2022年9月11日放送『暴太郎戦隊ドンブラザーズ』ドン28話「ひみつのヒミツ」(監督:田﨑竜太 脚本:井上敏樹)
「怪盗になりたい」
謎の美女と一枚の絵画との因縁に巻きこれていく犬塚とドンブラザーズの面々。
笑ったり泣いたり、心をあちこちに揺さぶられる神回、ドン28話をレビュー。ネタバレもあるけれど、これを読んでから視聴したとしても後悔はない程度なので安心して読み進めていただきたい。最後までおつきあいいただければ幸いだ。
キャスト
ここではドン28話のキャストをご紹介する。
本作初登場でウィキペディアに記載のある方についてはリンクを貼っておくので、他の参加作品など是非ご参照いただきたい。
なお、以下で使用している画像は全て『暴太郎戦隊ドンブラザーズ』より引用している。
桃井タロウ/ドンモモタロウ
樋口幸平
猿原真一/サルブラザー
別府由来
鬼頭はるか/オニシスター
志田こはく
犬塚 翼/イヌブラザー
柊太朗
雉野つよし/キジブラザー
鈴木浩文
桃谷ジロウ/ドンドラゴクウ
石川雷蔵
五色田介人
駒木根葵汰
伊集院瑞穂
糸瀬七葉
青田武夫
籾木芳仁
佐野
湯木優輝
オークショナー
中脇樹人
山田部長
滝 晃太朗
刑事
齊藤謙也
怪盗になりたい女
ラーメン屋を出たところを警察に待ち伏せされた犬塚。彼には指名手配犯としての自覚が足りない。変装とまでは言わなくとも、マスクくらいするべきだろう。窮屈な想いをしたくないのなら、ひとまずドバイにでも身を隠すべきだ。
その様子をそっと見つめる一人の美女。
追手を逃れた犬塚に歩み寄ると、いきなり「私を弟子にしてください」と詰め寄る。なんと、怪盗になりたいらしい。
怪盗の要素など1ミリもない犬塚は断って立ち去ろうとするが、「指名手配犯がここにいますよー!」と大声で周囲にアピールするという古典的な脅迫で引き止められる。
彼女の名は伊集院瑞穂。名前だけでなく、言葉遣いからもお嬢様感が溢れている。そんな彼女が怪盗になりたい理由。それは、恋人だった天才画家・青田武夫が遺した一枚の絵を取り戻したいという想いから。「恋人だった」と過去形にしたのは、青田が既に亡くなってしまっているためで、一枚の絵というのは、青田が瑞穂のことを描いた「秘密」と名付けられた作品のことだった。
瑞穂によれば、青田が亡くなった際、その「秘密」が姿を消してしまったらしい。取り戻したいとは言っても、どこにあるのかはわからない。そんな状況の中、行方不明だったその絵がオークションに出品されることが発表され、瑞穂は犬塚と共にオークション会場へと向かう。
絵を手に入れたい人たち
夭折(ようせつ:若くして死ぬこと)した天才画家・青田武夫の作品ということで、オークション会場には「秘密」を手に入れたいと願う人たちが大勢集まった。
その中には、何故か犬塚以外のドンブラザーズの面々も。
猿原とはるかは、「秘密」を喫茶どんぶらに飾りたいという五色田介人に頼まれて。雉野は上司の山田と共に、やはり「秘密」を求める社長の命を受けて。
ここにいないメンバーはタロウとジロウだけだが、確かにアートやオークションには興味も縁もなさそうだ。
お金持ちを自称する瑞穂と雉野たちが勤める会社の社長はともかく、猿原に「金はあるのか?」と問われ、「喫茶どんぶらに無いものは無い」と自信満々だった介人は、まさかのきび団子で支払いをしようとする。完全に狂っている。あのバイクやグランドピアノもきび団子で購入したのだろうか?
