。大概の料理に30点台の点数をつけるタロウが高評価したのは、犬塚と、ドン4話に登場したおにぎり専門店くらいのものである(屋台のおでんは美味そうに食べていたが、やはり点数は低かった)。そのタロウが「不味い」と口にするのだから、料理の腕前までは完コピできなかったようだ。
その後、登場したヒトツ鬼と戦うためにドンブラザーズの面々が集結した際、当然、イヌブラザーは登場しないだろうと思っていたら、犬塚(獣人)がアバターチェンジ。それどころか、ロボタロウにまでチェンジしてしまう。思い返せば、ドン31話で売れないミュージシャン・乾が変身したこともあったので、ドンブラスターさえ使えば本当に誰でも(人でなくとも)変身してしまえるらしい。
男を手玉に取る夏美(獣人)
鬼頭はるかは、一人、屋外のステージで舞台稽古をする美しい女性に出会う。
犬塚の恋人・夏美(獣人)だ。ただし、はるかは犬塚がイヌブラザーであることも、犬塚と夏美が恋人同士であることも知らない。ただ、つい声をかけただけだ。これも『ドンブラザーズ』で度々取り上げられてきた“縁”というものかもしれない。
その女性には、大勢の男たちが擦り寄ってくる。高級車で食事の誘いに現れる男。服やアクセサリーを散々貢いでくれる男。さらに、ボクシング(ボクササイズ?)のトレーナーを買って出る謎の男まで。
このトレーナー役は、本作のアクション監督・福沢博文さんである。赤いウェアを着ているのは、かつてスーパー戦隊でレッドを演じていたからに違いない。警官役の高田将司さん(キジブラザーの中の人)といい、普段はほとんど顔出しをしない人たちを何かと表舞台に立たせようというのは、スタッフの配慮なのか、目立ちたがり屋の集まりなのか、それともいつも通りの悪ふざけの一環なのかはよくわからないが、こういう「わかる人にはわかる」という楽しみはこれからもドンドン取り入れて欲しい。
そんな男たちを「ただのファン」と斬って捨て、「いい女に尽くすのが男の義務」だと語る夏美。これは、獣人だからなのか、それともこれが本当の性格なのか? 特別な見返りもなく、ただただお金を貢ぐ男たち(トレーナーは除外)には、哀れさが漂う。陰で「貧乏役者」と呼ばれる犬塚にも同情を禁じ得ない。
そんな夏美の前に、ソノニが現れる。ソノニと犬塚のこれからの関係性も見ものである。ソノニが何かと犬塚のことを気にかけるのは、恋人を獣人にされてしまったことに対する同情か、それとも恋心か。人間の“愛”に興味があると言っていたソノニだが、その心を理解できる日は来るのだろうか。
これこそ“極み”
ドンムラサメとの戦いで負った傷が原因で、ここ数週間、ずっと寝込んでいたジロウだったが、突然上京した幼なじみのルミのおかげで復活する。
ヒーローになるという幼い頃からの夢を叶えたものの、想像以上に大変で落ち込んでばかりというジロウに、ルミは「子どもの頃に眺めた夕日を思い出すといいよ」と言う。夕日は赤チンだ、というおばあちゃんの受け売りらしい。「赤チン?」とジロウも聞き返していたけれど、確かに若い世代は知らないかもしれない。今だとマキロンとかなのだろうか? 最近はあまり見かけないが、昭和世代なら知らない人はいない。正式には「赤ヨードチンキ」と呼ばれるもので、当時はほとんどの家庭に常備されていた。学校の保健室などでも使用されていたのだが、成分として水銀が含まれていると広まった途端、あっという間に姿を消してしまったのである。
そんな赤チントークと、故郷で採れた野菜の煮物で元気をもらったジロウが久々に参戦。
今回登場したヒトツ鬼は、救急鬼。
救急鬼
身長:193cm
体重:234kg
スキン:世紀末のマトイ
1999年2月から2000年2月まで放送されたスーパー戦隊シリーズ第23作『救急戦隊ゴーゴーファイブ』をモチーフとしたヒトツ鬼である。
気弱な男・久我の、自分の身に起きるさまざまな出来事からレスキューして欲しいという欲望が暴走して現れたもので、タロウに倒されると、巨大化し、救急鬼ングへと姿を変える。ドン2話に登場した列車鬼ングの色違い。ドラクエのスライムベスみたいなものである。
救急鬼ング
全長:499m
体重:19055.5t
スキン:世紀末ライナー
ここで登場したのが、巨大ロボ・トラドラオニタイジン極(キワミ)である。
トラドラオニタイジン極
全高:61.5m(翼上まで65.0m)
全幅:57.5m
胸厚:31.5m
重量:6,000t
スピード:350km/h
出力:3,400万馬力
トラドラゴンジンとドンオニタイジンが、オミコシフェニックスと究極合体した最終形態(公式発表)で、必殺技は「銀河桃一(ギンガトウイツ)・ドンブラファンタジア極(キワミ)」。救急鬼ングをド派手に粉砕するが、いつも通り、登場時間はめちゃくちゃに短い(初登場なのに)。登場からトドメまで、およそ1分間のファンタジー。まばたき厳禁である。
獣人を倒す方法
ここに来てようやく、夏美が鶴の獣人としての姿を現したのだが、ネコの獣人よりも立体的な造形を与えられたマスクがとても良い。
これまで獣人は不可殺で、唯一対抗できるのがドンムラサメとされていたが、もう一つ獣人を倒す方法があることが夏美の口から明かされた。
それは眠りの森に囚われた本物の人間をこの世界に戻すこと。そうすれば、不可殺だった獣人を倒すことができるらしい。実際、今回のラストでは、眠りの森からどうにか脱出した犬塚が、自分のコピー(獣人)を倒している。
それにしても気がかりなのは雉野である。今回、夏美の口から「雉野みほは夏美の夢」という台詞が飛び出している。現実には存在しない、みほという女性に一途な想いを寄せ続ける雉野に明るい未来はあるのだろうか。いよいよ本格化してきた獣人との戦いと共に、大注目ポイントとなるだろう。
それでは、ここまでお読みいただきありがとうございました。
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