2023年1月15日放送『仮面ライダーギーツ』第18話「乖離Ⅱ:ブラボー!ジャマーボール対決!」(監督:杉原輝昭 脚本:高橋悠也)をレビュー
これまでの、人間VSジャマトという単純な対立の図式に加え、デザスターと呼ばれるスパイが潜むという設定を追加したことで、仲間内での心理戦も加わった『仮面ライダーギーツ』。
これまで以上に複雑な状況に置かれるレギュラーメンバーに加え、次々に登場する新キャラも物語を盛り上げている。
ネタバレも含むが、最後までおつきあいいただければ幸いだ。
※本記事の中で使用している画像は、特記のないものは全て『仮面ライダーギーツ』より引用している。
デザスターは誰だ?
視聴者もスポンサーも存在するショーだったと判明してからというもの、すっかり様変わりしたデザイアグランプリ。
参加者たちにバレてしまったからと開き直ったのか、新たなゲームマスターが就任したためなのかはわからないが、同じ番組でこんなに変わる? というほどの変わりようだ。
深夜にひっそりと始まった『人志松本のすべらない話』が、人気を博してゴールデンに進出した時の変わりようにも驚いたが、それどころの話ではない。あの番組は昔のアングラ感が好きだったので、観なくなって久しいが、観客として参加している芸能人たちの「すべらんなー」の一言は未だに差し込まれているのだろうか? 単なる時間潰しだとしても、邪魔でしかない。もっとも、芸能人からすれば数少ない顔出しのチャンスなのだろうとは思うけれど。
そういったものに倣ったわけでもないのだろうが、デザイアグランプリも、参加者たちが参加中のゲームについて語るシーンが所々に差し込まれている。いかにもTVっぽい。
中でも注目ポイントは、デザスターと呼ばれる運営側から送り込まれたスパイの正体だろう。前回の感想を書いた際、私は我那覇 冴ではないかと予想した。
我那覇 冴
小貫莉奈
レギュラーメンバー3人はあり得ないと除外し、露骨に怪しすぎる五十鈴大智も外すと、残るは我那覇だからだ。
五十鈴大智
後藤 大
加えて、ゲームが1つ終わる度に全員投票によってデザスターと思しき参加者を脱落させていくというルールが「人狼」に近いため、オオカミのライダーである我那覇が最も怪しいという、論理性に乏しい理由もあった。
ところが今回の展開だけ見ると、完全に五十鈴大智に見える。景和を陥れようという意図があからさま過ぎる。
一方で、私が予想した我那覇はお姉ちゃんキャラを全面に押し出してきた。袮音につきっきりでゲームのアドバイスをするなど面倒見の良さが強調されていた。
鞍馬袮音
星乃夢奈
だからこそ、ここは改めて我那覇=デザスター説を再度推したい。もっとも怪しげでないキャラが犯人というのはミステリのお約束だからだ。これで当初から怪しすぎる五十鈴がデザスターだったら、コナンも金田一も古畑もガリレオも要らなくなってしまう。
現在、参加者たちから一番疑われているのは桜井景和だが、その彼のことをやけに気にしていたのも引っかかる。弟と妹がいる、と語っていた我那覇だからこそ、姉と二人暮らしをしているという景和の背景を知ることで同情し、隙が生まれるとか、そんな展開を勝手に予想している。
しかし、こんなのは一つの可能性でしかない。シンプルに五十鈴がデザスターである可能性も否定できない。その場合、今の流れでは景和が疑われ続けるのは明白だ。それをぶち壊すとすれば、景和がボランティアをしている子ども食堂ではないか? ひょっとしたら、我那覇の弟や妹がそこの常連だったりするかもしれない。その弟たちの口から「景和兄ちゃんは良いやつだ!」なんて台詞が飛び出すことで、我那覇が五十鈴ではなく景和を信じて・・・なんて想像も膨らむが、さて、どうなることか。
景和への疑惑
その景和は、デザスターと疑われても仕方のない行動を繰り返していた。
桜井景和
佐藤瑠雅
今回のゲームはジャマーボールと呼ばれるもので、ライダーチームとジャマトチームとに分かれ、それぞれのゴールにボールを投げ込み、ポイント数を競うというもの。作中では「ドリブルのないバスケみたいなもの」と説明されていたが、要するにハンドボールみたいなものである。あえてバスケと言ったのは、ハンドボールよりバスケットボールの方がメジャーなことと、昨年末より公開されている東映アニメーションの『THE FIRST SLAM DUNK』に配慮したもの・・・というのは穿った見方だろうか。
ポイント数は異なるものの、ゴールを決める際、近くよりも遠くから決めた方がより多くのポイントが手に入る(バスケは近くだと2点、遠くからだと3点だが、ジャマーボールは近くだと3点、遠くからだと5点となっている)ことなどもバスケに近い。
