2022年12月4日放送『暴太郎戦隊ドンブラザーズ』ドン39話「たなからボタンぽち」(監督:山口恭平 脚本:井上敏樹)をレビュー
喫茶どんぶらの大掃除の途中、謎の金庫を発見したところから転がり出す物語。
タイトルの「たなからボタンぽち」は、今さら言うまでもなく、ことわざ「棚からぼたもち」を元にしたダジャレである。
終わらない悪ふざけ。
もう物語も終盤だというのに、一向に物語が進まない・・・とお嘆きの方も多いかもしれない。
だが、ドンブラのネタ回では、必ずと言っていいほど重要な要素が提示される。今回もまた例外ではない。
重要なネタバレも含むが、最後までおつきあいいただければ幸いである。
キャスト
ここではドン39話のキャストをご紹介。
以下で使用している画像は全て『暴太郎戦隊ドンブラザーズ』より引用している。
桃井タロウ/ドンモモタロウ
樋口幸平
猿原真一/サルブラザー
別府由来
鬼頭はるか/オニシスター
志田こはく
犬塚 翼/イヌブラザー
柊太朗
雉野つよし/キジブラザー
鈴木浩文
桃谷ジロウ/ドンドラゴクウ
石川雷蔵
五色田介人/ゼンカイザーブラック
駒木根葵汰
ソノイ
富永勇也
ソノニ
宮崎あみさ
ソノザ※画面左
タカハシシンノスケ
雉野みほ
新田桃子
寺崎
一三
たまき
鵜川もえか
真之助
栫 良太
桃井 陣
和田聰宏
謎のボタン
ある日のこと。喫茶どんぶらは、マスターの介人が不在。なんでも、また新しい写真集の撮影が始まったらしい。
これまでに発表した2冊の写真集は、なんと45万部の売り上げを達成しているのだとか。1万部売り上げれば成功と言われる写真集で、45万部も売れるとは、もはや立派な社会現象である。
調べてみると、嵐の大野 智さんが2008年に発売した「FREE STYLE」と、2015年に発売した「FREE STYLEⅡ」という2冊の写真集が、合計で45万部の売り上げを記録したらしい。つまり、介人の人気は嵐級ということである。すげえ。
その介人がいない間に、いつもお世話になっている喫茶どんぶらの大掃除をしようと、鬼頭はるか、猿原真一、雉野つよし、桃谷ジロウの4人が集まるのだが、始めてすぐに、はるかが謎の金庫を発見する。
電子式の暗証番号で開くものらしく、いたずら心を出したはるかは、はるかと猿原と雉野の誕生日を入力してみる。もちろん、普通ならそんな番号で開くはずもないのだが、開いてしまうのがコメディのお約束である。
気になる中身は、謎のボタン。
なにやらバスの「次、降ります」と運転手さんに知らせるボタンのようなデザインだが、そこかしこに「DANGER」などと書かれている上、ボタンにも「押すな」と表記されているのは、いわゆる“フリ”である。YouTubeでよく見る「閲覧注意」みたいなもので、「押してください」という意志がこれでもかと透けて見える。ちなみに今回のブログタイトルは、それを意識してみた。
そのフリに応えたのは、はるかたちの様子を傍目に見ていたジロウ。
ポチッとボタンを押すと、「出撃」の二文字が点灯する。それをちょうど帰宅した介人が見つけ、目を見開く。どうやら、かなりヤバいものだったらしい。
ドンキラー
出撃したのは、ドンキラーと呼ばれるアンドロイド。
桃井タロウそっくり。というより、ビジュアル系タロウ。
これはドンブラザーズの力を受け継いだ者たちが暴走した際、その暴挙を止めるために用意されたものらしい。そういった有事に備えて、管理者である介人に出撃ボタンが預けられていたらしい。まるで核兵器の発射ボタンを預けられた大統領といった風情である。
ドンブラザーズを止める、ということは、ドンブラザーズを凌ぐ力を持っているということだ。
事実、あの桃井タロウどころか、ドンブラザーズ5人をたった一人で圧倒したうえ、ソノイたち3人の脳人さえも凌駕する。「桃井タロウを倒すのは、俺だ」と、当初のシリアス路線を彷彿とさせるような凄みを見せながらも、ドンブラザーズ以外には反応しないはずだから、というセコい理由でソノニとソノザに協力を仰ぎ、ドンキラー退治に向かうソノイ。しかし、その直前に喫茶どんぶらに立ち寄ったドンキラーは、介人のささやかな抵抗によりマスタード入りパフェを食べさせられたせいでA.Iに不調をきたしており、襲いかかるソノイたちに平然と反撃をし始める。「話が違う」と泣き言をいうソノニとソノザに、「逃げるぞ」と真っ先に逃げ出すソノイ。
