平成ライダー13作目。
仮面ライダー生誕40周年の2011年に登場したのが『仮面ライダーフォーゼ』。あの東北大震災の直後だったこともあり、かつてないほど明るく元気な主人公たちが活躍する、まさかの学園ドラマとなっている。
メインの脚本家に中島かずきさんが選ばれたのも話題だった。もはや伝説級のロボットアニメ『天元突破グレンラガン』は鳥肌ものの名作。誰もが心の奥に眠らせている熱い感情を、問答無用で引きずり出してくれる。これほど「熱血」という言葉がふさわしい作品は他にない。まだ見たことがないようなら、「dTV」で視聴可能なので、是非、チェックしてみて欲しい。
当ブログでは、『フォーゼ』10周年を記念して、全話・全作品レビューを始めてみる。まずは、『仮面ライダーフォーゼ』第1話「青・春・変・身」の見どころをレビューする。
どうぞ、最後までお付き合いください。
スタッフ・キャスト
ここでは主要スタッフとキャストの皆さんをご紹介します。ウィキペディアに記載のある方はリンクを貼っておくので、是非、他の参加作品もチェックしてみてください。
【スタッフ】
監督:坂本浩一
脚本:中島かずき
アクション監督:宮崎 剛
特撮監督:佛田 洋
音楽:鳴瀬シュウヘイ
【キャスト】
如月弦太朗/仮面ライダーフォーゼ:福士蒼汰
歌星賢吾:高橋龍輝
城島ユウキ:清水富美加
風城美羽:坂田梨香子
大文字 隼:冨森ジャスティン
野座間友子:志保
JK:土屋シオン
三浦俊也:水野真典
佐久間珠恵:吉川まりあ
繁野ジュン:藤嵜亜莉沙
ラブレターを渡す女子高生:冨田真由
幼少期のユウキ:春日香音
ナレーション:檜山修之
園田紗理奈:虎南有香
大杉忠太:田中卓志(アンガールズ)
赤い目の男:鶴見辰吾
【主題歌】
「Switch On!」歌:土屋アンナ 作詞:藤林聖子 作曲&編曲:tatsuo
個性的すぎる登場人物たち
初回から個性的すぎる面々のオンパレードである。
天の川学園に転校してきた主人公・如月弦太朗は、短ラン、ボンタン、リーゼントという、どこの『ビーバップ・ハイスクール』だよ? というほど時代錯誤な不良の出立ち。しかし、あの福士蒼汰さんにこの格好をさせてしまうあたり、今となってはある意味「お手柄」なのかもしれない。
同級生の歌星賢吾は、もらったラブレターを「時間のムダだ」と読まずに捨ててしまうほどのドS男。こういうプレイに一人ゾクゾクしてしまう変態? いや、単に性格が悪いだけなのかも知れない。
宇宙飛行士に憧れる女子・城島ユウキは、弦太朗の幼なじみ。明るくてかわいいけれど、人並外れた変わり者。今となってはなかなかお目にかかることのできない「千眼美子」が10代の頃の貴重な姿を拝めるのは『フォーゼ』だけ。いや、他のドラマでも見られるかも。知らんけど。
さらに今回はとりあえず顔出しだけのJK。女子高生のJKではない。これで「ジェイク」と読ませる。
そしてこちらもチラ見せの野座間友子。しかし独特な存在感は既にバッチリ。
学園内をチアガール姿で闊歩する美女・風城美羽。なんともけしからん。これからもよろしくお願いします。
アメフト部のキザったらしい主将・大文字 隼。今見ると全然違うが、当時はウエンツの偽物みたいに見えてた。
サスペンダー姿のキモ教師・大杉忠太。一時のアンガールズ人気(怖いもの見たさ?)は凄かった。
ざっと挙げても、よくもまあコレだけ個性的な登場人物をかき集められたなというくらい、個性的な面々が第1話から登場する。それも、ただ登場するだけでなく、皆きちんと視聴者の記憶に爪痕を残していくあたりに、各々のタレント性だけではない、中島かずきさんの脚本の力が垣間見える。
初変身
学園に現れた怪人オリオン・ゾディアーツを倒すため、賢吾はトランスフォーマーのようなパワーダイザーで立ち向かうが歯が立たない。
フォーゼに変身しようと「フォーゼドライバー」を持ち出すが、生まれつきの虚弱体質が災いし、動けなくなってしまう。それを見た弦太朗は「俺に任せろ」とドライバーを奪い、ゾディアーツに戦いを挑む。
