『ウルトラマン』を知っていますか?
そんな質問に、「知らない」と答える日本人がどれだけいるだろう? 特撮ヒーローに興味のあるなしは関係なく、ウルトラマンが国民的ヒーローであることに異議を唱える人はいないはずだ。
ウルトラシリーズは、2013年に「最も派生TVシリーズが作られたTV番組」としてギネス認定されている。アニメやスペシャル番組、再編集版なども含めると、その数は実に47作!(2021年1月現在)
それではその膨大な作品の中で、No.1となる作品はどれだろう?
それぞれの思い入れなどもあり、カンタンに決められるものではないけれど、その知名度や作品の評価を鑑みると、やはりこの作品を挙げないわけにはいかないだろう。それが、『ウルトラセブン』である。
本記事ではウルトラシリーズ最高傑作とも言われる『ウルトラセブン』の魅力について解説する。最後までおつきあいいただければ幸いだ。
ウルトラセブンとは?
1967年10月1日から1968年9月8日まで、全49話(現在第12話は諸事情により配信停止中)が放映された円谷プロの空想特撮シリーズ第3弾(第1弾は『ウルトラQ』、第2弾は『ウルトラマン』)で、宇宙から来た正義の巨人が、地球人と共に怪獣や宇宙人と戦うという『ウルトラマン』シリーズとしては2作目。仮面ライダーシリーズにおける『仮面ライダーV3』のようなもの。
デザインには、前作『ウルトラマン』よりも鋭角的なイメージを取り入れているが、それでも全体的に見れば、誰がどう見てもウルトラマンの系譜であることが即座にわかる仕上がりであるのはお見事。
視聴率も第26話までの平均視聴率は30.7%! 最終回には28.5%という高視聴率を記録。
50年以上経った現在でも、ウルトラシリーズの代表作として度々再放送(直近では2020年9月から4Kリマスター版をBS 4Kにて放送)されていることからも人気の高さが伺える。実際、特撮ヒーローに興味がなくとも、顔と名前が一致するウルトラマンというのは、このウルトラセブンではないだろうか?
初代ウルトラマンはシンボリックに過ぎて、その派生形であるゾフィーや帰ってきたウルトラマンなどと見分けるのは、至難の業。特撮ファン以外には難しく、おそらくみんな「ウルトラマン」と呼ばれてしまうだろう。例えるなら、あまねく全てのTVゲーム機を、一括りに「ファミコン」と呼ぶようなもの(昔はこういうお母さんたちが結構いたものだ)。
主人公モロボシ・ダンの知名度も群を抜いている。他のウルトラマンシリーズの主人公の名前をパッと思い浮かべることができるだろうか? もちろん特撮ファンなら造作もないだろうが、一般の人たちにも浸透しているかどうか、というのが知名度を測るのには大切な要素である。
メガネ(ウルトラアイ)を装着しての変身や、必殺技のアイスラッガー(ウルトラセブンの頭についているブーメラン状の武器)など、ウルトラセブンは見たことがないという方でも、どこかで刷り込まれているのではないか?
ウルトラセブンの魅力
侵略者から地球を守る物語
「地球は狙われている。宇宙に漂う幾千の星から、恐るべき侵略の魔の手が・・・」
第1話冒頭。ウルトラセブンの物語は、こんなナレーションで幕を開ける。この言葉が意味する通り、ウルトラセブンには”地球を守るため、宇宙からの侵略者と戦う”という明確な図式があるのだ。
前作ウルトラマンでもこういったエピソードはもちろんあったが、全体的には、自然災害の象徴のように現れる巨大怪獣を駆除するという流れだった。
ミニチュアビル街などを舞台に、正義の巨人と巨大怪獣が戦うという怪獣エンターテインメントは子供たちにもわかりやすく、怪獣ブームの立役者となったのも頷ける。ドラマパート無しで、最初から最後までクライマックスな特撮パートだけを観ていたいという子供たちも多かったはずだ。
しかし、ウルトラセブンはスポンサーの意向もあり、高年齢層にもウケるように再構築された。
侵略者から地球を守るという流れを見せるため、ドラマパートを強化。ウルトラマンでは、大半が言葉の通じない怪獣が敵だったのに対し、ウルトラセブンの敵は、大半が“侵略”という明確な意思を持つ宇宙人になった。これによってドラマ内での敵の意図が視聴者に伝わりやすくなったのである。
ただし、そういったドラマに重きを置いたため、全体の印象はウルトラマンよりも地味になり、高年齢層の獲得に成功した反面、離れていく子供たちが多かったのも確か。
私は再放送でしか知らない世代なので、シリーズを順に観たわけではないけれど、ウルトラマン〜ウルトラマンレオまでのシリーズを観た中ではウルトラセブンが一番つまらないと思っていた。もちろん、子供時代の感想だが。
これが大人になってから観てみると、今度は地味な印象しかなかったウルトラセブンの持つ“深さ”みたいなものが目につくようになる。
お子ちゃまにはわからない味わい・・・。
子供時代には、あの特徴的な匂いが好きになれないのに、いつの間にか網焼きにして醤油をひと垂らししたものが堪らなくなる、まるでシイタケのような存在なのかもしれない。
ミルキーがママの味なら、ウルトラセブンはシイタケの味・・・?
