2022年5月29日放送『暴太郎戦隊ドンブラザーズ』ドン13話「さよならタロウ」(監督:渡辺勝也 脚本:井上敏樹)
私が「さよなら」と聞いて思い出すのは、『ドラえもん』のエピソード「さようならドラえもん」である。
ボロボロにされながらも、ドラえもんを安心させるため、一人でジャイアンに立ち向かったのび太の覚悟と優しさは、何度見ても色褪せない。涙なくしては読めないエピソードである。
ドン13話「さよならタロウ」もまた、切なさの香るエピソードとなった。
ネタバレも含むが、最後までおつきあいいただければ幸いだ。
キャスト
ここではドン13話のキャストをご紹介。
本作初登場でウィキペディアに記載のある方については、リンクを貼っておくので、他の参加作品なども是非チェックしていただきたい。
なお、以下で使用している画像は全て『暴太郎戦隊ドンブラザーズ』より引用している。
桃井タロウ/ドンモモタロウ
樋口幸平
猿原真一/サルブラザー
別府由来
鬼頭はるか/オニシスター
志田こはく
犬塚 翼/イヌブラザー
柊太朗
雉野つよし/キジブラザー
鈴木浩文
五色田介人
駒木根葵汰
ソノイ
富永勇也
ソノニ
宮崎あみさ
ソノザ
タカハシシンノスケ
雉野みほ/夏美
新田桃子
房子
原 扶貴子
買い物客
竹下かおり・うみぐちうみ
ナンパ男※画像左
三井淳平
王家の生き残り
脳人の世界「イデオン」を壊滅し、人間界で人と脳人の共存を唱えた存在。
その名も「ドン王家」。
そのドン王家が滅亡する直前、人間界に送り込んだ末裔がドンモモタロウ。つまり、桃井タロウだったわけである。
やはり、大方の予想通り、タロウは脳人だったワケだ。
絵が描けないソノイ、愛がわからないソノニ、笑うという感情がわからないソノザ。そして、ウソのつけないタロウ。彼らは皆、完璧とも言える能力を持ちながら、しかし大きく欠落したものを抱えた存在である。
その脳人と人間の垣根を取り払おうとしたために滅亡させられた王家の末裔として、タロウはソノイたちの駆逐対象となってしまう。
お互いに正体を知らないとはいえ、心を通わせはじめたタロウとソノイを決定的に引き裂くドラマティックな展開だ。
余談だが、「イデオン」というネーミングは、おそらく「イデア(理想とか理念といった意味)」から来ていると思うのだが、つい伝説巨人的なものを思い出してしまうのは世代だからだろう。惑星すら一刀両断するアレだ。『ドンブラ』の最終回でイデが発動(打ち切り)しないことを切に願うばかりだ。
ボイコット
イヌブラザー以外の4人の正体が判明したことで、改めてドンブラザーズとしての結束を固めたいと考える猿原たちだったが、タロウは「まずは自分たちの欠点を直せ」と一方的。
そんなタロウに対し、「褒めれば伸びる」と褒め言葉を要求する仲間たちだったが、褒め言葉を発しようとした瞬間、脈が止まってしまうタロウ。
ウソをつくと死んでしまうという特異体質のタロウにとっては、心からの褒め言葉でなければ、それはウソと同義であるらしい。
お世辞ひとつ言えないタロウに対し、猿原は「もう一緒には戦えない」と、はるかと雉野も巻き込んで、今後の戦いをボイコットする。それによって、タロウに自分たちの存在価値を思い知らせようというのだが、果たして・・・?
