『忍風戦隊ハリケンジャーwithドンブラザーズ』感想

雷堂

TTFCで限定配信されているスピンオフ作品『忍風戦隊ハリケンジャーwithドンブラザーズ』(監督:谷本健晋 脚本:西 駿人)をレビュー

2002年2月から2003年2月まで放送されたスーパー戦隊シリーズ第26作『忍風戦隊ハリケンジャー』が20周年を迎えたことを記念して、現在放送中の『暴太郎戦隊ドンブラザーズ』とのコラボ作品が完成。東映特撮がいつでも見放題のアプリ、TTFC(東映特撮ファンクラブ)にて限定配信が開始されたので、早速観てみた。

ネタバレも含むが、最後までおつきあいいただければ幸いだ。

※以下で使用している画像は全て『忍風戦隊ハリケンジャーwithドンブラザーズ』より引用している。

目次

来訪者たち

物語は、『ドンブラザーズ』でお馴染みの喫茶どんぶらから始まる。正確には、喫茶どんぶらから・・・と言っても、舞台となるのは、この喫茶どんぶらとビルの屋上の2ヶ所だけ。手間も予算もかけないという意味では、短篇らしい作り方である。その喫茶どんぶらには、何故か鬼頭はるか一人。ドンブラザーズの面々はおろか、マスターさえ不在の様子だ。

鬼頭はるか/オニシスター

志田こはく

はるかは新作マンガのアイデアが浮かばず悩んでいた。予定では、歴史を揺るがす大傑作恋愛マンガとなるらしい。

そこに怪しげな集団と、彼らを追ってきたと思しき一人の戦士が現れる。下忍マゲラッパと、ハリケンレッドだ。

喫茶どんぶらに現れたマゲラッパたち

椎名鷹介/ハリケンレッド

塩谷 瞬

空忍の紋章を染め抜いた真っ赤な和傘が眩しい。当時を知る人なら、これだけでちょっとテンションが上がるかもしれない。

はるかの前に現れたハリケンレッド

ハリケンレッドはマゲラッパたちの持つ青い石を奪おうとしていた。その石の名は「ジキョクセキ(磁極石? 本記事執筆時点で正確な文字は不明)」。20年前に倒した宇宙忍群ジャカンジャの残党が、それを使って恐るべき計画を立てているらしい。

そして『ハリケンジャー』といえば、「超忍法・影の舞」である。画面手前で障子が閉まり、そこに映し出される影によって戦闘シーンを描くという『ハリケンジャー』の代名詞とも言える演出。障子というアイテムで和のテイストを強調し、スピーディーに動く影によって忍者の持つスピード感と、人知れぬ影の存在たる忍者の存在感を高めるという傑作アイデアだ。

もちろん本作でも登場するのだが、今回はかなりコミカルな演出となっている。はるかが黄色の影として登場し、マゲラッパに追われて右往左往。赤い影・ハリケンレッドに頭を踏みつけられると、ポヨンとバネのように凹んだりもする。昔の『マリオブラザーズ』を見ているような気分だ。

超忍法・影の舞が再び

店の中でそんな大立ち回りをやられたものだから、喫茶どんぶらの中はメチャクチャだ。テーブルや椅子は転がり、備品は散乱。そこまでして事態が解決すれば良かったのだろうが、マゲラッパたちは石を持ったまま逃走してしまう。それと入れ替わりのタイミングで2人の男女が駆けつける。野乃七海と尾藤吼太。ハリケンブルーとハリケンイエローである。

野乃七海/ハリケンブルー

長澤奈央

尾藤吼太/ハリケンイエロー

山本康平

こうして3人揃ったハリケンジャーたちは、すぐにマゲラッパたちを追いかけようとするが、はるかがそれに待ったをかける。

「散らかしっぱなしにするなー!」と一喝し、3人に店の後片付けをやらせる。散らかしたものを片付けるというのは、道義的には正しいが、スーパー戦隊の大先輩にそんな雑務をやらせるというこの傍若無人さが『ドンブラ』らしい。

ここではるかが疑問を口にする。「皆さんは忍者なんですか?」と。

それを皮切りに、改めて『ハリケンジャー』の紹介が行われる。バックに流れる当時の映像が懐かしい。3人の初々しい姿が眩しいが、20年という時を経ても、しっかりとヒーローらしい佇まいを見せてくれる姿には感動すら覚える。

画像引用元:忍風戦隊ハリケンジャー

だが、ここは『ドンブラ』のゾーンだ。大先輩であるにも関わらず、3人は『ドンブラ』の洗礼を受けることになってしまう。“忍者”というキーワードから、はるかが妄想したのはクノイチ同士の恋模様。はるかの妄想の中、鷹介を巡って、はるかと七海が対立する。全員学生服。はるかは現役なので違和感ゼロだが、アラフォーの二人は違和感ありあり。完全にコントの世界である。

