2022年6月19日放送『暴太郎戦隊ドンブラザーズ』ドン16話「やみおちスイッチ」(監督:加藤弘之 脚本:井上敏樹)
ドンブラザーズに勝手に加入した(つもりの)、唯一無二のスーパーヒーローを目指す男・桃谷ジロウに巻き込まれていくドンブラザーズの面々。
初変身直後の回で闇堕ちとは、いくらなんでも早すぎると思うのだが、単に「狙いすぎ」とも思えない展開に舌を巻く。
「変化」を見せはじめたタロウと、「変さ」を見せつけるジロウ。
ドン16話をレビューする。最後までおつきあいいただければ幸いだ。
キャスト
まずはドン16話のキャストをご紹介する。
本作初登場でウィキペディアに記載のある方についてはリンクを貼っておくので、他の参加作品なども是非チェックしていただきたい。
なお、以下で使用している画像については、全て『暴太郎戦隊ドンブラザーズ』より引用している(※キャストとしてソノニ、ソノザもクレジットされているが、本編では見つけられなかった)。
桃井タロウ/ドンモモタロウ
樋口幸平
猿原真一/サルブラザー
別府由来
鬼頭はるか/オニシスター
志田こはく
犬塚 翼/イヌブラザー
柊太朗
雉野つよし/キジブラザー
鈴木浩文
桃谷ジロウ/ドンドラゴクウ
石川雷蔵
五色田介人
駒木根葵汰
ソノイ
富永勇也
ソノニ
宮崎あみさ
ソノザ
タカハシシンノスケ
雉野みほ
新田桃子
ゲーマー
湊 竜也
所長※画像右
しいはしジャスタウェイ
同僚
植田敬仁・竹内 啓
社長
河野宏明
ゲーム実況プレイで行き着いたのは
とある実況ゲーマーが、今回のヒトツ鬼の宿主。
「ゲームを圧倒的にクリアする」というのが、その欲望らしく、人々を次々とクリア(消滅)していく。
恐竜がモデルとなっており、頭部にティラノサウルス、胸部にトリケラトプス、左肩にはプテラノドン? 右肩には・・・と、複数の恐竜の化石がデザインされている。骨ということもあって、全体的に不気味な雰囲気が漂うが、今回は闇堕ちしたジロウがメインとなるため、思ったほど出番がないのが残念だ。
つい数週間前に、同じ恐竜をモチーフとしたヒトツ鬼が登場していたが、あちらは『キョウリュウジャー』モチーフで、こちらは1992年から放送されたスーパー戦隊シリーズ第16作『恐竜戦隊ジュウレンジャー』がモチーフとなっている。スーパー戦隊はモチーフが被りまくっているので、ヒトツ鬼を考えるのも大変そうだ。
恐竜鬼
身長:187cm
体重:224kg
スキン:時をかける化石
恐竜鬼が倒されると、巨大化して恐竜鬼ングとなる。
こちらは、先ほどよりもかなりシンプルに恐竜っぽいデザインになっているが、口から衝撃波を放つ様は、『シン・ゴジラ』を彷彿とさせる。
恐竜鬼ング
身長:52.1m
体重:2136.1t
スキン:ティラノザウルス
やる気スイッチ
ドンドラゴクウに変身した桃谷ジロウは、既にドンブラザーズの一員になった気満々。
自ら歓迎会を企画したり、他のメンバーに気に入ってもらいたい一心でちょっかいを出し続けるが、全て空回りしてしまう。
タロウの職場まで押しかけて、タロウの真似をし続けるジロウ。尊敬するタロウの真似をすることで何か掴むことができるかも? という努力は認めるが、弁当のおかずの食べ方まで逐一真似るのは、さすがに気味が悪い。
自作のマンガをはるかに手渡し、「盗作してもいいですよ」と要らないひとこと。故・手塚治虫先生のような格好をしているが、画力が酷すぎる。よく見ると、宇宙刑事みたいなキャラや仮面ライダーみたいなキャラが登場していたりもする。
猿原に披露した俳句は、ベタで煮詰めたベタといった具合。昭和のコントに登場しそうなネタである。
商談に突然乱入して、話をぶち壊された雉野は怒り心頭。雉野が怒鳴っているというだけで、かなり珍しい。
ドッグフードを与えたり、お手を要求したりと、犬塚は完全な犬扱い。
そういった行動が目に余ったのか、タロウ以外にはそっぽを向かれ、自分仕切りのセルフ歓迎会は、タロウと二人きりになってしまう。
それにしても、この独特な衣装をベースにしたコスプレが凄すぎる。そもそも、ジロウのこの衣装は「自作の衣装」という設定らしい。そのため、普通なら隠すはずのファスナーをあえて見せる、といったデザインを施しているということだ。
闇堕ちスイッチ
タロウの後を継ぐと宣言するジロウだったが、タロウに「(お前は)お供だ」と言われた途端、おかしなスイッチが入ってしまう。これが今回のタイトルにある「やみおちスイッチ」なのだろう。
はるかたちの前に現れ、サングラスを奪い取る。
これにより、ジロウは他のブラザーにアバターチェンジすることが可能となり、それらの力を使ってドンモモタロウに襲いかかるのだった。
その闇堕ちの際、白い虎がジロウの前を過ぎるエフェクトが映し出される。
これは今週からオープニングに登場するドンドラゴクウの別アバターとなる「ドントラボルト」に由来するものだろう。
虎になると闇堕ちするのか?
