2009年2月22日放送『侍戦隊シンケンジャー』第二幕「極付粋合体(きわめつき いきな がったい)」(監督:中澤祥次郎 脚本:小林靖子)
三途の川からこの世を狙う外道衆の出現に、殿様の下へと集結した4人の侍(家臣)。
『シンケンジャー』第二幕は、シンケンオーという巨大ロボの初登場がメイントピックではあるのだが、それよりも集まった5人の個性の違いを際立たせていることが大きい。正義のヒーローとはいえ、大義のためなら何があっても命を賭ける、なんて単純なものではないのだ。育ちも考え方もまるで異なる5人の戦士が、ぶつかり合って、磨き合って、徐々に一つになっていく過程が、この第二幕から描かれていく。
ネタバレも含むが、まだ『シンケンジャー』を観たことがないという方の楽しみを奪わない程度である。最後までおつきあいいただければ幸いだ。
キャスト
ここでは第二幕のキャストをご紹介する。
本作初登場でウィキペディアに記載のある方についてはリンクを貼っておくので、他の参加作品なども是非チェックしていただきたい。
なお、以下の画像は全て『侍戦隊シンケンジャー』より引用している。
シンケンレッド/志葉丈瑠
松坂桃李
シンケンブルー/池波流ノ介
相葉弘樹
シンケンピンク/白石茉子
高梨 臨
シンケングリーン/谷 千明
鈴木勝吾
シンケンイエロー/花織ことは
森田涼花
子供
松本琉花
血祭ドウコクの声
西 凜太朗
骨のシタリの声
チョー
薄皮太夫の声
朴 璐美
オオツムジの声
郷里大輔
日下部彦馬※画像右
伊吹吾郎
ナレーション:宮田浩徳
落ちこぼれ
第一幕で殿様・志葉丈瑠の下に結集した4人の家臣たちは、丈瑠の屋敷で共同生活を送りながら修行を始める。まだまだ未熟な4人だが、中でも谷 千明の未熟ぶりは頭抜けていた。
モヂカラの修行一つをとっても、漢字の書き順がわからず四苦八苦(モヂカラを発動するためには、正しい書き順で文字を書く必要がある)。評価としては、いわゆる“落ちこぼれ”である。
ただしプライドの高い千明は、自らの未熟ぶりを素直に認めることができない。反省するどころか、千明に注意する日下部彦馬に逆ギレしてしまう始末だ。
こんな千明と真逆なのが、シンケンジャー最年少の花織ことはである。
人知れず、誰よりも地道に練習を重ねることは。
何を考えているのかよくわからない丈瑠について、他の家臣たちが半信半疑の中、「殿様の力になりたい」と、明るくひたむきなことはの笑顔が眩しすぎる。しかし、このひたむきさは、自己肯定感の低さから来ているようだ。
と言うのも、元々シンケンジャーになる予定だったのは、ことはではなく姉だったのだが、身体が弱かったため、代わりにことはが選ばれたのである。
笛と剣の腕には、それなりに自信は持っているようだが、何でもできる姉と比べて劣等感を感じていたことに加え、「あくまでも自分は姉の代わりだ」という意識が邪魔をして、自分は未熟だ落ちこぼれだと思い込んでいる節がある。
今回は、この他称“落ちこぼれ”と自称“落ちこぼれ“の2人が主役だ(落ちこぼれという直接的な言葉は使っていないが、ここではわかりやすく表現している)。
侍合体
この世を我が物にしたい外道衆だが、三途の川の水がなければ、やがて身体が乾燥して動けなくなってしまうため、長時間の行動は難しい。
三途の川をこの世にまで溢れさせることができれば問題は解決だが、果たしてそんなことができるのだろうか?
できるのだ。
地震や病気といった災厄が起こることで、三途の川は増水するらしい。
そこで血祭ドウコクは、アヤカシ・オオツムジをこの世へと送り込むのだった。
身体にオオムカデが巻きついたようなデザインが印象的なオオツムジのモチーフとなった妖怪は、カマイタチらしい。なるほど、ムカデの足がカマの形状になっている。顔の周りにはライオンのたてがみのようにつむじ風がまとわりついている。
このオオツムジ自体が災厄として、人間社会を混乱に陥れようとするのを阻止しようとするシンケンジャー。
だが、ことはが投げた巨大な手裏剣・ランドスライサーが丈瑠を直撃。さらに倒れた丈瑠を守ろうと駆け寄った4人もオオツムジの攻撃でやられてしまう。
倒れたことはに「この程度で潰れるヤツは要らない」と冷ややかな丈瑠。それを聞いた他の家臣たちに怒鳴られても平然と「弱いヤツは邪魔だ」と畳みかける。
これには、人一倍忠義を重んじる流ノ介も「ことはだって一生懸命戦っているのに…!」と掴みかかるが、「一生懸命だけじゃ人は救えない!」と、その手を振りほどく丈瑠。
怒りをあらわにする流ノ介、茉子、千明だが、「要らない」と言われた張本人のことはだけは「殿様の言うことが正しい」と前を向く。
ふらつく脚で丈瑠が向かった先には、瓦礫の中に逃げ遅れた女の子。
言葉は少なくぶっきらぼう。しかし、怪我したことに泣き言を言うのでも、手元が狂ったことはを責めるのでもなく、女の子を抱えたままオオツムジと斬り合う丈瑠の背中はシンケンジャーとしての覚悟を雄弁に物語っている。
それを見て、自分たちの使命を再認識した4人は、丈瑠と共にオオツムジを倒すのだった。
今回は巨大ロボ・シンケンオーに初合体するシーンも見どころだが、それよりも戦いが終わった後で「お前は強かった」と、ことはを労う丈瑠のツンデレっぷりにキュンとする。殿、ズルすぎます。
5つの個性を繋ぐもの
今回、繰り返し使われたモチーフが“おでん”である。
姿が見えないことはを探す中、千明がふと購入したおでん。そこには三角や丸など、さまざまな形をしたさまざまな具材が串に通されている。
そして初めて見せた侍合体の際、とても合体とは呼べないような、4体の折神(丈瑠の折神はハブられてしまう)が積み上がった形もまたおでん。
これは単なる前フリとオチの関係に留まらず、シンケンジャーそのものだ。
生まれも育ちもバラバラな5人が、「外道衆を倒し、人々と世界を守る」というたったひとつの覚悟によって結束する。5人が“おでんの具材”なら、覚悟は“串”である。
家臣たちに心を開かず、しかし己の覚悟にだけは忠実に生きようとする丈瑠。
クソ真面目で、面倒見の良い流ノ介。
姉御肌でバランサーの茉子。
チャラく見えて、プライドが高い千明。
ネガティブな部分もありながら、それでもひたむきなことは。
個性豊かなこの5人が、ぶつかりあいながらも徐々にまとまりを見せ始めた第二幕。
これから回を重ねるごとに、各キャラクターの背景が徐々に浮かび上がり、バラバラだった5人がやがて一つになっていく様子が丁寧に描かれていく。これを読んで気になった方は、是非、本編をご覧いただきたい。放送終了から10年以上経っても人気が高い理由がご理解いただけるはずだ。
それでは、ここまでお読みいただきありがとうございました。
\ 僕と握手! /