しかし、そのアイデアに満足できないはるかは、マゲラッパたちを追う3人を追いかける。取材を受けてもらうお礼として、店の片付けは自分が引き受けることにして・・・。

見事なクロスオーバー

マゲラッパたちを追う3人の前に一体の怪人が現れる。

アウンジャ

(声)乃村健次

顔面にクモという禍々しいデザインが特徴だが、このアウンジャの目的はジキョクセキを持って200年前に飛び、“オイランダ”という謎の存在を復活させることらしい。

影からすると、こちらもやはりクモがモチーフとなっている様子だ。

さて、バトルが始まると、そこに登場したのはドンモモタロウ。TV本編でも最近はほとんど見ることのなくなった神輿に乗っての登場である。今回、桃井タロウとしての登場はない。

ドンモモタロウ

(声)樋口幸平

ハリケンジャー3人+1人と、アウンジャたちとのバトルもまた見ものだ。アクロバティックでスピード感溢れるアクションは、これぞ忍者、これぞハリケンジャーと呼ぶにふさわしい。中でも、超忍法・影の舞から桃代無敵・アバター乱舞へと繋がっていく様は、そのスムーズさといい、違和感のなさといい、文句のつけようがない。それでいて、2人のレッドが同時にとどめの一撃を叩き込むシーンには、2つの作品がクロスオーバーしている特別感も漂う。褒めすぎかもしれないが、完璧と言って良い。

戦闘中と戦闘後に差し込まれるドンモモタロウの「お供にしてやろうか?(『暴太郎戦隊ドンブラザーズ』は昔話・桃太郎がモチーフ)」という問いかけと、それに対して「200年早い!(『忍風戦隊ハリケンジャー』は200年間後継者が途絶えていたという設定)」とツッコむハリケンレッドの台詞にも両作品の片鱗が垣間見えて興味深かった。

新キャラと、こはく師匠

新キャラも登場する。

雲母坂萌瑠(きららざか もえる)

木村葉月

彼女は日向おぼろの弟子だという。2人がかりで作った過去に転移できるシステムで、ハリケンジャーの3人を200年前に飛ばし、アウンジャたちの野望を打ち砕こうとしているようだ。なにわのおばちゃんといった風情のおぼろとはまるで異なるかわいらしい女の子だが、どうやら知的レベルは相当に高い様子。かわいくて賢いとか、最強すぎる。

また、「霞兄弟もお先してるっす」と言っていることから、20周年記念作にはゴウライジャーの2人も登場することが窺える。

新キャラをチラ見せし、懐かしいキャラの登場も滲ませながら、20周年記念作への期待を煽る本作だが、『ドンブラ』も現役戦隊として負けてはいない。

仮面ライダーシリーズでお馴染みの石田秀範監督が「あの子、いいな」と目をつけていた、なんてエピソードもあったほど、思い切りの良さと演技力の高さが魅力の志田こはくさん。そのこはく師匠演ずる鬼頭はるかが真骨頂を見せる。

ハリケンジャーとの出会いによって、最高の胸キュンシチュエーションを思いついたというはるかの妄想が始まる。屋上での告白という甘酸っぱいシチュエーションで、名乗りをあげる。

名乗りをあげるシノビ子

「人も知らず世も知らず、鬼となりてあなたの心を狙い撃つ。恋忍・シノビ子。あ゛あ゛〜参・上〜〜!!」と見栄を切るシーンは何度見ても笑ってしまう。しかも同時配信されているオーディオコメンタリーによれば、この雄叫びは志田さんのアドリブであるらしい。控えめに言っても天才だろう。

しかし最後には、先ほど登場した萌瑠によってハリケンジャーと共に行動していた時の記憶を消されてしまい、新作マンガのアイデアはなかったことになってしまう。さらに何故かめちゃくちゃになっている喫茶どんぶらを見て「なんじゃこりゃあ〜!?」と、『太陽にほえろ』の松田優作ばりの雄叫びを上げたところで物語の幕は閉じる。ラストを飾るのは『ハリケンジャー』のエンディングテーマ「いま 風のなかで」だ。マジで最高すぎた。

17分ほどの短編と聞けば、物語としても20周年記念作としても中途半端な印象を受けるが、2023年初夏にVシネクスト新作として公開される『忍風戦隊ハリケンジャーでござる!シュシュッと20th anniversary』の前日譚となっていることを知れば違和感は1ミリもない。

『ドンブラザーズ』の狂気のスパイスがピリリと効いた作りも功を奏しているのだろう。『ハリケンジャー』の作品というよりは、『ドンブラザーズ』の番外編と考えたほうがしっくりくる。「もしも鬼頭はるかがハリケンジャーに出会ったら・・・?」というシチュエーションコメディとして考えれば、普通に楽しめる。『ハリケンジャー』の日向無限斎のパロディとして、はるかに般若の面を被らせるといったファンサービスも嬉しい。知っている人ならグッとくるはずだ。

画像引用元:忍風戦隊ハリケンジャー
般若の面を外したはるか

有料サービスのTTFC限定配信というハードルはあるが、『ドンブラザーズ』も『ハリケンジャー』も骨の髄までしゃぶり尽くしたいというファンには必見の作品と言える。谷本監督とはるかを演じる志田さんと吼太を演じる山本さんの3人によるオーディオコメンタリー付きバージョンの配信も開始されたので、こちらも併せて楽しんでいただきたい。

雷堂

それでは、ここまでお読みいただきありがとうございました。

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この記事を書いた人

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