2021年8月22日放送『仮面ライダーセイバー』第47章「終わる世界、生まれる物語」(監督:石田秀範 脚本:長谷川圭一)
ワンダーワールドに飲み込まれ、消滅する世界。
それを食い止めようと滅びの塔に向かったものの、圧倒的な力を持つ四賢神の前に次々と倒れる剣士たち。
そして、ラスボス・仮面ライダーストリウスに蹂躙される飛羽真の運命は?
1年間続いてきた『仮面ライダーセイバー』もついに最終回。
物語の結末はどのようなものだったのか?
第47章を本音でレビュー。最後までおつきあいいただければ幸いだ。
キャスト
ここでは第47章のキャストをご紹介する。
それぞれウィキペディアに記載のある方はリンクを貼っておくので、是非、他の参加作品もチェックしていただきたい。
神山飛羽真/仮面ライダーセイバー:内藤秀一郎
新堂倫太郎/仮面ライダーブレイズ:山口貴也
須藤芽依:川津明日香
富加宮賢人/仮面ライダーエスパーダ:青木 瞭
尾上 亮:生島勇輝
緋道 蓮/仮面ライダー剣斬:富樫慧士
大秦寺哲雄:岡 宏明
ユーリ:市川知宏
神代玲花:アンジェラ芽衣
神代凌牙:庄野崎 謙
マスターロゴス:相馬圭祐
バハト:谷口賢志
ストリウス/仮面ライダーストリウス:古屋呂敏
レジエル:高野海琉
ズオス:才川コージ
大人のルナ:横田真悠
尾上そら:番家天嵩
本の中の少年:青木 凰
白井ゆき:長谷部 瞳
尾上晴香:中島亜梨沙
記者:岩永ひひお
市民:正木浩平 ・ 夕 帆
タッセル:レ・ロマネスクTOBI
ソフィア:知念里奈
【主題歌】
「ALMIGHTY〜仮面の約束 feat.川上洋平」東京スカパラダイスオーケストラ
作詞:谷中 敦 英語詩翻訳:川上洋平 作曲:川上つよし 編曲:東京スカパラダイスオーケストラ 歌:川上洋平
【劇中歌】
「Timeless Story」
作詞:瀧尾 沙 作曲:山下康介 歌:歌人三昧サマディ
感慨深くはあるけれど・・・
物語の結末は、大団円。世界が救われた身代わりとして姿を消してしまった飛羽真が再び姿を現し、共に戦った仲間たちが満面の笑顔で駆け寄る。
これまでの戦いで命を落とした始まりの5人(タッセル、マスターロゴス、ストリウス、レジエル、ズオス)も再び姿を現した。いろいろあったが、今は皆、平和になった世界を祝福している。
みんなにこやかだ。いつの間にか、まるでデーモン小暮閣下みたいな声色を使っていたストリウスまで好青年になってしまった。
さらにはバハトまで爽やかすぎる。何があった? 髪切った?
常に沈鬱な空気の漂っていた物語が、晴れてハッピーエンドを迎えたのは何よりだと思うし、どんな困難にも屈せず、命懸けで戦ってきたヒーローたちが平和を掴み取ったというのも、納得のいく結末だとは思う。
ただし、以前、別記事で書いた本作の評価を覆すほどのものだったか? といえば、大いに疑問が残る。
「ひとまずキレイに終わらせた」ようにしか見えなかったというのが正直な感想だ。
なんと言っても、このレビューを書くにあたって、二度ほど見返したにも関わらず、何を書けばいいのか困っている私がいる。全てが薄っぺらのまま終わってしまった、としか言いようがない。
ライダーなのにモブ扱い
薄っぺらくなってしまった最大の理由は、キャラクターの誰一人として、人物像を掘り下げられないままだったことだろう。あろうことか、主人公の神山飛羽真でさえ掘り下げられてはいなかったのだ。
過去に巻き込まれた厄災によって記憶を失い、しかし何故か炎の聖剣に見出されて今日まで生きてきた「いいひと」。少年時代を共に過ごした幼馴染みの言葉がきっかけで小説家となった(記憶喪失なのに)。その幼馴染みの一人である女の子・ルナは、実は異世界の存在。飛羽真は、彼女に見染められたが故に、世界の存亡を握る存在となってしまった、という無茶苦茶な設定だ。
仲間の剣士たちは誰も彼も浮世離れしているので、彼らもまた異世界の住人かと思いきや、どうやら同じホモサピエンスのよう。しかし、ならば何故その普通のホモサピエンスである彼らが剣士になったのか? というキャラクターそれぞれにあるはずのエピソードゼロが全く語られていないため、いつまで経っても親近感も共感も湧かない。なのに、そのよくわからない人たちが皆、仮面ライダーなのだ。
