2022年9月25日放送『仮面ライダーギーツ』第4話「邂逅Ⅲ:勝利条件」(監督:杉原輝昭 脚本:高橋悠也)
ゾンビサバイバルゲームの第2ウェーブでゾンビに噛まれてしまった鞍馬袮音と墨田泰斗の二人。
難を逃れた小金屋たちは被害が及ばないよう二人を隔離しようとするが、どうやら完全にゾンビ化するには暫く猶予があるらしい。
完全にゾンビ化してしまうのが先か? それともゾンビ化を防ぐ手立てがあるのか?
次の脱落者を巡り、さらに加速する第4話をレビューする。本作のヒロイン・鞍馬袮音に焦点を当てたストーリーテリングも見もの。ネタバレも含むが、最後までおつきあいいただければ幸いだ。
キャスト
ここでは第4話のキャストをご紹介する。
なお、以下で使用している画像は全て『仮面ライダーギーツ』より引用している。
浮世 英寿/仮面ライダーギーツ
簡 秀吉
桜井景和/仮面ライダータイクーン
佐藤瑠雅
鞍馬袮音/仮面ライダーナーゴ
星乃夢奈
吾妻道長/仮面ライダーバッファ
杢代和人
ツムリ
青島 心
墨田奏斗/仮面ライダーダパーン
宮本龍之介
小金屋森魚/仮面ライダーメリー※画面右
あべこうじ
鞍馬伊瑠美
遊井亮子
ベン※画面中央
マイケル・K
ジョン※画面右
トム・コンスタンタイン
幼い袮音
松岡夏輝
執事※画面左
本間識章
ギロリ
忍成修吾
運営ナレーション:塩野潤二
母と娘
今回は、本作のヒロイン・鞍馬袮音について掘り下げている。
財閥の一人娘という、庶民からすれば羨望の的でしかないポジションであるにも関わらず、家出を繰り返し、母親と対立(父親は健在のようだが、今のところ登場はしていない)していることは、これまでにも語られてきたことである。
「庶民になりたい」というのが家出の理由らしい。年頃の女の子が家に縛られ、恋の一つも自由にできないというのは、確かに苦しいものだろう。しかし、母・伊瑠美の「鞍馬財閥の一人娘というだけでリスクがある」という言葉には現実味がある。SNSなどでよく見かける年収や資産額でマウントを取ろうという人たちは身の危険を感じないのだろうか? そういったリスクを回避するために、あえて質素な生活をしている資産家も多い。わざわざお金持ちであることを見せつけようとするのは、いわゆる成金か、詐欺師のどちらかであることが多い。もう一つ、そういったリスクについてまるで考えの及ばない単なるバカという可能性もある。というのは余談でしかないが、事実、袮音は幼い頃に誘拐された経験があったようで、それも両親の過保護が行き過ぎる理由となっている。
荷物に発信器を潜り込まされ、GPSで監視されていたことに腹を立て、伊瑠美に噛み付く袮音だが、ビンタ一発で捩じ伏せられてしまう。『笑ってはいけない◯◯』でお馴染みの、蝶野正洋さんを彷彿とさせるような強烈な一撃だ。
その直後、袮音を後ろから抱きしめ、「ずっとそばにいて」とすがる伊瑠美はまるでDV加害者のよう。
「欲しいものならなんでも買ってあげる」というお約束の引き留めトークも虚しく、袮音はまた屋敷を抜け出す。何にも縛られず気ままに生きたい。そんなところが、いかにも猫っぽい。
ブーストナーゴ
「ここに私が欲しいものはない」
そう呟いて屋敷を抜け出した袮音の前に現れたのは、英寿と景和の二人。
家出はしたものの、いつゾンビ化してしまうかわからないという不安に押しつぶされそうな袮音は、どこか諦めムード。そんな袮音に英寿が語る。
「ジャマトによるダメージやペナルティはゲームが終わるたびにリセットされる」
何度もデザイアグランプリにエントリーしている(と思しき)英寿だからこそわかるネタだ。これが袮音にとって正に一条の光となる。完全にゾンビ化してしまう前にゲームをクリアーすれば、助かる可能性が生まれたのだから。
第3ウェーブが始まると、ゾンビ化が進む泰斗は自暴自棄となり、他のメンバーを襲い始めるが、同じくゾンビ化が進む袮音の目には希望が宿る。
その希望を後押しするのが、ブーストバックル。景和が袮音に譲り渡したものだ。
