ストリウスを討ち、世界を滅びから救うため、十人の剣士たちは滅びの塔へと向かう。
『仮面ライダーセイバー』第45章「十剣士、世界を賭けて。」(監督:杉本輝昭 脚本:長谷川圭一)をレビュー。
見どころを4つに絞って解説します。ネタバレもしますが、筋書きどおりには書かないので、これを読んで興味が湧いたら、是非本編も見てください。
キャスト
ここではキャストをご紹介。
神山飛羽真/仮面ライダーセイバー:内藤秀一郎
新堂倫太郎/仮面ライダーブレイズ:山口貴也
須藤芽依:川津明日香
富加宮賢人/仮面ライダーエスパーダ:青木 瞭
尾上 亮/仮面ライダーバスター:生島勇輝
緋道 蓮/仮面ライダー剣斬:富樫慧士
大秦寺哲雄/仮面ライダースラッシュ:岡 宏明
ユーリ/仮面ライダー最光:市川知宏
神代玲花/仮面ライダーサーベラ:アンジェラ芽衣
神代凌牙/仮面ライダーデュランダル:庄野崎 謙
ストリウス:古屋呂敏
レジエル:高野海琉
ズオス:才川コージ
富加宮隼人:唐橋 充
大人のルナ:横田真悠
デザストの声:内山昂輝
上條大地:平山浩行
ソフィア/仮面ライダーカリバー:知念里奈
動じぬストリウス、ルナの真実
滅びの塔の最上階で飛羽真たちを待ち受けるストリウスの前に、突如、消滅したはずのレジエルとズオスが現れる。しかも、普通のホモサピエンスだった頃の姿で。
二人は口々に、大いなる力を求めたのは、世界を飢えや貧しさから救うためだった、などと、そもそも論を繰り出し、ストリウスを説得しようとするが、ストリウスはまるで動じない。
これは幻で、その幻を作り出しているのがルナだとわかっていたからだ。世界の崩壊を止めたいルナが、ストリウスに直接干渉していたらしい。
これまで「ワンダーワールドそのもの」と言われてきたルナの正体は、全知全能の書の一部だった。
世界の終わりが来ることは、ストリウスだけでなくルナにもわかっている様子。つまり変えられぬ未来? その運命に抗い、世界を救おうと諦めないヒーロー(飛羽真たち)を絶望の淵に追い込むことが、ストリウスの考える”物語の美しい結末”らしい。
しかし、そんなストリウスにルナは「飛羽真は、なんでも知っているはずの私が知らない物語を作れる」と期待を口にする。
これは子供時代の思い出の中で語られてきたことでもある。伏線は回収された。
変身するソフィア、変わらぬ絆
前回、ユーリによって暗黒剣を手にすることになったソフィアが仮面ライダーカリバーへと変身。
滅びの塔までの道中に群がるシミー(ザコ)を一掃するため、ユーリと共に露払いの役割を買って出るが、このシミーというザコが、ここに至るまでほとんど活躍の場を与えられていなかったことに気づく。本がテーマの『セイバー』におけるザコの名がシミーとは、洒落ているなと思ったが、『オーズ』のヤミーほどの活躍はできなかったようだ。
ちなみに「シミ」を知らない方はググっていただきたいが、虫嫌いなら閲覧注意である。「セイヨウシミ」の情報はコチラ
いきなり剣士として戦えるという謎スペックのソフィアだが、倒れそうになるところを、盟友である富加宮隼人と上條大地の幻が支える。
ほんの一瞬ではあるが、ベテラン二人の演技が光る。肉体を失っても、絆は失われていない、という素晴らしいシーンである。
蓮とデザスト、そして大秦寺・・・
滅びの塔に侵入した飛羽真たちの前に、ストリウスにより蘇った四賢神が立ち塞がる。
最上階にいるストリウスに会うためには、各フロアにいる四人の賢神を倒して行かなくてはならないようだ。懐かしきアクションゲームの名作『スパルタンX』のようでもあり、『仮面ライダービルド』の最終決戦のようでもある。
「ここは任せて先に行け!」
お決まりのセリフで身体を張り、仲間を見送る剣士たち。
最初のフロアでは、蓮と大秦寺が。
次のフロアでは、倫太郎と尾上が。
さらに次のフロアでは、神代兄妹が、現れた四賢神に立ち向かう。
そして四人目と戦うのは飛羽真と賢人の二人。賢人も例に漏れず、「お前は先に行け!」と言うが、踏みとどまり、賢人と共に戦う飛羽真。
四賢神の強さは想像を絶し、剣士たちは傷つき、倒れる。
その中で蓮は、デザストの必殺技”カラミティ・ストライク”をアレンジした新たな必殺技で四賢神の一人を倒す。
とどめを刺した後、蓮の手の中でついに完全に消滅してしまうデザストのアルターライドブック。
本の魔物メギドであるデザストと、ホモサピエンスの蓮という二人が種族を超えて築き上げてきた絆の深さがわかる胸熱のシーンだ。
しかし共に戦った大秦寺は倒れてしまう。「少し疲れた」と蓮を先に向かわせた後、自らの聖剣を抱き、「子守唄のような音が聞こえる・・・」と眠るように・・・。
剣なき芽依、それでもできること
一人残され、仲間たちの帰還を待つだけの芽依は、飛羽真が書き上げた新作小説の原稿を見つける。
小説のタイトルは「エターナルストーリー」。
物語の全貌はまるで見えないが、「終焉」「破滅」「絶望」といった言葉が並ぶ。最終決戦を前にした飛羽真の不安がそういった言葉を書かせたのか、それともそういった全てを乗り越えるという物語なのかはわからない。
読了した途端、瞳から零れる涙。芽依は、自分にできることをやろうと立ち上がる。
この”芽依だからできること”とは何か? ここからは勝手な予想だが、「インスタ」を使ってのものではないかと思う。実際にはインスタではなく、なにかしらのSNSなのかもしれないが、物語序盤から何度も芽依はインスタをやっていることを明言してきた。
それは単に、芽依が今どきのキラキラ女子であることの描写だとばかり思っていたのだが、少し前まで、『セイバー』の重要なシーンのために、というふれこみで、リモートエキストラを一般募集していたのが気になっていた。どうやってリモートエキストラを使うのか? と。
すると、TTFC(東映特撮ファンクラブ)で配信されている『TTFC産直シアター』では、こんなシーンがあったことを思い出した。
芽依のインスタを使って、世界中の人たちの「がんばれ!」という声援をインスタで挫けそうになっている飛羽真たちに送るという展開はどうだろう。
『ペルソナ5』でも似たようなシーンがあったが、間違いなく激アツな展開になる。よく「声援が力になる」というが、あれは嘘ではない。学生の頃のマラソン大会などで、先生たちが機械的に「がんばれ、がんばれー」などと言っているのは論外だが、心からの声援は、たとえ自分に向けられていないものでも鳥肌が立つ。
本当にこうなるのかは、制作者のみぞ知る、のだろうが、こういう流れになるとすれば、最初からインスタの設定をところどころに滑り込ませていたのは素晴らしい伏線だったと言えるし、例え後付けだったとしても、その巧妙さには舌を巻く。
イマイチ評価の低かった『セイバー』だが、ラストで一気に汚名返上してほしいと、心から願っている。
それでは、ここまでお読みいただきありがとうございました。