2022年6月26日放送『仮面ライダーリバイス』第41話「父の真意、息子の決意!」(監督:杉原輝昭 脚本:木下半太)
「大二くんさえいれば良い」
同じ孤独を知る者として、五十嵐大二に歪んだ執着を見せる赤石英雄は、ベイルに対し、「五十嵐一家の抹殺」を命ずる。
それぞれの家族が迎えるさまざまな局面を描く第41話の見どころを中心にレビュー。最後までおつきあいいただければ幸いだ。
キャスト
ここでは第41話のキャストをご紹介する。
なお、以下の画像は全て『仮面ライダーリバイス』より引用している。
五十嵐一輝/仮面ライダーリバイ
前田拳太郎
バイス/仮面ライダーバイス(声)
木村 昴
五十嵐大二/仮面ライダーホーリーライブ
日向 亘
五十嵐さくら
井本彩花
ジョージ・狩崎
濱尾ノリタカ
夏木 花/仮面ライダーアギレラ
浅倉 唯
玉置 豪
八条院蔵人
牛島 光
奥 智哉
門田ヒロミ
小松準弥
ベイル(声)
津田健次郎
狩崎真澄(声)
藤 真秀
赤石英雄
橋本じゅん
五十嵐幸実
映美くらら
五十嵐元太
戸次重幸
父たちの想い、子どもたちの想い
『仮面ライダーリバイス』は、当初から「家族」がテーマだと公言している作品である。
当初は、主人公・五十嵐一輝とその家族に関するエピソードが綴られてきたが、今ではさまざまな家族の姿が描かれている。
「ギフに従うしか人類が生き残る方法はない」という意見を認めてくれない家族の元を離れ、孤立する大二にシンパシーを感じ、まるで実の息子のように労う赤石。
血の繋がりはなくとも、同じ目的に向かって進む二人の間に絆が生まれたなら、それは確かに「家族」と呼んでも差し支えないものかもしれない。しかし、大二は心を許しはしないし、絆が生まれた様子もない。ただ、目的のためだけに行動を共にしているだけ、だ。
つまり、赤石の片想い。
「反抗期の息子か?」とベイルは嘲笑していたが、確かに、あのギクシャク感は反抗期のそれに近い。
今の大二は意見の食い違いでひとりぼっちになっているだけだが、それが何かのきっかけで修復しないとも限らない。そうなれば、赤石は、またたった一人で、悠久の時の中を生き続けるしかなくなってしまうのだ。
それは赤石にとって、地獄のような未来予想図だったに違いない。数千年も生きてきた赤石が、今さら何を・・・とも思うが、常に孤独であったからこそ、共に戦う誰かが側にいてくれるという今の状況が、かけがえのないものだと気づいてしまったのかもしれない。そもそも、フェニックスという組織を作ったことだって、みんなと一緒に目的を叶えたいと思ったからではないのか?
そんな赤石は、大二の帰る場所をなくすことが最良の策だと考え、ベイルに五十嵐一家抹殺を指示する。歪んだ欲望で、自己満足のための家族関係を無理矢理に築き上げようというのだろう。
母を演じていた女が死に、父を演じていた男が死んだ。そうして牛島一家という偽装家族は終わりを告げた・・・はずだった。
息子を演じていた光は、割り切れない想いを抱えて悩んでいた。
やり場のない気持ちをぶつけるように、一人、道場で空手に汗を流し続ける光の前に、「付き合おうか? 稽古」と五十嵐さくらが現れる。
ヘトヘトになるまで汗を流しても、消えない疑問。
何故、人々を救うという大義のために母・牛島公子を見捨てろと命令を下した冷徹な父・牛島太助が、自分のために命を投げ出したのか?
「矛盾してますよ」と呟く光に、「矛盾があるから人間なんじゃない?」と、太助の形見であるメガネを手渡すさくら。
「光くんのことを、本当に愛してたってことだよ」
亡き太助に想いを寄せる光。思わずメガネを抱きしめてしまうその仕草に、嘘はないのだろう。
偽物でしかない家族関係ではあったが、いつの間にか、お互いに偽物ではない本物の家族愛が生まれていたのだ。
「嘘から出たまこと」
そんなことわざを思い出さずにはいられないエピソードである。
家族写真から、いつの間にか一輝の姿が消えてしまっていることに気づいた五十嵐元太と幸実に、バイスの力を使う代償として思い出が消えていくことを明かす一輝。
そのことを理解しつつも、みんなが笑顔でいられるなら、と笑顔で覚悟を決める一輝を優しく抱きしめる幸実。
息子を止めたい想いはもちろんあるだろう。しかし、息子が止まらないことを知っている。だから、ただ抱きしめる。
そんな母親の切ない気持ちと、ただ立ち尽くすしかできない父親のやるせなさが溢れる。
特に元太の想いは、いかほどのものだろう。
人体実験により、ギフの細胞を移植されてしまった自分の遺伝子を受け継いだ子どもたちが、否応なく仮面ライダーとしての人生を強いられているというこの状況。
もちろん、元太に非があるわけではない。むしろ、25年も前に、本人の意思とは関係なくモルモットにされ、両親の命まで奪われてしまった元太こそ被害者だ。
しかし、元太は立ち上がる。自ら、この忌々しい因縁に決着をつけるため、狩崎親子に新しいドライバーの作成を依頼する。
ベイルを消滅させれば、自分も倒れる。それを知っていながら、それでも家族を守るため、これ以上犠牲を出さないよう覚悟を決める。
一方、ベイルにも終焉が近づいているようだ。
バイスタンプによるドーピングでなんとか持ち堪えているものの、戦っているバイスにも、その異変を感じ取れるくらいには弱っているらしい。
消滅してしまっては、元太の命にも関わる話だが、さて、どのように収束するのだろうか?
