2022年12月11日放送『暴太郎戦隊ドンブラザーズ』ドン40話「キケンなあいのり」(監督:山口恭平 脚本:井上敏樹)をレビュー
暴走する者に相乗りするという危険を冒す者。
恋人のいる者に横恋慕という危険な相乗りを試みようとする者。
そんな危険な二つの相乗りが、さらに危険な展開を生み出す・・・?
ネタバレも含むが、最後までおつきあいいただければ幸いだ。
キャスト
ここではドン40話のキャストをご紹介。
以下で使用している画像は全て『暴太郎戦隊ドンブラザーズ』より引用している。
桃井タロウ/ドンモモタロウ※画面右
樋口幸平
猿原真一/サルブラザー※画面左
別府由来
鬼頭はるか/オニシスター
志田こはく
犬塚 翼/イヌブラザー
柊太朗
雉野つよし/キジブラザー
鈴木浩文
桃谷ジロウ/ドンドラゴクウ※画面右
石川雷蔵
ソノニ
宮崎あみさ
ソノザ
タカハシシンノスケ
ドンムラサメ(声)
村瀬 歩
雉野みほ/夏美
新田桃子
鬼頭ゆり子
三輪ひとみ
狭山健児
杉山凌士
武藤教官
教官
五味涼子
教官
蔦宗正人
マザー(声):能登麻美子
暴走するムラサメ
今回の騒動とこれから起こり得る騒動において相当に重要な役割を担うのが、ドンムラサメである。
不可殺(殺すことができないという意味)の存在である獣人の命を奪うことができる唯一の存在とされている、命を宿した剣。まるでドンブラザーズの一員のような姿にも変身できるが、あくまでも本体は剣である。
ここ最近は、ソノザによって封印を施され、これまでのように自由気まま(なのか、謎の存在・マザーの言いなりでしかないのかは微妙なところだが)に敵を求めて飛び回るようなことはなくなっていたが、唐突にソノザの封印を破り、自らの意志を取り戻す。
どうやら、これまでソノザに従っていたのは封印されていたために身動きが取れなかったというわけではなく、ソノザの元に身を置くことで、自分の知らない何かを学べると考えてのことだったらしい。だが、これ以上ソノザと一緒にいても、学ぶことはなさそうだと判断したようだ。思ったより、相当にしたたかである。
そうして自由を得たムラサメは、血に飢えた獣のような状態になっている。これまではマザーの言葉に従って戦うだけ、という印象が強かったが、どうやら結構好戦的な一面も持ち合わせているようだ。そうして、このムラサメの行動がきっかけとなって、事件が起きてしまう。
翼とソノニの逃避行
ムラサメが向かった先。
そこにいたのは犬塚 翼だった。
犬塚がイヌブラザーだということは、ドンブラザーズのメンバーにさえバレていない(桃谷ジロウだけにはバレかけている)が、ムラサメには隠すも隠さないもない。当然のように見破られて、襲いかかられる。時折忘れそうになるが、ムラサメは脳人の側の存在なのだ。そして、ドンブラザーズは脳人の敵。だから襲うという理屈である。
しばらく封印されていたことで、いつもよりもパワーが有り余っていたのだろうか。それともソノザと共にした期間でパワーアップしたのだろうか。いつもよりアグレッシブな姿勢がそう見せているのかもしれない。ただでさえ強力だったムラサメが、これまで以上に強力に見える。
瞬殺されるイヌブラザー。
ビルの屋上から地上へ真っ逆さま。
地面に叩きつけられた衝撃で解ける変身。
そこに現れたのはソノニ。
倒れた犬塚を見て、とどめを刺そうと喉元に刃を突き立てようとするが、何故かその手は止まってしまう。
逡巡しているうちに意識を取り戻した犬塚は、先ほどの落下の衝撃のためか、視力がほとんど失われていた。
目の前にいるソノニの姿さえぼんやりとしか見えない。
「夏美か・・・?」
こんなところに都合よく現れるはずもない恋人の名前を呼んでみる。
唐突に夏美の名を呼ばれたことで戸惑うソノニだが、次の瞬間、犬塚を追いかけてきたドンムラサメが視界に入る。
咄嗟に「ええ。夏美よ」と答えると、そのまま犬塚を連れて逃げ出す。まさかの逃避行の始まりである。
スピード狂の詩
鬼頭はるかは、運転教習所に通っていた。
叔母のゆり子が勝手に申し込んだものだったのだが、これが壮絶を極めた。
開発中の車両テストでもこれほど荒い運転をするものかというほどの急発進、急停止のオンパレード。さらに急ハンドルも加わるものだから、同乗した教官たちは皆“鞭打ち症”になってしまう。
そうしてやってきたのが、教習歴30年のベテラン教官・武藤だった。
他の教官から噂を聞いていたのだろう。初めから鞭打ち対策として首にギプスを巻いて登場するなど、準備も覚悟も並外れている。流石ベテラン。ちなみに、この武藤教官を演じているのは松本博之さん。
『仮面ライダーオーズ』でガメルを演じていたあの人である。東映特撮においてもベテランだ。