正義の味方に細かい設定は不要? だとしてもライダーを名乗るなら、それぞれにパワーアップの機会くらいは与えてあげて欲しかった。過去作を思い返した時に、主人公以外のライダーにフォームチェンジがないというのは珍しくはない。しかし『セイバー』では最後まで重要な役割を果たした賢人でさえ、パワーアップしていないのはいかがなものだろうか(後日発表されたスピンオフでは新フォームが登場した)。
飛羽真と倫太郎だけが次々とパワーアップを果たしていく中、他のライダーたちは登場した頃からまるで変わらぬ姿で黙々と戦い続けてきた。唯一、蓮だけはデザストという存在と出会うことで戦闘力も精神力もレベルアップしているが、他の剣士たちはすっかり放置されたのである。
ただの脇役であれば、それもまた仕方ないで済ませられるが、皆、「仮面ライダー」の看板を背負っているのだ。ドラマの見せ場があったから良かろうというのでは、あまりにも酷い。仮面ライダーとしての見せ場を与えなかったのは、絶対に失敗である。これによって、仮面ライダーという名のモブが大量に生み出されてしまうという目を覆いたくなる事態となってしまった。
全ての聖剣の力を使えるという「クロスセイバー」だけでもどうかと思ったのに、セイバーの最終形態「オールマイティフォーム」では、全ての本の力まで使えることになり、他のライダーたちのモブ感を、さらに強める結果となってしまった。
これにより、よくわからない人たちの中途半端な群像劇としてドラマの面白さも中途半端になってしまっただけでなく、仮面ライダーファンの失望まで買う羽目になってしまった。
ラストの飛羽真、倫太郎、賢人の3人によるグランドフィナーレだって、あれは第10章でお互いの友情を確かめ合うシーンで示された布石がラストで回収されたんだと言う方もいるかもしれないが、それならそもそもライダーは3人で良かったのだ。
賢人の父・隼人のエピソードを活かすためにカリバーが存在するとか、マスターロゴスがソロモンになるとか、この程度ならまだしも、とりあえず正義のために戦うライダーは3人で良かった。むしろそっちの方が物語は深く描かれることになっただろう。
とはいえ・・・
1年間の放送が終了した。
次回、『リバイス』への繋ぎとなる「増刊号」が予定されているので、一応来週も『セイバー』の面々に会うことはできるのだが、本編はこれで終了である(倫太郎の芽依への告白まで延期されたのは微妙だが)。
スタッフの皆さんも、キャストの皆さんも、このコロナ禍での撮影は精神的にも肉体的にも大変だったはずだ。
予想とはちょっと違うものではあったけれど、『セイバー』を愛する視聴者さんたちをリモートエキストラとして巻き込むアイデアも悪くはなかったと思う。個人的には単純に「頑張れセイバー!」といった応援の声が集まる方が燃える展開になったように思うけれど、それはまあ仕方ない。
それにしても、私自身がびっくりするほど辛口になってしまった。それもこれも愛するが故、である。この1年間、どんなに周囲が「つまらん」と言っていても視聴をやめることなく応援し続けてきたのだ。思っていたことを率直に書く、くらいの権利はあるだろう。
しかし、文句を言うのが主旨ではない。私はこれからも、全力で『セイバー』を演じてきたキャストの皆さんと、これからもライダーシリーズに関わるであろうスタッフの皆さんを応援し続けたい。特に主演の内藤秀一郎さんは番組開始直後にスキャンダルとか、ちょっとヒーローとしてはいかがなものか、といった報道をされてしまったことで、番組の不人気に対して責任の一端を感じていたところもあったかもしれないが、どうかこのまま役者の道を進み続けてほしいと思う。
気にするな、と言えないところはあるけれど、『セイバー』を正義のヒーローの原体験として胸に刻んだ子供たちもいるはずだ。50年後(仮面ライダー生誕100周年!)に再びライダーとしての勇姿を見せてほしいと心から思う。
だからこそ本記事も、最後はただ一言、関係者の皆様に心から「お疲れ様でした!」と伝えて筆を置きたい。
もしも最終回を見逃した方は、「TTFC(東映特撮ファンクラブ)」で視聴可能なので、チェックしていただきたい。
それでは、ここまでお読みいただきありがとうございました。
\ 僕と握手! /