しかし、ドライバーの使い方さえわからず戸惑う弦太朗に変身の仕方をレクチャーするユウキ。
なんて爽やかな初変身。そして初「宇宙キター!」のお披露目である。
初バトル
フォーゼは、右手に「◯」、左手に「□」、右足に「×」、左足に「△」とまるでプレステのようなマークがついているのだが、それぞれに対応した「アストロスイッチ」をベルトに装着することで、様々なモジュールを装備して戦うことができるのが特徴。
40周年ということで、ステイツ(フォーム)チェンジ用も含めて全40種のアストロスイッチが登場予定だが、第1話から「ロケット」「ランチャー」「ドリル」「レーダー」「チェーンソー」といったモジュールが登場し、バトルを盛り上げる。
ジャンプの際には背中からエアを噴出する演出があったりして、宇宙飛行士感は上手く表現されている。ワイヤーを使った、ちょっと不自然なジャンプも宇宙飛行士感を醸し出すためのものだろう。
不恰好なモジュールのおかげで、高岩成二さんのキレのいいアクションが若干スポイルされているところはあるが、それでも弦太郎のキャラクターや本作のドタバタ感が溢れ出ていて嫌いじゃない。
トドメはロケットモジュールの推進力を利用して左足のドリルキックをぶちかますというフォーゼらしくアレンジされたライダーキックだが、中島さんの脚本で、またドリルが登場するところが面白い。たまたまなのか、こだわりなのか、それとも運命的な出会いなのか。
ヒーロー性に時代遅れなんてない
主人公の出立ちに加え、「青春」だとか「友情」だとか、とんでもなく「昭和」なキーワードを持ち出してきたな、というのが当初の印象。イロモノ感満載で、コントのネタにされてもおかしくはない。
しかし、やはりヒーローに必要なのは、物笑いのタネになりそうな暑苦しさと、自己犠牲を厭わない優しさ、そして、他人のことについつい首を突っ込んでしまうお節介さであると、この作品は語りかけてくる。
この作品に限らず、『ドラゴンボール』だろうが『ワンピース』だろうが『鬼滅の刃』だろうが、ヒーローはみんなこういうものだ。鬱陶しいと鼻で笑う人もいるが、他人のことには無関心に見える現代でもこういったヒーローたちが支持されるのは、やはりみんなどこかで自分のことを気にかけて欲しいと思っているのだろう。
本作が東日本大震災直後の作品であることは先にも触れたが、辛い時、誰かに助けて欲しい、誰かに寄り添って欲しいと考えるのは特別なことではないし、みっともないことでもない。それとSNSに代表される「承認欲求」を満たすもの。全く異なるものにも見えるそれらの根源は、間違いなく自分の存在を認めてくれる他者を渇望する心だ。時代に限らず、人間誰しもが当然に抱えている欲望である。
『フォーゼ』は、時代錯誤なイロモノと見せかけて、実はヒーローに時代遅れなんて概念はない、ということを高らかに宣言してくれる作品だ。この記事を読んで、「見たことないけど、興味が湧いた」とか「もう一度見直してみようかな」などと思ってくれる方が一人でもいらっしゃれば、この上もない幸せだ。
ところで、今回記事を起こすにあたり、キャスト陣をウィキペディアでチェックしているときに、物語冒頭で賢吾にラブレターを渡す女子高生役の冨田真由さんとは、あのストーカーにめった刺しにされたアイドルだったことに気づいた。
他者との関わりが希薄になればなるほど、適切な距離感というものがわからなくなる。
人は人との関わり合いの中でしか生きられない。バーチャルなものが氾濫し、コロナという脅威のせいで人と会うことさえ難しくなった今だからこそ、他者との距離感というものを強く意識しなければならないと、『フォーゼ』第1話を見て感じた次第である。
それでは、ここまでお読みいただきありがとうございました。
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