1977年4月6日放送『快傑ズバット』第10話「野球の敵を場外に飛ばせ」(監督:奥中惇夫 脚本:長坂秀佳)
今回は、原作者・石森章太郎先生がプロ野球選手として登場する特別回。
短いけれど、お芝居も。
最後までおつきあいいただければ幸いだ
キャスト
ここではキャストをご紹介します。本作初登場でウィキペディアに記載のある方はリンクを貼っておくので、他の参加作品なども是非チェックしていただきたい。
快傑ズバット/早川 健:宮内 洋
飛鳥みどり:大城信子
寺田オサム:中野宣之
トミー:藤井智憲
黒やもり:小沢章治
竜一:佐野光洋
川口:若尾義昭
テツオ:大栗清史
首領L:はやみ竜次
ナレーター:青森 伸
石森選手:石森章太郎(特別出演)
東条進吾:斉藤 真
石森章太郎先生 降臨
原作者・石森章太郎(この当時はまだ「石ノ森」ではなかった)先生が劇中に登場。しかも、まさかのプロ野球選手役である。
当初は、マツコ・デラックスさんにアスリート役を任せるくらいミスマッチな印象を受けたが、実際に見てみると、草野球チームのおじさんみたいで、思ったほどの違和感はない。
現役時代のイチロー選手が、「腹が出たら野球をやめる」と言っていたが、確かに野球というのはお腹が出ていてもできるスポーツ、といったイメージが強いのは何故だろう? 実際、そういう選手がいたということもあるだろうし、草野球をやっているおじさんたちの印象も強い。サッカーでもバレーボールでもバスケットボールでも、腹の出た選手なんて想像が出来ないのに、何故か野球だけはできてしまう。だから、石森章太郎先生が野球選手役でも違和感がないのだ。この当時の日本が、プロスポーツといえばダントツで野球!という状況だったのが功を奏した。サッカー選手役だったらブーイングものだ。
黒やもり
久しぶりに顔の半分をマスクで隠す系のボスキャラ登場だが、この黒やもり、とにかくマスクのサイズが合っていない。
頬袋でもあるのか? と思うくらい微妙なサイズ感である。右の頬には、どんぐりが山ほど入っているのかもしれない。
さらに微妙なのは、黒やもりの作戦だ。
プロ野球のスター・石森選手の誕生日をお祝いするというTV番組内で石森選手を殺し、石森選手に憧れる全国の少年たちの夢をぶっ壊すという目的そもそもが微妙だが、お祝いの演奏をするグループ・ホワイトゴーグルズの一人を殺し、その後釜として刺客を潜り込ませて殺すという、なんとも面倒くさい作戦だが、悪の大組織ダッカーの首領Lはノリノリ。
他のヒーローものと比べると、毎回、やけにスケールの小さな悪事ばかりが目に付くが、島国・日本の片隅で「世界征服」を唱え続けるよりはよほど現実的なのかもしれない。
それにしてもこの「黒やもり」という名前の持つ不気味さは悪党のネーミングとして見事。なんとなく滋養強壮にも良さそうなのは気のせいだろう。
トミー
黒やもりの用心棒がトミー。
おそらく富井さんだろう。
自称・日本一の(トラン)ペット吹き。当時、イカしたミュージシャンたちはトランペットをペットと呼んでいたのだろうか? 実は今でも? そのあたりのミュージシャン関係の話はわからないが、サングラスをグラサンと呼ぶくらいにはダサいと感じる。
しかもこのトミー、日本一のペット吹きがどうやって用心棒をこなしているのかと思ったら、まさかの吹き矢だった。トランペットに仕込んだ吹き矢でターゲットの命を奪っているらしい。しかも吹き矢がデカい。手巻き寿司くらいのサイズ感。これでまともに音が鳴るのか不安になる。
毎度お約束の、早川と用心棒の珍勝負も、日本一のペット吹き対決のはずが、ただの吹き矢対決となる。
仁王立ちで真正面から吹き矢を放つトミーは、日本一のペット吹きどころか、ただ武器の性能に頼っているようにしか見えない。それに対して早川は、跳弾を利用したテクで、トミーの度肝を抜く。
こうして日本一をかけたペット吹き対決(参加者2名)は、早川の勝利に終わる。
ちなみに私は、大学時代にテニスで自称・東京都杉並区2位の人に勝ったことがあるが、その時の虚しさを思い出した。
兄弟の絆
昔から特撮ヒーローものなどで頻繁に使われる鉄板ネタとして、病気の少年・少女のために、「俺が必ず◯◯してみせるから、お前も勇気を出して手術を受けるんだ!」というのがあるが、今回は、まさにそれ。
病気の弟・テツオを勇気づけるため、石森選手の前でトランペットを吹くという兄・竜一。
黒やもりにトランペット吹きを殺され、急遽代役を探していたグループのオーディションに見事合格するが、そのせいで、トミーを潜り込ませる予定だった黒やもりの怒りを買い、命を狙われる。
そして当日、石森選手を前に演奏を披露するホワイトゴーグルズ。
しかし、メンバー全員が白いゴーグルを装着して演奏するという謎のスタイルのおかげで、トミーがこっそり潜り込んでしまう。セキュリティの低さがヤバすぎる。この国の安全保障はどうなっているのか?
竜一を救い、今まさに撃ち殺されようとしている石森選手を救うため、ズバットが登場する。
「罪もないペット吹きを殺し、あまつさえ子供の憧れ・石森選手まで殺そうとした黒やもり。許さん!」
何度聞いてもシビレる名乗りだ。古今東西、名乗りで「あまつさえ」という言葉をこれほど使ったヒーローはいなかっただろう。ギネス認定して欲しい。
これまでもそうだったが、ズバットには銃弾が効かない。当たっても効かないのではなく、ムチで全て叩き落としてしまうのである。銃弾でさえピンポイントで弾くのに、手巻き寿司ほどの大きさもある吹き矢で敵うはずがない。トミーはあっさり敗れてしまう。
さらに黒やもりもズバットアタック(飛び蹴り)で粉砕。やられた黒ヤモリは、なかなかねっとりとした芝居で最期を飾る。
今回は、原作者・石森章太郎先生が登場するという特別回だったわけだが、そのことを声に大にして宣伝するあたりに当時のおおらかさが伺える。『仮面ライダー』の頃から「次回は北海道ロケ!」なんてことを宣伝文句にしていたし、少なくとも特撮ヒーローであってもドラマ性重視となっている最近では絶対にやらないことだ。
最近だと、『仮面ライダーセイバー』の最終回に、脚本家・長谷川圭一さんがこっそりゲスト出演したりもしていたが、あれは大きなお友達向けのファンサービスであって、それを客寄せに使っているわけではない。
ともかく、現代では絶対に生まれ得ない70年代のヒーローの姿を、その網膜と記憶に焼き付けて欲しい。当時を知る人はもちろんだが、見たことがないという方にも是非一度は見てもらいたいのが『ズバット』である。
それでは、ここまでお読みいただきありがとうございました。
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