仮面ライダー生誕50周年記念プロジェクトの一つとして、2022年、白石和彌監督の手でリブートされる『仮面ライダーBLACK』。その話題の新作『仮面ライダーBLACK SUN』配信スタートに先駆けて、改めて『仮面ライダーBLACK』を紐解いてみたい。
『仮面ライダーBLACK』といえば、だいぶ人気が下火になっていた仮面ライダーに再び火をつけた名作である。ライダー伝説第2章の開幕と言っても過言ではない(ちなみに第3章は『クウガ』以降の平成ライダー)。本記事では、第1話「BLACK‼︎変身」をレビュー。最後までおつきあいいただければ幸いだ。
スタッフ・キャスト
ここでは今回の主要スタッフとキャストをご紹介。ウィキペディアに記載のある方はリンクを貼っておくので、他の参加作品なども是非チェックしていただきたい。既に30年以上前の作品となるため、「え? あの人が出てたの?」といった発見があるかもしれない。
【スタッフ】
監督:小林義明
脚本:上原正三
音楽:川村栄二
アクション監督:金田 治
【キャスト】
南 光太郎/仮面ライダーBLACK:倉田てつを
秋月信彦:堀内孝人
秋月杏子:井上明美
紀田克美:田口あゆみ
南 教授:土師孝也
南 友子:遠藤英恵
ナレーター:小林清志
ダロムの声:飯塚昭三
大神官ビシュム:好井ひとみ
大神官ダロム:庄司浩和
大神官バラオム:高橋利道
秋月総一郎:菅 貫太郎
【主題歌】
「仮面ライダーBLACK」作詞:阿木耀子 作曲:宇崎竜童 編曲:川村栄二 歌:倉田てつを
「LONG LONG AGO,20TH CENTURY」作詞:阿木耀子 作曲:宇崎竜童 編曲:川村栄二 歌:坂井紀雄
ゴルゴムに追われる男
夜の街を逃げ惑う一人の男。それが本作の主人公・南 光太郎である。
彼を追いかけているのは、見るからに人ではない3人組。白いローブをまとった男女。見た目も普通ではないが、滑るように空を飛び、不思議な力で光太郎を襲う。
彼らの名はダロム、バラオム、ビシュム。ゴルゴムという暗黒結社の大神官と呼ばれる幹部たちである。
暗黒結社ゴルゴムとは、有史以前から存在するという謎の組織で、優れた人間だけを怪人として、怪人だけの世界を創り上げようとしている、いわば選民思想を持った組織だ。同時に驕り高ぶる人類の文化、文明の完全破壊をも目論んでいるらしい。
彼らが光太郎を追っているのは、5万年に一度訪れる、次期創世王を決める時が迫っているからだった。創世王とは、ゴルゴムの王のことで、皆既日食の日に生まれた優秀な二人の人間の体内に、キングストーンと呼ばれる太陽と月、対となる2つの石を埋め込み、同等の能力を持つ改造人間(これを世紀王という。紛らわしいが、創世王候補者のことだと思えばわかりやすい)に仕立て上げ、戦いに勝利した(2つのキングストーンを手にした)者にその地位を継承するという習わしらしい。
その世紀王の一人に選ばれたのが南光太郎だった。彼はゴルゴムによって改造手術を施され、体内にキングストーンの一つである“太陽の石”(後は“雨雲の杖”があれば、竜王の城に辿り着けそうなネーミング)を埋め込まれたところで、ゴルゴムから逃げ出し、大神官に追われていたのだった。
“5万年周期”(長すぎじゃね?)とか、“皆既日食の日に生まれた優秀な人間”(世界中にどれほどの人数がいるのだろう?)とか、ツッコミどころは多いけれど、この設定を理解していれば、本作をより楽しむことができるのは事実。もちろん、知らなくとも楽しめるのは間違いないのだけれど、知っておいて損はない。
もう一人の世紀王と、裏切りの父
先ほど書いた通り、世紀王の資格を持つ者はもう一人存在する。
それが、南 光太郎の親友・秋月信彦である。
光太郎は、幼い頃に父を亡くし、その際、父の友人である秋月総一郎に引き取られたのだが、秋月家には、信彦という光太郎と同い年の息子がいた。偶然にも、誕生日も同じ(皆既日食の日)だったという二人は、それから実の兄弟のように育ってきた。
その信彦が、もう一人の世紀王。太陽の石を埋め込まれた光太郎がブラックサンと呼ばれるのに対し、月の石(アポロ13号絡みみたいなネーミング)を埋め込まれたために、シャドームーンと呼ばれる。