迷惑おばさんから生まれたヒトツ鬼
夫に先立たれ、息子は家出。ひとりぼっちになってしまった房子という女性が、ヒトツ鬼の宿主。
「誰かに構ってほしい」
寂しさから生まれた強い欲求を満たすため、誰彼構わず噛み付く毎日。
バーゲンセールでは他人が手にしたものを「私のものだ」と奪い取り、美容室では隣の席で眠りこける男(犬塚)に罵詈雑言を浴びせる。
喫茶どんぶらでは、出されたおしぼりが熱すぎて火傷をした、などと騒ぐ。その際に発した「アチチ、ア〜チ〜」の節回しは完全に郷ひろみさんの「GOLDFINGER’99」のそれ。そもそもの演出なのか、演じる原さんのアドリブなのかは不明だが、当時のブームを知る世代にはグサリと刺さる。
「お代は結構です」と謝罪するはるかにも「この自慢の手を火傷させておいて、コーヒー代だけで済まそうってのかい!?」と逆上する房子だったが、介人がその手に口づけをすることで態度は急変。
急に上機嫌となり、ドンペリを頼む房子に、「あるよ」と答える介人。まるでホストクラブである。心の中で「あるんかーい!」とツッコんだのは、はるかだけではないはずだ。
そんな房子から生まれたのが獣電鬼。
2013年から放送されたスーパー戦隊第37作目『獣電戦隊キョウリュウジャー』をモチーフとしたヒトツ鬼である。
獣電鬼
身長:194cm
体重:245kg
スキン:ブレイブインマスク
サンバのリズムで踊りながら、放電攻撃を繰り出す。
ドレッドヘアーのように垂れ下がったプラグと、怖さよりもエスニックな雰囲気が特徴である。
既におなじみとなった必殺奥義「打ち上げロボタロウ」で倒された後は、脳人レイヤーで獣電鬼ングへと巨大化する。
獣電鬼ング
身長:50.5m
体重:2074.6kg
スキン:強き竜のスキン
こちらもサンバのステップは健在。
ドンオニタイジンの攻撃をひらひらとかわしていくが、キジミサイルで足を止められ、最後はドンブラパラダイスで一刀両断される。
最近、ギアをドロップするシーンが割愛されているが、今回もおそらく介人の手元に「キョウリュウジャーギア」が転がっているのだろうと思われる。
「おでん」の約束
再び出会ったタロウとソノイ。お互いを認め合う、穏やかで優しい時間が流れる。
タロウが「人の命を軽んずる者」として打倒を誓う蒼き戦士がソノイであることも、ソノイが狙う、脳人の世界を壊滅させようとしたドン王家の末裔がタロウであることも、お互いにまだ知らない。知らないが故に、お互いに倒したい相手がいることを語り合う。
とはいえ、剣や盾を持って歩いている相手ならともかく、見るからにただの配達員であるタロウに、いきなり「あなたには倒したい相手がいますか?」と聞くソノイには違和感しかない。「ところで、変なことを聞くようですが・・・」という枕詞をつけたとて、である。
「もしもお互いに、その相手を倒せたら、うまいものでも食うか?」と誘うタロウ。今、フラグが立った。
「うまいもの?」と聞き返すソノイに、タロウが提案したのは「おでん」。しかし、おでんを知らないというソノイに「俺が教えてやる」と微笑むタロウ。「それは楽しみです」と微笑み返すソノイ。
お互いがお互いのことを知らないからこそ生まれた約束。
どちらかがどちらかを倒せば、実現することのない約束だ。
この優しい空気感の裏に流れる、これが実現することはない、という現実に、胸が切なくなる。
よくあるドラマなら、こうして立てられたフラグが回収されるのはもう少し先だろうが、『ドンブラ』は違う。
その後のバトルで、あっさりとお互いに身バレしてしまう。
つい先ほど約束を交わしたあの場所で、舌の根も乾かぬうちに決別する二人。
欲にまみれた人間に絶望していたソノイを照らした、純粋無垢な心を持つタロウという男が見せてくれた希望。
誰からも理解されず、孤独だったタロウの前に現れた、自らを理解してくれるソノイという男が見せてくれた希望。
お互いの希望は、絶望へと一変する。
二人が口にした「残念だ」という言葉は、お世辞でもなんでもなかったろう。
この後、ソノイがタロウに仕掛けた卑劣な質問も、きっと絶望ゆえだったのだろう。愛情が憎しみに変わった瞬間と言い換えても良い。あれほど正々堂々としていたソノイの姿はどこにもない。
隙を突かれたタロウは、ソノイの一撃によって消滅してしまうのだった。まだ戦隊として5人で名乗りも上げていないのに、主人公が消えるとか、展開が想像を超えすぎていてヤバい。
こうして、夏のおでんの約束は反故にされてしまったが、先々、冬に食べるおでんは格別だ、的なエピソードがあるのではないか、と期待している。
追加戦士登場?
こうして消えたタロウの後釜(?)として、次回、桃谷ジロウという新キャラクターが登場する。
普通に考えれば、いつもの追加戦士となるのだろうが、その出立ちからして、クセが強すぎる。
それに、まだイヌブラザーの正体も劇中では不明となっており、5人がきっちり揃ってもいないというこの状況で追加戦士というのは、とても不思議。
いや、そもそもこのタイミングで主人公が消滅する、という展開自体がめちゃくちゃなのだが。
とはいえ、あえて型破りなスーパー戦隊を狙っている『ドンブラ』である。
タロウがどのようにして戻ってくるのか? ジロウは何に変身するのかしないのか?
そしてもう一つ。
犬塚の思い出の中で、「美容師を目指していた」と夏美が語るシーンがあったが、果たして、みほと夏美の関係は何なのだろう? 同一人物ではないのか? そして、みほの獣人疑惑は?
『ドンブラ』には、これからも、我々の想像を超えた展開を見せ続けて欲しいものだ。
それでは、ここまでお読みいただきありがとうございました。
\ 僕と握手! /