ブーストバックルをデュアルオンして、仮面ライダーナーゴ アームドハンマーブースト(長い)へチェンジ。脚のブーストを活かした高速移動を駆使して、ゾンビたちを薙ぎ倒す。
しかし、ゾンビ化の流れは止まらない。
もう時間がない。その時、英寿がゾンビバックルの能力で大量のゾンビたちの足止めをしてみせたことで、ゾンビに意識を乗っ取られそうな袮音が覚醒する。
バックルを回転させ、仮面ライダーナーゴ ブーストアームドハンマー(やっぱり長い)へチェンジ。
ここからがナーゴのハイライトであり、杉原輝昭ショーの始まりだ。
まるで『モンスターハンター』に登場するような巨大ハンマーは一見使いづらそうだが、腕部に装着されたブーストの影響で強化されており、この恐るべき質量を高速で振り回すことが可能となっている。
踏み締めた足元のアスファルトがひび割れ、振り抜いたハンマーの衝撃波でゾンビたちが粉々に砕け散る。この胸のすくような熱い演出は、いかにも杉原監督らしい。
それにしてもナーゴのデザインはなかなかカッコいい。どことなくエジプトテイストなマスクが個人的なお気に入りポイントだ。ネコの持つかわいらしさと魔性のどちらも感じさせる秀逸なマスクと言える。当初はハンサムなギーツのマスクがお気に入りだったが、見慣れてくると、ナーゴのシンプルなラインの方が飽きが来ない。
余談が長くなったが、こうしてゾンビサバイバルゲームは幕を下ろす。
運命の人
泰斗と袮音の二人がゾンビに噛まれるといったアクシデントはあったものの、完全にゾンビ化することは免れ、誰一人欠けずに終了したと思われた第2ステージ・ゾンビサバイバルゲームだったが、ルール上、ランキング最下位は脱落である。
ランキングが発表されると、1位:英寿、2位:道長、3位:景和、4位:小金屋、5位:袮音、そして6位は自暴自棄になっていた泰斗だった。納得の最下位に対して意外だったのは、ラストであれだけ巻き返しを見せた袮音よりも、ほとんど活躍したように見えなかった景和が倍近いポイントを稼いでいたことである。どうやらザコをチクチクと倒すより、「市民救出」といった隠れミッションをこなした方が遥かにポイントは高いようである。ひたすらゾンビを倒し続けて圧倒的なポイントを稼いだ英寿と道長の凄さがわかる描写だといえる。
さて、前回「運命の人に出会う」ことが目的だと語っていた袮音だが、今回明らかになったその願いは「本当の愛が欲しい」というものだった。
前回の「白馬に乗った王子様」というセリフは、ガチな夢見る少女でも茶化していたわけでもなく、彼女にとって“本当の愛”のメタファーだったのだろう。愛情を注いでいるつもりの両親からも、インフルエンサーとしての袮音に入れ込むファンたちからも本当の愛を感じることはできていなかったのだ。
財閥の令嬢とか、登録者1,000万人超えのインフルエンサーとか、一般人からすれば羨ましいほどにキラキラした属性である。傍目には、さぞ幸せなのだろうと思えるが、当の本人は胸にぽっかりと穴が空いているようなものである。人間というのは、どこまで行っても不安や寂しさと切り離された生き方はできないように思う。
最後は、家に戻った袮音が母のビンタをしっかりと片手で受け止めた。その瞳には強い意志が宿る。今回の経験を乗り越えて、明らかに成長した姿が見える。
ある意味で、そんな袮音と同じような虚しさを抱えて生きている泰斗は、仮面ライダー失格の烙印を押され消えてしまった。これが単純にデザイアグランプリを追放されただけなのか、命を失ってしまったのかはよくわからない。
しかし、どういった危機的状況に陥っても諦めてはならない。希望を持て、というメッセージは、ド直球だが、とてもヒロイックで素直に響いた。次回以降も新たなチャレンジャーを迎えながら、生き残りを賭けた戦いが続いていくようだ。『龍騎』とは異なる究極の多人数ライダーの物語をこれからも楽しみたい。
それでは、ここまでお読みいただきありがとうございました。
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