これによって、親友である二人に、命の奪い合いという試練が課されたというわけで、しかもそのことは父・秋月総一郎も了承していたことが判明する。ただし、総一郎は、光太郎の両親がゴルゴムへの勧誘を断ったことで殺されてしまったことを知り、自らと家族の安全を考えて渋々従っていたというだけで、息子たちが過去の記憶まで消されてしまいそうになったことには強く反対し、光太郎の逃亡を手伝った。
その総一郎が最後にクモ怪人によって殺されてしまうのは、悲劇としか言いようがないが、それでも光太郎たちにとっては、父の愛が偽りではなかったことの証となるエピソードだったに違いないし、ゴルゴムと戦う理由を明確にするという意味でも、素晴らしいはじまりの物語であることは間違いない。
ちなみに、初の怪人であるクモ怪人は、その恐ろしげなデザインが秀逸だ。
BLACK!変身
自分が改造された、などとは信じたくない光太郎だったが、街のサイン看板に叩きつけられ、高圧電流を浴びても無事だったことで、信じざるを得ない状況になる。
さらに、無造作に受け取ったジュースの入ったガラス瓶が粉々に砕けてしまったことで、やはり自らの身体が普通ではないということを思い知らされる。
この「高圧電流でも死なない」「普通の生活が送れないほどの馬鹿力」というのは、初代仮面ライダーの頃から改造人間の悲哀を表現する演出だった。そういった意味では、あえて原点に立ち返るような展開を意識しているといえる。
初変身は、大神官たちに追われた際のこと。逆光で詳細はわからなかったが、完全に異形である。ただバッタ男というよりは、なんだか『サイレントヒル2』に登場したレッドピラミッドシング(三角頭)みたいである。もちろん『サイレントヒル2』の方が後出しであるが。
そこからBLACKへと変身を遂げる。
ただし、これは防衛本能によるものと言ってよく、自らの意思で変身するのは、総一郎がクモ怪人に殺された時である。
倉田さんのキレッキレの変身シーンは今見てもカッコいい。
BLACK伝説のはじまり
『仮面ライダーBLACK』は、仮面ライダーの歴史に燦然と輝く綺羅星のような作品である。既にオワコン(当時、こんな言葉はなかったけれど)だと思われていた仮面ライダーを見事に復活させた立役者だ。実際、私もそうだったが、一時は失せていた『仮面ライダー』に対する情熱が『BLACK』によって再燃したというファンは多い。
それではBLACKの魅力とは何だったろう? と考えると、シンプルでカッコいいデザイン、シャドームーンという魅力的な宿敵の存在、呼べば答える『ナイトライダー』に登場したキット(ナイト2000)のような相棒・バトルホッパーなど枚挙に暇が無いが、スーツアクター・岡元次郎さんの佇まいのカッコよさというのも絶対に外せない要素だ。
後年、平成ライダー18作で主役ライダーを演じたミスター平成ライダーこと、高岩成二さんが、それまでどちらかといえば興味のなかったスーツアクターの魅力に気づいたキッカケは、新人の頃に見たヒーローショーでの岡元次郎さんのカッコよさにシビれたからだと語っていたことがある。
岡元次郎さんの佇まいについては、今さら私などがどうこう言うよりも、『仮面ライダーBLACK』第1話を見てもらえれば、特撮が好きかどうかなんて無関係に必ず伝わるはずだ。それどころか、オープニングでバトルホッパーにまたがる、たったそれだけで十分だろう。続いて流れる倉田てつをさんの歌声は、かなりファンタジィではあるけれど、これも初代『仮面ライダー』へのオマージュ(藤岡 弘、さんが主題歌を歌っていた)だと考えれば納得できる。
とにかく、50周年を迎えた今だからこそ、そして『ブラックサン』の配信を間近に控えた今だからこそ、『BLACK』の魅力を再確認してみたい。
視聴するにはTTFC(東映特撮ファンクラブ)がオススメだ。一般的なVODなら1話あたり100円程度のレンタル料が必要なため、全話視聴するには5,000円ほども必要となるのに対し、こちらであれば月額960円(税込)となっている。気になる方は、是非、以下の記事もチェックしていただきたい。
それでは、ここまでお読みいただきありがとうございました。
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