「あと10年で世界は滅びる」
異世界”ヘルヘイム”の侵食から世界を守るため、ひっそりと独自の活動を続ける多国籍企業「ユグドラシル・コーポレーション」。
その活動を妨害するように、関係者たちが次々に襲われる。
時を同じくして、ユグドラシル・コーポレーションの重役・呉島天樹の訃報が、息子である呉島貴虎と光実に伝えられる。6年ぶりに現れた呉島家の元使用人・朱月藤果によって・・・。
『鎧武外伝 仮面ライダー斬月/仮面ライダーバロン』(2015年)の『仮面ライダー斬月』をレビュー(『バロン』は改めて別記事で↓)。
『鎧武』らしく、影も切なさもある素敵な物語をネタバレ満載でお届けする。
どうぞ、最後までお付き合いください。
スタッフ・キャスト
ここでは主要スタッフとキャストをご紹介する。
それぞれウィキペディアに記載のある方はリンクを貼っておくので、他の参加作品などもチェックしてみてください。
【スタッフ】
監督:金田 治
脚本:鋼屋ジン
アクション監督:竹田道弘
音楽:山下康介
【キャスト】
呉島貴虎(クレシマ タカトラ)/仮面ライダー斬月:久保田悠来
朱月藤果(アカツキ トウカ)/仮面ライダーイドゥン:岩田さゆり
呉島光実(クレシマ ミツザネ):高杉真宙
戦極凌馬(センゴク リョウマ)/仮面ライダーデューク:青木玄徳
湊 耀子(ミナト ヨウコ)/仮面ライダーマリカ:佃井皆美
葛葉紘汰(カズラバ コウタ):佐野岳
少年貴虎:竜跳
少年光実:西岡 航
少女藤果:内田 愛
シド:波岡一喜
呉島天樹(クレシマ アマギ):寺田 農
【挿入歌】
「Lights of my wish」 作詞:藤林 聖子 作曲:Ryo 編曲:Ryo 五十嵐淳一 歌:高司 舞(CV:志田友美)
思い出の”アップルパイ”
貴虎と光実が幼いころに呉島家に使用人としてやってきたのが朱月藤果だった。
毎日、一人きりで味気ない食事をとっていた少年時代の貴虎に、手作りのアップルパイを振る舞ったことがきっかけで、年齢も近かった二人は親しくなった。
アップルパイは不味かったが、一流シェフの料理より、貴虎には嬉しく、思い出深い味となったようだ。
再会した藤果は、貴虎を自宅に招き、またアップルパイを振る舞うが・・・。
思い出のままのアップルパイの味に、つい頬が緩む貴虎と、そっと寄り添う藤果の姿に、二人の成長と時の流れを感じる。
主人公に貴虎を据えただけあって、本編よりは少し大人びた物語となっている。
明かされる呉島の闇
貴虎と光実の父・天樹は、ユグドラシル・コーポレーションの重役を担う傍ら、「沢芽児童保育院」の理事長をしていた。
そこは、ユグドラシルの未来を担う人材を育てるための機関で、才能ある子供たちを指導者や研究者、社会の闇で暗躍する工作員として輩出していたが、同時に、落ちこぼれてしまった子供たちに人体実験を施し、数多くの犠牲者をも産んでいた。
藤果もまた、そこで育った子供たちの一人であり、工作員として天樹に仕えていたが、復讐のために天樹を始末し、さらに貴虎と光実の命をも狙っていたのだと貴虎は知る。
人の命をもてあそんだ父の”闇”によって、一度は心を通わせたはずの藤果とも戦わなくてはならない運命を背負った貴虎。その姿はまさに”ダークヒーロー”。連綿と紡がれてきた「仮面ライダー」の原点ともいえる姿である。
”戦国武将”や”フルーツ”といった、初期の頃からの「仮面ライダー」ファンからしたら目を背けたくなるようなモチーフを取り入れながらも、きちんと「仮面ライダー」として成立しているのは、こういう部分だろうと思う。
一人ではとても抱えきれないほどの重荷を背負いながらも、それを乗り越える貴虎。
彼を鼓舞するものが、死ぬまで理解しあえなかった父・天樹の教え「ノブレス・オブリージュ」だというのも興味深い。
ノブレス・オブリージュとは?