はるかの異次元ドライビングに加え、途中で巻き込まれたムラサメとのバトルによって、これまでの30年間を覆されるような経験をしてしまったことから、「誰か俺の教官になってくれー!」という悲痛な叫びと共にヒトツ鬼化してしまう。
変身したのはガメル・・・ではなく、2000年2月から2001年2月まで放送されたスーパー戦隊シリーズ第24作となる『未来戦隊タイムレンジャー』をモチーフとした未来鬼である。
未来鬼
身長:196cm
体重:235kg
スキン:クロノドライバーα
なんとも切ない誕生を果たした未来鬼だが、今回はここでしか出番のなかった桃井タロウと桃谷ジロウの二人の手であっさり倒されてしまう。
すぐさま未来鬼ングへと巨大化。
未来鬼ング
身長:52.6m
体重:2156.6t
スキン:クロノドライバーβ
時間を巻き戻すという特技を持っており、ドンオニタイジンとトラドラゴンジンを合体前の状態に巻き戻すという恐ろしい技を使うのだが、これもタロウの「だが、効かん!」という謎の気合い一発で消し飛ばされてしまう。
いつも通りのドンブラだが、ロボ戦の扱いの雑さはシリーズ随一である。それなのにロボが人気というのは、なんとも皮肉なものである。
そうして今回も一件落着・・・と見せかけて、最後に待っていたのは免許を取得してしまったはるかの姿だ。
テレ朝も東映もトヨタに喧嘩を売ってるんじゃないか、と疑いたくなるほどにズタボロになった真っ赤なプリウスで、タロウと猿原と雉野をドライブに誘い出す。そもそも誰のクルマなのか? 叔母のもの? それとも自分で購入したのだろうか? いずれにしても、もはや海外に売り捌くこともできないレベルの壊れよう。
今後は、このはるかの運転スキルが活かされる場面が見られたりするのだろうか。地獄絵図しか浮かばないが、楽しみに待ちたいものだ。
世界をそれを愛と呼ぶんだぜ
視力を失った犬塚を守るために戦うソノニ。攻撃を受けたムラサメは、「何故、味方であるはずの脳人が?」と戸惑うが、そんなソノニをマザーは「裏切り者」として認定し、犬塚共々ターゲットにしてしまう。
するとムラサメは躊躇なく背中から襲いかかるなど、かなりの本気モード。ソノニもかなりの重傷を負ってしまう。
土砂降りの中、互いに支え合いながら逃げ惑う手負いの二人。
このままでは逃げきれないと覚悟した犬塚は「俺を置いて逃げろ」と告げるが、夏美になりすましているソノニは、そんな犬塚を見捨てるどころか「私がお前を守ってやる」と、こちらも覚悟を決めている様子。
感極まった犬塚が思わずソノニを抱き寄せる。
その途端、ソノニの中で何かの感情が弾ける。
しかしその瞬間、「違う、夏美じゃない!」
え。今さら?
あれだけ言葉を交わしていて気づかなかったくせに、抱き寄せた感覚で違いがわかるって何だよ・・・そんなツッコミをしたくもなるけれど、愛を知りたいと語っていたソノニが、その身をもって愛を知った瞬間の衝撃がよくわかるシーンではある。ソノニを演じる宮崎あみささんの表情もとても良かった。
だが、愛を知ったとはいえ、これではソノニの完全な横恋慕でしかない。
ここで2つのイレギュラーが起こる。
まずは暴走を続けていたはるかの登場である。
二人を追い詰めたムラサメをクルマで弾き飛ばし(単なる人身事故だ)、そのままムラサメとカーチェイスを始める。いつの間にか犬塚とソノニは眼中になくなっている。
はるかの華麗(?)なドライビングテクニックに翻弄されて疲弊したムラサメが帰ろうとしたその瞬間、狭山刑事(獣人)が現れる。これが第二のイレギュラーだ。
飛び去ろうとしたムラサメを掴み取り、犬塚に切りかかる狭山。
その手からムラサメを奪い取り、狭山を一閃する犬塚。
消滅する狭山。
ムラサメは獣人を殺すことができる。
そして、コピー(獣人)を殺されると、本人もまた死んでしまうのではなかったか。
物語序盤から準レギュラーとして登場し続けてきた狭山刑事だったが、こんなにもあっけなく最後の時を迎えてしまったということだろうか。
話はここで終わらない。
ムラサメは、獣人を斬り捨てた犬塚に従うことを決める。「それは敵です」と嗜めるマザーを無視して。
その様子を見たソノニは、犬塚にそっと告げる。
「その剣で夏美の獣人を倒せ。そうすれば本物の夏美は帰ってくる」
違う。
逆だ。
それをしたら、本物の夏美は二度と帰ってこない。
だが、犬塚はそれを知らない。
人知れず髪を掻き上げ、瞳を暗く輝かせるソノニ。
愛を知りたいと語っていた彼女がついた嘘。
嫉妬。
世界はそれを愛と呼ぶんだぜ。
それでは、ここまでお読みいただきありがとうございました。
\ 僕と握手! /