『仮面ライダーゴースト』のスピンオフ『ゴーストRE:BIRTH 仮面ライダースペクター』をレビュー。
タイトルのとおり、『ゴースト』のサブライダーであるスペクターを主人公にしたスピンオフ。
ネタバレもしながら名作と呼ばれる所以に迫る。最後までおつきあいいただければ幸いだ。
スタッフ・キャスト
ここでは主要スタッフとキャストを紹介する。ウィキペディアに記載のある方はリンクも貼っておくので、是非、他の参加作品などもチェックしていただきたい。
【スタッフ】
監督:上堀内佳寿也
脚本:福田卓郎
特撮監督:佛田 洋
アクション監督:宮崎 剛
音楽:坂部 剛
【キャスト】
深海マコト(フカミ マコト)/仮面ライダースペクター:山本涼介
アラン/仮面ライダーネクロム:磯村勇斗
月村アカリ(ツキムラ アカリ):大沢ひかる
御成(オナリ):柳 喬之
深海カノン(フカミ カノン):工藤美桜
イゴール:山本浩司
アリア:かでなれおん
ジャベル:聡太郎
ジャイロ/眼魔スペリオル:高岩成二
小野寺 靖(オノデラ ヤスシ):佐野泰臣
シブヤ:溝口琢矢
ナリタ:勧修寺玲旺
幼いマコト:多賀蓮真(タガ レンマ)
幼いカノン:堰沢結衣
西園寺 主税(サイオンジ チカラ):森下能幸
クロエ:マーシュ彩
アドニス:勝野 洋
天空寺タケル(テンクウジ タケル):西銘 駿
ダントン/エヴォリュード:ジェームス小野田
【主題歌】
「NEW WORLD」Bentham 作詞:小関竜矢 作曲:須田原生
新フォームは2種類
スピンオフや劇場版での楽しみの一つが、ライダーの新フォームだが、本作にももちろん用意されている。しかも2種類。
仮面ライダースペクター新フォーム
まずは主人公・マコトが変身する仮面ライダーシンスペクター。
ゴースト・ムゲン魂のスペクター版といったデザインで、全身がキラシールのようなキラメキに包まれている。
名前の「シン」は、英語のSin(宗教的な罪)から。変身音も「プライド!グリード!ラスト!ラース!エンヴィー!グラトニー!スロウス!ブレイク!!デッドリーシン!」と、”7つの大罪”を意味している。決して『シン・エヴァンゲリオン』とか『シン・ゴジラ』にインスパイアされたわけではないと思う。・・・多分。
7つの大罪とは?
- 傲慢 ”Pride”
- 強欲 ”Greed”
- 色欲 ”Lust”
- 憤怒 ”Wrath”
- 嫉妬 ”Envy”
- 貪食 ”Gluttony”
- 怠惰 ”Sloth”
※ 主にカトリック教会における用語で、人間を罪に導く可能性があるとされる欲望や感情のこと。
必殺技は、7つの大罪を冠したネーミングのシンダイカイガン(プライドフィスト、グリードスラッシュ、ラストバレット、ラースフレイム、エンヴィースラップ、グラトニーバイト、スロウスグレイブ)と、デッドリーオメガドライブ(いわゆるライダーキック)がある。
デッドリーオメガドライブ時は、6枚の羽が現れるが、これは熾天使(シテンシ)と言って、天使の中でも最上位の存在を模したものである。
スーツアクターは渡辺淳さん。
仮面ライダーネクロム新フォーム
もう一つのフォームは、仮面ライダーネクロム 友情バースト魂。
道を誤りそうになっている友・マコトを止めようとするアランの意思によって誕生した友情バーストゴースト眼魂で変身する。ゴールドとブラックを基調としたカラーリングはなかなか迫力がある。
変身音も「友情カイガン!バースト!俺がバースト!友情ファイヤー!止めてみせるぜ!お前の罪を!」と、この物語だけの特別仕様であることがわかる。
これといった武器は使わず、格闘戦のみとなるが、恐るべき戦闘力を発揮し、マコトのディープスペクターを圧倒する。
必殺技は「オメガドライブ」(コチラもいわゆるライダーキック)。