- フランス語で、「高貴であるため(財産、権力、社会的地位を保持するため)には義務を伴う」という意味。
それにしても、寺田 農さんの変わらぬ存在感に圧倒される。
登場シーンもセリフも少ないのに、鮮明に記憶に刻まれる。
この人が悪役をやっていたからこそ『仮面ライダーW』はあれほどまでの作品になったのだ、と再認識する。
新ライダー・新フォーム
仮面ライダーイドゥン
天樹の命を奪い、さらに呉島家への復讐を目論む朱月藤果が変身する新ライダー。
リンゴをモチーフとしたアーマードライダーで、北欧神話の女神”イドゥン”の名を持つ。
イドゥンとは?
- 北欧神話に登場する女神。イズン、イズーナとも呼ばれる。アースガルズの神々に永遠の若さを約束する黄金のリンゴの管理人で、詩の神ブラギの妻でもある(ウィキペディアより引用)。
変身に用いるロックシードは”禁断のリンゴロックシード”。変身音は、「リンゴアームズ! デザイア フォビドゥン フルーツ♪」。”desire”(欲望)、”forbidden fruit”(禁断の果実)と、エデンの園にあったとされる果実をイメージしているものと思われる。
事実、このロックシードを使用することによって、使用者である藤果は”死”の運命を背負うことになる。
アダムとイヴをそそのかしたヘビの役を担うのは、戦極凌馬。後付けの設定だったとしても、違和感なくピタリとはまっている。
戦闘時は、ヘルヘイムのツタ植物の力を操り、”クラック”と呼ばれる、ヘルヘイムの森と現実世界をつなぐゲートを自在に出現させることで、神出鬼没のトリッキーな攻撃で相手を翻弄する。
『ジョジョの奇妙な冒険』第5部に登場したブチャラティを彷彿とさせる。
斬月”ウォーターメロンアームズ”
仮面ライダー斬月の新フォーム。変身音は「ウォーターメロンアームズ! 乱れ玉ババババン!」
本編で光実にこっそりと奪い取られたスイカアームズの代わりにと、戦極凌馬から渡された”ウォーターメロンロックシード(スイカプロトタイプ)”によって変身する。
武器は、”ウォーターメロンガトリング”。ガトリングガンが備えられた盾で、強力な反面、射撃時の反動も大きく、重く取り回しづらい。
全体的に白が目立つカラーリングで、贔屓目にいえば”フェンシング”、悪くいうと”全身タイツ”っぽい。いつものメロンアームズも基本は白いのに、これほど印象が変わるとは驚きである。
目元のカラーリングだけでほんのりダサくなる不思議。
『仮面ライダー斬月』を視聴するには?
同時収録された『仮面ライダーバロン』と比較すると、だいぶ影が濃く、鎧武版「ロミオとジュリエット」とも呼べる、ちょっと大人びたラブストーリー要素もある作品で、最後の余韻も心地よかった。
本作を視聴するには、アマゾンプライムビデオでは、SD(標準画質)レンタルが300円、HD(高画質)レンタルが400円となっている。
レンタル期間は30日だが、一度視聴を開始すると7日でレンタルが終了してしまう。
購入もできるが、SD版が2,000円、HD版が2,500円と決して安くはないので、コレクター以外にはオススメしない。
個人的にはアプリ「TTFC(東映特撮ファンクラブ)」がオススメ。
月額960円(税込)で、何度でも視聴可能なうえに、他にもある『鎧武』関連作品や歴代仮面ライダー作品などもほぼ見放題である。
私は加入して既に2年ほど経過するが、アプリ自体に不満を感じることはあっても、毎月定額を払い続けていることに対する後悔は1ミリもない。
なお、こんなふうに書くと「案件」だと思われるかもしれないが、これを読んでくれた方がTTFCに加入したところで、私には1円も入ってこない。それでも応援したいのは、純粋に東映作品が好きだからだ。
中でも、平成ライダーシリーズは、何度でも見返したい魅力に溢れている。『鎧武』だけでなく他の作品も、昔見たことがあるという方なら新たな発見があるだろうし、見たことがない方なら、きっとハマるはずだ。「なんとなく面白くなさそう」なんて食わず嫌いはやめて、とりあえず5話くらい見て欲しい。
そんな時に”使える”のが、このTTFC。特撮作品の新たな魅力を再発見してもらえたら嬉しい限りだ。
それでは、ここまでお読みいただきありがとうございました。
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