”ヘルヘイム”の脅威が去って数年後の沢芽市。
師匠・鳳蓮からスイーツ店「シャルモン」を受け継いだ城乃内は、今や世界的なスター・パティシエとなり、秘書を従え、TVにも引っ張りだこ。女優とスキャンダルまで巻き起こすほどの人気ぶり。
そのチャラけた様子にイラつく鳳蓮の元に、呉島貴虎から「城乃内を始末しろ」という依頼が入る・・・。
2011年、アニオタを中心に話題を巻き起こした『魔法少女まどか☆マギカ』で脚本を担当した虚淵玄(ウロブチゲン)が参加したことでも話題だった『仮面ライダー鎧武』の外伝3作目。
TTFC(東映特撮ファンクラブ)オリジナル作品として配信されている『鎧武(ガイム)外伝 仮面ライダーグリドンVS仮面ライダーブラーボ』をレビューする。
まるで『ゴジラVSキングギドラ』みたいなタイトルだが、師弟関係である、仮面ライダーグリドン/城乃内秀保と仮面ライダーブラーボ/鳳蓮・ピエール・アルフォンゾという2人が戦うとはどういうことなのか・・・?
全2話の配信で、2話合計でも25分ほどのショートストーリーなので、めちゃくちゃ気軽に楽しめる。
盛大にネタバレするが、最後までお付き合いいただければ幸いだ。
スタッフ・キャスト
ここでは、主要スタッフとキャストをご紹介。
ウィキペディアに記載のある方はリンクを貼っておくので、是非、他の参加作品もチェックしていただきたい。
【スタッフ】
監督:諸田 敏
脚本:毛利亘宏
アクション監督:宮崎 剛
音楽:山下康介
コロナ対策班:髙橋曜子(他のスタッフ・キャストのように誰もがその名を知る方ではないが、今の時代を象徴するお仕事。地味だが、こういう方がしっかり働いてくれることで、現場のみんなが安心して戦えるのだと思う)
【キャスト】
城乃内秀保/仮面ライダーグリドン:松田 凌
鳳蓮・ピエール・アルフォンゾ/仮面ライダーブラーボ:吉田メタル
鈴鹿まさこ/仮面ライダーシルフィー:鷲見友美ジェナ(仮面ライダーGIRLS)
呉島貴虎/仮面ライダー斬月:久保田悠来
初瀬亮二:白又 敦
プロデューサー:若狭勝也
リポーター:富岡英里子
【主題歌】
『You are the HERO』SHOCK EYE from 鎧武乃風
登場人物
城乃内秀保/仮面ライダーグリドン
今をときめく世界的なスター・パティシエ。
師匠である鳳蓮・ピエール・アルフォンゾから受け継いだ洋菓子店シャルモンのオーナー。
鈴鹿まさこ/仮面ライダーシルフィー
城乃内の秘書。
実は仮面ライダーシルフィーだが、城乃内はそのことを知らない。
鳳蓮・ピエール・アルフォンゾ/仮面ライダーブラーボ
洋菓子店シャルモンの元・オーナーパティシエ。
従軍経験のあるガチムチマッチョだがオネエ。現在は傭兵。
呉島貴虎/仮面ライダー斬月
ヘルヘイムの脅威が去った沢芽市を守るために活動している様子(劇中ではあまり詳しく何をしているのかが描かれていない)。
『セイバー』にも登場
『仮面ライダーセイバー』にも、名もなきチョイ役として、唐突に登場した城乃内と鳳蓮。
敵怪人・メデューサメギドに石にされる人々の中の二人として登場。その後、ライダーたちがメギドを倒したことで救われるのだが、ライダーたちが、「大丈夫ですか!?」と声をかけるとか、そういうやりとりは一切ない。唐突に登場して石にされ、石化が解けたら勝手に退場するという、レジェンドライダーとは思えない雑な扱いが、いかにも”らしい”。
この外伝の存在を知らずとも『鎧武』を知っている方なら、「ん? 何かあるのか?」と思ったはずだが、要するに、この外伝の”匂わせ”だったわけだ。めちゃくちゃわかりづらい番宣ではあるが、これも”らしい”といえる。
新フォーム・新ライダー
本編以外に、劇場版やスピンオフなど、様々な作品が生み出される仮面ライダーシリーズにおいて、ファンの密かな楽しみは、ライダーたちの新しいフォームと、新たに登場するライダーだ。
本作でもそれらはバッチリ登場する。
ここでも画像を交えてご紹介するが、ライダーたちの迫力あるバトルシーンを、是非、その目で確認して欲しい。
キングドリアンアームズ(ブラーボ)
ブラーボの新フォームが「キングドリアンアームズ」だ。
赤と黒を多用したデザインが特徴的。禍々しいというよりは毒々しい。
トゲトゲもドリアンというより、毛虫といった風情である。
破壊力は凄まじく、一撃でグリドンのロックシードを粉砕してしまう。
スーツアクターは佐藤太輔さん。
ライチアームズ(グリドン)
グリドンの新フォームとして登場するのが「ライチアームズ」。
いかにもザコ感満載だったグリドンに比べ、ツノが生えたりして格上げされている。
ヘルヘイムの力で暴走したキングドリアンアームズを圧倒するほどの強さを誇る。見せかけだけではないのだ。
スーツアクターは岡田和也さん。