スーツアクターは永徳さん。
人造人間の苦悩を描くハードな内容
牢獄に囚われていたダントンという男が脱獄してしまうところから物語は始まる。
人間に秘められた無限の可能性を信じるダントンは、人類の平和と幸せを願い、人体改造を研究する科学者だったが、思想を異にするアランの父・アドニスと対立し、戦いの末、敗れて牢獄に閉じ込められたのだった。
眼魔(ガンマ)世界へと舞い戻ったダントンは、そこで深海マコトと出会う。
ジャイロを瞬殺した直後だったこともあり、一触即発かと思いきや、まさかのフレンドリーモード。
実は、深海マコトとカノンの兄妹は、このダントンが創り出した人造人間で、中でもマコトは、ダントンが「奇跡の子」と呼んでいた唯一の成功体だったのだ。
カプセルに入れられた大量の自分のクローンを見せられ、これまで自分を普通の人間だと思っていたマコトは絶望する。
そういった過去も含めて受け入れようとしてくれた友・アランさえも傷つけ、さらに自己嫌悪を深めるマコト。
しかし、そうまでしてでも信じたかったダントンは、妹・カノンを「欠陥品」と切り捨てようとする。
その様に我を取り戻し、自らと向き合うことで身につけた新しい力「シンスペクター」によって、”生み”の親であるダントンを倒す。
これはまさに『仮面ライダー』の縮図だ。
人造人間という特異な生まれを持ち、人と違うことに悩み苦しみ、それでも虐げられる弱者のため、破滅の運命をたどる世界を救うために、生みの親を殺す。
そんな原点回帰と言っても良い内容が、1時間ちょっとの中でまとめられている。
人間の「死」を描くことで、生きることの素晴らしさを見事に浮かび上がらせた『仮面ライダーゴースト』は、変わり種のデザインや、やややり過ぎた感のあるコメディ路線で人気はイマイチだったが、スピンオフとなる本作は、それら『ゴースト』らしさはそのままなのにも関わらず、とても魅力的な作品となっている。
『ゴースト』本編を知っている人は良い意味で裏切られると思う。
ラストのスピーチは最大の見どころ
物語は、大気汚染によって赤い空に覆われた眼魔世界に、地球のような美しい青空をもたらすために奮闘するアランたちの姿が描かれる。
この大気汚染というテーマも、『仮面ライダー』を彷彿とさせる。
バッタをモチーフとし、ベルトの風車に風を受けることで超人的な力を発揮する設定だった『仮面ライダー』は、まさに自然破壊や公害が社会問題となっていた時代に生まれたヒーローだ。
ラストではついに青空を手に入れたアランが、眼魔世界の人々を前に、自分の思いの丈を語る。
これがなかなか感動的だ。ここだけは、是非とも実際にご覧いただきたい。
文章で起こすことはカンタンだが、スピーチとは、話者の表情、声音、身振り手振り、そういった全てでメッセージを伝える技術である。一種の芸術と言ってもいいかもしれない。
スティーブ・ジョブズのスピーチが今でも語り草となっているのは、単にそのメッセージが素晴らしかったからではない。見た目から小道具まで、全てを完璧なまでに整えているからだ。
個人的にスピーチといえば、まず思い浮かぶのは『機動戦士ガンダム』におけるギレン・ザビのスピーチだが、あれとは全く方向性が異なるものの、本作のアランのスピーチもなかなか良かった。
ジョブズやギレンと同等とは言えないまでも、その表情を、声音を、あなたの目で確認していただきたい。
総じて、個人的には『ゴースト』本編よりも好きである。
もう1つのスピンオフ『アラン英雄伝』よりも格段に上だと言って良い。
心が疲れた。そんな人にこそ見てもらいたい作品だ。
それでは、ここまでお読みいただきありがとうございました。
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