1977年4月27日放送『快傑ズバット』第13話「少年殺し屋のバラード」(監督:小西通雄 脚本:長坂秀佳)
とある町を訪れた私立探偵・早川 健が出会ったのは、誰からも恐れられ、疎まれている高校生の京介だった。「人殺し」と陰口を叩かれ、孤立する京介の様子を窺う悪党の狙いは?
日本が誇るカルトヒーロー『快傑ズバット』、見どころ満載の第13話をレビュー。最後までおつきあいいただければ幸いだ。
キャスト
ここでは今回のキャストをご紹介。本作初登場でウィキペディアに記載のある方はリンクを貼っておくので、他の参加作品なども是非チェックしていただきたい。「え? あの作品に出てた人?」といった発見があるかもしれない。
【キャスト】
快傑ズバット/早川 健:宮内 洋
飛鳥みどり:大城信子
寺田オサム:中野宣之
虚無僧三郎太:中井啓輔
京介:西塚 肇
美枝子:谷川みゆき
毒さそり:松本敏男
町の人:稲川善一 ・ 近松敏夫 ・ 飯田テル子 ・ 山本 武
不良高校生:大西芳夫 ・ 豊岡 晋
首領L:はやみ竜次
ナレーター:青森 伸
東条進吾:斉藤 真
少年・京介
町中の人が恐れる少年。それが高校生の京介だ。
元々は、スポーツ万能で明るい性格。絵に描いたような人気者だった京介が恐れられるようになった理由は、実の父親を殺した罪で捕まったからだ。
住宅街に響く銃声。警察が駆けつけると、そこには父親の死体を前に立ちすくむ京介の姿。その手にはピストルが握られていたらしい。
当初は無実を訴えていた京介だったが、執拗な警察の追及に嫌気が差したのか、ついには「もうどうでもいい」と投げやりな態度になったという。犯行を認めたわけではなさそうだが、それからというもの、町の人たちからは「人殺し」と陰口を叩かれ、後ろ指をさされるようになったらしい。
その評判どおり、町の人たちにも容赦なく暴力を振るう京介だが、悪党にもてあそばれる子供を救おうとするなど、隠しきれない優しさがチラリ☆
どことなく寂しげな表情は、「3年B組 金八先生2」に登場した加藤まさるを思い出す。俺たちは腐ったみかんじゃねえ。
虚無僧三郎太
さそり組の用心棒・三郎太が登場。時代劇に登場しそうな虚無僧である。首から掛けた袋に「明暗」と書かれているのがこだわりのポイントなのだろう。
時代錯誤な格好をしているが、「尺八ボウガン」という前人未到の武器を使う。
仕込み・・・とも言えない。ただの改造尺八である。こんなもの三郎太以外に持っている者などいるはずもない、と思っていたら、早川 健は、使いこなせるらしい。しかも日本一の腕前で。流石である。
恒例の日本一対決が始まる。先行の三郎太は、跳弾を使い、背後にいたブランコで遊ぶ子供を公園の木に吹っ飛ばして縫い付けるという離れ業を見せつける。
無関係の子供を巻き込む三郎太に怒りを燃やす早川だったが、三郎太の非道はまだ終わらない。公園によくあるグルグル回る遊具に美枝子を縛りつけ、その頭には風船がつけてある。日本一の腕前なら、その風船を後ろ向きで撃てというのだ。
頭に風船をつけた女子高生が口を塞がれて公園の遊具でグルグル回されているシーンはシュール過ぎるが、三郎太以上の跳弾で、美枝子の頭の風船を割り、三郎太の編笠を貫く早川。言うまでもなく早川の圧勝である。
ちなみに、以前は公園によくあった、あのグルグル回る遊具の名前は「グローブジャングル」というらしい。知らなくても別に困らないが、知っていても損はない。
毒さそり
さそり組の組長・毒さそり。久々に悪党らしい悪党である。
これまでは、悪の大組織・ダッカーへの上納金のためにセコい金儲けをしようというボスが多かったが、毒さそりは、天才的な運動神経の持ち主だった京介を、いずれ世界一の殺し屋に育成することを目論んでいた。親殺しの汚名を着せ、世間から孤立したところをさそり組にスカウトし、そこで育て上げようというのだ。
オリジナルデザインを施した眼帯が厨二っぽいが、少女にも平気で手を上げ、秘密を知った者は容赦なく処刑する残忍さも持ち合わせている。
襟元からのぞく赤いさそりは、こだわりのアイテムか、はたまた部下の仕掛けたドッキリか。
凶弾から命を救ったのは・・・
お互いに誘い出された京介と美枝子。
毒さそりの京介スカウト作戦が最終盤に突入したのだ。
京介を失神させたうえで、美枝子を銃殺し、またもや京介に濡れ衣を着せようと言う腹づもり。
計画どおり、凶弾に倒れる美枝子。
ピストルを手にしていた京介を、人殺しと罵り、リンチする町の人たちは、それを止めようとする早川にも容赦なく制裁を加える。鉄パイプでめったうちにするという残虐行為に震えが走る。さそり組より、この町の人たちの方がよほど恐ろしいが、毒さそりの計画どおりに事は進んでいる。
そこに現れたのは、殺されたはずの美枝子。早川の勧めで、万が一のために防弾チョッキを着ていたので助かったというトンデモ展開がいかにもズバットらしい。たまたま胸ポケットにしまっていた親の形見のアクセサリーが銃弾を防いでくれた・・・といった、ありふれた展開はお呼びでないのだ。
そうして美枝子の口から、真犯人の名が語られる。もちろん、毒さそりである。
さて、計画が頓挫してしまった毒さそりは、美枝子をはじめ、自分の犯行を知った町の人たちを縛り上げ、爆殺を企てる。頼りの早川も撃たれてしまった(お約束)。
導火線に点けられた火が爆弾に迫る。絶体絶命・・・! 高笑いして去っていく毒さそり。不意に轟くエンジン音。ズバット参上である。
「町の人々を苦しめ、一人の少年を殺し屋に仕立てるためにその父親を殺し、あまつさえ少女や罪もない人々まで殺そうとした毒さそり、許さん!」
いつ聞いても、ラストバトル前の口上が気持ちいい。
毒さそりは、三郎太を使って、戦いを5分以上(ズバットの活動可能なタイムリミット)引き伸ばそうとするが、あっけなく撃沈。一方的にボコられて、ズバットアタックでダウン。早川は人知れず去っていく。早川のおかげで人殺しの汚名を返上できた京介の「俺も早川さんみたいな男になるよー!」という叫びが空にこだまする。この余韻がいい。手塚治虫先生の『ブラックジャック』の各話ラストシーンほどではないけれど。
「俺がやったった」とドヤ顔するのはヒーローっぽくない。というのは、もしかしたら古い感覚なのかもしれないけれど、それでもやっぱり誇らないカッコよさというのは厳然と存在すると思う。『ズバット』には間違いなくそれがある。
それでは、ここまでお読みいただきありがとうございました。
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