見よ!これが、ウルトラマン誕生の瞬間|『ウルトラマン』第1話感想

雷堂

1966年7月17日放送『ウルトラマン』第1話「ウルトラ作戦第1号」(監督:円谷 一 脚本:関沢新一・金城哲夫)

日本が誇る三大特撮の一翼『ウルトラマン』が放映されたのは、今から50年以上も前の1966年のこと。それは『仮面ライダー』より5年前、『秘密戦隊ゴレンジャー』の9年も前の出来事だった。

改めてこの3作品を視聴すると、制作年がバグってるんじゃないか? と思えるほど、『ウルトラマン』のクオリティが高いことに驚く。特撮技術にしろ、そもそもの作品の作り方にしろ、『仮面ライダー』や『秘密戦隊ゴレンジャー』よりも、明らかに頭抜けている。大人の視聴に耐えうる作品となっている。ヒーローもの、怪獣もの、であることは間違いないけれど、本格的なSF作品としてきちんと成立している。

これは、怪獣映画の代名詞『ゴジラ』に近い。怪獣というエンタメ要素を全面に押し出しながらも、その裏側には当時の社会問題などが見え隠れするのだ。頭を空っぽにしてボーッと眺めるだけでも楽しいが、考察を始めると、その沼は驚くほど深いのである。だからこそ、今なお続く人気シリーズとなっているのだ。

本記事では、そんな『ウルトラマン』の記念すべき第1話の見どころを徹底的にレビューしてみたい。最後までおつきあいいただければ幸いである。

目次

キャスト

ここでは、今回のキャストをご紹介する。ウィキペディアに記載のある方はリンクを貼っておくので、他の参加作品も是非チェックしていただきたい。後年、ハヤタ隊員を演じた黒部さんや、ムラマツ隊長を演じた小林さんは『仮面ライダー』シリーズにも登場している。そういった「え? この人、あの作品に出てたの?」といった発見があるかもしれない。

【キャスト】

ムラマツ隊長:小林昭二

ハヤタ隊員:黒部 進

アラシ隊員:石井伊吉

イデ隊長:二瓶正也

フジ隊員:桜井浩子

ホシノ少年:津沢彰秀

埼玉県警警邏隊巡査:久仁博士 ・ 渡辺晃三

ナレーター:石坂浩二

宇宙怪獣ベムラー

この記念すべき第1回を飾る怪獣が、宇宙怪獣ベムラーである。「宇宙怪獣」とは、なんともざっくりした分類で、「熱帯魚」とか「深海魚」と同じくらい丸めちゃった感がある。そうして丸めちゃったから、というワケではなさそうだが、青い球体となって空を飛ぶ。そのスピードはマッハ2。

宇宙空間で生存できるだけのことはあり、呼吸が必要ないのか、地球に降り立ってからは湖の中に身を潜めていた。

口から青い怪光線を出し、身体の棘には毒がある。そのわりに、ウルトラマンはその棘にガンガン触っていたけれど、これ以上無粋なツッコミを入れるのはやめておこう。

ウルトラマンは「宇宙の平和を乱す悪魔のような怪獣」と言っていた。「宇宙の墓場」(平和を乱した怪獣が送られる処刑場)に護送される途中で脱走して地球に逃げ込んだらしい。

顔のデザインモチーフは「獅子」だそうである。

宇宙怪獣ベムラー
画像引用元:ウルトラマン

そう言われると、確かに獅子舞っぽく見えなくもない。しかし、『デスノート』に登場した死神リュークみたいにも見える。

画像引用元:デスノート

科学特捜隊

本作で重要な役割を果たす組織が、科学特捜隊。正式名称は、科学特別捜査隊。通称は科特隊である。

国際科学警察機構の下部組織で、通常の警察組織では対処できない怪事件や異変の捜査、宇宙からのあらゆる侵略から地球を防衛することを主な任務とする、かなり重要な組織だが、本作に登場する日本支部は、5人の隊員で構成されているらしい。少数精鋭にも程がある、と思ってしまうが、作中で主だって描かれるのがこの5人というだけで、裏方は存在すると思っていいだろう。でなければ、あれだけの規模の基地や装備、乗り物を維持することは不可能だろう。

