フォッフォッフォッ|『ウルトラマン』第2話「侵略者を撃て」感想

雷堂

1966年7月24日放送『ウルトラマン』第2話「侵略者を撃て」(監督:飯島敏宏 脚本:千束北男)

日本人なら、おそらく誰もが一度は目にしたことがあるあの宇宙人が登場する『ウルトラマン』の第2話をレビュー。既に50年以上も前の作品なので、容赦なくネタバレするが、最後までおつきあいいただければ幸いだ。

目次

キャスト

ここでは今回のキャストをご紹介。

以下の画像は全て『ウルトラマン』より引用している。

ムラマツ隊長

ムラマツ隊長:小林昭二

ハヤタ隊員

ハヤタ隊員:黒部 進

アラシ隊員

アラシ隊員:石井伊吉

イデ隊員

イデ隊員:二瓶正也

フジ・アキコ隊員

フジ・アキコ隊員:桜井浩子

ホシノ少年

ホシノ・イサム:津沢彰秀

防衛隊参謀:幸田宗丸

防衛隊幕僚:飯田覚三

防衛隊発射指揮官:緒方燐作

防衛隊幕僚長:藤田 進

とにかく怖いバルタン星人

ついに、というか第2話にして、あのバルタン星人が登場する。

バルタン星人
画像引用元:ウルトラマン

日本の特撮史上、もっとも有名な悪役ではないだろうか。ウルトラシリーズでは怪獣の使い回しが結構ある、というのもひとつの理由かもしれないが、それにしても、世代を超えてこれほど知られている存在を、私は他に知らない。

デザインも秀逸で、モチーフはまさかのセミ。『ウルトラQ』第16話に登場したセミ人間という怪物にツノとハサミを付け加えたものだったらしいが、昆虫はアップで見ると怖いってことを私に教えてくれたのはバルタン星人だった。

ちなみにバルタン星人には、元々「バルタンの木」という植物を食べて生活していた種族が、肉の味を覚えてから残虐で好戦的な性格へと変化し、それに伴なって腕が狩りに適した巨大なハサミ状に進化したという裏設定がある。ウルトラシリーズに登場する怪獣や宇宙人が魅力的なのは、このようにきちんとしたバックボーンがあったからなのだろう。設定の奥行きは魅力に比例すると思う。

全体的にホラーテイストが強めなのは、当時の特撮の特徴なのかもしれない。

バルタン星人は、科学センターという施設に侵入し、職員たちを仮死状態にしてセンターを占拠してしまうのだが、この仮死状態にされた職員たちというのが、非常に不気味。まるで彫像のように動きを止めた様子は完全にホラー。

画像引用元:ウルトラマン

薄暗いセンター内で、突如姿を現したり、分身したりと、“宇宙忍者”たる所以を見せつけてくるのだが、その際のくぐもったような「フォッフォッフォ・・・」という笑い方が本当に怖い。エコーの影響もあるだろうが、幼い子どもが見たら、夢に出てくるのじゃないか、というくらいのインパクトがある。

対話を試みる科特隊に対し、仮死状態にしたアラシ隊員の身体を乗っ取って会話するシーンは、いまだに使われる鉄板ネタ「ワレワレハウチュウジンダ」の元じゃないか? というくらい典型的な宇宙人の表現だが、笑えるどころかやっぱり怖い。

核で滅んだ星の物語

宇宙旅行中だった彼らは、故郷のバルタン星が、狂った科学者の核実験によって消滅してしまったため、放浪していたらしい。宇宙船の修理などのためにたまたま立ち寄った地球が、居住できる環境だとわかり、移住しようとしていたのだった。

「地球のルールを守れるなら、どうぞ」と共存を提案するハヤタだったが、宇宙船の中には20億3千万人もの同胞がいると聞いて唖然とする。イデ隊員は「世界中の人口を合わせたって22億だというのに」と話しているが、1960年時点で世界の人口は約30億人だったらしい。それが2011年には60億人。恐るべきペースで人口は増え続けている。

これは無理だと判断したハヤタ隊員は、「火星に行ったらどうだ?」と提案するが、火星にはバルタン星人が苦手な物質があるらしい。それが「スペシウム」。スペシウム光線を使うウルトラマンとは、まさに宿敵。しかし同時に、ウルトラマンは火星の出身ではないのに何故? という疑問も湧くが、とりあえずそっとしておく他ない。

交渉は決裂し、バルタン星人は巨大化。地球侵略を強行するつもりらしい。こんな奴らが20億も攻めてきたら・・・と考えると、地球危うしどころか、正真正銘の絶体絶命だが、なぜかこの1体以外は皆バクテリアサイズで眠っているというご都合主義。ただし、1体といえどもその力は強大。「はげたか」という名の最新核ミサイルを喰らってもセミが脱皮するように復活してしまう。市街地で核ミサイルを容赦なく撃ち込むのもイカレているとしか思えないが、そもそも非核三原則はどこへ行ったのか。

画像引用元:ウルトラマン

いずれにせよ、核ミサイルも効かないとなれば、人間に勝ち目はない。ハヤタ隊員はウルトラマンに変身し、バルタン星人と空中戦を行う。戦闘中に左手のハサミが割れてしまうのは筋書きではなく、アクシデントだったらしい。

画像引用元:ウルトラマン

最後は苦手なスペシウム光線でトドメ。

その後、ステルスで姿を隠していた宇宙船もウルトラマンに発見され、大気圏外に運び出されて破壊されてしまう。20億3千万人の大虐殺である。正義の味方の行為として、これは正しい選択肢だったのか? 疑問は残る。地球のためにはなったとはいえ、それは一方的な正義でしかない。では他に方法があったのか? と問われれば、その答えもない。

翻って、この記事を執筆している2022年3月現在の世界情勢はどうだろう? 一国が自らの利益のためだけに他国を支配しようと戦争を仕掛けている。これ以外の選択肢はなかった、と胸を張って言えるのだろうか? バルタン星を滅ぼしたのは狂った科学者だったという。地球という星も、狂った権力者の手によって滅ぶ未来の可能性もゼロではないのだ。50年以上も前の特撮作品でこんなにも感じ入るものがあるとは正直思わなかったが、初期のウルトラシリーズは、想像以上に本物のSF作品だったということは理解できた。

初期のウルトラシリーズを楽しむなら、「TSUBURAYA IMAGINATION」一択。ただしサブスクなので、課金する価値があるかどうかは、以下の記事をご参照いただきたい。

雷堂

それでは、ここまでお読みいただきありがとうございました。

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