しかし今回は龍のままなのに闇堕ちしていた。このあたりのことは、今後明らかになるのだと思うが、闇堕ちしている間、ジロウには記憶がないようだ。
今回は、はるかのビンタで我に返ると、そのまま「お前が僕をたぶらかしたのか?」と濡れ衣を着せて、恐竜鬼を始末する。
ドンモモタロウにもあったアルターチェンジで、ドラゴンにも変形できるロボットへと姿を変える。
怒肩にひょろりと長い胴体といったフォルムが、どことなく『エヴァンゲリオン』を想起させると思ったら、やっぱり意識したデザインだったらしい。「TTFC」で限定公開されているオーディオコメンタリーで裏話として紹介されていた。
最後は必殺のライトニングドラゴンフラッシュでとどめ。
ネーミングはダサいが、エフェクトはなかなかカッコいい。
タロウの変化
これまで「唯我独尊」を絵に描いたような態度を取り続けてきたタロウだが、今回は変化が見られた。
前回、ヒトツ鬼になってしまったことに責任を感じ、ドンブラザーズを脱退するとまで言い出した雉野に、慰めるような言葉をかけ、一度はソノイの手によって消滅した自分を助けてくれたお供たちに頭を下げる。
驚きを隠せないドンブラザーズの面々。特にはるかの表情が良い。
ロボ戦の中でも、お供たちを褒めるような言葉をかけていたし、最後には、はじめからジロウを危険視していた猿原とはるかの言葉を信じられなかったことに対しても頭を下げていた。
復活したことで何か心境の変化があったのかもしれないが、それにしたって、タロウはタロウだ。ウソをつくと死んでしまうという特異体質はそのままだろう。だとしたら、これらの言葉は全て心からの言葉である。
驚く猿原たちに対し、「俺は、その時その時で、取るべき態度を取っているだけ」とそっけなく答えているが、これを単なるツンデレと捉えて、サラッと見過ごしてはいけない。これは、とても大きな変化である。
ウソはつけない。だから、その場限りのお世辞は言えない。しかし、褒めるべき時は褒めるべきだし、謝るべき時には謝るべきだという認識が芽生えたのだ。もちろん、実際に褒めるに値することがあること、謝る必要があることが大前提とはなるが、これは、タロウにドンブラザーズのリーダーとしての自覚が芽生えたということであるし、他の4人を仲間として認めたということでもある。
つまり、これまでのように、「お供たちは主人(自分)に付き従えば良い」という感覚から、「みんなと一緒に戦うためには、するべきことがある」という感覚へと変化したのだと思われる。
それには、今回助けられたことだけでなく、ドン13話「さよならタロウ」で猿原が始めたボイコットも効いたのかもしれない。どんなに優れていても、一人でできることには限りがあることを知ったのではないか。
また、自分が帰還したことを心底喜んでくれたお供たちを見て、感じたものもあったのだろう。ひとりぼっちだったタロウが、ひとりぼっちではないことを感じた瞬間だったとも言える。
今回の戦いで、ジロウがサルブラザーにアバターチェンジした途端、斬りつけた剣を振り下ろせなかったのも重要なポイントだろう。
これまで散々足蹴にしてきたお供たちのポジションが、タロウの中で大きく変わったことの証だからだ。
ここで、ドンブラザーズの面々のために力になりたいと奔走したジロウに向かって、タロウが言ったひとことを思い出してみよう。
「人に好かれたいという気持ちはわかる。だが、そのために何かすれば卑しくなる」
ウソのつけないタロウが、「人に好かれたい気持ちはわかる」と言っているということは、唯我独尊に見えるタロウにも、人に好かれたいという気持ちはある、ということ。その上で、「だが、そのために何かすれば卑しくなる」と言っているのだ。つまりタロウは、お供たちに好かれようとして行動を変えたわけではないことになる。お供たちに対する心からの感謝や労いの気持ちがあり、それを表しているだけということなのだろう。
私たちは、つい、自分以外の誰かのためにやっている、と言いたくなる。「家族のために働いている」「部下のために頭を下げた」「子どものために資金援助をしてやった」・・・などなど。
それらは果たして、本当に相手のためなのだろうか?
自分自身が好かれるためにやっていることではないのか?
今回も『ドンブラザーズ』には人生哲学が溢れていた。
それでは、ここまでお読みいただきありがとうございました。
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