全員の名前がカタカナ表記なのは、「ミッシェル・ガン・エレファント」みたいでカッコいい。ただし、作中で役名はクレジットされていない。ムラマツ隊長を演じた小林昭二さんは、『仮面ライダー』のおやっさん・立花藤兵衛を演じ、

この『ウルトラマン』以降、ウルトラシリーズの主人公は、科特隊のように(作品ごとに組織名等は異なるが、基本は一緒)地球の平和を守る組織に所属する、というのがデフォとなる。

「ウルトラマン」と命名された彼

本作の主人公は科学特捜隊のハヤタ隊員。

パトロールの途中、先述した空飛ぶ青い球体を発見。「ビートル」と呼ばれる小型機で追跡するが、その青い球体を追うように飛来した赤い球体に衝突し墜落。命を落としてしまう。主人公がいきなり命を落とすという衝撃的な展開は、本作が初ではないだろうか?

謎の赤い球体に包まれたハヤタの遺体。その中で、銀色に輝く謎の人物がテレパシーのようなもので語りかけてくる。

ウルトラマンとハヤタの出会いのシーン
画像引用元:ウルトラマン

彼は、M78星雲という銀河の彼方からやってきた宇宙人らしい。先ほどの青い球体・宇宙怪獣ベムラーを追って地球にやってきたのだが、そこで誤ってビートルに衝突し、結果的にハヤタの命を奪ってしまったようだ。

その償いとして、ハヤタに自らの命をあげると言い出す彼。それによって、彼とハヤタは一心同体となるらしい。なんだか交通事故がきっかけでつきあうことになった二人みたいである。そうしたらキミはどうなってしまうんだ? 困惑するハヤタだったが、「困った時にはコレを使いなさい」と、ペンライトのようなベータカプセルというアイテムを残して消えてしまう。

ウルトラマンからベータカプセルを受け取るハヤタ
画像引用元:ウルトラマン

誰もが、もう助からないと思っていたハヤタは、こうして復活を遂げる。湖に潜むベムラーを、他の科特隊員たちの待ち受ける地上に追いやる役目を引き受け、小型潜航艇S16号で湖底へと向かうのだが、ベムラーの逆襲に遭い、絶体絶命のピンチを迎える。

そこでベータカプセルをかざすと、光の巨人が現れる。右拳を高く突き上げ、左拳は顔の横に添えるだけ、という、日本人なら誰もが知るあのポーズで。

ウルトラマン変身シーン
画像引用元:ウルトラマン

ミニチュアセットをバックに、大迫力の肉弾戦を繰り広げる巨人と怪獣。『ゴジラ』の流れを汲むものの、怪獣同士の戦いに終始した『ゴジラ』とは一味違う、ヒト対ケモノのアクションが繰り広げられる。

このヒト対ケモノという図式には何故か心を惹かれてしまう。『ゴジラ』に見られた怪獣同士の戦いは、闘犬とか闘牛といったケモノ対ケモノの戦いである。それはそれで面白いのだけれど、所詮、人外の争いでしかない。「噛まれて痛そう」などとは思っても、どこか他人事というか、リアリティがない。

ところが、ヒトが登場することで、一気にリアリティが増す。「そんなことされたら、痛いに決まってるじゃん…」と、目を覆いたくなるのは、ヒトとしての感覚がわかるからだろう。

ヒトがヒトに殴られたり蹴られたりする痛みを想像するのもキツイけれど、ヒトには無い牙や爪を使って襲いかかってくるケモノの未知の恐怖には敵わない、と思う。だから私は、宇宙人との戦いよりも怪獣との戦いに、より強く心を惹かれていた。

等身大の人間が未知の恐怖と戦う前作『ウルトラQ』を経て、人間の味方である光の巨人が巨大怪獣と戦うという『ウルトラマン』は新たな地平を切り拓いたと言っていい。やはり同じヒト型である分、ずっと感情移入できる。当時の子供たちも、『ゴジラ』よりマネしたくなる対象だったに違いない。

