『リバイス The Mystery』(監督:葉山康一郎 脚本:内田裕基)
2022年1月30日よりTELASAで配信された『仮面ライダーリバイス』初のスピンオフ、『リバイス The Mystery』をレビュー。
毎週1話配信で全5話。時間にして88分。おおよそ、映画1本分ほどの長さとなっている。
この手のスピンオフではよくある、キャストのほとんどが東映特撮ではおなじみの顔ぶれということもあって、特撮ファンはそれだけでニヤけてしまうこと請け合い。かと言って、キャスト頼りの薄っぺらい内容などでは決してなく、むしろ1時間半という時間を感じさせない濃密な体験が待っている。
本記事では、主な見どころを中心にご紹介。一部、重要なネタバレも含むが、最後までおつきあいいただければ幸いだ。
主要スタッフ・キャスト
まずは本作の主要スタッフとキャストをご紹介。それぞれウィキペディアに記載のある方についてはリンクを貼っておくので、他の参加作品も是非チェックしていただきたい。
監督:葉山康一郎
脚本:内田裕基
音楽:中川幸太郎
特撮監督:佛田 洋
アクション監督:渡辺 淳
五十嵐一輝/仮面ライダーリバイ:前田拳太郎
バイス/仮面ライダーバイス(声):木村 昴
ジョージ・狩崎:濱尾ノリタカ
門田ヒロミ/仮面ライダーデモンズ:小松準弥
五十嵐大二:日向 亘
五十嵐さくら:井本彩花
アギレラ:浅倉 唯
オルテカ:関 隼汰
フリオ:八条院蔵人
西園寺 鈴/オブリビアン:逢沢りな
上屋直人:唐橋 充
追田現八郎:井俣太良
花輪真蔵:金山一彦
鮫島康夫:菅原卓磨
権田原太郎:児玉貴志
氷室美砂:新田あゆな
植島正吾:森田桐矢
城乃内秀保/仮面ライダーグリドン:松田 凌
鳳蓮・ピエール・アルフォンゾ/仮面ライダーブラーボ:吉田メタル
照井 竜/仮面ライダーアクセル:木ノ本嶺浩
【主題歌】
「Without you」五十嵐一輝・門田ヒロミ(前田拳太郎・小松準弥)作詞:渡部紫緒 作曲:坂部 剛
王道ミステリ
本作は、『仮面ライダーリバイス』のキャストを擁した本格ミステリである。なんの捻りもないド直球なタイトル。だがそれがいい。
いわゆる“クローズド・サークル“というシチュエーションで起こった殺人事件の謎を解く。
クローズド・サークル(closed circle)とは、ミステリ用語としては、何らかの事情で外界との往来や通信手段が断たれた状況、あるいはそうした状況下でおこる事件、および、そのような状況を扱った作品を指す。
引用元:ウィキペディア
逃亡するデッドマンを追う一輝(とバイス)とヒロミは、山奥にひっそりと建つペンションに辿り着く。そこには、ペンションのオーナー・西園寺 鈴、使用人の花輪真蔵、メイドの氷室美砂に加え、3名の宿泊客・追田、鮫島、権田と、鈴のギターの先生・上屋がいた。
一輝たちが追っていたデッドマンは、この中の誰かである確率が高い。お互いを疑いあうギスギスしたムードの中、殺人事件が起こってしまう。現場に残された手がかりは、謎の砂。
時を同じくして、悪天候の中、ペンションと外界を繋ぐ、たった一本の吊り橋が落ちてしまう。逃げ出すことも、助けを呼ぶこともできない、隔絶されたペンションで一輝たちの犯人探しが始まる・・・というのが、序盤のあらすじ。
そもそも仮面ライダーとミステリは相性抜群である。平成以降の作品における、2話で1エピソードといった作りには、謎解きの要素を入れた方がマッチする、といった理由もあるかもしれないが、探偵が主人公の『仮面ライダーW』や、刑事が主人公の『仮面ライダードライブ』などは、その設定からしてミステリと相性が悪いはずがない。
本作は、特にミステリ要素の濃い上記2作品からゲストを呼んで物語を展開させている。
『仮面ライダードライブ』からは追田現八郎。ミスリード役の名手として参戦。
『仮面ライダーW』からは照井 竜。こちらはきっちりと事件を解決に導くクローザーとして登場。
この役割分担が明確なところもミステリとしては重要なポイントだ。そこらへんをきっちりと押さえてあるところはさすが。単に過去作のレジェンドたちが顔をそろえた、というお祭り作品でないことは、このキャスティングからも明らかだ。
これによって、コアなライダーファンだけでなく、過去作をあまり知らない(『リバイス』からライダーに興味を持ったような)人でも普通に楽しめる作品となっているし、ここから過去作に手を出すきっかけにもなりそうだ。