斬月カチドキアームズ
斬月の新フォーム「カチドキアームズ」。
ライバルである鎧武にはあって、斬月にはなかったフォームがついに登場。
実はこのフォーム、こういった映像作品には初登場だが、”舞台”で初お披露目されたという特殊なもの。
爽やかな色合いはそのままに、なんとも凛々しい姿である。
そして、お強い。
せっかく新ライダーとして登場した「仮面ライダーシルフィー(後述)」をまるで寄せ付けない。
スーツアクターは岩上弘数さん。
仮面ライダーシルフィー
初登場の女性ライダーが「仮面ライダーシルフィー」。
ピンクとパープルという女性的な色合いが素敵。
物語の黒幕だけあって、強さもなかなかのもの・・・だと言いたいが、相手(斬月)が悪かったのか、終始”噛ませ犬”状態だった。
ヘルヘイムの力を操ることができ、自在に”クラック(ヘルヘイムとこの世界をつなぐチャック状のゲート)”をつくり、ヘルヘイムの植物(ツタ)を使って攻撃することもできる。
『鎧武外伝 仮面ライダー斬月』に登場した「仮面ライダーイドゥン」のような能力を持っているのだ。
スーツアクターは高嵜百花さん。
盟友(スペシャルゲスト)降臨
初瀬(はせ)ちゃんの再登場は、『鎧武』ファンなら歓喜するはずだ。
『鎧武』本編では、たまたま口にしてしまったロックシードにより怪物化し、仲間に襲いかかり、最後は非業の死を遂げてしまった初瀬ちゃん。
暴走するブラーボの強烈な一撃で自らのロックシードを粉砕されてしまった城乃内の目に飛び込んできたのは、シルフィーがヘルヘイムから呼び寄せたツタに実ったロックシードの実。
藁にもすがる思いで、その実を剥いてみるが、何の変化も起きない。
鳳蓮を何としてでも助けたい城乃内は、ロックシードの実を食べ、自らが怪物化して止めようとする。
覚悟を決めてかぶりつこうとしたその手を止めるのが初瀬ちゃんだ。
初瀬が手をかざすと、ただの果物だったロックシードの実が、”ライチロックシード”へと変化する。
セリフはない。ただ、微笑んで消えていく。それだけのシーンなのに、抜群の存在感を見せてくれる。
ヘルヘイムの実を食べてしまったことで怪物化した自分と同じ道を城乃内が辿らないように見守ってくれていたのだろうか。
男同士の友情に胸が熱くなる。
受け継がれるもの
本編で、師匠である鳳蓮が城乃内をおぶって夕暮れの川原を歩くシーンがあった。
弟子である城乃内を認めたという、まるで父が我が子をおぶっているようにも見えた名シーンだ。
この時は、パティシエとしても人間としても、まだまだ未熟だった城乃内だが、それから数年を経て、城乃内は世界的なスターパティシエとなった。
人間としてはまだまだちょいちょい鼻につくところはあるが、命懸けで暴走した鳳蓮を救うなど、その成長は目覚ましい。
そんな城乃内が、傷ついた鳳蓮をおぶって川原を歩く。
そして鳳蓮に「店(シャルモン)に戻って来てほしい。また1から修行がしたい」と訴える。
最初は断っていた鳳蓮だが、城乃内の気持ちが伝わったのか、「じゃあアテクシをおぶったまま、お店までダッシュ〜!」とノリノリ。
チャラけた雰囲気ではあるが、まるで親子のよう。
いつの間にか成長した子が、親を背負うようにはなったが、やはり親は親、子は子。
二人の変わらぬ関係性と、時と共に変わった立ち位置が見える素晴らしいシーンである。
世界は、こうして受け継がれていくものなのだろう。
じんわりと心が温かくなる。
本作を視聴するには?
短編とはいえ、なかなか見どころの多い作品ではあるのだが、残念だったのは、せっかく登場した新ライダー「シルフィー」だ。
斬月としか戦わず、しかも、割とあっさりやられてしまうため、シルフィーのモブ感がハンパなかった。
まあ、タイトルがグリドンVSブラーボだから仕方ないのか? とも思うし、貴虎の変わらぬ力、斬月のカチドキアームズの強さを強調したいという意向はあったのかもしれないが、それにしても・・・。
最後はグリドンと斬月での共闘など、もうちょっと見せ場を作れば、シルフィーがさらに活きたのではないか? とも思う。
ただし、それ以外は25分程度の短編ながら、展開がきちんと作り込まれており、さすが外伝を名乗るだけのことはある。
中には虚淵さんの脚本でないことをマイナスと捉えるファンもいるかもしれないが、個人的には全然アリ。
ちなみに、今回ご紹介した外伝は「TTFC(東映特撮ファンクラブ)」でしか見られない。
なかなかの鬱展開を見せる『仮面ライダー鎧武』本編や、過去に発表された他の『鎧武外伝』なども見られるので、この機会に登録してもいいかもしれない。
それでは、ここまでお読みいただきありがとうございました。
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