“神は細部に宿る”
ウルトラアイを装着した途端、光がほとばしり、モロボシ・ダンからウルトラセブンへとコマ送りで変身するシーンや各種エフェクトなど、当時の特撮としては異例のハイレベル。
「仮面ライダー」をはじめとする70年台の特撮ヒーローと見比べても、遜色ないどころか、明らかに上(ウルトラシリーズは除く)だった。今観ても、50年以上も前に作られた作品とは思えない。
しかも、映画ではなくTVである。製作期間も予算も限られた中でこのクオリティ。これだけの作品を遺したからこそ、ウルトラマンの歴史が今に続いているのだなと痛感する。
また、当時大人気だった『サンダーバード』の影響をモロに受けたウルトラ警備隊の基地や、ジェット機など兵器類の作り込みの精巧さ。発進時の様々なギミックや機体の動きなどにはきちんと“重み”が感じられる。そういった細部にまでこだわり抜いているからこそ、観るたびに新たな発見があり、飽きることなく楽しめるのだ。
丁寧に創られた作品だけが放つオーラのようなものが、ウルトラセブンには間違いなく存在する。
「ウルトラセブン」を楽しむには?
1967年、「ウルトラセブン」という特撮のプロたちが心血を注いだ映像作品が当時の子供たちを魅了し、50年以上経った今もなお、子供たちと当時子供だった大人たちに夢と勇気を与え続ける存在となっている。
これは、“特撮ヒーロー”なんて枠組みに収めることができないほどクオリティの高いSF作品として完成されているからだろう。
いや、子供たちにとってはヒーローの一人なのだろうが、大人の目に映るそれは、とても“子供向け”とは思えないデキ。
価値観が瞬時に移り変わる現代において、50年以上前にデザインされたヒーローがエバーグリーンであり続ける事実がこれを証明している。
“本物”は時代を越えるのだ。
さまざまな動画配信サービスを調べてみたが、ウルトラシリーズを堪能するには新たなサブスク「TSUBURAYA IMAGINATION」がベストだ。ただし気になる問題も結構ある。ご興味があれば、以下の記事もお読みいただきたい。
他の動画配信サービスには要注意だ。
例えば『Hulu』は、ネット検索すると『【ウルトラシリーズ】昔懐かしい作品から最新ウルトラマンZまで見放題!』と出てくるので、「これは・・・!」と期待が高まる。
↑このようなコーナーまで作られていることにワクワクするが、視聴可能な最も古い作品は『ウルトラマン80』だった。つまり、『ウルトラセブン』をHuluで視聴することは不可能(2021年1月現在)
書籍のオススメはこちら↓
“Vol.1”との記載からおわかりかと思うが、Vol.2以降も存在するシリーズ。
ここで注目すべきは、Vol.1がウルトラセブンで、Vol.2がウルトラマンと、放映順としては逆。つまり、ウルトラマンよりウルトラセブンが代表作として捉えられているということだ。ウルトラシリーズ最大の人気作と呼ばれる理由もわかるというものだ。電子書籍版もあるので、荷物にならず手軽に楽しめる。
社会風刺や人間の本質を抉るようなシナリオで、時には“文芸的”とも評される作品自体の魅力はもちろん、現在は諸事情により配信停止となっている幻の第12話の存在など、隠されたエピソードも魅力的なウルトラセブンの世界。知れば知るほど深みにハマる“セブン沼”。
特撮に興味のない方にも、昔観たけどもう忘れちゃったという方にも心からオススメである。
それでは、ここまでお読みいただきありがとうございました。
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