エネルギー補給のためなのか、アンドロイドのくせに喫茶店でパフェを注文するドンキラーもどうかと思うが、いつの間にか、完全にネタキャラと化した脳人たちには親近感さえ覚えてしまう。3人の中で最も冷静沈着に見えるソノイに大真面目にボケさせるのは、コメディの定石だろう。
ひっそりとヒトツ鬼
そんなドンキラー騒動の陰で、今回もひっそりとヒトツ鬼が誕生する。
恋人の真之助が、ソノニをナンパしているところを目撃してしまった女性・たまきの「もっと私を見て」という欲望が暴走した結果である。
1977年4月から同年12月まで放送されたスーパー戦隊シリーズ第2作『ジャッカー電撃隊』をモチーフとした邪鬼である。
邪鬼
身長:191cm
体重:224kg
スキン:トランプサイボーグ
放送期間を見て、違和感を感じたあなたは鋭い。通常、1年間の放送枠を確保するスーパー戦隊シリーズなのに、8ヶ月ほどしか放送していないのだ。これは、不人気による打ち切り。前作『秘密戦隊ゴレンジャー』は、2年間も放送した大ヒット番組だった。あまりにもコメディタッチになってしまったことを反省してシリアス路線に振った途端にこれである。
話を戻そう。
邪鬼は一度倒されると巨大化し、邪鬼ングとなる。
邪鬼ング
身長:52.1m
体重:2114.7t
スキン:ビッグバンサイボーグ
巨大化の前後を問わず、『ジャッカー電撃隊』らしいスペード、ダイヤ、ハートにクラブというスートが目立ちまくるデザインが特徴だ。
だが、ドンキラーがメインとなる今回においては、いずれもついでのような存在でしかなかったため、あっさりと倒されて終了となる。
ドンキラーキラー
さて、ドンキラーを止めるため、覚悟を決めるドンブラザーズの面々。
何故かしれっと帰ってきた妻・みほに「保険に入っています」などと生々しい遺書を綴る雉野。辞世の句を読む猿原。最後に傑作マンガを描き残そうとするはるか。
皆、前の戦いで負った怪我にも挫けず戦いを挑む。これまで『ドンブラ』では、あまり感じたことのないヒーローっぽさが漂う。そんな覚悟が、変身した途端に怪我が治ってしまうといったミラクルを引き起こす(ご都合主義?)が、それでもやはりドンキラーは圧倒的だ。介人も久々にゼンカイザーブラックとなって加勢するが、焼石に水である。
絶体絶命のピンチを救ったのは、もう1体のアンドロイド。
猿原そっくりの彼の名は、ドンキラーキラー。
ドンキラーが暴走した際、それを止めるために用意された抑止力である。
その存在は噂でしかなかった。
ドンキラーを止める方法を探していた介人は桃井 陣の元へと向かう。介人と陣は、作品上では初対面となるわけだ。しかし、旧知の仲ではあるようで、介人のことを「トゥルーヒーロー」と呼び、かしこまる陣。年齢的には陣の方が遥かに上だろうが、立場は完全に逆の様子。最近は写真集ビジネスにご執心のトゥルーヒーローに陣は何を思うのだろうか。
ドンキラーを止める手段について質問する介人に陣は、ドンキラーキラーという兵器が存在するらしいと伝えるが、それがどこにあるかは知らないとのことだった。
ところがそれは、思いもよらないところに存在していた。
生まれたばかりの桃谷ジロウを拾って育ててくれた、村の駐在・寺崎が持っていたのである。
寺崎の誕生日を祝うため、久しぶりに村へと戻ったジロウが、寺崎家の仏壇に置かれているのを発見したのだ。
何故、寺崎がそれほどまでに重要なものを持っていたのかは不明だ。
しかし、懲りないジロウがそのボタンを押したことでドンキラーキラーが出撃し、ひとまずドンキラー騒動は収まる。
だがこれだけでは終わらない。
ラストシーンでは、ジロウが一心不乱に何かを作っている。周りには大量の折り紙。寺崎の誕生会のお祝いをするための何かを作っているのか? それにしては不穏な空気が漂っている。これと似た映像を、我々はどこかで観たことがある。
出かけていた寺崎が帰宅する。
「お帰りなさい」と立ち上がるジロウ。
その後に残されたのは、ペンギンの折り紙。
猫、鶴、そしてもう一つ、ペンギンの折り紙を折る者。
それは獣人だ。
猫と鶴は既に登場しており、最後のペンギンは一体誰だ? と誰もが思っていたところにこの展開である。
そう来たか。
ようやく終盤らしい展開を見せ始めた『ドンブラザーズ』。これでもかと広げられた風呂敷を、どのようにまとめるのか見ものである(まとめられなかったら、それはそれでドンブラらしい?)。
それでは、ここまでお読みいただきありがとうございました。
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