『暴太郎戦隊ドンブラザーズ』ドン1話|光と影を描く新たなスーパー戦隊

雷堂

2022年3月6日スタート!『暴太郎戦隊ドンブラザーズ』ドン1話「あばたろう」(監督:田﨑竜太 脚本:井上敏樹)

ついに始まった46番目のスーパー戦隊『暴太郎(あばたろう)戦隊ドンブラザーズ』。紅一点・鬼頭はるかの視点で綴られたドン1話をレビュー。

一人の男が、桃の形をしたゆりかごの中から生まれたばかりの赤ちゃんを見つける、という昔話『桃太郎』になぞらえた短いアバンに続き、テンションMAXな主題歌「俺こそオンリーワン」が流れる。『ゼンカイジャー』以上にダンスを見せるオープニング。最高だ。毎週日曜日の朝、これが見られるというだけで1週間頑張れる。だからこそ、より一層、駅伝とかゴルフが嫌いになりそうな私である。

ネタバレあり、というか、まだ初回なので、どれだけネタバレしてもし足りないほど謎だらけ。しかも小ネタ満載。余すところなく書くので、最後までおつきあいいただければ幸いだ。

目次

主要スタッフ・キャスト

【スタッフ】

監督:田﨑竜太

脚本:井上敏樹

音楽:山下康介

アクション監督:福沢博文

特撮監督:佛田 洋

【キャスト】

桃井タロウ/ドンモモタロウ:樋口幸平

本作の主人公。シロクマ宅配便の配達員

鬼頭はるか/オニシスター:志田こはく

女子高生でマンガ家

雉野つよし/キジブラザー:鈴木浩文

サラリーマン

五色田介人/ゼンカイザーブラック:駒木根葵汰

カフェのマスター。前作にも登場したあの人?

ソノイ:富永勇也

謎の存在・脳人(ノウト)の一人

桃井 陣:和田聰宏

桃井タロウを拾った男。今は謎の監獄に囚われている

吉岡:八頭司悠友

春日 誠:狩野絹成

鈴木春男:霜降り明星 せいや

記者:後藤公太

編集者:田中えみ

花村ひとし:本田響矢

女生徒:川崎帆々花

通りすがりの老人:古川がん

犬の主人:下園愛弓

高木 涼:我 聞

広告塔の美女:村島未悠

天女:河北琴音・渡辺 望・井田彩花・加藤萌朝

鬼頭はるか

デビュー作「初恋ヒーロー」で、冗談社マンガ大賞を最年少受賞した女子高生・鬼頭はるか。

授賞式の帰りに乗ったタクシーの運転手が、突如異形へと姿を変えてしまう。この異形は「ヒトツ鬼(ヒトツキ)」と呼ばれる存在で、欲望の虜になった人間に取り憑く怪物という設定。このタクシー運転手が、どういった欲望の虜となったのかは不明だが、紅色の「ベニツ鬼」となって、はるかに襲いかかる。

ベニツ鬼
画像引用元:暴太郎戦隊ドンブラザーズ

その窮地を救ったのが、謎のイケメン。今回、劇中でその詳細には触れられていないが、これが今回の敵・脳人(ノウト)であり、彼の名はソノイ。バイクで颯爽と現れ、青い戦士に変身する。走行中のクルマを片手で止めてしまうほどの怪力を持つベニツ鬼を、手にした剣でクルマごと一刀両断し、去っていく。このそっけないアクションシーンがなかなかカッコいい。ちなみにソノイのスーツアクターは、仮面ライダースラッシュなどでもおなじみの森博嗣さんである。

ソノイ変身後
画像引用元:暴太郎戦隊ドンブラザーズ

「初恋ヒーロー」という作品で受賞したマンガ家・はるかの前に、本物のヒーローが現れた、しかも初恋? なんて展開かと思いきや、既に花村というイケメン彼氏がいるらしい。彼氏がいる上、マンガ大賞を受賞したことで一躍、学校の有名人ともなったはるか。まさにバラ色の人生・・・かと思われたが、実はこの作品が盗作だったことがバレてしまう。学校では孤立し、彼氏にもフラれてしまうという、まさかの転落人生の始まり。光と影を描く脚本家・井上敏樹さんらしい展開である。

