1977年2月2日放送『快傑ズバット』の第1話「さすらいは爆破のあとで」(監督:田中秀夫、脚本:長坂秀佳)
「特撮ヒーロー」と聞いて、真っ先に思い浮かべるタイトルは何だろう?
ウルトラマン? 仮面ライダー? スーパー戦隊? メタルヒーロー?
私にとっては、『スパイダーマン(日本版)』と『快傑ズバット』の二本。中でもインパクトという点において、『快傑ズバット』を超える作品はない。
日本中を旅しながら悪と戦うロードムービー的な展開だが、その旅の理由は、悪を倒すためではなく、親友の仇を討つため。要するに、私怨。世界の平和のためなら自らの命を差し出すことも厭わないというのが正義のヒーローのフォーマットだったはずなのに、完全に自分都合。こんな特撮ヒーロー、他に見たことがない(とはいえ、弱きを助ける正義のヒーローらしさはもちろん持ち合わせているけれど)。
本記事では、日本が誇るカルトヒーロー『快傑ズバット』の第1話「さすらいは爆破のあとで」(監督:田中秀夫、脚本:長坂秀佳)をレビュー。最後までおつきあいいただければ幸いだ。
キャスト・主題歌・挿入歌
ここでは本作のキャストと主題歌・挿入歌をご紹介。ウィキペディアに記載のある方についてはリンクを貼っておくので、他の参加作品も是非チェックしていただきたい。なにぶん40年以上も前の作品なので、「え? あの人が出てたの?」といった発見があるかもしれない。
【キャスト】
快傑ズバット/早川 健
飛鳥みどり
大城信子
寺田オサム
中野宣之
飛鳥五郎
ランカーク
地獄竜
佐藤好将
声:依田英助
ナレーター:青森 伸
首領L:はやみ竜次
ダッカー幹部:江頭昭之
東條進吾:斉藤 真
【主題歌】
「地獄のズバット」作詞:石森章太郎 作曲:京 建輔 唄:水木一郎
「男はひとり道を行く」作詞:八手三郎 作曲:京 建輔 唄:水木一郎
【挿入歌】
「二人の地平線」作詞:八手三郎 作曲:京 建輔 唄:宮内 洋
地獄組組長”地獄竜”
記念すべき第1回目の悪党。地獄組組長・地獄竜。
顔も唇も紫。『ちびまる子ちゃん』の藤木くんのようだ。プールの後かもしれない。
いきなり黒塗りのクルマで園児たちの集団に突っ込み、(引率の保育士さんに向かって)「お嬢さん、地獄竜の恐ろしさ、私の部下に教えてもらいなさい」と、部下に園児と保育士さんをボコらせる。自分はクルマでエスケープ。
そこに一人の男が現れる。
「飛鳥五郎・・・と言っても知らないだろうがね。山登りの好きな貧乏学者さ」
聞かれてもいないのに、自己紹介。ビジネスマンの鑑のような人。本作のキーマン。「貧乏」と自称する割には肌艶が良いので、自虐ネタなのだろう。
「お兄さん・・・」
そんな彼を見て、ほっとしたように呟く保育士さん。まさかの兄妹。彼女の名は飛鳥みどり。本作のヒロインである。妹もやっぱり肌艶が良く、髪も艶々。やはり「貧乏」とは自虐ネタか。
悪党どもを容赦なくなぎ倒す飛鳥五郎。その強さは学者をやらせておくにはもったいないレベル。勉強もできてバイオレンスもいける。神は二物を与えたもうた。
用心棒・ランカーク
そこに登場したのは、地獄組の用心棒・ランカーク。名前も出立ちも日本人離れしているが、100%ジャパニーズだ。
それよりも驚くべきは飛鳥五郎である。二丁拳銃で威嚇されても顔色ひとつ変えない貧乏学者。場慣れし過ぎていて、やはり学者であることが疑わしくなるレベル。貧乏であることは既に疑わしいが。
「今度は心臓を打ち抜くぜ」
ランカークがお決まりのセリフを吐いた途端、どこからともなく聞こえてくるギターの音色。
ついに我らがヒーロー・早川 健の登場だ。
「地獄竜の用心棒ランカーク。日本じゃあ2番目の拳銃使い」
これが本作のお約束。自分を何がしかのナンバー1だと信じて疑わない悪党に「違う違うそうじゃない」と釘を刺す。
「2番目だと?じゃあ、日本一は誰だ!?」
気色ばむランカークに、「ヒュウ〜(口笛)♪、チッチッチッチ(舌打ち)」からの親指で自分を指す早川。不敵な笑みまで浮かべている。絵に描いたようなキザだ。The KIZA(キザ)。
そこで始まる拳銃対決。草むらに1羽のウサギを見つけ、的にしようとするランカーク。
そこに「俺のウサギに何をするんだ!?」と少年が飛び出してくる。明らかに園児ではない。保育士さんからは「オサムくん」と呼ばれているが、誰だか全然わからない。The NAZO(謎)。
しかし、早川(初対面)の「大丈夫」の一言で、結局ウサギを的にすることに。いいのかよ。
そうして始まった拳銃対決は、ウサギにつけた花飾りを打ち落とそうとしたランカークの銃弾を全て撃ち落とすという異次元のテクニックで早川の圧勝。『マトリックス』どころの話ではない。
飛鳥五郎と早川 健
飛鳥五郎と早川 健は、実は旧知の間柄。お互いのことを「親友」と公言する二人だが、この後、悲劇が起こる。
なぜか園児と保育士さんのことを諦められない地獄組が園バスに仕掛けた時限爆弾により、飛鳥は負傷し入院。さらに、その病院が地獄組に襲撃され、飛鳥は何者かに銃殺されてしまう。
親友を亡くし失意のどん底にいた早川に、飛鳥の妹・みどりは「あなたのせいで兄は殺された」と追い討ちをかける。「泣きっ面に蜂」とは、まさにこのこと。みどりから受け取った飛鳥の形見のギターを爪弾きながら男泣きの夕暮れ。復讐劇の始まりである。
親友の置き土産・ズバットスーツ完成!