そして今回のヒトツ鬼は「科学鬼」。1983年2月から1984年1月まで放送されたスーパー戦隊シリーズ第7作『科学戦隊ダイナマン』をモチーフとしており、まるでキカイダーのように左右に配された赤と青の薬品(?)を混ぜ合わせることで爆発を巻き起こすことができる。
故・岡本太郎さんの名言「芸術は爆発だ!」に絡めての抜擢だったのではなかろうか。
科学鬼
身長:193cm
体重:236kg
スキン:夢の発明
この宿主は伊集院瑞穂。青田が遺した絵「秘密」が欲しいという欲望が暴走した結果である。
しかし、これまでのヒトツ鬼と違うのは、無差別に人を襲うわけではないところだ。一瞬、一般市民にも襲いかかろうとするが、ギリギリで思いとどまる。雉野でさえ我を忘れたというのに、こんなふうに自己をコントロールすることができるとは思わなかった。その場に出くわした犬塚も驚くばかりだ。
さて、この科学鬼が巨大化したのが「科学鬼ング」。
科学鬼ング
身長:50.7m
体重:2078.7t
スキン:爆発グランドスラム
両手を突き出し、5色の爆撃で襲いかかるところは、まさにダイナマン。
その厄介な敵を倒したのは、ドンオニタイジンとトラドラゴンジンによる呉越同舟(仲の悪い者同士が一緒にいること)超絶大合体を果たしたトラドラオニタイジンだ。
トラドラオニタイジン
全高:60.0m(翼上まで65.0m)
全幅:57.0m
胸厚:37.0m
重量:5,300t
スピード:350km/h
出力:3,000万馬力
アバターホースというサングラスをかけた馬に乗り、戦場(脳人レイヤー)を縦横無尽に駆け巡る。槍で貫く「キジンスピア豪傑突き」や弓で狙い撃つ「ドラゴンキングダムアロー」などを使って戦い、最後は「天下桃一・ドンブラファンタジア」でとどめを刺す。
何の前触れもなく、唐突に「合体するぞ」とジロウに声をかけたタロウは謎でしかないが、ドンブラなんてこんなもの(褒め言葉)。このハチャメチャ感こそ真骨頂だ。
今回も神回
冒頭から荒れまくるドン28話。
怪盗になるため、指名手配犯の犬塚に弟子入りを乞う美女。
初めてきたオークション会場で、介人の指示だとは言え、恥ずかしげもなく「きび団子」で競り落とそうとしたはるか。だいたい1億きび団子って、誰が作るんだよ。喫茶どんぶらにはきび団子工場などなかったはずだ。今回も従業員と常連客が手作りするつもりだったのか。ブラックなのはコスチュームだけではなく、経営方針そのものだ。
さらに、いつもはオドオドしている雉野が、上司の山田部長がドン引くほどの勢いでオークションに前のめり。こういう人がギャンブルで身を持ち崩すのだろう、という典型である。しかも今回は他人(社長)のお金。もうクビで良いと思う。
こんなドタバタ劇の中、盗まれた絵を取り戻した瑞穂が取った行動は、「秘密」を燃やすこと。
せっかく取り戻した絵を燃やしてしまうとは、犬塚でなくとも驚きだが、理由を知れば納得する他ない。いや、理屈でいえば納得などできないのだが、理屈などで語れないのが「愛」だろう。お互いを深く愛し、信頼していた瑞穂と青田の二人の関係性が色濃く浮かび上がる。
狂騒の後に訪れるしっとりとした静けさ。まさに祭りの後。いつものドンブラらしい、胸の奥からじんわりと温かいものが滲み出てくるような感覚。ドロドロとした昼ドラみたいな恋愛でも、青臭い恋でもない、酸いも甘いも嗅ぎ分けた大人の純愛とはこういうものかもしれない。
しかし、単に良い話では終わらせないのもドンブラだ。最後は安定のはるかの変顔で締め。これが一流の悪ふざけだ。
この目眩くジェットコースター展開。ただ目まぐるしいだけでなく、きっちりとこちらの喜怒哀楽をコントロールしてくれる。むしろ、これほどまでの情報量をここまで破綻なくまとめられる手腕は見事という他ない。まさに神回と言って良いだろう。
それでは、ここまでお読みいただきありがとうございました。
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