しかも、偶然手に入れてしまった謎の黄色いサングラスのせいで、人間に擬態しているアノーニという脳人の工作員の姿を見分けることができるようになるのだが、このアノーニのデザインがなかなか面白い。身体のあちこちに目玉がついたようなデザインは不気味だが、カラフルな色使いは、どこかポール・スミスを思い出す。いや、こんなこと書くと、ポール・スミスには怒られるかもしれないけれど。

しかも、渋谷の広告塔に登場するような美女さえも実はアノーニであることが描写されていたりもする。想像以上に、この世は脳人に侵食されていることがわかる。文字化けしてしまう演出も不気味さを助長している。

そのアノーニたちに襲われる中、なんの前触れもなく、はるかは変身してしまう。全身黄色のオニイエロー。ただし、劇中では、まだその名前は明らかにされていない。

オニシスター初変身
画像引用元:暴太郎戦隊ドンブラザーズ

変身直後、アノーニに殴られた腕をさすりながら、「痛・・・くない・・・」と、変身したことによる思わぬ変化に気づくセリフに、はるかを演じる志田こはくさんのセンスを感じる。他にも「ワケ・・・ワカンネ・・・」などといったセリフもあったが、いずれも、なんというか味がある。現役の女子高生ということで、めちゃくちゃ若いが、いい役者さんである。

さて、この黄色いサングラスで思わぬ騒動に巻き込まれたはるかの前に、異次元の牢獄に囚われた男が姿を現す。

牢獄に囚われた桃井陣
画像引用元:暴太郎戦隊ドンブラザーズ

男は、はるかが戦士に選ばれたと告げる。他にも4人の仲間がいるらしいが、「まずは桃井タロウを探せ。彼の前でひざまずき忠誠を誓え」という、そうすれば、失ったものを取り戻せるのだそうだ。はるかの頭に浮かんだのは、命を救ってくれた謎のイケメン。彼がきっと桃井タロウだと信じ、街中を探し始める。

桃井タロウ

本作の主人公が、桃井タロウである。生まれたばかりの頃、異空間から桃のゆりかごに乗ってやってきたこの青年は、ウソがつけないらしい。これは正直者を語るうえでの比喩表現ではなく、ウソをつく機能がない、とされている。“機能がない”とはどういうことなのだろう? 果たして人間なのかどうかも怪しいものである。

現在はシロクマ宅配便の配達員をやっており、今回荷物を届けた鈴木春男は、お笑いコンビ・霜降り明星のせいやさん。

霜降り明星せいやのドンブラザーズゲスト出演
画像引用元:暴太郎戦隊ドンブラザーズ

ひょっとして、今後もゲストはこのように荷物の受取人として登場したりするのだろうか? いや、さすがに毎度それはないだろうが、たまにはこういうのも悪くないかもしれない。

荷物を運ぶだけでなく、幸せも運ぶと豪語するタロウは、何かにつけて“縁”を大切にしている。荷物を届けたのも“縁”、たまたま道で人とぶつかってしまったことも“縁”。確かにそれはそうなのだろうが、それを真っ向から口にされると、鈴木春男や鬼頭はるかでなくとも「この人、ちょっと危ない人?」という感想を抱いてしまうのは間違いない。

今回、素面では、ほんの触りだけ、という登場だったが、常人離れした雰囲気はしっかり出ていた。

なお、ドンモモタロウとしての登場シーンは、かなり常軌を逸したものだった。天女たちが舞い踊る中、半裸の男たちに担がれた神輿に乗って登場(しかもバイクごと)。右手には扇子を携え、「笑え笑え」と高笑い。歌舞伎者といえば聞こえはいいが、やっぱり危ない人にしか見えない。

