2022年7月17日放送『暴太郎戦隊ドンブラザーズ』ドン20話「はなたかえれじい」(監督:山口恭平 脚本:井上敏樹)
幼なじみの前で見栄を張りたいジロウがきっかけとなって、桃井タロウは脱退。
ドンブラザーズはまるで違ったものとなり、あの人までまさかの変貌を遂げてしまう・・・。
人間の欲望について描く、ドン20話をレビュー。最後までおつきあいいただければ幸いだ。
キャスト
ここではドン20話のキャストをご紹介する。
なお、以下で使用している画像は全て『暴太郎戦隊ドンブラザーズ』より引用している。
桃井タロウ/ドンモモタロウ
樋口幸平
猿原真一/サルブラザー
別府由来
鬼頭はるか/オニシスター
志田こはく
犬塚 翼/イヌブラザー
柊太朗
雉野つよし/キジブラザー
鈴木浩文
桃谷ジロウ/ドンドラゴクウ
石川雷蔵
五色田介人/ゼンカイザーブラック
駒木根葵汰
ソノイ
富永勇也
ソノニ
宮崎あみさ
ソノザ
タカハシシンノスケ
ドンムラサメ(声)
村瀬 歩
夏美
新田桃子
芦田
ルミ
朝乃あかり
桃谷ジロウ(小学生)
後藤りゅうと
ルミ(小学生)
林田美優嘉
唐木
住友泰星
アナウンサー
結城ゆな
ルミの母
城下千砂
大臣(※画像左)
ガラかつとし
三枝玲子(声)※画像中央
島崎和歌子
モモタロウアルター(人形操演):友松正人・山田はるか
マザー(声):能登麻美子
暴次郎戦隊ファイヤードラゴンズ誕生
立派なヒーローになるため、生まれ育った村を後にしてきた桃谷ジロウの心残りは、幼なじみの彼女(だと本人は思っている)ルミのこと。未だにスマホに撮り溜めたルミの写真を消すこともできず、見返しては思い出に浸っている。
この写真の距離感で、二人が恋人関係ではないことがわかる。ジロウの痛さがよくわかる1枚である。
ところが、ある日ルミから電話がかかってくる。今度東京に遊びに来たいのだとか。
ルミの話ぶりからすると、やはりジロウは単なる幼なじみという雰囲気しかない。しかし、ジロウは舞い上がってしまう。
ドンブラザーズのメンバーに事情を打ち明け、リーダーにして欲しいと直訴する。ルミの前でいいカッコしたいというだけで。
もちろん、お供たちには一蹴されるが、何故か桃井タロウは快諾。ただし、ウソのつけないタロウは、ルミの前でジロウのお供のフリはできないからドンブラザーズを脱退すると言い出す。
こうして、ジロウがリーダーとなる新たな戦隊・暴次郎戦隊ドラゴンファイヤーズが誕生してしまう。
ロゴも力が抜けている。そもそも「暴次郎」って何だ? 悪い冗談としか思えない。だが、それがいい。
しかし、ジロウは本気だ。
お供たちを鍛え上げ、困っている人たちを救助する、いわゆるレスキューみたいなことを始める。もちろん、ヒトツ鬼が出て来れば戦うのだろうが、それ以外の時は人助けをするようだ。
これだけ見ると、全然悪くない。
ところが、流石のジロウである。「もっと有名になりたい」という承認欲求をあらわにし、助けた人々に「名乗るほどではありませんが」と前置きしたうえで、「ドラゴンファイヤーズと申します」と名乗って回る。
これが思いのほか効果てきめんで、やがて「ドラゴンファイヤーズ」の名は広く知れ渡ることになる。
この徐々に名前が浸透していく描写が秀逸で、最初の頃は、ニュース番組で「ドラゴンファイヤーズと名乗るヒーローたち」と紹介されるにとどまっていたものが、いつしか「あのドラゴンファイヤーズ」と呼ばれるようになる。
調子に乗ったジロウは専用ホームページまで作る始末。そこにはサイン会や写真集の依頼まで届くようになり、最初はイヤイヤやっていたお供たちも、いつの間にかノリノリ。
「大臣栄誉賞」を受賞することになった時には、みんな鼻高々で、授賞式の控え室でヒトツ鬼が出現したのを知った時でも、平気な顔で「チェンジ拒否」する程度には腐っていた。金にも名誉にも興味がない、と言っていた猿原までもが。
笑いの中に、ぐさりと人間の愚かさを差し込んでくる。このあたりは流石としか言いようがない。
格闘の鬼
まるで山奥で修行でもしていたかのように、まるでサキイカのようにビリビリになったズボンを履いた格闘家・芦田の「強いヤツと戦って、もっと強くなる」という懐かしの「ストリートファイターⅡ」みたいな欲望を叶えようとするヒトツ鬼が五星鬼。
五星鬼
身長:193cm
体重:227kg
スキン:弁髪拳士
この芦田を演じているのは、ドンドラゴクウの中の人。中国拳法繋がりだろうか? ただの目立ちたがり屋だろうか? いずれにしても、引き締まった良い身体をしている。