レジェンドたちの再演
仮面ライダーシリーズのスピンオフといえば、過去作に登場したレジェンドたちの再演と、ライダーの新フォームである。本作では、残念ながら新フォームの登場はない。ただし、レジェンドたちの再演は健在だ。先述した追田と照井だけでなく、『仮面ライダー鎧武』から、鳳蓮と城乃内の二人もライダーとして参戦。なんだかいつものメンツだなという気がしないでもないが、そこには純粋に仮面ライダーシリーズへの愛があるのだろう。
ライダー以外では、『仮面ライダー555』や『仮面ライダーセイバー』などに出演された唐橋さんや、『仮面ライダーキバ』に登場した金山さんも登場しているし、ペンションの客として登場した菅原さんと児玉さんも『電王』や『ジオウ』に出演されていた。
さらに、仮面ライダーシリーズという枠を取っ払っえば、ヒロインの西園寺 鈴を演じた逢沢りなさんは『炎神戦隊ゴーオンジャー』のゴーオンイエローだったりもするから、同じ釜(東映特撮)の飯を食った人たちばかりが揃っている。
つまり、本作が初めてのドラマ出演だという氷室美砂役の新田さん以外は全員レジェンドと呼んで良いだろう。特撮ファンはそういったキャスティングを見ているだけでも楽しめる。
アクセルトライアル再び
先述した通り、本作にはライダーの新フォームは登場しない。
その代わりというワケでもないだろうが、あのレジェンドライダーが登場する。それが仮面ライダーアクセルトライアルである。
攻撃力も防御力も犠牲にした上で、スピードだけに特化した非常にピーキーな特性を持つ仮面ライダーアクセルの強化フォーム。マキシマムドライブを発動すれば、たった10秒ではあるが、音速を超えることができる。
超スピードのために全てを捧げる姿勢には、エンジンにチューンを施すだけでなく、走るのに不要なパーツ(ドライバーズシート以外のシートや、ドアの内張りなど)まで捨て去ってでも車重を軽くするレースカーのような潔さが感じられる。主人公ライダーのファイナルフォームのように、呆れるほど強く無敵感たっぷりなのもいいけれど、この諸刃の剣のような危うさは他になかなか無いタイプで、その不器用さが照井らしくもあり、大変魅力的なライダーである。
このアクセルトライアルと肩を並べて戦うのは、リバイスのイーグルゲノム。要するに、Wとアクセルの揃い踏みの再現。過去の遺産を使うライダーは、こういうことができるのがずるい(もちろん良い意味で)。
「全て・・・振り切るぜ!」という本来の決め台詞も、一輝の「一気に・・・」に続けて「振り切るぜ!」へと変えられている。こういった細かいネタは、元ネタを知っている人にはたまらない。
物語の真相【ネタバレ注意】
ジョージ・狩崎が政府特務機関フェニックスのお抱え研究者になる前のこと。
二人の若き研究者にフェニックスは目をつけていた。一人は、悪魔に生物の遺伝子を組み込んでその力を使うバイスタンプの開発をしていたジョージ・狩崎。もう一人は、怪人たちの遺伝子を利用して正義の力へと転用するブランクスタンプを開発していた植島正吾。
最終的にフェニックスは狩崎をスカウトすることになるのだが、それが余程ショックだったのか、植島は何かに取り憑かれたように寝食を忘れて研究に没頭し、やがて倒れて命を落としてしまう。
その植島の恋人が、西園寺 鈴だった。
鈴は、亡き植島の遺志を継ぎ、研究を続けた。そこには、植島の研究を完成させたいという純粋な想いばかりでなく、狩崎に対する憎しみもあった。それは、狩崎の父親がフェニックスの関係者だったことを知ったためである。恋人の植島は、出来レースにつきあわされ、その挙句、命を落としたと思い込んでしまったのだ。言うなれば、逆恨みだ。
植島の研究を金儲けの道具としか考えない権田の命を容赦なく奪ったところからも、鈴の植島へのひたむきな想いが見てとれる。
しかし、あと一歩というところで、オルフェノクの研究材料が尽きてしまったのだった。
そこへノコノコ現れたのが上屋。本当の名前は海堂直也。『仮面ライダー555』に登場したオルフェノクの一人である。偽名を使っていた理由を問われ、「アーティストだってそうだろう?」と反論するところにはニヤリとさせられた。