ラストは三井 寿ばりのロングスローで大逆転だと、これまた勝手に予想している。アニメ好きな杉原監督回ということを考慮すれば、「俺は三井。諦めの悪い男」という決め台詞も持ち込みそうな気さえする。『リバイス』で「ぶったね!親父にもぶたれたことないのに」という『機動戦士ガンダム』のアムロの迷台詞を玉置に言わせたのは記憶に新しい。
ところで景和が疑われているのは、ゴールを決めようとしているジャマトを妨害するどころか、棒立ちで見過ごしたからだ。
これには、ボールを持ったジャマトが脱落した参加者たちと同じ台詞を口にしたことに困惑したという、きちんとした理由があったのだが、そうとは知らない他の参加者からすれば、ジャマトに勝ちを譲ろうとしているように見えたのも仕方がない。
しかも今回は、目の前でジャマトが豪徳寺の姿に変身したりもしている。動揺するなという方が無理な話だ。
豪徳寺 武
金城大和
その事実から導かれる可能性としては、ジャマトが脱落した参加者たちの成れの果てであること。だとしたら、姿形は違っても、その正体は人間かもしれない。そんな考えがよぎったからこそ、景和の攻撃の手は緩んだのだ。
景和からそのことを聞いた五十鈴は、「みんなが動揺するといけないから、そのことは黙っておいた方が良い」と、いかにも小悪党っぽいアドバイス。それでいて、みんなの前では「デザスターは景和だ」と煽ってみたりと、あまりにもやっていることが稚拙で露骨。
しかし、ゲーム途中での予想投票では、景和がデザスターだと思っている参加者が3人という結果となっている。
五十鈴がデザスターだとしたら、かなり有能ということになるけれど、ミステリ好きとしては「なんだかな…」みたいな気持ちになってしまう。
真のデザスターはいったい誰なのか? それが五十鈴であろうとなかろうと、このままでは景和の脱落は疑いようもない。今回、景和推しの新キャラとして謎の人語を解すカエル(どう見ても置き物なので、本体はどこかに存在しているかもしれない)・ケケラも登場したことだし、このまま終わりはしないだろうとは思うが。
ケケラ
(声)俊藤光利
道長の戦い
さて、お互いに疑心暗鬼の目で探り合う5人とは別に、ただ一人、ジャマトの世界に連れ去られてしまった道長の様子も気になるところだ。
吾妻道長
杢代和人
目の前でルークと呼ばれるジャマトが、命を落としたはずの豪徳寺に変貌する様を目にしたり、木の枝にたわわに実ったジャマトたちを目にしたりと、これまでの人生観そのものを揺さぶられる想いだろう。
なんとか逃げ出そうと、ひび割れた大量のIDコアの山から、バッファのIDコアを見つけ出して変身するも、不完全なのか、ジャマトライダーに大苦戦。しかも、ジャマトライダーは倒しても次々に現れる。
そこで、倒したジャマトライダーが落としたジャマトバックルに手を伸ばす道長。
いやいや、こんなもの使っちゃいけないに決まってるという大方の予想通りに大暴走。そのおかげで窮地は免れるものの、道長の身体は無事なのだろうか? 後遺症などが気になるところではあるし、これが今後の布石となるのかもしれない。
追手から逃れ、高台に立つ道長。
ここはどこだ? 少なくとも道長たちが暮らしてきた日本ではないだろう。まるで異次元である。今にも日が落ちようとする光景は、目も眩むばかりに美しい。そのコントラストがより一層、道長の絶望を色濃く見せている。
木陰から「どこにも居場所なんてないよ」と悪戯っぽく微笑むアルキメデルが憎たらしい。
アルキメデル
春海四方
道長はどうなってしまうのか?
景和は疑いを晴らせるのか?
そして自らを「次元を旅する観光客」と名乗るジーンたちの正体は?
ジーン
鈴木 福
あえて詳しい設定をぼやかすことで、どちらに転ぶかわからないといった不安定さが漂っていた序盤戦を乗り越え、ようやく確かな盛り上がりを見せてきた『仮面ライダーギーツ』。
1つ謎が解けたかと思えば、新たに2〜3の謎が提示されるという感じで展開している。
今回も、英寿の母親の情報など、以前英寿の口から語られていたのとは少し違う情報が出てきたことで、またこちらは困惑する一方だ。
浮世英寿
簡 秀吉
だが、これこそが『ギーツ』の魅力である。既にご覧になった方はもう一度、未視聴の方も是非一度ご覧いただきたい。
それでは、ここまでお読みいただきありがとうございました。
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