チョップやキックでベムラーを打ちのめす光の巨人。無敵の超人とは、こういう存在を言うのだろう、と思っていると、それまで青く輝いていた胸のランプが赤く点滅を始める。明らかにピンチのようである。

それでも戦いをやめない巨人は、ベムラーが青い球体となって逃げ出そうとしたところを、右腕と左腕を交差させてビームを放ちトドメを刺す。初めての「スペシウム光線」である。50年以上前のエフェクトなので、今とは比べるべくもないけれど、お世辞抜きでとてもカッコいい。アクションのキレの良さ、光線の速度とエフェクト、そして効果音。それら全てのバランスがこれ以上ないほどにリンクしている。

そうしてベムラーを倒し、その場を後にした彼だったが、この時点では、名もなき巨大な宇宙人でしかなかった。しかし、イデ隊員の「名無しの権兵衛なんてあるもんか」という言葉を受けたハヤタがその場で「ウルトラマン」と命名。壮大なウルトラシリーズの始まりである。伝説の幕開けだ。

イカしたオープニング

画像引用元:ウルトラマン

そして『ウルトラマン』といえば、触れないワケにいかないのが、オープニングである。

ほんの数秒イントロを聴くだけで体温が上がるようなあの感じは、『ウルトラマン』を初めて知ったあの頃はもちろん、今でも変わらない。当時はミリオンセラーとなったらしいが、当然である。一時のJ-popシーンでよく見られた「え? こんな曲が100万枚??」なんて疑問が湧く余地はどこにもない。売れるべくして売れた、そんな名曲の1つだ。

さらにその曲を盛り上げるのが、オープニング映像である。次々に色を変える、モヤッとした煙のようなバックに、右から左から、影絵のように科学特捜隊の流星マークや怪獣の姿が浮かび上がる。『ウルトラマンA』まで使われていたこの手法が、私にとっての『ウルトラマン』のオープニングである。もちろん、それ以降の作品がダメだと言っているワケではない。心に深く根差した原初体験だったということだ。

そして最後には、その回に登場する怪獣の名が刻まれる。これを見るのが毎回楽しみだった。私は『ウルトラマン』をリアルタイムで見ていた世代ではないけれど、80年代初頭くらいまでは、怪獣消しゴムがまだまだ人気だった。『キン肉マン』の“キン消し”に取って代わられるまでは怪獣消しゴムを集めていた人というのは多かったように思う。私もそうだった。

なけなしの小遣いをはたいては、ガチャを回す日々。怪獣が出れば歓喜し、ウルトラ兄弟が出ると「またか・・・」と落胆した。これは私だけではなかった。周りの友達も、だいたい似たようなものだった。これには、ウルトラ兄弟のバリエーションと比べ、怪獣の種類が圧倒的だったということがある。全部集めたい、とか、レアな怪獣を手に入れたい、という子ども心をガッチリ掴んでいたのは、怪獣だ。つまり、主役は怪獣だったのである。

毎回登場する個性豊かな怪獣たちこそが興味の対象で、それをやっつけるウルトラマンは、物語のクローザーでしかなかったのだ。もちろんカッコいいと思って見てはいたけれど、より強く心を惹かれていたのは、無敵とも思えるウルトラマンを苦しめる怪獣だった。

ウルトラシリーズでは、過去の怪獣が使いまわされていることが結構あるけれど、それは当時の怪獣に、今も変わらぬ魅力がある、ということだろう。『仮面ライダー』も、昭和の頃は怪人が人気だった。「ライダースナック」なんかは良い例だろう。しかし、『仮面ライダー』を見ていなかった人に、イカデビルはわからないと思うが、『ウルトラマン』を見ていなかった人でも、バルタン星人は知っているのではなかろうか。それほどにウルトラシリーズの怪獣は素晴らしかったということだ。

そんなバルタン星人が登場する『ウルトラマン』を視聴するには「TSUBURAYA IMAGINATION」というアプリが必須。ただし有料なので、気になる方は、実際に使用している私の感想をまとめた別記事をご覧いただきたい。

雷堂

それでは、ここまでお読みいただきありがとうございました。

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この記事を書いた人

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