ドンモモタロウ登場シーン
画像引用元:暴太郎戦隊ドンブラザーズ

しかし、一度戦いに身を投じれば、その強さはなかなかのもの。「楽しもうぜ!」と、怯むことなくソノイに斬りかかる。中の人は浅井宏輔さん。新堀和男さん、高岩成二さんというレジェンドに次いで、スーパー戦隊のレッドと仮面ライダーを演じた史上3人目のスーツアクターだ。仮面ライダーセイバーを演じたあの人である。剣が得意という設定のドンモモタロウにはうってつけだろう。サングラスにチョンマゲという奇抜なデザインだが、ふとカッコ良く見えてしまうのは、浅井さんのアクションによるものであることは間違いない。必殺技はサングラス型の大太刀・ザングラソードで敵を斬る「快桃乱麻(カイトウランマ)」。技の前に「桃太郎さん♪桃太郎さん♪」のメロディーで流れる「アーバタロ斬♪アバタロ斬♪」という音声にも注目だ。

雉野つよし

もう一人の仲間として、ピンク担当・雉野つよし(キジブラザー)が登場する。

出番は決して多くないけれど、強制的に変身させられてしまうはるかや、変身した姿で登場したタロウとは異なり、きちんと変身シーンを見せてくれる初めてのキャラである。

キジブラザー変身シーン
画像引用元:暴太郎戦隊ドンブラザーズ

変身後は身長が2mを超える(CGで脚だけが伸びる)という特殊な設定であるため、アクションシーンでは爽快感に欠けるところはあったが、変身前の設定(サラリーマンで妻帯者)も含め、面白そうなキャラではある。

気になったのは、雉野ではなく、他のメンバーも使う「ドンブラスター」という武器兼変身アイテムである。

ドンブラスター
画像引用元:暴太郎戦隊ドンブラザーズ

『ゼンカイジャー』で使われていたセンタイギアのようなアバタロウギアをセットし、可動部を手で回すと銃身部分が連動して動き、「ドン・ドン・ドン・ドンブラコ!」という音声と共にアバターチェンジ(変身)するのだが、この銃身の動きがどうにも安っぽい。木製のカラクリ人形のようなカタカタという動き方をする。昔話をモチーフとしていることもあって、あえてそういった味付けにしてあることはあり得るが、だとしてもちょっとチープに過ぎる。「ギアトリンガー」のようにクルクルと連続して回せるなら問題なさそうだが、手で回すたびに「ドン」「ドン」と音が1回ずつ鳴る仕様なので、テンポも悪い感じがする。ただし、とりあえずドン1話を見ただけの感想なので、これについては改めて実物のおもちゃで確認してみたいと思っている。

2体目のヒトツ鬼

はるかの同級生・吉岡が2体目のヒトツ鬼・シソツ鬼として現れる。先述したベニツ鬼の身体が紅色だったのと同様、シソツ鬼の身体はシソ色である。

シソツ鬼
画像引用元:暴太郎戦隊ドンブラザーズ

卓球部で期待されていた吉岡だったが、急に様子がおかしくなり退部。その後は、山ほど釘を打ち付けたラケットを片手に、卓球の高校生チャンピオンや卓球の金メダリストに勝負を挑む。道場破りのようなものである。これはヒトツ鬼に取り憑かれたためで、人智を超えた力を発揮していた。

吉岡を止めようとするはるかだったが、その前にソノイが現れる。ソノイを桃井タロウだと信じるはるかは、スライディングでひざまずき忠誠を誓うが、文字通り一蹴されてしまう。

忠誠を誓うオニシスターを一蹴するソノイ
画像引用元:暴太郎戦隊ドンブラザーズ

しかも、吉岡を助けてくれるとばかり思っていたソノイは、問答無用で斬り捨ててしまう。どうやら脳人の攻撃はヒトツ鬼を消滅させてしまうらしい。

「なんで・・・」とショックを隠せないはるかの前に、ドンモモタロウが登場するのだった。

脳人の目的とは?

