2023年1月22日放送『仮面ライダーギーツ』第19話「乖離Ⅲ:投票!デザスターは誰だ!」(監督:杉原輝昭 脚本:高橋悠也)をレビュー
ジャマーボール対決はジャマト優勢のまま前半戦が終了。このままではジャマーエリアに閉ざされた街が消失してしまう・・・
参加者の中にデザスターと呼ばれる妨害者が紛れ込んでいるということもあり、お互いに疑心暗鬼のまま、後半戦に突入。
さて、今回ついに初の脱落者が決まってしまう。
今のところ、最も疑われているのは桜井景和。
さて、景和は疑いを晴らせるのか?
ネタバレも含むが、最後までおつきあいいただければ幸いだ。
※本記事内で使用している画像は特記したものを除き『仮面ライダーギーツ』より引用している。
景和
33ー33。
同点で前後半戦が終了したジャマーボール対決は、延長戦にもつれ込むことに。万が一、ライダーチームが負けてしまうと、ジャマーエリアに閉ざされた街が消失してしまう。そうなれば、景和がボランティアをしている子ども食堂まで巻き込まれてしまうというのに、ライダーチームが苦戦しているのは、景和の妨害行為が原因である。
桜井景和/仮面ライダータイクーン
佐藤瑠雅
もちろん、景和が妨害行為をしたことには理由があった。それは、対峙したジャマトが、脱落した過去の参加者たちと同じ台詞を口にし、さらには同じ姿にまでなったのだ。これまでは単なる異種族の怪人として戦ってきたジャマトが、実は脱落者たちの成れの果てだとすれば、相手は同じ人間である。景和でなくとも、躊躇するに違いない。
しかし、五十鈴による印象操作もあって、景和の信憑性は限りなく低い。
五十鈴大智/仮面ライダーナッジスパロウ
後藤 大
5人の参加者の中に紛れ込んだ妨害者・デザスターとして景和が有力視されている事がその証だ。ゲームが終了するまでに「誰がデザスターだと思うか」を投票するのだが、中間投票では5人のうち3人が景和をデザスターとして票を入れている。そのうちの2人は五十鈴と我那覇だとして、残り1人は英寿か袮音か。いや、ひょっとしたら景和自らが自身をデザスターだと投票している可能性もゼロではない。これはそういった心理ゲームである。
我那覇 冴/仮面ライダーロポ
小貫莉奈
浮世英寿/仮面ライダーギーツ
簡 秀吉
鞍馬袮音/仮面ライダーナーゴ
星乃夢奈
私は前回、前々回のレビューで、我那覇がデザスターだと予想している。だが、これは薄弱な前提に基づいたものである。それは、英寿、景和、袮音の3人(レギュラーメンバー)がデザスターであるはずがない、というものだ。だが、裏を返せば、この最も怪しげでない3人のうちの誰かが犯人というのは、ミステリの王道に当て嵌まる。
ただし、身も蓋もない言い方をすれば、主人公の英寿がゲームの途中で脱落することは考えにくいので、これは除外しても良いのではないか。
だとすれば、今回見せ場を作った景和ではなく、現在、オーディエンスの支持率が最も低い袮音が実はデザスターであり、周囲にそのことをひた隠しにしている可能性はゼロではない。周囲の妨害をするのがデザスターの役割だとしても、具体的に妨害をする必要などないのかもしれない。五十鈴がインタビューシーンで語っていたように「とりあえずちょろそうなヤツを脱落させれば良い」という感じで、他の参加者に疑われないまま最後の二人まで残る事ができればデザ神になれるのである。袮音がそれを狙っていないとは言い切れないのだ。
それに、仮にレギュラーメンバーの誰かがデザスターだとしても、それは運営からの声がけでやっていることであって、自ら裏切ったわけではないから、人間関係にヒビが入るようなこともないだろう。
こう考えると、我那覇がデザスターであるという私の予想など陳腐だ。むしろ、袮音がデザスターだったとか、実は景和がデザスターだったという結末の方がよほど刺激的だ。こちらの思惑をあっさりぶち壊してくれるところにミステリの面白さはある。
参加者たちを見つめる者たち
前回初登場した喋るカエルの置物(?)・ケケラは、景和のサポーターを名乗っていた。なんでも、これまで景和ばかりがブーストバックルを入手していたのは、景和の強運ではなく、ケケラが根回ししていたのだとか。ゲームの結果を強引に変えてしまうことまではできないにせよ、強力なバックルを支給することは許されているというのだから、単なる観客でないことは明白だ。
ケケラ
(声)俊藤光利
そういえば、ジーンも英寿のサポーターを名乗っていた。袮音たち他のメンバーにも、それぞれサポーターが存在するのかもしれない。
ジーン
鈴木 福
ゲームマスター・チラミが、景和をケケラのところに向かわせる際、「くれぐれも粗相のないように・・・」と言い含めているところからも、このサポーターと呼ばれる者が、かなり高位の存在であることが窺える。金持ちの道楽、といったものだろうか。昔でいえば、パトロンみたいなものかもしれない。