海堂は、鈴の植島への想いを汲み取り、自ら遺伝子を提供する。それによって完成した植島のスタンプは、10種の怪人たちの遺伝子情報を持つもので、リバイスの「バリッドレックス」のようなスタンプとなった。そのスタンプを我が身に押した鈴の身体は、オブリビアンという怪物へと変容するのだった。
ちなみに10種の怪人とは、グロンギ(仮面ライダークウガ)・オルフェノク(仮面ライダー555)・ワーム(仮面ライダーカブト)・ファンガイア(仮面ライダーキバ)・ドーパント(仮面ライダーW)・ゾディアーツ(仮面ライダーフォーゼ)・インベス(仮面ライダー鎧武)・ロイミュード(仮面ライダードライブ)・スマッシュ(仮面ライダービルド)・デッドマン(仮面ライダーリバイス)となっている。これだけの名だたる強敵たちの遺伝子情報を兼ね備えているというのだから、その戦闘力は推して知るべし、である。
鈴が変身する怪人・オブリビアンとは、『ジオウ』に登場したアナザーライダーみたいな雰囲気の怪人で、そのネーミングの元ネタはOblivion(和訳:忘却)だろう。今は亡き恋人にいつまでも執着する鈴にとっては、なんとも皮肉なネーミングでもある。
怪演のヒロミ
さて、本作ではもう一つの見どころがある。みんな大好き、門田ヒロミである。
物語はTV本編の16話と17話の間くらいのエピソードという設定らしく、時折体調不良の様子を見せるものの、未だ健在なヒロミ。一輝と共に、バイスタンプを使う悪党を追って、山奥のペンションにやってくるのだが、ペンションのオーナー・鈴にまさかの一目惚れ。
『ジョジョの奇妙な冒険』なら「ズキュゥゥゥン」という擬音で表現されたはずの迷シーン。
このシーンを皮切りに、恋愛スキルゼロの男が盲目の恋に突っ走る様子がこれでもかと描かれる。事件の真相が結構シリアスなだけに、このヒロミのコミカルさが一服の清涼剤として抜群の効果を発揮している。泣いて笑って命をかけて・・・これまで見たこともないヒロミの新たな一面が楽しめる。これに関してはキャストトークを観ると、そんなに細かいところにまでこだわっていたのかと、さらに楽しめること請け合い。
この『リバミス』は、鈴とヒロミ、二人の愛(両想いとかではなく、鈴は亡くなった植島への尽きせぬ想い、ヒロミは鈴への片想いという、それぞれに一方通行なもの)を描いた物語と言っても良いかもしれない。
本作を視聴するには
本作は「TELASA」というテレビ朝日とauによる動画配信サービスでの限定配信作品となっている(2022年3月現在。おそらく、1年程で「TTFC」でも配信されるはずである。)。
配信されているのは、本編となる全5話に加え、キャストによるひな壇トークを収録した『ウラ仮面ライダー』、さらにはキャストによる全5話一気視聴のビジュアルコメンタリーなど多彩。
本編はもちろんだが、キャストトークを観ると、もっと本編が楽しめるし、何より仮面ライダーシリーズへの想いが深まると思う。こういったキャスト同士のおしゃべりに拒否反応を示す方もいるとは思うが、一つひとつのシーンに込められた想いを知ることや、エンタメの現場にいる人たちだからこそ、といった視点に触れることができるのは新鮮である。
「TELASA」は税込618円で、ドラマ・バラエティ・アニメ・映画が見放題となるサービス(初回登録時のみ2週間無料)だ。私はとりあえずこの1ヶ月で退会する(何かしら専用コンテンツが発表されたら、その都度契約するやり方だ)が、とりあえずこの『リバミス』関連のコンテンツを観るためだけに1ヶ月分の利用料を支払っても後悔はないと思う。1本の新作映画をレンタルした、と考えれば、むしろお得だとも言える。
毎週1話の配信作品だったが、今は全てのエピソードが配信されている状況なので、全話続けて視聴も可能だ。こういった連続ドラマは続きが気になって夜も眠れない、という方にも躊躇なくオススメできる。
まだTELASAは使ったことがないというなら、無料視聴期間の2週間だけお試しで使ってみるのも良いだろう。とりあえず観て欲しい作品である。
常々思うのだが、映像で見せるミステリは1本の映画よりも続きものの方が楽しめる。良いところで終わってしまうのには毎回モヤモヤするけれど、そのドキドキ感がたまらないのだ。
本作もまさにそれで、各話の冒頭に登場するバイスもいい味を出している。元ネタを探るだけでも十分楽しめる。ちなみに「ツルッとマルッと解決だ!」は、同じテレ朝の「TRICK」である。
それでは、ここまでお読みいただきありがとうございました。
\ 僕と握手!/