殺された親友・飛鳥の復讐を心に誓う早川。飛鳥が設計した宇宙探検用スーツを基に、強化スーツを作成(溶接)する。それがズバットスーツ。
「見てくれ、飛鳥・・・これがズバット・スーツ!!」
虚空に向かい、ナイス・ポーズ。星になった飛鳥にも届くに違いない。
両耳のスイッチ(?)を押すと仮面の左右からバイザーが飛び出して変身完了。しかし、まるでチリが合っていない。宇宙探検は無理っぽい。
ズバットスーツは身に纏うだけで、400m(333mの東京タワーを遥かに超える)ものジャンプができるようになるなど、まさに超人的な力を発揮するが、5分経つと装着者の身体がバラバラになるという謎仕様。どん兵衛が食べごろを迎えるまでに敵ボスをボコり終えなければいけない。どん兵衛は10分の方が美味しいのは、とりあえず内緒だ。
ズバッカー
早川は、ズバット専用のスーパーカーも作り上げる。DIYここに極まれり。本田宗一郎も羨む技術の持ち主だ。その名も「ズバッカー」。
なんと空も飛ぶ。
ホバークラフトのような大型プロペラを持つイカしたクルマで、目立つ目立つ。オープニング映像で、たまたま路肩で休憩しているタクシーの運転手さんたちがガン見している様子が映り込んでいるのが笑える。
ズバット参上!
地獄組に単身乗り込んだはいいが、人質を取られ、絶体絶命の早川だが、忽然と姿を消した直後、ズバッカーに乗ったズバットが登場する。
「ズバット参上。ズバット解決。人呼んで、さすらいのヒーロー!!快傑・・・ズッバァァァット!!」
誰も呼んでいないし、何なら今回が初登場。
武器のムチを振るい、敵をなぎ倒すズバット。『秘密戦隊ゴレンジャー』でアカレンジャーがムチを振るっていたが、それ以来のメイン武器ムチのヒーロー誕生である。ちなみに、あらゆる武器の中で、ムチが最も痛いという話を聞いたことがある。SMクラブでMな人が女王様にムチでしばかれるのは、ある意味で正しいのだ。
「幼稚園バスを爆破し、その上、病院まで爆破した地獄竜、許さん!」
第1回ということで、ズバットではお決まりの名乗り直後の決め台詞もこれといって特徴のないものだが、これはこれで貴重である。ボスの地獄竜をボコって、「飛鳥五郎という男を殺したのは貴様だな?」と詰問。
「俺じゃない!本当だ!」
「違う」という言葉だけで、アリバイもへったくれもないが、そこを追求するのはズバットではなく、古畑任三郎とかの出番だろう。とりあえず違うとわかると、悔しさを露わにし、もう一撃加えて地獄竜を行動不能にするズバット。
ここまでで制限時間5分経過。どん兵衛は食べごろ。変身を解除し、立ち去る早川。現場に駆け付けた警察の前には、行動不能となり苦しみうめく地獄竜と、残された1枚のカード。
これも毎度のお約束である。真っ赤なバラを模した「Z」の文字に、サインペンで書いたような告発文が映える。インスタならバズってる。
『快傑ズバット』を視聴するには
「早川さーーーーーん!!」と、草原の中心で早川の名を叫ぶ、飛鳥の妹・みどりと、ウサギの飼い主・オサム。
早川の助手になりたいオサムと、兄を殺した犯人を探したいみどりの二人は、何故か一緒に旅をすることになる。みどりはまだわかるが、オサムはとことん謎である。ウサギはどうするのか? そもそも早川が旅に出たかどうかもわからないというのに・・・と、最初から最後までツッコミどころ満載の超展開で幕を開けた『快傑ズバット』。
第2話以降のレビューはこちら↓
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それでは、ここまでお読みいただきありがとうございました。
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