1966年4月17日放送『ウルトラQ』第16話「ガラモンの逆襲」(監督:野長瀬三摩地 脚本:金城哲夫)
ガラモン再び。第13話で登場したガラモンが再登場するエピソード。ウルトラシリーズは怪獣の使い回しが多いことで知られるが、それにしてもたった3話後に再登場、なんてのは前代未聞である。当時のガラモン人気の高さというか、製作陣のイチオシ度合いがわかるというものである(撮影自体は、13話の直後に16話が続けて撮られたようだ)。
さらに、ひっそりとウルトラシリーズを代表する、あの宇宙人の元となるキャラクターも登場したという第16話をレビューする。最後までおつきあいいただければ幸いだ。
キャスト
ここでは今回のキャストをご紹介。写真付きは本作のメインとなる3人である(画像引用元:ウルトラQ)。
【キャスト】
万城目 淳
佐原健二
江戸川由利子
桜井浩子
戸川一平
西條康彦
電波監視所・花沢主任:平田昭彦
トラック運転手・牛山:沼田曜一
遊星人Q:義那道夫
東南大学・警備員:佐田 豊
機動隊隊長:桔梗恵二郎
電波研究所・係官A:維田修二
電波研究所・係官B:横井 徹
ドライブインの男:伊福部昇
ドライブインの女:渡辺康子
ツトム(トラックの中で電子頭脳を見た少年):小林志津夫
牛山の同僚:篠原正記
謎の男
第13話「ガラダマ」で入手したチルソナイトと呼ばれる特殊合金でできた隕石は、天体物理学研究所に保管されていた。そこに近づく謎の男。
その端正で中性的な顔立ちは、どこか吸血鬼を想起させるような雰囲気があり、当時の白黒映像で見ると、不気味さが殊更に強調される。この男が、片手サイズのトランシーバーのような機器を操作すると、研究所内にある金庫のダイヤルが動き出し、扉が開く。同時に、庫内の隕石はふわりと浮き上がり、研究所の窓を突き破って男の元へ。
この、男が手にした小型機器というのが万能で、走行中のトラックのエンジンを停止させたり、警察官の銃を空中に浮かせて狙撃したりとなんでもできてしまう。
この男の正体は、遊星人Q。真の姿は、セミ人間である。
このセミ人間にツノとハサミを加えたのがバルタン星人だと言われているが、セミ人間の身体はサランラップのようなものでグルグル巻きにされており、『ウルトラマン』で、ゴジラの着ぐるみにエリマキを取り付けてジラースに仕立てたように物理的に“加えた”ワケではなく、純粋にデザインとして手を加えたと見るべきであろう。今見ても、かなり不気味なデザインである。
最後は、仲間の乗る宇宙船によって始末されてしまう。任務に失敗した者は抹殺するという、容赦のなさに目を背ける主人公・万城目たちだった。
2体のガラモン
謎の男によって略奪された隕石は、再び宇宙に向けて怪電波を発しはじめる。それを待っていたかのように、地球へと飛来する多数のガラダマ。
そのうちの2体が東京に降り立ち、大パニックとなる。今回は、際立って特大の個体が登場し、なんと東京タワーを壊滅させてしまう。通常のガラモンは身長40mという設定だが、この特大の個体は、東京タワーの地上150m地点にある展望台よりも大きく描かれている。マリオとスーパーマリオの関係よりもデカい。もちろん、キノコは食べないけれど。
しかし、何度見てもガラモンの独特なデザインと、生体ロボットとしての動きには唸らせられる。サルとも魚とも見える顔(デザインモチーフは、クエという魚だと言われている)で、骨のような手を日本の古典的な幽霊のようにだらりと垂らした様はどう見ても生物だが、歩き回る際の足の運び方と効果音は完全にロボットのそれ。全身を覆った特徴的な突起物をガシャガシャと震わせながら歩く様子はどこかコミカルでヤマアラシのよう。この不思議なモンスターを作りだした当時の製作陣の創造力には感服する他ない。
ウルトラマンがまだ存在しないこの世界においては、人類の平和を守るのは人類でしかなく、ガラモンに対抗する手段を持たない主人公たちは、怪電波を発しつづける隕石を取り返すことでガラモンの脅威を排除するしかなかった。
最後はセミ人間から奪い返した隕石を、怪電波を遮断する素材で包み込み、ガラモンの動きを止めることに成功する。
動きを止めたガラモンが、口から謎の液体を垂れ流し(通常サイズのもう1体は泡を吹き)、瞼を閉じて倒れ込む様は、なんともリアル。50年以上も前の造形物とは思えない。どれほどCGが進化しても、この造形物の持つ質感とか生々しさというのは絶対に出せないと思う。低予算だから、とかそういう意味ではなく、やっぱり実際に質量のある実物と、実物のように見えるモノとの差異というのはどうやったって埋められるものではない。
この後、ガラモンはピグモンとして流用されたり、他のウルトラシリーズに登場するなどして、今でも有名な怪獣の1体となっているが、この映像を見ると、それも当然だと思える。時代を超えて語り継がれるべきデザインのひとつだろう。
それでは、ここまでお読みいただきありがとうございました。
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