五星鬼のモチーフは、スーパー戦隊第17作目『五星戦隊ダイレンジャー』。企画段階では『中華戦隊チャイナマン』だったという噂もあった作品。デザインのそこかしこにも中華風味が溢れている。
そういえば余談だが、途中、久々にゼンカイザーブラックが登場するのだが、やはりカッコいい。
特にギアトリンガーから噴き出す炎を剣のように振るうのが良い。動きのキレも良く、キジブラザーと同じスーツアクター(高田将司さん)とは思えない。あちらはモーションキャプチャーによる動きだから不自然になってしまうのは仕方ないが、ゼンカイザーブラックは俄然生き生きしている。
その後、闇堕ちしたジロウが変身したドントラボルトの必殺技:雷刃闇駆白虎(ライジンヤミカケビャッコ)によって倒された五星鬼は、脳人レイヤーで五星鬼ングへと巨大化する。
五星鬼ング
身長:52.4m
体重:2148.4t
スキン:弁髪武人
スキンは「拳士」から「武人」へとクラスチェンジしているが、格闘戦が得意なことに変わりはない。そんな五星鬼ングに引けを取らないドンオニタイジンに、最後は二刀流の「ロボタロ斬」で倒されてしまう。ドロップしたのは「キバレンジャー」ギア。『ダイレンジャー』の追加戦士である。
危ないジロウ
人知れず、人々を助けるヒーローだったドンブラザーズから、誰もが知るヒーローとなったドラゴンファイヤーズ。
ここまで上り詰めることができたのは、ひとえに自分のリーダーシップ(とお供たちの協力)の賜物だと信じていたジロウだが、喫茶どんぶらのマスター・五色田介人の一言で、全てが瓦解してしまう。
それは、ドンブラザーズを脱退した桃井タロウが、陰ながら手助けしてくれていたという事実だった。
その事実を知ったお供たちは、今まさにヒトツ鬼と孤立無援で戦い続けるタロウを助けに飛び出してしまう。ピノキオのように高くなっていた鼻は、いつの間にかへし折れてしまっていた。
一人残されたジロウは、その場にくずおれる。
もちろんジロウの鼻もへし折れてしまっている。
虚空に雄叫びを上げるジロウ。
危ないジロウが再び降臨だ。こういったキャラ変も含めて、ジロウを演じる石川雷蔵さんのうまさが光る。とても18歳とは思えぬ貫禄ある演技である。
「覚醒!」の一言でジロウの手のひらに現
れたのは、銀色に輝く虎の顔。変身アイテムである「龍虎之戟」の先端部分を折り曲げてスイッチを入れると、朴璐美さんのイケボで「タイ♪タイ♪タイガー♪」と鳴り響く。
「エクストラホアチョー!」という変身音と共に、白虎をモチーフとしたドントラボルトに姿を変える。
ネーミングの元ネタは、70年代に「サタデー・ナイト・フィーバー」で世界に名を轟かせた歌手、ジョン・トラボルタであることは間違いない。ほぼダジャレだが、時折見せる、首を捻る動作に凄みが滲む。ヒトツ鬼をほぼ一人で倒してしまった、その強さはシャレでは済まない。
ミイラ取りがミイラになる
ジロウとお供たちが調子づく様をチラ見しながら、「良くないな」と忠告し続けた五色田介人。
その忠告を無視して、一躍スターダムへと上り詰めたドラゴンファイヤーズの面々に真実(今のドラゴンファイヤーズがあるのは桃井タロウのおかげだということ)を突きつけるのだが、いつの間にかしれっと大臣栄誉賞を代理受領し、ドラゴンファイヤーズの長官を名乗る。
いつの間にか、介人の鼻も高々。
調子に乗って、写真集まで発売する。ここに来て、オチに使われまくるネタキャラ化してきた節がある介人。
その直前、タロウに「いったい何者なんだ?」と問われた際に、「俺はヒーローとして生まれ、ヒーローとして戦い、ヒーローであり続けるものだ」とめちゃくちゃカッコつけてたのも、完全に前フリだったわけである。
「笑いは緊張と緩和から生まれる」とは、松本人志さんの言葉だが、そんなことを思い出す。
ミイラ取りがミイラになったようなこの展開。まるで寓話だ。やっぱり『ドンブラ』は最高。
『暴太郎戦隊ドンブラザーズ』の見逃し配信は、「TTFC」か「アマプラ」がオススメ。
アマプラは今更言うこともないが、TTFCの加入について迷っている方には、こちらの記事もオススメだ。
最後にもうひとつ。
新たな情報として、新キャラのドンムラサメは元老院が作り出した人工生命体ということがわかった。剣が本体というだけでも普通の人間でないことは明らかだったが、脳人の世界を抜け出した理由は何だったのか? そして、現時点では声だけの存在である「マザー」とは?
こちらもまた今後の展開が楽しみだ。
それでは、ここまでお読みいただきありがとうございました。
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