量産型デモンズドライバーを完成させたジョージ・狩崎と狩崎真澄の親子関係は、それなりにうまく行っているように見える。
しかし、真澄の身体は既にボロボロ。
限界を迎えつつあることを自覚した真澄は、元太から依頼されたドライバーの開発をジョージに託し、自身は新たなトリケラトプスの遺伝子情報を宿したバイスタンプを手に、戦場へと降り立つのだった。
デモンズ軍団始動!
ジョージ・狩崎が開発した量産型デモンズドライバーが、ついに実戦投入されることになった。
ところが、イメージしてたのと違う。
以前、ジョージがヒロミに手渡したドライバーは2本だったはずだ。これを、玉置とヒロミで使うんじゃないか? などと勝手な想像をしていたら、とんでもない。2本どころか、大量に用意されており、ウィークエンドの一般兵士たちがみんな変身していた。
人呼んで「デモンズ軍団」。
「たけし軍団」を遥かに凌ぐダサいネーミングに目眩がするが、これを率いるのが門田ヒロミ。
軍団員は、スパイダーかクワガタのどちらかのバイスタンプを支給されるようだ。
ただ唯一の救いだったのは、変身シーンである。
このお二人、ファンには今さらだが、左はアクション監督の渡辺 淳さん、右はバイスの中の人を演じている永徳さん。
この威風堂々たる変身シーンひとつで、凡百の兵士ではないことがわかるし、そもそもこのお二人が顔出しで変身シーンを演じるというだけで、胸熱だ。もう、このシーンだけで、第41話は神回と言いたくなるほどだが、そこはグッと堪えて次にいこう。
量産型にも関わらず、デモンズ軍団の戦闘力は凄まじい。ギフジュニアはおろか、ギフテリアンまで始末してしまう。
しかし気がかりなのは、こんな、誰でも変身できるデモンズ軍団にさえ加えられない玉置である。
悪魔の呪縛から解放されてからというもの、空気になってしまった感がある。
もちろん、この展開でさえ変身しないのは、これから先、ここぞというタイミングで最高の変身シーンが用意されているからなのだろう、とは思うが、せめてもうちょっと活躍して欲しいと思うのは、私だけではないはずだ。
杉原監督らしい演出の数々
今回は、『ドラゴンボール』などのアニメから影響を強く受けたと公言している杉原監督らしい演出が数多く見られた回でもある。
ホーリーライブとアギレラのバトルで、目まぐるしく展開される空中戦や、上空から隕石のように飛来するベイルなどは、まさに『ドラゴンボール』の影響が感じられる。
アギレラのキックでビルに叩きつけられたホーリーライブがビルにめり込む様は、『ドラゴンボール』にも『聖闘士星矢』にも見える。
リバイとバイスの二人が磁力を使ってザコを一掃するシーンは、異能バトルものにはありがちな演出。
しかし、どこかで見た感じだからといって、退屈だとか、ベタだとか、そんなことは感じない。
アニメという二次元での表現を三次元の特撮に落とし込んだそれは、庵野秀明さんがコンテを描いたという『風の谷のナウシカ』で巨神兵が放った光線の軌跡が『シン・ゴジラ』の火炎放射能となり、「シン・ウルトラマン』のスペシウム光線へと昇華された時のようだ。
「こういうのがカッコいい」という価値観は個々人で多少の違いはあるだろう。
しかし、演出する本人が、それを心底信じて表現しているなら、必ず伝わるものがある。
庵野さんの光線へのこだわりのようなものだ。
今回の『リバイス』で描かれたこういった表現にも、同じような匂いがする。
いかにも杉原監督っぽいとは思うけれど、それを見て「またか」と舌打ちをすることはない。
むしろ、その「カッコよさの美学」が持つ説得力に感化されてしまうだろう。
進化の兆候?
ギファードレックスの力によって、左手が石化してしまったギフデモスとなった赤石。
変身する際に右の手袋を「はいっ!」という感じで引き抜く橋本じゅんさんがかわいい。「そりゃあ!」でも「ええい!」でもない。「はいっ!」だ(あくまでも雰囲気だ。そんな台詞は存在しない)。カタカナで「ハイッ!」の方が良さそうだし、なんなら最後は「!」ではなく「☆」の方が良い。さらに半角にしてみよう。
「ハイッ☆」
しっくりくる。なんだかマジシャンぽくもある。
一輝とバイスによって追い詰められ、数千年も生きながらえてきた赤石の人生もついに終わりか? と思った瞬間、赤石の体内で変化が起こる。
フィニッシュブローがその身を砕こうとした刹那、頭を抱えて土下座をするような姿勢で攻撃を避けてしまう。
絶対に当たると信じていたのだろう。
それに違和感を覚えたのは、一輝とバイスだけではなく、当の本人、赤石も不思議そうな様子を見せる。
最終盤に向けて、赤石の進化が始まるのか?
元々は人類との共存を望んでいたというギフとも、戦いで決着をつけるしかないのだろうか?
残り2ヶ月となった『リバイス』の行先は何処へ向かっているのだろうか。
それでは、ここまでお読みいただきありがとうございました。
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