第四の男、狂気のあの人|『暴太郎戦隊ドンブラザーズ』ドン37話感想

雷堂

2022年11月20日放送『暴太郎戦隊ドンブラザーズ』ドン37話「イとニとザとシ」(監督:諸田 敏 脚本:井上敏樹)をレビュー

どういうわけか、眠りの森から戻ることができた犬塚 翼。しかし、それならば何故、隣で眠る恋人・倉持夏美を救うことなく一人でノコノコ帰ってきたのか?

そんな謎を孕んだドン36話に続く今回は、その謎については一旦サラッと流しておいて、新キャラ登場の回となる。

ソノイたち3人の動向を、物陰からそっと見守る仮面の男の正体は?

ネタバレも含むが、最後までおつきあいいただければ幸いだ。

目次

キャスト

ここではドン37話のキャストをご紹介。

以下で使用している画像は全て『暴太郎戦隊ドンブラザーズ』より引用している。

桃井タロウ/ドンモモタロウ

樋口幸平

猿原真一/サルブラザー

別府由来

鬼頭はるか/オニシスター

志田こはく

犬塚 翼/イヌブラザー

柊太朗

雉野つよし/キジブラザー

鈴木浩文

桃谷ジロウ/ドンドラゴクウ

石川雷蔵

五色田介人

駒木根葵汰

ソノイ

富永勇也

ソノニ

宮崎あみさ

ソノザ

タカハシシンノスケ

ソノシ

廣瀬智紀

おでん屋のおやじ

大高洋夫

大野 稔

榊原卓士

監察官

脳人に必要な人間界の波動を乱すヒトツ鬼を始末すること。そして、その邪魔をするドンブラザーズを倒すことを求められていたはずなのに、いつの間にかドンブラザーズと馴れ合いを続けるソノイ、ソノニ、ソノザの3人。せっかく倒した桃井タロウの復活に手を貸したり、犬塚 翼に色目を使ったり、そして鬼頭はるかのマンガをチェックして「編集長」と呼ばれたり。

そして、今回もまたいつものおでん屋で肩を並べる。ここまで来ると、敵というよりは部活のライバル校同士という感じである。

そんな現状を憂いた元老院からの命を受け、ソノイたち3人の監察官として派遣されたのがソノシ。まさかのオネエキャラ。潔癖症のくせに、自らの耳をほじる癖がある。ただし、その耳垢は金粉らしい。耳たぶも金粉で彩られている。余談だが、潔癖症が行きすぎて、周囲に消毒薬(?)を撒き散らすシーンがあるが、『北斗の拳』の迷シーン「汚物は消毒だー!」を思い出す(あちらは火炎放射器だったが)。

画像引用元:北斗の拳

「お久しぶり」とソノイに話しかけるあたり、旧知の間柄であるらしいが、今は自分が上官であることを理由に跪かせてみたりと、なかなかに性格が悪い。

ただし、その実力は決して侮れない。ソノシもまた、ソノイたちのようにもう一つの姿を持っているのだが、これが強い。ドンブラザーズの5人を同時に相手にしても一歩も引かない。タロウが「やるな」とその実力を認めたのは久々である。

ソノイたちのデザインが過去の東映特撮ヒーローをモチーフ(ソノイは『超人バロム1』、ソノニは『コンドールマン』、ソノザは『ザ・カゲスター』)にしていることは有名だが、ソノシも同様に、とあるヒーローをモチーフにしている。それは『仮面の忍者 赤影』。両目から左右に広がる赤い炎のようなデザインは赤影の仮面だろうし、何より専用武器の名前が四苦無(シックナイ)レッドシャドーである。忍者モチーフに恥じない華麗な動きでドンブラザーズを翻弄するが、とどめは刺さない。何故ならそれこそがソノイたちに突きつけられた指令だからである。

「ドンブラザーズと決着をつけろ」という元老院からの指示に応えられなければ、ソノイたちは裁判にかけられ、無限床拭きの刑に処せられるらしい。死刑でもなく、投獄でもなく、無限の床拭きというのは、いつものドンブラ流悪ふざけ。とはいえ、床拭きといえばクイックルワイパー全盛、ともすれば床拭きロボットまであるこの時代に、四つん這いになって雑巾で床を磨くというのは、もはや修行僧だ。どうしてもその刑罰だけは避けたいと必死になったソノイたちは、ソノシを倒そうと画策し、タロウたちに相談を持ちかける。

だが、ソノシがいくら憎たらしいとはいえ、彼もまた同じ脳人。罪悪感もあるのだろう。そこでソノイたちが考案したのは、ソノシをヒトツ鬼にしてから倒す、というものだった。ヒトツ鬼を倒すことを目的としている脳人からすれば、例え同胞であってもヒトツ鬼になってしまえば倒さざるを得ないという理由付けができるからだろう。

しかし脳人はヒトツ鬼にはならないのではなかったか? と、タロウが疑問を口にするが、どうやら禁じ手があるらしい。それは、ヒトツ鬼になりそうな人間からヒトツ鬼のタネを採取し、それを植え付けること。そうすれば脳人もヒトツ鬼化するのだとか。そんな禁じ手を敵であるタロウたちに伝えてしまうほど、ソノイたちは切羽詰まっていた。

まずはヒトツ鬼になりそうな人間を探さなければいけないという、かなり難易度の高いミッションが課せられたわけだが、これについてタロウは心当たりがあるという。

もはや準レギュラー化している、大野 稔である。

過去に3度もヒトツ鬼化し、前回の登場時には正気を失っていたソノイに倒されたはずの大野が、なぜか生きていたのだ。母と二人、慎ましく暮らしていた大野がソノイに斬られ、「母ちゃんごめん!」と断末魔を上げ、消えていく際に感じた切ない想いを返して欲しい。そんなことがあったにも関わらず、今回も着々とヒトツ鬼のタネを育んでいるのは流石としか言いようがない。このままラスボス化する未来もあるかもしれない、と本気で思ってしまう。