チラミ
山崎樹範
それにしても、このケケラが個人的にはツボである。スーツを着たガマガエルというのが、なんとも洒落ている。思い返せば、昔スーパーファミコンで発売された『クロノ・トリガー』というゲームに登場したカエル(そのまんまのネーミングも最高だ)も大好きだった。私はこういうちょっとリアルテイストで、かつ擬人化したカエルが好きなのかもしれない。
さて、話を元に戻そう。
ケケラにハッパをかけられた景和は、子ども食堂のスタッフと、そこに通ってくる子どもたちを守るため、覚悟を決める。ジャマトが元々人間だったかもしれない、とはいえ、ゲームに負けてしまったら、子ども食堂も含めたこのエリア全体が消失してしまうのだ。
しかも延長戦のルールはサドンデス。要するに、先に1点入れた方が勝ちである。思い悩んでいる暇などない。
その覚悟が伝わったのだろう。
ニンジャバックルを回収され、ほぼ丸腰だった景和だが、その行動が信ずるに値するものだったのだろう。我那覇は、景和を信じてニンジャバックルを手渡す。ここからがタイクーンの本領発揮。そして、杉原監督の本領発揮でもある。
ジャマトたちの攻撃を避けながら、ビルの壁を駆け上り、オフィスの中を縦横無尽に飛び回る。まさに忍者の名にふさわしい、目まぐるしいアクションが展開される。
そして最後は、ジャマトの攻撃を気合いで凌ぎながら逆転の一発。いつもはゆるふわな景和の“割れマスク”越しの強い視線にシビれる。
道長の帰還
ゲームを脱落し、ジャマトの世界に連れて行かれた道長が生きていたことは前回明らかになったが、今回あっさりと帰還してしまったことには驚いた。
吾妻道長
杢代和人
前回、ジャマトライダーたちの追跡を逃れ、夕日の沈む高台から眺めた景色。あれは一体何だったのか? 私は、異次元にでも飛ばされたのかと思っていたのだが、そうではなく、一般の人々が暮らす世界と山一つを隔てただけの場所に、ジャマトの本拠地とも言える場所が存在していたということなのだろうか。だとすれば、ジャマトと人間は全く別の世界の住人などではなく、生と死、あるいは光と影のように表裏一体の存在なのかもしれない。
邂逅する道長と英寿。
公にはなっていないジャマトの真実の一端に触れたことで、道長はデザイアグランプリに対して懐疑的になっている様子だ。望んでいた「全ての仮面ライダーをぶっ潰す力」を諦めたわけではなさそうだが、デザイアグランプリで勝ち進んで手にいれるのではなく、自分なりのやり方で手に入れたいと考え始めたらしい。
ただし、その手に持つのは前回手に入れたジャマトバックル。たった一度、それもほんのわずかな時間だけしか使っていないのに暴走しかけた危険な代物だが、今後はこれをメインで使っていこうというのだろうか。確かに強力ではあるだろうが、使い続ければ普通ではいられないはずだ。人間のままで居続けられるのかさえ微妙な雰囲気だ。
だが、こうして英寿と袂を分ったのは、ここから先の展開に大きく作用してくるはずである。そもそもライバルという設定のため、袂を分っていない時期などなかったとも言えるが、それこそジャマトバックルの使い過ぎで身も心もジャマトサイドの存在になってしまうのかもしれない。「全てのライダーをぶっ潰す力」を手にいれるのに、自身も人間を守る側のライダーであることには違和感が拭えないけれど、これがジャマト側のライダーとなるなら妙にしっくりくる。
道長が生きていた事実を知っても、喜ぶどころか例外は許さないと邪魔者扱いするゲームプロデューサーのニラムの存在もまた、道長の脱・人間側を後押しする事態となるかもしれないし、次回登場予定の新キャラ(人間かどうかもよくわからない)は道長の欲望に目をつけ、その手助けをするようなことを持ちかけるようだし、これまでのデザイアグランプリを超えた戦いに広がりを見せていきそうだ。
ニラム
北村 諒
投票結果
ついにジャマーボールは決着。そうして待ちに待った投票の時が訪れる。
参加者たちは、それぞれにデザスターだと思しき一人を決めて投票する。その結果は・・・
景和に1票。
五十鈴に4票。
というわけで、五十鈴大智という予想通りの結果となる。
ただし、彼が本当にデザスターだったかは明かされない。何故なら、まだゲームは続くからだ。
終わらない心理戦。
普通に展開を予想すれば、最後に残った2人のどちらかがデザスターであり、その時点でデザ神は決定。世界はその1人の理想通りに書き換えられてしまうだろう。
だが、各話タイトルの冒頭にある言葉は「乖離」。辞書によれば、その意味は「背き、離れること。離れ離れになること」である。
これは先述した道長のことを指しているのか、それとも・・・?
それでは、ここまでお読みいただきありがとうございました。
\ 僕と握手! /