本作では、先述した「ヒトツ鬼」を倒すことが一つの目標となるようだが、ヒトツ鬼を倒そうとするのはドンブラザーズだけではない。ソノイをはじめとする脳人と呼ばれる者たちもヒトツ鬼を倒そうとしているように見えるのだが、これがどうにもよくわからない。ソノイは、欲望の虜になった人間を汚らわしいと感じており、ヒトツ鬼は見つけ次第、容赦なく斬り捨てる。ところが一方では、卓球の金メダリスト・春日を「騎士竜鬼」へと変化させたりもしている。

騎士竜鬼
画像引用元:暴太郎戦隊ドンブラザーズ

この金メダリスト・春日も、雑誌のインタビューでは「次に繋ぐ」などとキレイ事を語っていたようだが、実際には自らの金メダルに執着するばかり、という醜さを垣間見せる。これもやはり井上節というヤツだろう。

画像引用元:暴太郎戦隊ドンブラザーズ

それにしても、脳人の目的とは一体なんなのだろう? そのうち明らかになるだろうが、現時点では、人の欲望の権化を倒したり、かと思えば自ら生み出したりと、なんだか矛盾しているようにしか見えない。

しかも、今回登場した「騎士竜鬼」は、『騎士竜戦隊リュウソウジャー』の力を宿した怪物である。竜というよりはクモのような複数の目を持ち、それによって並外れた動態視力を持っているらしいが、今回はドンモモタロウの圧勝。自慢の武器・鬼険棒(キケンボウ)もまるで活躍する機会がなかった。

倒された途端、「騎士竜鬼ング」へと巨大化。スーパー戦隊お約束の巨大ロボ戦が始まるのだが、これがまた興味深い。

脳人レイヤーに現れた騎士竜鬼ング
画像引用元:暴太郎戦隊ドンブラザーズ

街の上空に突如姿を現す「脳人レイヤー」と呼ばれる仮想空間でのバトルが始まる。コンピューターの基盤のようなデザインの街で、ブロックを積み重ねたようなビル街での戦闘となる。これは、従来のスーパー戦隊では暗黙の了解とされていた、「正義の味方が街を破壊してもいいの?」という純粋な疑問に対するひとつの回答である。

巨大ロボの戦闘で街が破壊される、というカタルシスを失うことなく、それでいて現実の街はいっさい傷つかない、という設定だ。

『機界戦隊ゼンカイジャー』第42カイでフライング登場した巨大ロボ・ドンゼンカイオー(ドンモモタロウのスーパーバイク・エンヤライドンとジュランティラノが合体した姿)に乗り込み、騎士竜鬼ングを倒す。必殺技のドン・ゼンカイクラッシュも、『ゼンカイジャー』で披露したもの。巨大な桃をまっぷたつにするように敵を切り裂く。

ドンゼンカイオー
画像引用元:暴太郎戦隊ドンブラザーズ

勝利し、「めでたし、めでたし」となった途端、脳人レイヤーは姿を消し、ヒトツ鬼の宿主・金メダリストの春日は元に戻る。つまり、脳人に倒されたヒトツ鬼は消滅してしまうが、ドンブラザーズに倒されたヒトツ鬼は人間に戻ることができるようだ。これこそが、脳人とドンブラザーズの最大の違いであり、両者が争う理由となるのだろう。

その影でひっそりとリュウソウジャーのギアを手に入れていたゼンカイザーブラックも気になるところ。

リュウソウジャーギアを手に入れたゼンカイザーブラック
画像引用元:暴太郎戦隊ドンブラザーズ

吉岡は本当に消滅してしまったのか? そして、はるかは桃井タロウや他の仲間たちと出会うことができるのか? 全ては「じかーい、次回」のお話である。

雷堂

それでは、ここまでお読みいただきありがとうございました。

\ 僕と握手! /

Recommend

この記事が気に入ったら
フォローしてね!

僕と握手!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

特撮ヒーローのレビュー(旧作から最新作まで)が中心ですが、ガジェットやゲームなど、好きなものを思いつくままに書いています。僕と握手!
※当サイトではアフィリエイトに参加しています。

WordPressテーマ「SWELL」

目次