秘策

そうして、ドンブラザーズと脳人の決着の時は迫る。

ソノシの指示で、初の名乗りを上げる脳人三人衆。

画像引用元:暴太郎戦隊ドンブラザーズ

そして、イヌブラザーの代わりにジロウを加えて名乗りを上げるドンブラザーズ。前回名乗りを上げた時は、獣人がコピーした犬塚が名乗りに加わっていた。なかなかきちんと正式メンバー全員で名乗りを上げないのが、ドンブラザーズ流である。

画像引用元:暴太郎戦隊ドンブラザーズ

パラソルの下、優雅にお茶を飲みながら観戦するソノシの前で、激しく戦うドンブラザーズと脳人たち。そこには手抜き感など一切ない。ソノイの剣がタロウを切り裂く。変身が解け、「死ぬ」と呟き倒れるタロウ。その途端、戦いの手が止まる。タロウの元へ駆け寄るソノシ。脈拍と瞳孔をチェックする。生体反応はない。ソノイを賞賛するソノシ。

その時。

この瞬間を待ち構えていたソノザが、大野から採取したヒトツ鬼のタネをソノシに放り投げると、見る見るうちにソノシの姿がヒトツ鬼へと変貌する。

画像引用元:暴太郎戦隊ドンブラザーズ

星獣鬼

身長:192cm

体重:232kg

スキン:獣装の光

モチーフとなったのは、1998年2月〜1999年2月まで放送されたスーパー戦隊シリーズ第22作『星獣戦隊ギンガマン』。「ガンガンギギーン♪ギンガマン♪」という、一度聴いたら忘れられないアレである。「自分を陥れた者たちを許さない」という欲望を暴走させる。

一方、先ほど死が確認されたはずのタロウは、何事もなかったかのように起き上がる。「ウソをつくと死んでしまう」というタロウの体質を利用した作戦だったのだ。先ほどの「死ぬ」という一言がトリガーになっていた。

さて、ここからドンブラザーズと脳人の共闘が始まるのかと思いきや、これは脳人の問題だから手を出すなと、ソノイたち3人でソノシに挑みかかる。

いかに強力なソノシといえど、本来の姿を失った上で、ソノイたち3人を相手にするのは流石に分が悪いのだろう。あっという間に詰み。だが、いよいよトドメ・・・というところで事件は起こる。倒れたソノシに剣を振り下ろしたソノイの腕がギリギリで止まる。明らかに逡巡している。代わりにトドメを刺そうとするソノザの槍を叩き落とすソノイ。

ならば、とジロウとタロウが必殺技を繰り出すが、今度は止めようともしないソノイ。脳人に倒されたヒトツ鬼は消滅するが、ドンブラザーズに倒されたヒトツ鬼は元の姿へと戻るからだろう。

倒された星獣鬼は星獣鬼ングへと巨大化。ドンブラザーズは、ゴールドンオニタイジンとトラドラゴンジンで戦いを挑む。

画像引用元:暴太郎戦隊ドンブラザーズ

星獣鬼ング

身長:52.4m

体重:2150.5t

スキン:超装の光

「ギンガの光」という必殺技を使おうとエネルギーチャージを始めたところで、「させるな」とそれぞれの必殺技を畳み込む。変身や名乗り、もしくは必殺技を使う際のエネルギーチャージの隙を狙った攻撃はしない、という特撮の不文律をあっさり破る結末。結局、ギンガの光という技がどういうものだったかは分からず終いだ(公式ページによると、「周囲から膨大なアースパワーを集めて装甲を超強化することができる」とのこと)。

本来の姿を取り戻したソノシは、恨み言を口にしながら姿を消す。ソノザは声を荒げ、「どうして倒さなかった!?」とソノイに詰め寄るが、「嫌なヤツだが、同じ脳人。俺たちの仲間だ」と、命を奪うことを躊躇したソノイの優しさが光る。こういった気持ちをみんなが持てたら平和な世界が訪れるだろうに。

狂気

「ご心配をおかけしました」

妻のみほが帰ってきたと、仲間たちの前で頬を緩める雉野つよし。

違和感。

これまで、アクションシーンを削ぎ落としてでも、ドラマを描くことにこだわってきた『ドンブラザーズ』なのに、それほどの重要情報について一切の描写がなかったことに、だ。

そもそも、雉野みほという人物は実在しない。犬塚の恋人・倉持夏美の姿をコピーした獣人が演じていた架空の人物に過ぎないのだ。その夏美(獣人)は、今も人間界に存在し続けている。それとも、気まぐれで再び雉野みほを演じようという気になったのだろうか?

その違和感の答えはすぐに出る。

帰宅する雉野。ドアを開けて「ただいま」と声をかけるが、部屋は真っ暗。みほは眠ってしまったのだろうか? それとも出かけてしまったのだろうか?

そうではなかった。ソファに腰掛け、みほに語りかける雉野。その視線の先には一体の人形。

画像引用元:暴太郎戦隊ドンブラザーズ

どうやら雉野は、未だ帰らぬみほの姿を、この小さな人形に投影してしまったようだ。

もはやホラー。底知れぬ狂気を感じる。

さて、闇の中にどっぷりと頭まで浸かってしまった雉野が、そこから抜け出すことはできるのだろうか?

雷堂

それでは、ここまでお読みいただきありがとうございました。

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この記事を書いた人

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